<新聞を解説 誠児『大機小機 正しい成長戦略』H22.2.24>
<新聞を解説 誠児『正しい成長戦略』日経H22.2.24>
番号は筆者
リーマン・ショック後の世界的な景気後退のなかで、最も厳しい落ち込みに直面したのは…日本だった。…日本の輸出の受けたダメージが最も大きかったためだ。この点に対する反省から、今後は内需主導型の経済成長路線に転換していく必要があるとの声が強まっている。
…医療、介護、保育を含む教育などの分野では、…既得権益を保護する参入規制など様々な制度的枠組みが改革され、自由な競争が行われれば、潜在需要に見合った供給が実現し、主としてサービス消費拡大のかたちで個人消費が増大することが期待される。
しかし…人□減少社会…日本の将来を考えると、個人消費中心の成長戦略には限界がある。成長著しい中国などアジア諸国の需要を取り込んで自らの成長の糧とする…。アジア向け中心に輸出の一層の拡大を進め、これを経済成長の柱とする「新たな輸出立国」が今後の成長戦略の王道といえよう。①日本経済の輸出依存度は例えば欧州主要国と比べて相当に低く、引き上げる余地は十分にある。
ただし、このように輸出を成長戦前の柱とするのは、 ②「外需主導経済」とすることを意味しない。実際問題として、日本が輸出をさらに大きく伸ばしていくためには、アジアをはじめ世界に対し日本の市場を大きく開放し、農産物も含め日本の輸入を大幅に増やすことが必須の前提条件となる。
③…結局、輸出が大きく増加すると同時に、これにけん引されて設備投資や家計の消費など内需も拡大するが、一方で輸入も大きく増加するため「外需依存度」はそれほど上昇しない…。
日本がこれから採るべき経済成長戦略を整理すれば、「規制改革によるサービス消費拡大」「輸入大国化」「輸出依存度上昇」の3つのキーワードに集約される。鳩山由紀夫政権が誤りのない戦略を選択し、実践することを期待したい。
経済学的に、正しい論文です。
①日本経済の輸出依存度
外国と比較してみましょう。輸出額のGDPに対する比率です。数字が大きいほど、「貿易立国」となります。
2007年 輸出額/GDP比率 データ出典 JETRO 内閣府HP
日本よりも、工業製品を輸出していないこと確実!なイギリスでさえ、日本の比率より上です。輸出依存度が高いのは、中国や韓国や、ドイツです。
②外需依存度は極小
日本の貿易黒字(輸出-輸入)が、日本のGDP(国内総生産=GDI)に占める割合は、2007年で、1.67%です。
数字出典 内閣府HP http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h19-kaku/21annual-report-j2.html
内需98.33% 外需1.67%
実際の数値グラフです。出典は同じ 実質国内総生産の値を使用

この棒グラフで、上のほうで、かぶさっているように見える赤いフタ。これが、「貿易黒字=外需」です。こんな数値で、「外需に依存する日本経済」と主張できるわけはありません。日本は巨大な内需の国です。
この赤いフタ部分だけを抽出すると、下記のグラフになります。

「日本は8兆円もの黒字を出している!」となります。比較対象がないから、大きな数字に見えますが、「貿易黒字=1.67%」という割合は、体重60キロの人にとって、1002グラム相当です。無理すれば、2日で、ダイエットできる数値です。このような数字は、日本経済にとってほとんど「下線文誤差」に均しく、この貿易黒字を「減らせ」だの、「内需拡大を」だのと言っているのは、体重60キロの人の100グラムについて、「あーだこーだ」と言っているに過ぎません。日本は、巨大な「内需」の国なのです。
なぜ、輸出が増えるのに、「貿易黒字=外需」は増えないのでしょうか?
③輸出増=輸入増
③…結局、輸出が大きく増加すると同時に、これにけん引されて設備投資や家計の消費など内需も拡大するが、一方で輸入も大きく増加するため「外需依存度」はそれほど上昇しない
リカード比較生産費説で示したとおりです。(このブログ カテゴリー リカード-14 輸出増=輸入増 参照)
輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。
図50 浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309

棒グラフの左側は輸出,右側は輸入
日本の貿易額は,年を追って拡大してきました。その際,「輸出の拡大と輸入の拡大」はセットになっていることがわかりますか?「輸出を拡大する=特化する」ということは,「比較劣位産業を縮小しなければばらない=輸入を拡大する」ことなのです。日本は,繊維製品(当初),鉄鋼,造船,家庭電化製品,自動車に特化する一方,繊維製品・石油・鉄鉱石・石炭・農業産品など,劣位産業を縮小し,輸入を拡大してきたのです。
日経H22.2.25

輸出額が増えると、必ず輸入額も増えるのです。だから、日本の「輸出額-輸入額=貿易黒字=外需」も、極小なのです。
実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259

