国債=政府の借金=国民の財産

伊藤元重『地球を読む』読売新聞H22.5.9

…アバ・ラーナーという英国育ちの著名な経済学者が、内国債での借金はいくら積み上がっても将来世代の負担にはならない」という経済学の世界では非常に有名な議論を提起している。

…今の日本のように千兆円近くもの債務を政府が積み上げてしまったとしてみよう。この借金はいずれ返済するしかない。その返済資金は国民から税金で集めるしかない。日本のように国債が内国債であれば国民から税金で集めたお金は国債を持っている国民に支払われる。つまり将来のどこかの時点で膨大な規模に膨れ上がった政府債務を返済する段階で、国民からお金が税金で集められて、国債を持っている国民にそのお金が支払われるのだ。このように、政府の借金の返済はしょせん将来世代の中での資金のやりとりに過ぎないので、将来世代に負担となるわけではない。もちろん国債を持っている人と持っていない人では立場が違うので、国民の間での分配の変化はあるかもしれない。しかし、それはマクロ経済的に見て将来世代に負担が残る問題ではない。以上がラーナー教授の基本的な議論である。

…もし、政府の借金が外国債であったら政府債務の問題はもう少し簡単なのかもしれない。借金が踏み倒されるだけだ。ロシアでもアルゼンチンでもそうしたことが行われた。多くの国の財政破綻では海外投資家が借金の一部棒引きを求められる。それは金融市場では大変なことでもあるが、借金の棒引きなら借り手が政府ならずとも、よくあることだ。

…では日本のように内国債で政府の借金が積み上がっていったとき、どのようなことが起こるのだろうか。そこで大きな問題として浮上してくるのが国債を「持っている国民」と「持っていない国民」の間の対立関係である。私たちが銀行や郵便局に預けている預金のかなりの額が国債に回っている。だから私たちの世代は国債を「持っている国民」である。これに対しての子供やこれから生まれてくる世代の人たちは「持っていない国民」である。「持っていない国民」である将来世代は、なんでこれまでの世代の人たちが積み上げてきた国債のツケを自分たちへの増税で払わなければいけないのか、と不満に思うだろう。そしてその負担が重いほど、増税の幅も大きくなる。そうした増税を政治的に従順に受け入れる理由はない。


<持てる者と持たざる者>

 税金は、広く薄くかけられます。その一方、集められた税金は、一部に使われます。
例えば、子供手当です。満額の2万6千円が支給されるようになれば、5兆円の予算になります。
 広く集めて、恩恵を受けるのは約2000万人?(単純計算)です。
子供手当て 受益者.jpg

 農業も同じです。「個別保障制度」です。

日経連載 『ニッポンの農力』シリーズ 引用記事はH22.5.3~4日版
…自民党政権下…補助金を受けるには一定以上の農地を耕作していることなどが条件だった。…だが今後は小規模農家でも直接お金を受け取れる。
コメの需要が減り、価格の低下が進む中で、農家の収入に直接結びつく戸別所得保障制度の魅力は強烈だ。
…農家はコメをつくれば10アール当たり1万5千円の補助金を直接受け取れる。販売価格が下がったときの補てんもある。


 ただし、この補助金予算は2010年度5600億円です。11年度には、1兆円必要です。

…政府は2010年度にコメ農家を対象に約5600億円の予算を組んだ。対象を小麦などに広げる11年度には,1兆円規模のお金が必要になる…。

受益者 農業補助金.jpg
  納税者1億2600万人

 政治というのは、このような「配分」のことです。納税者は大勢、受益者は少ないのです。公共工事も、障害者福祉事業も、およそ、国家の予算は、みなこのような構図になっています。「持てるもの=受益者、持たざるもの=負担者」と考えてみて下さい。

 では、国債の償還(利払い)はどのような構図になっているのでしょうか。

…では日本のように内国債で政府の借金が積み上がっていったとき、どのようなことが起こるのだろうか。そこで大きな問題として浮上してくるのが国債を「持っている国民」と「持っていない国民」の間の対立関係である。私たちが銀行や郵便局に預けている預金のかなりの額が国債に回っている。だから私たちの世代は国債を「持っている国民」である。これに対しての子供やこれから生まれてくる世代の人たちは「持っていない国民」である。「持っていない国民」である将来世代は、なんでこれまでの世代の人たちが積み上げてきた国債のツケを自分たちへの増税で払わなければいけないのか、と不満に思うだろう

「持っている者」VS「もたない者」の構図だそうです。

 現在の国民が,借金をして,それを返済するのは,将来世代ということになるからだそうです。しかし,借金(元金)を返してもらう,あるいは,利息を受け取る世代も,やはり孫の世代,将来世代なのです。

    国債は政府の借金=国民の財産

 政府にとっては借金,国民にとっては財産です。もちろん現実には,国債を買っている個人はまだまだ少ないのですが,預金された側の銀行,生命保険会社,郵便貯金会社が,国債を購入しているのです。我々の預貯金(1,410兆円)が,政府の国債の購入にあてられて(過去の国債購入費がストックとして計上されて)います。

家計金融資産
   ↓
家計金融資産構成比.jpg
   ↓
国債保有者.jpg

日経H22.5.11
米国 国債 保有状況


 このグラフを見てわかるように、国債を保有しているのは、個人が5.1%、外国が5.2%、後は、銀行・生命保険、年金基金、投資信託会社などです。そして、その金利配当、元金返還の構図は,下記のようになっています。
 国債 国民の財産.jpg

「持っている者」VS「もたない者」の構図ですが、税金の場合と、違っていることが分かります。「持てるもの」の利益(国債金利)は、国民の間に広く薄くいきわたります。この金利収入は、結局国民に還元され、その年のGDI(所得)=GDP(生産)になるからです。

国債 受益者.jpg

 また、「持っている者(現在の保持者)」VS「もたない者(未来の国民)」と考えても、国債の償還方法を考えると、「もたない者(未来の国民)」も利益を得るのがわかります。
 国債は、たとえば、「10年満期=6兆円」という国債があったとしても、その償還は、「60年」償還ルールによって、完全に返済されるのが、60年後です。6兆円のうち、10年後に償還されるのは、6000億円、あとの5兆4000億円は、その時点で、「借換債」になります。

 https://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/saimukanri/2006/saimu02b_01.pdf#search='第2章 国債'
国債 60年ルール.jpg

「持っている者(現在の保持者)」VS「もたない者(未来の国民)」ではなく、「もたない者(未来の国民)」も、新たに「持っている者」になるのです。

 要するに、国債は政府の借金=国民の財産なのです。
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