フランシス・フクヤマ 『地球を読む 拡大中国に対処できず』 その1 読売新聞H22.6.27
フランシス・フクヤマ 『地球を読む 拡大中国に対処できず』読売新聞H22.6.27
数字は筆者記入
…第一は経済である。国際金融危機の根源には、米国の財政・金融構造の不均衡をあおった①中国の資本輸出があった。低コストの資本供給は、一種の麻薬となった。米国民は喜んでその中毒にかかり、低金利のローンを借りまくった。そして住宅バブルが膨らみ、やがて弾けたのである。
中国は、意図的に人民元の価値を低くすることによって、②自国の輸出産業を支援すると同時に、事実上世界中に産業空洞化を生んだ。米国だけではない。中南米やアジア、アフリカの低コスト製造業も、中国の輸出に直面して、軒並み閉鎖されつつある。
半分正しく、半分間違いです。 ①中国の資本輸出=②自国の輸出産業(貿易黒字)というのは、合っています。
もうひとつ、 ②自国の輸出産業を支援すると同時に、事実上世界中に産業空洞化を生んだ。米国だけではない。中南米やアジア、アフリカの低コスト製造業も、中国の輸出に直面して、軒並み閉鎖されつつある。という事実はありません。
では、解説してゆきましょう。
<カネとモノ(サービス)は表裏一体>
GDPの三面等価を見てみましょう。

①貸した(総額)=借りた(総額)②生産の残り相当分=消費した人(主体)から,言えること,貿易黒字についてです。
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字含む)ですが,同時に日本の,海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)になるのです。
貿易黒字額=外国への資金の貸出額
「総生産額」から,国内の「総消費(投資)」(家計・企業・政府)を差し引いたものが,(EX-IM)=貿易黒字・海外への資金流出に等しくなるのです。
「総生産額-総消費」=「国全体の貯蓄超過」=「貿易黒字」
日本全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。日本が「貿易黒字」を生み出すのは,日本人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
これが,貿易黒字の正体です。ですから,日本という部分を,中国に置き換えると,
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字)ですが,同時に中国の,海外への資金の貸し出し(外国の中国に対する借金)になるのです。
中国全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。中国が「貿易黒字」を生み出すのは,中国人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
と,なります。
<国際収支表の原則>
国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている、会社で言う「貸借対照表=バランスシート」のことです。商業科に通っている高校生なら、すぐに理解できます。
モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額=資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。
だから、2009年の日本は

となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。貿易黒字=外国への資金提供のこと(国内に還元しないカネ)なのです。ですから、「貿易黒字はもうけ」ではありません。
①経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
①経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
日経H22.2.6『中国経常黒字昨年は35%減』
…経常黒字は前年を35%下回る2841億ドルだった。世界的な金融危機を受けた貿易黒字の縮小が響いた。
中国が、「経常黒字2841億ドル 資本黒字1091億ドル」ということは、外貨準備△3584億ドルになります(誤差脱漏を除く単純計算)。中国が、外貨準備をがんがん増やし、世界一になっているのは、このような背景があります。でも、外貨準備増も「いいとか、悪いとかの話」ではありません。
中国政府・中銀の持っている外貨が膨らんでいるということで、市場は逆に「元」があふれて、インフレ傾向になっています。
『通貨供給量10月末29.4%増』H21.11.12
…中国人民銀行…は11日。10月末の通貨供給量(マネーサプライ)が前年同期比29.4%増だったと発表…。元相場を実勢より低めに維持するための元売り・ドル買い介入などの影響で、マネーサプライの膨張が続いている。

BRICS辞典 http://www.brics-jp.com/china/gaika_jyunbi.html

中国の外貨準備高(外貨準備金)は世界一で、その額は2兆ドル(約200兆円)に迫るほどです。2006年辺りまでは日本が世界一でしたが、今やその日本の1.5倍近くにまで伸びています。グラフから分かる通り、特に近年、数値が激増しています。
このように、
①経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
①経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
なので、今後も経済が回復するに従って、「不均衡」は拡大するとみられています。中国などの場合、経済成長=給与増=貯蓄増=海外投資増になってしまうからです。
貯蓄を、その国の投資で使い切ってしまわない場合、かならず貿易黒字(資本赤字)は発生してしまうのです。
読売『G20 成長に軸足 新興国に内需拡大に期待』H22.6.28 グラフも

この「インバランス」を是正するには、中国が、公共投資を拡大=政府支出増大するしかありません。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
左辺が0なら、右辺も0です。
左辺が1なら、右辺(G-T)を1にすれば、(EX-IM)は0です。
『新興国に内需拡大に期待』というのは、先進国が、財政赤字縮小に向かっている中で、(G-T)を拡大できないので、新興国に(G-T)を拡大せよと迫っていることを示します。
<お待たせいたしました>
拙著 「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門Ⅱ」発売になりました。
すでに、セブン&ワイや、amazonなどのオンライン書店で購入可能のようです。
一般書店には、7月中旬に並ぶようです。
(ご連絡いただければ、直接配送も可能です)
最寄の図書館にリクエストしていただければ幸いです。よろしくお願い致します。



