倉西雅子 ブログ:万国時事周覧 「財政危機は予測不可能なリスク」
倉西雅子鶴見大学非常勤講師 ブログ:万国時事周覧
『財政危機は予測不可能なリスク』2010-03-29 15:38:44
国と地方を合わせて1000兆円もの赤字国債を抱えながら、なおかつ、多額の国債を発行し続けている我が国の財政状況は、”危機的”というしかありません。にもかかわらず、財政破綻が”何時起きるのか”を明確にしない議論は、無意味との説があります。しかしながら、財政危機とは、破綻する時期が予測できないからこそ恐ろしいのではないでしょうか。
実のところ、正確に予測できるリスクの方が管理しやすいという側面があります。一方、財政の破綻リスクとは、国内外の経済状況の影響を強く受けますので、これは、予測不可能なリスクの一種となります。ユーロの信頼性を揺るがしたギリシャの経済危機も、リーマン・ショック以来の世界金融危機の発生が引き金となり、急激に国債の利回りが上昇したことで顕在化しました。何らかの外的、あるいは、内的ショックが働いた場合に、突然に財政危機が表面化するのです。風船を膨らませてゆけば、誰もが破裂することは予測できるのですが、限界が近づくまで、見ている人は、呑気に”まだまだ大丈夫”と考えるかもしれません。もちろん、そのまま膨らませて破裂することもありますが、外から針が一刺しでもさされば、ひとたまりもありません。
財政危機は、予測不可能であるからリスクが低いのではなく、自然災害と同様に、発生時期を正確に予測できないからこそリスクが高いと考える方が妥当なようです。そうであるからこそ、政府は、防災と同じく、財政の徹底した管理と破綻予防を怠ってはならないと思うのです。
<財政は破たんしない>
ここの定義で、「財政破綻」が何を示しているのか、明確ではありません。しかし、「風船が…破裂…限界…針が一刺し」という記述があるので、「暴発」することを示しているのかもしれません。ここでは、一応、「国債を発行しても、買い手がいなく、資金調達できないから、国債の返済もできなくなる(デフォルト)」というのを、「破たん」としてみましょう。
日本やアメリカは、「自国通貨建ての国債を発行」しているので、原理的にデフォルト(債務不履行)は起きません。その国債を購入しているのが、日本人であれ、外国人であれ、極端な話、宇宙人でもです。
デフォルト(債務不履行)できるのは、①外貨建て債務の場合と、②外資に対してのみです。
過去のアルゼンチン、ロシアがデフォルト(債務不履行)にしたのは、①外貨建て債務②外国資本(外資)に対してと、①外貨建て債務です。

<外資の場合>
アルゼンチンの場合、「ドル建てアルゼンチン債」を発行しました。アルゼンチンに対する信用がなくなると、アルゼンチンペソが暴落します。ドル建てで「100万ドル」と書いてある債券は、ペソが暴落しようと「100万ドル」返さなければいけません。ペソがドルに対して半分の価値になれば(ペソ暴落)、アルゼンチンは、「2倍」の額になった債務を返済しなければなりません。
同国は、1ドル=1ペソの事実上の固定相場制を採用していました。しかし、ドル高になり、隣国ブラジル(レアル安)の経済は発展しました。アルゼンチン経済は不況になり、外資が逃げ出します(ドル買いペソ売り)。同国中央銀行は、ドルを供給し続けますが、足りなくなります。IMF融資もなくなり、結局デフォルト宣言しました。
ロシアの場合も同じです。アジア通貨危機が新興国に波及し、外資に頼っていた同国経済を直撃しました。同国銀行は、同国国債を担保に外資に資本を提供してもらっていたのです。その外資が一斉に逃げだします(ドル買いルーブル売り)。IMFやアメリカがドルを緊急融資しますが、足りません。ついに同国中央銀行はデフォルトを宣言します。ドル高ルーブル暴落です。
<自国通貨建ての場合>
日本円の国債を1000兆円発行しているとします。1ドル=100円なら、10兆ドルです。
小松左京の映画ばりに、日本列島の太平洋側が、地震で、すべて海に沈没します。残ったのは、沖縄と、新潟県側一部と、北海道だけです。おまけに、ゴジラが、札幌と、新潟と、那覇の3都市を襲い、これらの中心都市も、焼け野原になります。政府はかろうじて北海道稚内市で執務を行っています。さて、日本円は高くなりますか?暴落しますか?
答え=暴落するです。日本の円を持とうという人は、皆無です。日本に石油を輸出しても、まともに払ってもらえるかどうか、わかりません。おそらく、石油業者は、「円」ではなく、「ドルで支払え」もしくは、「ゴールドで支払え」と言ってくるでしょう。1ドル=100円が、1ドル=100万円くらいになったとします。
さて日本円額面「1000兆円」の国債はどうなるでしょうか。1ドル=100万円になったら、10兆ドルもらえるはずだったのが、10億ドル分にしかなりません。さらに、日本円国債を、市場で売買しようとしても、誰一人買ってくれません。価値がないからです。ただの紙切れになります。「円」通貨もです。だれも、持ってくれません。国債も円通貨もただの紙切れになります。
「アメリカドル建て国債」も同じです。アメリカ大陸が、映画「インディペンデンス・デイ」のように、宇宙人に襲われ、壊滅しました。「アメリカ国債」「アメリカドル」は紙くずになります。だれも、買って(持って)くれません。
自国通貨建ての国債をいくら発行しても、国はつぶれないのです。その国の通貨・国債が紙切れになるだけです。だから、「国はいくら国債を発行しても倒産することはないと考えて良いのでしょうか。結論から言えばそのとおりです。現代の管理通貨制の下では自国通貨建ての国債をいくら発行してもそれが理由で国が倒産することはありません岩村充 早稲田大学教授 『貨幣の経済学』集英社 2008 p153 」となります。倒産やデフォルトではなく、「国債」「通貨」が紙切れになって終わりなのです。
日本は貯蓄超過なので、余ったお金が国債を購入しているのです。

