中原圭介 『お金の神様』週刊現代22年4月3日号 その3
中原圭介『アセットベストパートナーズ』金融資産運用部ディレクター『お金の神様』週刊現代22年4月3日号
質問 高成長を続ける中国に「死角」はありませんか。
アメリカは借金してモノを買い、消費生活を楽しむ。モノを売った中国や日本は、儲けたお金でアメリカ国債を買い支える。こうして回っていたのが、サブプライムショックまでの世界経済でした。
…アメリカにはモノを買う余裕がなく、むしろ自国製の商品を諸外国に買ってほしい。貿易収支のグラフを見ても、近年、輸出と輸入の差が縮まったのがわかる。外需主導で経済の立て直しをはかっているのです。オバマ大統領は「5年間で輸出倍増」計画を打ち出した。5年で倍増するためには、毎年15%ずつ輸出を増やさないといけない。かなり無理のある数字…。
中国は人民元を事実上、ドルに連動させています。結果「不自然に安い」レートに誘導…。これが対米輸出の武器となり、巨額の対米黒字を生んだ。
いくら、「エコノミスト」といっても、経済学のバックボーンがないと、誤った記事を書いてしまいます。これは、アメリカの一般大衆と、その意見を尊重せざるをえない、議員と同じレベルです。2010-04-01記事参照
日経H22.3.17
モノの輸出入という、貿易の片面だけをとらえ、それですべてを説明しようとするので、おかしな記述になります。下線部記述は、「モノ」だけに視点を奪われていることを示しています。
<貿易黒字=資本赤字>
H22.4.8『米中鳴動』日経
…オバマ大統領は3月11日、人民元が割安に押さえられているとの国内の声を受け、「市場に基づいたレートへの移行」を主張。3日後に中国の温家宝首相は「元相場は過小評価ではない」と反論した。
…中国を「為替操作国」と認めれば、米政府は中国への高関税率などの制裁に動く。中国の報復も予想され、険悪化に逆戻りしかねない。
…米国にとって最大のリスクは心臓部である財政に潜む。1月時点で中国の米国債の保有残高は8890億ドルと国別の首位。1466億ドルの香港を合わせれば1兆ドルをゆうに越す。最大の買い手である中国の面目をつぶせば市場は「米国債の入札に不安が増す」と危ぶむ。
…一方、中国政府の高官は匿名を条件に「米国債は売るに売れない」事情を明かす。元相場は1ドル=、8元台半ばにあった2005年に比べ、今は同6.83元前後までほぼ2割切り上がった。ドル建ての資産の目減りを招く元高・ドル安で中国が持つ米国債には「巨額の評価損が発生している」という。米国の急所を押さえても容易に動けない中国は「ドルのわな」にはまった姿に移る。

貿易黒字=資本赤字です。
黒字と赤字は「コインの裏表」勝ったとか、負けたとか、得したとか、損したという話ではありません。
中国は、貿易黒字を出していますが、それは、同額分の外国のカネを増やしていることです。対米黒字=ドル資産増加です。ただドルを持っていても仕方ないので、アメリカ国債などに投資します。
元は、もともと、元高傾向でした。そして、元の相場を維持(元安)するために、中国中央銀行は、大規模なドル買い元売りをしています。
ところが、そのドル資産は、すでに目減りしています。過去の元安時に購入したドル資産はすでに、2割も目減りしているのです。
元相場は1ドル=、8元台半ばにあった2005年に比べ、今は同6.83元前後までほぼ2割切り上がった。ドル建ての資産の目減りを招く元高・ドル安で中国が持つ米国債には「巨額の評価損が発生している」
1ドル=8元の時に買った米国債100万ドル=800万元は、1ドル=6元になると、600万元にしかなりません。元には換金できないのです。
昔1ドル=250円だった時に買った米国債100万ドル=2億5千万円は、1ドル=125円になると、1億25百万円になったのと同じです。(別に、円に還元せず、ドル資産のまま運用すれば、問題はないのですが・・・実際にはそうします)
今後さらに元高になると、表面上ドル資産=元資産はさらに目減りします。
このように、「中国対米貿易黒字=ドル資産増加」のことです。もともと、「貿易黒字は国内に還流しないカネ」なのです。「貿易黒字はもうけ」ではありません。
「中国は人民元を事実上、ドルに連動させています。結果「不自然に安い」レートに誘導…。これが対米輸出の武器となり、巨額の対米黒字を生んだ。」
武器でもなんでもありません。自分に跳ね返っているだけです。
① 中国の元安による対米貿易黒字=ドル資産増
② 米国のドル高による対中貿易赤字=中国にドル資産を購入してもらうこと
③ 元高=ドル資産目減り
④ ドル安=アメリカ債務減
「貿易黒字を出す中国は、貿易で勝つ」は神話なのです。
質問 高成長を続ける中国に「死角」はありませんか。
アメリカは借金してモノを買い、消費生活を楽しむ。モノを売った中国や日本は、儲けたお金でアメリカ国債を買い支える。こうして回っていたのが、サブプライムショックまでの世界経済でした。
…アメリカにはモノを買う余裕がなく、むしろ自国製の商品を諸外国に買ってほしい。貿易収支のグラフを見ても、近年、輸出と輸入の差が縮まったのがわかる。外需主導で経済の立て直しをはかっているのです。オバマ大統領は「5年間で輸出倍増」計画を打ち出した。5年で倍増するためには、毎年15%ずつ輸出を増やさないといけない。かなり無理のある数字…。
中国は人民元を事実上、ドルに連動させています。結果「不自然に安い」レートに誘導…。これが対米輸出の武器となり、巨額の対米黒字を生んだ。
いくら、「エコノミスト」といっても、経済学のバックボーンがないと、誤った記事を書いてしまいます。これは、アメリカの一般大衆と、その意見を尊重せざるをえない、議員と同じレベルです。2010-04-01記事参照
日経H22.3.17

