新聞の間違い(42) 『中国経済 転換なるか 輸出依存を内需主導に』その1日経H22.5.10
<新聞の間違い 日経H22.5.1>
下原口徹『中国経済 転換なるか 輸出依存を内需主導に』その1(数字は筆者挿入)
上海国際博覧会(上海万博)は中国の経済成長を世界に示すとともに、①経済構造を投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える起爆剤の役割も担う。…世界中が巨大化する中国経済とのかかわりを深めており、内需型転換の行方に注目している。
…②大阪万博後の日本は、内需拡大が十分に進まず、米欧との貿易摩擦が続いた。規模では当時の日本をはるかに上回る中国経済の内需型への転換が滞れば、摩擦激化で世界経済は不安定さを増す。
<中国は内需拡大で成長した>
①経済構造を投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える起爆剤の役割も担う。…世界中が巨大化する中国経済とのかかわりを深めており、内需型転換の行方に注目している。
「中国は、輸出依存」とよく言われます。確かに元安政策を維持し、輸出を伸ばしているようですが、この記者の頭には,「中国経済の全体像」が入っていませんので、「投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える」などと書いてしまいます。実際の統計を見てみましょう。

一目瞭然です。青い色のGDPから、(輸出-輸入=外需)を引いたものが、中国の「内需」です。内需が爆発的に増加していることが分かります。中国の経済成長とは、内需拡大(国内の経済規模が大きくなる)のことなのです。

GDPに占める、内需の割合は、2005年95.44%、2006年93.35%、2007年92.3% 2008年93.2%です。

2007年⇒2008年は、内需の割合が拡大しています。「投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える」という日経記者の主張は、内需の割合を何%にすることを指しているのでしょうか?
2009年は、さらに「黒字が縮小」しました。2009年のGDPは増えていますので、内需割合はさらに高くなっているはずです。(2009年、中国GDPのドルデータがないため、下記の記事を参照)
チャイナ・プレス http://www.chinapress.jp/finance/19847/
2010年1月21日、中国国家統計局は2009年経済データを発表した。データによると、2009年の国内総生産(GDP)は33兆5353億元(約449兆7022億円)に達し、前年比8.7%成長を遂げた。
日経H22.4.20『GDPに占める経常黒字の比率 中国2年連続低下』グラフも
中国…が発表した2009年の国際収支報告…。貿易黒字の大幅な減少が響き…前年を下回った。…モノの貿易の貿易黒字が31%減った…。

中国が成長したのは,やはり,内需の拡大によるものです。
貿易黒字が,なぜ生じるか,もう一度思い出してみましょう。
中国が貿易黒字を増大させているのは,GDP(国内総生産)=GDI(国内総所得)が拡大したのに,国民がその所得を消費に回さず,貯蓄に回していることが原因です。所得が増えたので,貯蓄も増やしているのです。
『中国貯蓄率最高の28.8%』 日本経済新聞21.4.7
中国の家庭で,消費よりも貯蓄を優先する傾向が続いている。2008年の家計
貯蓄率は28.8%と過去最高を記録した。…貯蓄率は家計の収入から,税金などを差し引いた可処分所得のうち,モノやサービスの消費に使わず貯蓄に回した割合。…最大の理由は,医療や年金など社会保障制度の未整備にある。
黒田東彦 アジア開発銀行総裁『月曜:経済観測』日本経済新聞H21.9.7
…中国は消費を拡大する必要がある。…貯蓄が過剰で国内総生産(GDP)の10%
前後の大幅な経常黒字が出ている。…貯蓄率の上昇は中長期に続く。
GDPの三面等価を見てみましょう。

