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新聞の間違い 中前忠 『経済教室:デフレ前提の成長戦略を』日経22年3月5日

<新聞の間違い 中前忠 『経済教室:デフレ前提の成長戦略を』日経22年3月5日 >

…デフレ脱却を目指すには、2つの問題がある。一つはデフレは国際要因が大きく、1国の経済政策では制御できないことだ。自由貿易の下では先進国が賃金の低下傾向を避けられないし、円高是正も1国で決められる問題ではない。もう一つは「デフレは悪」と決めつけて政治的決定を行うことの多さである。日銀の生活意識に関するアンケート調査では…「物価下落は6割近くがどちらかといえば好ましい」と回答している。これを消費者の錯覚と決め付けるべきではないだろう。

…問題の設定を、デフレを克服するという視点から、デフレの下でいかに雇用を増やし、生産性を引き下げ、国民生活の水準を高めていくか、に変えていく方が妥当であろう。
…デフレだからダメなのではなくて、デフレの中でも効率化を図れば、企業収益は増え、賃金が上昇し、税収も増えるのである。…必要な施策は財政支出を減らし、非製造業を中心に民間経済を拡大することであり、金融の過剰を削減し、金利機能が働く水準まで金利の正常化を図ることである。金利の上昇は過剰の整備を促進するための最大の手段である…。金利機能を復活させることが何よりも重要なのである。


<デフレとは>

 デフレは、物価が下がる=お金の価値が上がる事です。1000万円だった家が、翌年950万に下がるとします。このばあい、お金の価値は、50÷950×100=5.26%アップします。つまり、金利が5.26%ついたのと同じ=1000万円が1年後に1052万6千円になったことと同じなのです。このような状態の中、名目金利をいくら下げても(たとえば限りなく0%に近く)、実質金利は5%以上もついてしまうのです。金利政策は無効になります。「0金利」政策を採用しても、物価が1%下落したら、実質金利は1%ついてしまうのです。
 お金をただ持っているだけで、金利がつくのです。1年待てば、「物価が下がる(デフレ)」というのは、こういうことです。これなら、誰もお金を使おうとはしません。黙っていても、高金利がつくのですから。これがデフレです。「良いデフレ」など、あり得ません。

グラフ・参考文献 岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009p88-89
デフレ・企業倒産岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009p88-89.jpg
デフレ 失業率 岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009p88-89.jpg

 下のグラフはフィリップス曲線といい、「インフレと失業率はトレード・オフ(どちらかが高くなればどちらかが低くなる)になる」という関係を示します。
 1970年代の「不況かつインフレ(スタグフレーション)」時期には、成立しなかったので、経済学の一線からは消えました。しかし、日本では「成立」しています

(1)デフレは国際要因が大きく、1国の経済政策では制御できない。

 先進国の中で、「日本だけがデフレ」です。なぜでしょうか。また、日本1国の経済政策では、制御できないのでしょうか。世界中の国が、中国からの輸入を増やしたのに、日本だけがデフレでした。岩田規久生『景気ってなんだろう』ちくまプリマー新書 2008 p157

 どうして、日本と同じように、あるいは日本以上に中国・ASEAN製品を輸入しているアメリカやEUが、インフレだったのでしょうか。中井浩之 埼玉大学客員教授 グローバル化経済の転換点 中公新書 2009 p166-167

グラフ 『週間ダイヤモンド』 2010.3.27 p49
デフレ

 このように、デフレの原因は、「輸入物価下落」ではありません。ある製品の値段が下がっても、それは、「相対的な物価の下落」ですから、その分他のモノの購入にカネが回ります。すべてのモノの物価水準「絶対価格」を下げる=(これをデフレという)ものではありません

(2)デフレの下でいかに雇用を増やし、生産性を引き上げ、国民生活の水準を高めていくか

 政策金利をゼロにしても、物価が1.5%下落すると、実質金利は1.5%になります。デフレは金融政策を無効にしますが、「他方で金利機能を復活させることが何よりも重要なのである」とあります。両者は両立しません
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