モノの輸出入という、貿易の片面だけをとらえ、それですべてを説明しようとするので、おかしな記述になります。下線部記述は、「モノ」だけに視点を奪われていることを示しています。
<貿易黒字=資本赤字>
H22.4.8『米中鳴動』日経
…オバマ大統領は3月11日、人民元が割安に押さえられているとの国内の声を受け、「市場に基づいたレートへの移行」を主張。3日後に中国の温家宝首相は「元相場は過小評価ではない」と反論した。
…中国を「為替操作国」と認めれば、米政府は中国への高関税率などの制裁に動く。中国の報復も予想され、険悪化に逆戻りしかねない。
…米国にとって最大のリスクは心臓部である財政に潜む。1月時点で中国の米国債の保有残高は8890億ドルと国別の首位。1466億ドルの香港を合わせれば1兆ドルをゆうに越す。最大の買い手である中国の面目をつぶせば市場は「米国債の入札に不安が増す」と危ぶむ。
…一方、中国政府の高官は匿名を条件に「米国債は売るに売れない」事情を明かす。元相場は1ドル=、8元台半ばにあった2005年に比べ、今は同6.83元前後までほぼ2割切り上がった。ドル建ての資産の目減りを招く元高・ドル安で中国が持つ米国債には「巨額の評価損が発生している」という。米国の急所を押さえても容易に動けない中国は「ドルのわな」にはまった姿に移る。

貿易黒字=資本赤字です。
黒字と赤字は「コインの裏表」勝ったとか、負けたとか、得したとか、損したという話ではありません。
中国は、貿易黒字を出していますが、それは、同額分の外国のカネを増やしていることです。対米黒字=ドル資産増加です。ただドルを持っていても仕方ないので、アメリカ国債などに投資します。
元は、もともと、元高傾向でした。そして、元の相場を維持(元安)するために、中国中央銀行は、大規模なドル買い元売りをしています。
ところが、そのドル資産は、すでに目減りしています。過去の元安時に購入したドル資産はすでに、2割も目減りしているのです。
元相場は1ドル=、8元台半ばにあった2005年に比べ、今は同6.83元前後までほぼ2割切り上がった。ドル建ての資産の目減りを招く元高・ドル安で中国が持つ米国債には「巨額の評価損が発生している」
1ドル=8元の時に買った米国債100万ドル=800万元は、1ドル=6元になると、600万元にしかなりません。元には換金できないのです。
昔1ドル=250円だった時に買った米国債100万ドル=2億5千万円は、1ドル=125円になると、1億25百万円になったのと同じです。(別に、円に還元せず、ドル資産のまま運用すれば、問題はないのですが・・・実際にはそうします)
今後さらに元高になると、表面上ドル資産=元資産はさらに目減りします。
このように、「中国対米貿易黒字=ドル資産増加」のことです。もともと、「貿易黒字は国内に還流しないカネ」なのです。「貿易黒字はもうけ」ではありません。
「中国は人民元を事実上、ドルに連動させています。結果「不自然に安い」レートに誘導…。これが対米輸出の武器となり、巨額の対米黒字を生んだ。」
武器でもなんでもありません。自分に跳ね返っているだけです。
① 中国の元安による対米貿易黒字=ドル資産増
② 米国のドル高による対中貿易赤字=中国にドル資産を購入してもらうこと
③ 元高=ドル資産目減り
④ ドル安=アメリカ債務減
「貿易黒字を出す中国は、貿易で勝つ」は神話なのです。
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