この図で、Tを6兆円分引き上げれば、財政赤字(G-T)はゼロです。「財政破綻」なんか、原理的にありえません。この6兆円すら「まかなえない」、その時こそ、「財政破綻」です。

大竹文雄(大阪大学教授)『ニッポン復活の10年』日本経済新聞H22.1.9
日本の財政赤字が突出して大きいのは政府の規模が大きいからではなく,税収があまりにも少ないため。国債相場が暴落しないのは,消費税率などを国際標準に合わせてゆけば十分に税収があがるという合意が市場関係者にあるからだ。
『財政危機は予測不可能なリスク』2010-03-29 15:38:44
国と地方を合わせて1000兆円もの赤字国債を抱えながら、なおかつ、多額の国債を発行し続けている我が国の財政状況は、”危機的”というしかありません。にもかかわらず、財政破綻が”何時起きるのか”を明確にしない議論は、無意味との説があります。しかしながら、財政危機とは、破綻する時期が予測できないからこそ恐ろしいのではないでしょうか。
実のところ、正確に予測できるリスクの方が管理しやすいという側面があります。一方、財政の破綻リスクとは、国内外の経済状況の影響を強く受けますので、これは、予測不可能なリスクの一種となります。ユーロの信頼性を揺るがしたギリシャの経済危機も、リーマン・ショック以来の世界金融危機の発生が引き金となり、急激に国債の利回りが上昇したことで顕在化しました。何らかの外的、あるいは、内的ショックが働いた場合に、突然に財政危機が表面化するのです。風船を膨らませてゆけば、誰もが破裂することは予測できるのですが、限界が近づくまで、見ている人は、呑気に”まだまだ大丈夫”と考えるかもしれません。もちろん、そのまま膨らませて破裂することもありますが、外から針が一刺しでもさされば、ひとたまりもありません。
財政危機は、予測不可能であるからリスクが低いのではなく、自然災害と同様に、発生時期を正確に予測できないからこそリスクが高いと考える方が妥当なようです。そうであるからこそ、政府は、防災と同じく、財政の徹底した管理と破綻予防を怠ってはならないと思うのです。
<財政は破たんしない>
ここの定義で、「財政破綻」が何を示しているのか、明確ではありません。しかし、「風船が…破裂…限界…針が一刺し」という記述があるので、「暴発」することを示しているのかもしれません。ここでは、一応、「国債を発行しても、買い手がいなく、資金調達できないから、国債の返済もできなくなる(デフォルト)」というのを、「破たん」としてみましょう。
日本やアメリカは、「自国通貨建ての国債を発行」しているので、原理的にデフォルト(債務不履行)は起きません。その国債を購入しているのが、日本人であれ、外国人であれ、極端な話、宇宙人でもです。
デフォルト(債務不履行)できるのは、①外貨建て債務の場合と、②外資に対してのみです。
過去のアルゼンチン、ロシアがデフォルト(債務不履行)にしたのは、①外貨建て債務②外国資本(外資)に対してと、①外貨建て債務です。

