菅首相 「第3の道」 その2

次回の更新は、6月20日です

H22年6月11日、読売

『増税を財源に雇用を拡大』
 
 菅首相の言う「第3の道」は、増税で得た財政資金を社会保障等の成長分野に投入をすることで雇用を拡大し、成長につなげようという一連の政策だ。

 首相によれば、「第1の道」は、道路やダム建設など公共事業を通じた需要拡大策で自民党政権の伝統的手法だ。「第2の道」は規制改革を掲げ、小さな政府を目指した小泉内閣の構造改革路線だ。
「第1の道は国の借金を増やした。第2の道は企業の効率化がリストラを招き、格差社会を生んだ」として、首相はどちらも失敗と評価している。

小野善康 阪大社会経済研究所長

…失業率が10年以上も高止まりしている今の日本で供給サイドの潜在成長率を高めれば失業率はさらに悪化する。デフレと雇用不安を引き起こして消費がさらに落ち込むし税収も減る。それが小泉構造改革が失敗した原因だ。

…そもそも何が成長産業であるか確定的に判別できることなどないのではないか。


<政府は成長分野がわかる?>

小野善康 阪大社会経済研究所長 …そもそも何が成長産業であるか確定的に判別できることなどないのではないか。

 確かに、「社会保障等の成長分野」ではあります。

日経H22.6.14
『菅政権 政治再生の責任 5』
…政府は…2011~13年度のあいだ一般会計で政策に使う一般支出を10年度を超えない水準に抑える。最大のネックは年1兆円のペースで増える社会保障費。


 年金、医療、介護、子供、生活保護、失業などの保険、保険衛生費などの各種支出が、毎年1兆円増えます。高齢化の当然の帰結です。成長分野として狙うと言うより、成長せざるを得ない分野です。ただし、官製(民間部門ではなく、ガチガチに規制された)・・・ですが・・・
 本来は、混合診療や、許認可保育園だけへの手厚い政策の変更、介護の自由参入化などの導入が必須です。それでこそ、民間活力を導入した「成長分野」になりそうです。

グラフ http://www.mof.go.jp/zaisei/con_04_g02.html
日本 社会保障費 推移.jpg

 しかし、「2011~13年度のあいだ一般会計で政策に使う一般支出を10年度を超えない水準に抑える」のが、政府の方針ですから、1兆円分の支出を、どこかで削るという方針なのだと考えられます。

平成22年度 予算案.JPG

 成長分野を、政府が作ることは可能なのでしょうか

 政府が100%管理したのが、ソ連型共産主義でした。
一方、政府が何も関与しないと、「レッセ・フェール(自由放任)」になります。

 政府の役割を重視したのが、「ケインズ」です。そして、 「政府」の役割について、徹底的な懐疑派なのが、「ミルトン・フリードマン」です。
 
根井雅弘(京大教授)『経済学はこう考える』ちくまプリマー新書 2009 p110

 フリードマンの思想は… 「自由市場」のほうが「計画経済」よりもはるかに効率的であり、たとえ「市場の失敗」(外部不経済や独占の弊害など、市場メカニズムにだけ頼っていては解決できない問題が発生すること)があるとしても、「政府の失敗」(計画経済やケインズ政策など、経済システムを思い通りに制御しようとしても成功しないということ)と比較すれば軽微なものであるということ…


 フリードマンは、「政府」を徹底して信頼していません。

ミルトン&ローズ・フリードマン『選択の自由』日本経済新聞社 1980
 p340
…一般的にいって誰が被害を受け、誰が利益を受けているかを明確にすることは、市場における参加者よりも政府にとっての方が容易であるということはけっしてなく、どれだけの被害や利益がそれぞれの人に発生したかを正確に評価することも、政府にとっての方が容易であることはけっしてない


 公害などの「外部不経済」は、「市場」においては、必ず発生します。ですが、それを解決するのは「政府」ではなくて「市場」だとします。政府による規制や監視ではなく、「税金や課徴金」を公害にかければよいのだと考えます。

p346
市場機構がその働きを明らかに不十分にしか果たせない分野があることは事実だ。しかしそのような分野でも、市場機構が果たすことができる働きを、もう一度考えてみる必要があるとの議論は教えてくれたのではないだろうか。結局のところ不完全な市場は、不完全な政府と少なくとも同等かまたはそれよりはよい成果をあげるかもしれないのだ。汚染問題との関連でも、市場機構が果たしてくれる働きをもう一度吟味してみれば、驚くほどよい解決法を数多く発見できるかもしれない。


 政府よりも、市場の方が「まし」ということです。

 政府は、「予算が100万円」あったら、「100万円使い切ろう」とします。その100万円の費用対効果は、一般的な消耗費の場合、考えません。基本的に「他人のカネ」だからです。

 民間人(消費者一人ひとり)は、「自分のお金」なので、最大の効用を目指して使います。100円の支出であっても、自分の満足度の最大化を目指して支出します。ですから、「消費者はシビア」なのです。モノを売るというのは、大変なことです。
 その消費者の選択にゆだねるのが、「市場」です。フリードマンが「効率が良い」としたのが後者です。

参考文献 ニューズ・ウイーク 2009.11.4 p64 

 フリードマンは、1929年以降の大恐慌についても、ケインジアンの考える「有効需要の不足」ではなく、FRB(アメリカの中央銀行に相当)が通貨供給を絞ってしまい、銀行が連鎖倒産したことを証明しました。
 この教訓はリーマン・ショック以降の、金融システムの維持に生かされ、FRBは、大量のマネー・サプライ(通貨供給量)を準備しました。バーナンキFRB議長は「フリードマンは正しい」と言ったそうです。
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