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三國陽夫 その3 『黒字亡国から抜け出そう』文藝春秋2010.2月号

三國陽夫『黒字亡国から抜け出そう』文藝春秋2010.2月号

 いま日本の目の前には大きなチャンスが転がっています。アメリカ発の金融恐慌によって、世界各国が経済構造の転換を余儀なくされた中で、日本も従来の構造に固執すれば亡国の道を歩き出しかねません。

…キーワードは、「黒字亡国」からの脱却です。…日本はアメリカへ輸出した代金を回収してないのに等しい、という現実です。…アメリカは日本から無限にタダで買い物ができる仕組みができている。その結果、巨額の貿易黒字がまわりまわって日本を苦しめている―こうした仕組みを、私は「黒字亡国」と名付けました。

…日本のメーカーは自動車をアメリカに輸出すると、アメリカの消費者はドルで代金を支払います。…メーカーは…日本の銀行にドルを売って円を手に入れます。…ドルを買った日本の金融機関は、為替市場でドルを売って、円に換えます。ところが、日本は1970年代から恒常的に輸出が輸入を上回るようになったため、市場では、輸入のために払った円より輸出して受け取ったドルの方が多く出回っています。量の少ない円と、より多いドルを交換しようとすれば、必ず円高になってしまいます。

金融機関は、円に替えずそのままドルとしてもち続けます。…アメリカへの輸出を減らしたくない日本は円安を維持するためドルを持ち続けた。
…その結果、累積した日本の海外の純資産は2008年末の段階で226兆円にも達するものの,大半がドル建てです。この黒字分を円に変えず、ドルのまま放置しておくのはいわば掛けで売った品物の代金をそのまま取引先に預けているようなものです。

日本はアメリカに226兆円分の売掛け金をドルのまま置いているようなもので、本来入ってくるはずの円が供給されず、国内の資金が詰まり気味になり、デフレ圧力がかかってしまう。

「逆マーシャル・プラン」の決断を
…債権放棄は第二次大戦後です。アメリカはイギリスへ武器・弾薬などの軍需物資を輸出しましたが、戦後その売掛け金を回収しなかったのです。そればかりか「マーシャル・プラン」としてヨーロッパの復興支援に資金を贈与し、同時に戦争で荒廃したヨーロッパにアメリカ設備材を提供しました。…今度は逆にアメリカが日本に債権放棄を求めてくるド可能性は否定できません。…日本は拒否することができるのか。200兆円を超える多額の債権を回収すること…最初に対象になるのは、政府間の債務、すなわち日本政府が所有している外貨準備金約1兆700億ドル(100兆円)です。

…今度は日本が発想の転換を行う番です。ドル債権をいつまでも抱え込むのではなく…不良債権化したドル債権を国としていかに上手に「損切り」するかを真剣に考える時期に来たのです。

…結論から言えば、日本経済もアメリカ経済同様にもパラダイム・チェンジが必要で、今こそ外需主導型をやめて内需型へ転換すべきです。…例えば、ゼロ金利だから銀行に預けてもしょうがないとタンス預金になっていた30兆円もの個人資産が銀行に集まれば、資金流動性は大きく回復します
…これはまさに脱「黒字亡国」です。ドル債権の損切りも辞さず「強い円」で本格的な内需拡大を図ることで、日本人の生活を豊かでゆとりのあるものにしていくべく大胆な変革をするべきではないでしょうか。



<誤解その3>

…結論から言えば、日本経済もアメリカ経済同様にもパラダイム・チェンジが必要で、今こそ外需主導型をやめて内需型へ転換すべきです。…例えば、ゼロ金利だから銀行に預けてもしょうがないとタンス預金になっていた30兆円もの個人資産が銀行に集まれば、資金流動性は大きく回復します。
…これはまさに脱「黒字亡国」です。ドル債権の損切りも辞さず「強い円」で本格的な内需拡大を図ることで、日本人の生活を豊かでゆとりのあるものにしていくべく大胆な変革をするべきではないでしょうか。

「…例えば、ゼロ金利だから銀行に預けてもしょうがないとタンス預金になっていた30兆円もの個人資産が銀行に集まれば、資金流動性は大きく回復」
という部分です。前回も言ったように、日本は、資金流動性がありすぎてありすぎてこまっている状況です。

『量的緩和でもマネー回らず』H22.1.31
貯蓄超過 資金余剰

…実体経済への効果は見えず、大量のマネーは短期金融市場にとどまったままだ。昨年12月の全国銀行の貸出残高は4年ぶりに減少に転じた。…「肝心の設備投資意欲が鈍い」(日銀幹部)という

 せっかく金融緩和しても、そのカネが、銀行の当座預金に積み上がり、市中に出回っていかないのです。

「日本経済もアメリカ経済同様にもパラダイム・チェンジが必要で、今こそ外需主導型をやめて内需型へ転換すべきです」

日本は、とっくに内需型です。外需主導なるものが、そもそも神話です。
内需・外需

この棒グラフで、上のほうで、かぶさっているように見える赤いフタ。これが、「貿易立国?の正体=貿易黒字」です。

この10年間で、日本の外需(貿易黒字)のGDPに占める割合が一番多かったのは、2004年の1.93%です。同年の外需(貿易黒字)額は9兆6,260億円、GDPは498兆3,284億円(内閣府データ)です。
 リーマン・ショックに端を発した、世界的大不況に飲み込まれた2008年にいたっては、わずか0.145%です(外需7,356億円、GDP 505兆1,119億円 同)。

内需99.855% 外需0.145%

 この赤いフタ部分だけを抽出すると、下記のグラフになります。「日本は8兆円もの黒字を出している!」となります。
貿易黒字 1997~

 比較対象がないから、大きな数字に見えますが、「貿易黒字=1.67%」という割合は、体重60キロの人にとって、1002グラム相当です。無理すれば、2日で、ダイエットできる数値です。このような数字は、日本経済にとってほとんど「誤差」に均しく、この貿易黒字を「減らせ」だの、「内需拡大を」だのと言っているのは、体重60キロの人の100グラムについて、「あーだこーだ」と言っているに過ぎません。日本は、巨大な「内需」の国なのです。

 日本は、貿易で伸びてきたのではなく、内需拡大で経済成長した国なのです。

高度成長期の「内需・外需」
内需と外需

 高度成長も同じです。日本は、「内需拡大」したのです。「赤いふた=貿易黒字」どころか、1961年と1963年は、「貿易赤字」です。しかし、GNP(当時)は拡大しています。簡単に言うと、われわれの給与は「貿易赤字」の年も拡大しているのです。
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