新聞の間違い(3) 日経新聞の間違い その1
H21.4.13 藤井彰夫編集委員 『アジアの力日本に生かせ』日本経済新聞
…2008年度の日本の貿易収支が、第2次石油危機直後の1980年度以来、28年ぶりの赤字になった…05年春に政府がまとめた「21世紀ビジョン」。日本は輸出で稼ぐ輸出立国から、海外投資で稼ぐ投資立国に転換し、貿易収支(財・サービス収支)は輸入拡大で2030年に赤字に転じると試算した。赤字転落は想定と全く違う展開で現実になった。…「輸出で稼ぐ」をモデルにしてきた日本経済の行く末は縮むばかりだ。
H21.4.13 「貿易赤字、影響はどう広がる?」日本経済新聞
…輸入額が輸出額を上回ったわけで、貿易で稼いできた日本経済の大きな転機になる可能性もある。
Q貿易赤字になるとどうなる?
A単純化すると、貿易収支が黒字なら、日本の保有資産が増える。逆に貿易赤字なら日本の保有資産が減ると考えればいい。輸出で稼ぐ企業の収益は悪化するので…家計の所得が少なくなり、個人消費が停滞する可能性もある。
経済を専門にする新聞でも、間違っている事例です。これらの記事を貫いている考え方は、「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」という、経済オンチ論理なのです。だから、「貿易赤字になって大変だ!危機だ!」となります。「稼ぐ」とか、「赤字転落」とか、「行く末は縮む」とか、これらは、「貿易赤字は損」という一般的な経済理解(経済学とは180°違います)に浸っているから出てくる表現です。
経済学を学べば、あるいは、経済学者なら、それらは「誤り」だとわかるので絶対に使わない表現です。
記事で紹介されている、香西 泰・井堀利宏・伊藤元重といった日本を代表する経済学者がまとめた、経済財政諮問会議の「21世紀ビジョン」の該当箇所を見ます。そこには、「稼ぐ」だとか、「赤字転落」だとかの表現など、「よいこと・悪いこと」をにおわす表現は、一切使われていません。「貿易赤字・黒字」は「よいこと・悪いこと」「損・得」の概念や、日本の経済成長(GDP増)とは、全く関係ないからです。同書の該当箇所です。
「21世紀ビジョンにおける経済の姿・指標」 P6貯蓄投資バランスの展望
国内部門全体(家計、企業、政府)としての黒字(筆者注:国民が貯蓄した額が投資より多く黒字)は、対外バランスである経常収支黒字に一致する。
p7
財・サービス収支は赤字に転じるものの、所得収支の黒字が拡大し、経常収支は黒字を維持
ちゃんと、書いてあります。「貯蓄超過で黒字」=「貿易黒字額」と。P7で、「赤字は損・黒字は得」などとは、言っていません。
では解説してゆきましょう。
(1) 貿易黒字は、我々が貯蓄するから生じる のです。
私たちが1年間に生産したGDPは、イコール私たちの所得GDIです。私たちは、その所得を、消費(C:コンサンプション)、税金(T:タクス・・社会保険料も含む)、貯蓄(S:セイビング)に振り向けます。貯蓄とは、財布にあろうが、銀行にあろうが、株を買おうが、要するに消費(モノ・サービス購入)しなかった、全ての額です。
でも総生産GDP=C+T+Sなので、Sの分だけ、私たちが購入しないので、総生産(モノ・サービス)が売れ残ります。その分(S:お金)を借りて、消費・購入しているのが、①政府(赤字公債)②企業(投資)③外国(貿易黒字)なのです。①政府(国・地方)は公債を発行し、消費・投資します。(G-T:Gはガバメント、政府が使ったお金、Tは税金ですから、その差額は公債です)②企業は株や社債を発行し、銀行からお金を借り、投資します。(I:インベストメント:投資)③外国は、国債・社債・株式などを日本に買ってもらい、消費します(EX-IM:輸出-輸入)。S=(G-T)+I+(EX-IM)
つまり、貿易黒字が生じるのは、「日本人がその支出(消費)を、所得以下に抑え、外国への資金提供を行った」からです。
ですから、民間貯蓄超過額(政府と企業で、全ての貯蓄を、国内消化していない)=貿易黒字額=資本収支赤字額(外国への貸し出し)となります。
貿易黒字は、お金の貸し借りから生まれるのです。
『週刊ダイヤモンド2009.4.4 p38』