<外資の場合>
アルゼンチンの場合、「ドル建てアルゼンチン債」を発行しました。アルゼンチンに対する信用がなくなると、アルゼンチンペソが暴落します。ドル建てで「100万ドル」と書いてある債券は、ペソが暴落しようと「100万ドル」返さなければいけません。ペソがドルに対して半分の価値になれば(ペソ暴落)、アルゼンチンは、「2倍」の額になった債務を返済しなければなりません。
同国は、1ドル=1ペソの事実上の固定相場制を採用していました。しかし、ドル高になり、隣国ブラジル(レアル安)の経済は発展しました。アルゼンチン経済は不況になり、外資が逃げ出します(ドル買いペソ売り)。同国中央銀行は、ドルを供給し続けますが、足りなくなります。IMF融資もなくなり、結局デフォルト宣言しました。
ロシアの場合も同じです。アジア通貨危機が新興国に波及し、外資に頼っていた同国経済を直撃しました。同国銀行は、同国国債を担保に外資に資本を提供してもらっていたのです。その外資が一斉に逃げだします(ドル買いルーブル売り)。IMFやアメリカがドルを緊急融資しますが、足りません。ついに同国中央銀行はデフォルトを宣言します。ドル高ルーブル暴落です。
<自国通貨建ての場合>
日本円の国債を1000兆円発行しているとします。1ドル=100円なら、10兆ドルです。
小松左京の映画ばりに、日本列島の太平洋側が、地震で、すべて海に沈没します。残ったのは、沖縄と、新潟県側一部と、北海道だけです。おまけに、ゴジラが、札幌と、新潟と、那覇の3都市を襲い、これらの中心都市も、焼け野原になります。政府はかろうじて北海道稚内市で執務を行っています。さて、日本円は高くなりますか?暴落しますか?
答え=暴落するです。日本の円を持とうという人は、皆無です。日本に石油を輸出しても、まともに払ってもらえるかどうか、わかりません。おそらく、石油業者は、「円」ではなく、「ドルで支払え」もしくは、「ゴールドで支払え」と言ってくるでしょう。1ドル=100円が、1ドル=100万円くらいになったとします。
さて日本円額面「1000兆円」の国債はどうなるでしょうか。1ドル=100万円になったら、10兆ドルもらえるはずだったのが、10億ドル分にしかなりません。さらに、日本円国債を、市場で売買しようとしても、誰一人買ってくれません。価値がないからです。ただの紙切れになります。「円」通貨もです。だれも、持ってくれません。国債も円通貨もただの紙切れになります。
「アメリカドル建て国債」も同じです。アメリカ大陸が、映画「インディペンデンス・デイ」のように、宇宙人に襲われ、壊滅しました。「アメリカ国債」「アメリカドル」は紙くずになります。だれも、買って(持って)くれません。
自国通貨建ての国債をいくら発行しても、国はつぶれないのです。その国の通貨・国債が紙切れになるだけです。だから、「国はいくら国債を発行しても倒産することはないと考えて良いのでしょうか。結論から言えばそのとおりです。現代の管理通貨制の下では自国通貨建ての国債をいくら発行してもそれが理由で国が倒産することはありません岩村充 早稲田大学教授 『貨幣の経済学』集英社 2008 p153 」となります。倒産やデフォルトではなく、「国債」「通貨」が紙切れになって終わりなのです。
日本は貯蓄超過なので、余ったお金が国債を購入しているのです。

この図で、Tを6兆円分引き上げれば、財政赤字(G-T)はゼロです。「財政破綻」なんか、原理的にありえません。この6兆円すら「まかなえない」、その時こそ、「財政破綻」です。

大竹文雄(大阪大学教授)『ニッポン復活の10年』日本経済新聞H22.1.9
日本の財政赤字が突出して大きいのは政府の規模が大きいからではなく,税収があまりにも少ないため。国債相場が暴落しないのは,消費税率などを国際標準に合わせてゆけば十分に税収があがるという合意が市場関係者にあるからだ。
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