①貸した(総額)=借りた(総額)②生産の残り相当分=消費した人(主体)から,言えること,貿易黒字についてです。
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字含む)ですが,同時に日本の,海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)になるのです。
貿易黒字額=外国への資金の貸出額
「総生産額」から,国内の「総消費(投資)」(家計・企業・政府)を差し引いたものが,(EX-IM)=貿易黒字・海外への資金流出に等しくなるのです。
「総生産額-総消費」=「国全体の貯蓄超過」=「貿易黒字」
日本全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。日本が「貿易黒字」を生み出すのは,日本人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
これが,貿易黒字の正体です。ですから,日本という部分を,中国に置き換えると,
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字)ですが,同時に中国の,海外への資金の貸し出し(外国の中国に対する借金)になるのです。
中国全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。中国が「貿易黒字」を生み出すのは,中国人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
と,なります。「貿易黒(赤)字と,経済成長は無関係」なのです。
下原口徹『中国経済 転換なるか 輸出依存を内需主導に』その1(数字は筆者挿入)
上海国際博覧会(上海万博)は中国の経済成長を世界に示すとともに、①経済構造を投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える起爆剤の役割も担う。…世界中が巨大化する中国経済とのかかわりを深めており、内需型転換の行方に注目している。
…②大阪万博後の日本は、内需拡大が十分に進まず、米欧との貿易摩擦が続いた。規模では当時の日本をはるかに上回る中国経済の内需型への転換が滞れば、摩擦激化で世界経済は不安定さを増す。
<中国は内需拡大で成長した>
①経済構造を投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える起爆剤の役割も担う。…世界中が巨大化する中国経済とのかかわりを深めており、内需型転換の行方に注目している。
「中国は、輸出依存」とよく言われます。確かに元安政策を維持し、輸出を伸ばしているようですが、この記者の頭には,「中国経済の全体像」が入っていませんので、「投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える」などと書いてしまいます。実際の統計を見てみましょう。

一目瞭然です。青い色のGDPから、(輸出-輸入=外需)を引いたものが、中国の「内需」です。内需が爆発的に増加していることが分かります。中国の経済成長とは、内需拡大(国内の経済規模が大きくなる)のことなのです。

GDPに占める、内需の割合は、2005年95.44%、2006年93.35%、2007年92.3% 2008年93.2%です。

2007年⇒2008年は、内需の割合が拡大しています。「投資・輸出依存型から、消費・内需主導型に変える」という日経記者の主張は、内需の割合を何%にすることを指しているのでしょうか?
2009年は、さらに「黒字が縮小」しました。2009年のGDPは増えていますので、内需割合はさらに高くなっているはずです。(2009年、中国GDPのドルデータがないため、下記の記事を参照)
チャイナ・プレス http://www.chinapress.jp/finance/19847/
2010年1月21日、中国国家統計局は2009年経済データを発表した。データによると、2009年の国内総生産(GDP)は33兆5353億元(約449兆7022億円)に達し、前年比8.7%成長を遂げた。
日経H22.4.20『GDPに占める経常黒字の比率 中国2年連続低下』グラフも
中国…が発表した2009年の国際収支報告…。貿易黒字の大幅な減少が響き…前年を下回った。…モノの貿易の貿易黒字が31%減った…。

中国が成長したのは,やはり,内需の拡大によるものです。
貿易黒字が,なぜ生じるか,もう一度思い出してみましょう。
中国が貿易黒字を増大させているのは,GDP(国内総生産)=GDI(国内総所得)が拡大したのに,国民がその所得を消費に回さず,貯蓄に回していることが原因です。所得が増えたので,貯蓄も増やしているのです。
『中国貯蓄率最高の28.8%』 日本経済新聞21.4.7
中国の家庭で,消費よりも貯蓄を優先する傾向が続いている。2008年の家計
貯蓄率は28.8%と過去最高を記録した。…貯蓄率は家計の収入から,税金などを差し引いた可処分所得のうち,モノやサービスの消費に使わず貯蓄に回した割合。…最大の理由は,医療や年金など社会保障制度の未整備にある。
黒田東彦 アジア開発銀行総裁『月曜:経済観測』日本経済新聞H21.9.7
…中国は消費を拡大する必要がある。…貯蓄が過剰で国内総生産(GDP)の10%
前後の大幅な経常黒字が出ている。…貯蓄率の上昇は中長期に続く。
GDPの三面等価を見てみましょう。

①貸した(総額)=借りた(総額)②生産の残り相当分=消費した人(主体)から,言えること,貿易黒字についてです。
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字含む)ですが,同時に日本の,海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)になるのです。
貿易黒字額=外国への資金の貸出額
「総生産額」から,国内の「総消費(投資)」(家計・企業・政府)を差し引いたものが,(EX-IM)=貿易黒字・海外への資金流出に等しくなるのです。
「総生産額-総消費」=「国全体の貯蓄超過」=「貿易黒字」
日本全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。日本が「貿易黒字」を生み出すのは,日本人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
これが,貿易黒字の正体です。ですから,日本という部分を,中国に置き換えると,
(EX-IM)は,経常黒字(貿易黒字)ですが,同時に中国の,海外への資金の貸し出し(外国の中国に対する借金)になるのです。
中国全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。中国が「貿易黒字」を生み出すのは,中国人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
と,なります。「貿易黒(赤)字と,経済成長は無関係」なのです。
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