数字は筆者記入
…第一は経済である。国際金融危機の根源には、米国の財政・金融構造の不均衡をあおった①中国の資本輸出があった。低コストの資本供給は、一種の麻薬となった。米国民は喜んでその中毒にかかり、低金利のローンを借りまくった。そして住宅バブルが膨らみ、やがて弾けたのである。
中国は、意図的に人民元の価値を低くすることによって、②自国の輸出産業を支援すると同時に、事実上世界中に産業空洞化を生んだ。米国だけではない。中南米やアジア、アフリカの低コスト製造業も、中国の輸出に直面して、軒並み閉鎖されつつある。
半分正しく、半分間違いです。 ①中国の資本輸出=②自国の輸出産業(貿易黒字)というのは、合っています。
もうひとつ、 ②自国の輸出産業を支援すると同時に、事実上世界中に産業空洞化を生んだ。米国だけではない。中南米やアジア、アフリカの低コスト製造業も、中国の輸出に直面して、軒並み閉鎖されつつある。という事実はありません。
では、解説してゆきましょう。
<カネとモノ(サービス)は表裏一体>
GDPの三面等価を見てみましょう。

①貸した(総額)=借りた(総額)②生産の残り相当分=消費した人(主体)から,言えること,貿易黒字についてです。
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字含む)ですが,同時に日本の,海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)になるのです。
貿易黒字額=外国への資金の貸出額
「総生産額」から,国内の「総消費(投資)」(家計・企業・政府)を差し引いたものが,(EX-IM)=貿易黒字・海外への資金流出に等しくなるのです。
「総生産額-総消費」=「国全体の貯蓄超過」=「貿易黒字」
日本全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。日本が「貿易黒字」を生み出すのは,日本人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
これが,貿易黒字の正体です。ですから,日本という部分を,中国に置き換えると,
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字)ですが,同時に中国の,海外への資金の貸し出し(外国の中国に対する借金)になるのです。
中国全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。中国が「貿易黒字」を生み出すのは,中国人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
と,なります。
<国際収支表の原則>
国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている、会社で言う「貸借対照表=バランスシート」のことです。商業科に通っている高校生なら、すぐに理解できます。
モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額=資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。
だから、2009年の日本は

となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。貿易黒字=外国への資金提供のこと(国内に還元しないカネ)なのです。ですから、「貿易黒字はもうけ」ではありません。
①経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
①経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
日経H22.2.6『中国経常黒字昨年は35%減』
…経常黒字は前年を35%下回る2841億ドルだった。世界的な金融危機を受けた貿易黒字の縮小が響いた。
中国が、「経常黒字2841億ドル 資本黒字1091億ドル」ということは、外貨準備△3584億ドルになります(誤差脱漏を除く単純計算)。中国が、外貨準備をがんがん増やし、世界一になっているのは、このような背景があります。でも、外貨準備増も「いいとか、悪いとかの話」ではありません。
中国政府・中銀の持っている外貨が膨らんでいるということで、市場は逆に「元」があふれて、インフレ傾向になっています。
『通貨供給量10月末29.4%増』H21.11.12
…中国人民銀行…は11日。10月末の通貨供給量(マネーサプライ)が前年同期比29.4%増だったと発表…。元相場を実勢より低めに維持するための元売り・ドル買い介入などの影響で、マネーサプライの膨張が続いている。

BRICS辞典 http://www.brics-jp.com/china/gaika_jyunbi.html

中国の外貨準備高(外貨準備金)は世界一で、その額は2兆ドル(約200兆円)に迫るほどです。2006年辺りまでは日本が世界一でしたが、今やその日本の1.5倍近くにまで伸びています。グラフから分かる通り、特に近年、数値が激増しています。
このように、
①経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
①経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
なので、今後も経済が回復するに従って、「不均衡」は拡大するとみられています。中国などの場合、経済成長=給与増=貯蓄増=海外投資増になってしまうからです。
貯蓄を、その国の投資で使い切ってしまわない場合、かならず貿易黒字(資本赤字)は発生してしまうのです。
読売『G20 成長に軸足 新興国に内需拡大に期待』H22.6.28 グラフも

この「インバランス」を是正するには、中国が、公共投資を拡大=政府支出増大するしかありません。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
左辺が0なら、右辺も0です。
左辺が1なら、右辺(G-T)を1にすれば、(EX-IM)は0です。
『新興国に内需拡大に期待』というのは、先進国が、財政赤字縮小に向かっている中で、(G-T)を拡大できないので、新興国に(G-T)を拡大せよと迫っていることを示します。
<お待たせいたしました>
拙著 「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門Ⅱ」発売になりました。
すでに、セブン&ワイや、amazonなどのオンライン書店で購入可能のようです。
一般書店には、7月中旬に並ぶようです。
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genre : 政治・経済