…2008年度の日本の貿易収支が、第2次石油危機直後の1980年度以来、28年ぶりの赤字になった…05年春に政府がまとめた「21世紀ビジョン」。日本は輸出で稼ぐ輸出立国から、海外投資で稼ぐ投資立国に転換し、貿易収支(財・サービス収支)は輸入拡大で2030年に赤字に転じると試算した。赤字転落は想定と全く違う展開で現実になった。…「輸出で稼ぐ」をモデルにしてきた日本経済の行く末は縮むばかりだ。
H21.4.13 「貿易赤字、影響はどう広がる?」日本経済新聞
…輸入額が輸出額を上回ったわけで、貿易で稼いできた日本経済の大きな転機になる可能性もある。
Q貿易赤字になるとどうなる?
A単純化すると、貿易収支が黒字なら、日本の保有資産が増える。逆に貿易赤字なら日本の保有資産が減ると考えればいい。輸出で稼ぐ企業の収益は悪化するので…家計の所得が少なくなり、個人消費が停滞する可能性もある。
経済を専門にする新聞でも、間違っている事例です。これらの記事を貫いている考え方は、「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」という、経済オンチ論理なのです。だから、「貿易赤字になって大変だ!危機だ!」となります。「稼ぐ」とか、「赤字転落」とか、「行く末は縮む」とか、これらは、「貿易赤字は損」という一般的な経済理解(経済学とは180°違います)に浸っているから出てくる表現です。
経済学を学べば、あるいは、経済学者なら、それらは「誤り」だとわかるので絶対に使わない表現です。
記事で紹介されている、香西 泰・井堀利宏・伊藤元重といった日本を代表する経済学者がまとめた、経済財政諮問会議の「21世紀ビジョン」の該当箇所を見ます。そこには、「稼ぐ」だとか、「赤字転落」だとかの表現など、「よいこと・悪いこと」をにおわす表現は、一切使われていません。「貿易赤字・黒字」は「よいこと・悪いこと」「損・得」の概念や、日本の経済成長(GDP増)とは、全く関係ないからです。同書の該当箇所です。
「21世紀ビジョンにおける経済の姿・指標」 P6貯蓄投資バランスの展望
国内部門全体(家計、企業、政府)としての黒字(筆者注:国民が貯蓄した額が投資より多く黒字)は、対外バランスである経常収支黒字に一致する。
p7
財・サービス収支は赤字に転じるものの、所得収支の黒字が拡大し、経常収支は黒字を維持
ちゃんと、書いてあります。「貯蓄超過で黒字」=「貿易黒字額」と。P7で、「赤字は損・黒字は得」などとは、言っていません。
では解説してゆきましょう。
(1) 貿易黒字は、我々が貯蓄するから生じる のです。
私たちが1年間に生産したGDPは、イコール私たちの所得GDIです。私たちは、その所得を、消費(C:コンサンプション)、税金(T:タクス・・社会保険料も含む)、貯蓄(S:セイビング)に振り向けます。貯蓄とは、財布にあろうが、銀行にあろうが、株を買おうが、要するに消費(モノ・サービス購入)しなかった、全ての額です。
でも総生産GDP=C+T+Sなので、Sの分だけ、私たちが購入しないので、総生産(モノ・サービス)が売れ残ります。その分(S:お金)を借りて、消費・購入しているのが、①政府(赤字公債)②企業(投資)③外国(貿易黒字)なのです。①政府(国・地方)は公債を発行し、消費・投資します。(G-T:Gはガバメント、政府が使ったお金、Tは税金ですから、その差額は公債です)②企業は株や社債を発行し、銀行からお金を借り、投資します。(I:インベストメント:投資)③外国は、国債・社債・株式などを日本に買ってもらい、消費します(EX-IM:輸出-輸入)。S=(G-T)+I+(EX-IM)

つまり、貿易黒字が生じるのは、「日本人がその支出(消費)を、所得以下に抑え、外国への資金提供を行った」からです。
ですから、民間貯蓄超過額(政府と企業で、全ての貯蓄を、国内消化していない)=貿易黒字額=資本収支赤字額(外国への貸し出し)となります。
貿易黒字は、お金の貸し借りから生まれるのです。
『週刊ダイヤモンド2009.4.4 p38』


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