世界の中で比較しても同様です。「一人あたり輸出額の大きい国は,輸入額も大きい,輸出額が小さければ,輸入額も小さい」という相関関係がみてとれると思います。
番号は筆者
リーマン・ショック後の世界的な景気後退のなかで、最も厳しい落ち込みに直面したのは…日本だった。…日本の輸出の受けたダメージが最も大きかったためだ。この点に対する反省から、今後は内需主導型の経済成長路線に転換していく必要があるとの声が強まっている。
…医療、介護、保育を含む教育などの分野では、…既得権益を保護する参入規制など様々な制度的枠組みが改革され、自由な競争が行われれば、潜在需要に見合った供給が実現し、主としてサービス消費拡大のかたちで個人消費が増大することが期待される。
しかし…人□減少社会…日本の将来を考えると、個人消費中心の成長戦略には限界がある。成長著しい中国などアジア諸国の需要を取り込んで自らの成長の糧とする…。アジア向け中心に輸出の一層の拡大を進め、これを経済成長の柱とする「新たな輸出立国」が今後の成長戦略の王道といえよう。①日本経済の輸出依存度は例えば欧州主要国と比べて相当に低く、引き上げる余地は十分にある。
ただし、このように輸出を成長戦前の柱とするのは、 ②「外需主導経済」とすることを意味しない。実際問題として、日本が輸出をさらに大きく伸ばしていくためには、アジアをはじめ世界に対し日本の市場を大きく開放し、農産物も含め日本の輸入を大幅に増やすことが必須の前提条件となる。
③…結局、輸出が大きく増加すると同時に、これにけん引されて設備投資や家計の消費など内需も拡大するが、一方で輸入も大きく増加するため「外需依存度」はそれほど上昇しない…。
日本がこれから採るべき経済成長戦略を整理すれば、「規制改革によるサービス消費拡大」「輸入大国化」「輸出依存度上昇」の3つのキーワードに集約される。鳩山由紀夫政権が誤りのない戦略を選択し、実践することを期待したい。
経済学的に、正しい論文です。
①日本経済の輸出依存度
外国と比較してみましょう。輸出額のGDPに対する比率です。数字が大きいほど、「貿易立国」となります。
2007年 輸出額/GDP比率 データ出典 JETRO 内閣府HP

日本よりも、工業製品を輸出していないこと確実!なイギリスでさえ、日本の比率より上です。輸出依存度が高いのは、中国や韓国や、ドイツです。
②外需依存度は極小
日本の貿易黒字(輸出-輸入)が、日本のGDP(国内総生産=GDI)に占める割合は、2007年で、1.67%です。
数字出典 内閣府HP http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h19-kaku/21annual-report-j2.html
内需98.33% 外需1.67%
実際の数値グラフです。出典は同じ 実質国内総生産の値を使用

この棒グラフで、上のほうで、かぶさっているように見える赤いフタ。これが、「貿易黒字=外需」です。こんな数値で、「外需に依存する日本経済」と主張できるわけはありません。日本は巨大な内需の国です。
この赤いフタ部分だけを抽出すると、下記のグラフになります。

「日本は8兆円もの黒字を出している!」となります。比較対象がないから、大きな数字に見えますが、「貿易黒字=1.67%」という割合は、体重60キロの人にとって、1002グラム相当です。無理すれば、2日で、ダイエットできる数値です。このような数字は、日本経済にとってほとんど「下線文誤差」に均しく、この貿易黒字を「減らせ」だの、「内需拡大を」だのと言っているのは、体重60キロの人の100グラムについて、「あーだこーだ」と言っているに過ぎません。日本は、巨大な「内需」の国なのです。
なぜ、輸出が増えるのに、「貿易黒字=外需」は増えないのでしょうか?
③輸出増=輸入増
③…結局、輸出が大きく増加すると同時に、これにけん引されて設備投資や家計の消費など内需も拡大するが、一方で輸入も大きく増加するため「外需依存度」はそれほど上昇しない
リカード比較生産費説で示したとおりです。(このブログ カテゴリー リカード-14 輸出増=輸入増 参照)
輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。
図50 浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309

棒グラフの左側は輸出,右側は輸入
日本の貿易額は,年を追って拡大してきました。その際,「輸出の拡大と輸入の拡大」はセットになっていることがわかりますか?「輸出を拡大する=特化する」ということは,「比較劣位産業を縮小しなければばらない=輸入を拡大する」ことなのです。日本は,繊維製品(当初),鉄鋼,造船,家庭電化製品,自動車に特化する一方,繊維製品・石油・鉄鉱石・石炭・農業産品など,劣位産業を縮小し,輸入を拡大してきたのです。
日経H22.2.25

輸出額が増えると、必ず輸入額も増えるのです。だから、日本の「輸出額-輸入額=貿易黒字=外需」も、極小なのです。
実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259

世界の中で比較しても同様です。「一人あたり輸出額の大きい国は,輸入額も大きい,輸出額が小さければ,輸入額も小さい」という相関関係がみてとれると思います。
スポンサーサイト
theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育