正直知哉 その3 ピムコジャパン マネージングディレクター 『政権 改めて論点を問う』日経H22.2.1

<質問をいただきました>
 外国資本に対するデフォルト(債務不履行) というのがいまいち具体的にわかりません。 なぜ自国通貨建てのギリシャがデフォルト可能なのでしょうか。
 そもそも、デフォルトというのは、「債務の返済が滞ったので、3ヶ月あるいは、6ヶ月、返済をストップします」「10年返済を約束していましたが、もっと返済期間を延ばしてください」「利率を見直してください」「債務の一部を放棄してください」というものです。国や自治体のデフォルトというのは、借金を踏み倒すことではありません。

 「日本の中の夕張と、ユーロの中のギリシャ」は同じです。中央銀行も無く、財政拡大しか、地域の経済を活性化する方法はありません。
 いずれも、放漫経営・粉飾決済で、「信用」がなくなったのです。ギリシャの場合、5月に借り換え債や、繰り延べ債を発行しますが、それが順調に売れるかどうかが懸念されています。ドルやポンドや、ユーロ圏のほかの国は、ギリシャから、資本を引き上げています。誰も買ってくれなかったら、「デフォルト」=一時返済停止になります。その場合、IMFや、欧州中央銀行などから、緊急融資を引き出します。ですが、IMFも欧州中央銀行も、「財政再建しろよ、増税しろよ、歳出削減しろよ」と迫ります。今は、そうなる前に、ユーロ圏の各国が「助けよう」としているところです。
 夕張の場合、「債務の繰り延べ」や「利率の引き下げ」を金融機関と協議しました。また、徹底した歳出削減で、保育所や学校をひとつにしたり、水道代や住民税の値上げ、事務手数料の値上げを行っています。そして、20年~25年で、債務を返済しようとしています。

 アルゼンチン・ロシアの場合は、為替相場の下落・外貨枯渇により、「デフォルト」しました。「外貨による返済を一時停止」したのです。 

 日本や、アメリカの場合、通貨がいくら下落しても、円やドルで返すだけです。円やドルの価値がなくなっても、円やドルで返すだけです。返してもらっても困ります(大損)ですが、日本もアメリカも、返せなくなることはありません。自国通貨建て債務=企業の株と同じで、その価格が伸縮するのです。外貨建て国債は、伸縮しません。企業の社債と同じです。

 このブログのリンク先「池田信夫ブログ」2010年01月13日 『国債についての迷信』http://ikedanobuo.livedoor.biz/?p=4で紹介されている、慶大教授 櫻川昌哉氏の「日本の財政が破綻する確率は99.91%」http://agora-web.jp/archives/790006.htmlというのは、「2006年骨太の方針の債務残高/GDP比を上回る場合」を「破綻」としているだけで、「%が増えれば、破綻」と定義しています。実際の「破綻=国家倒産」のことではありません。

正直知哉 その2 ピムコジャパン マネージングディレクター 『政権 改めて論点を問う』日経H22.2.1

…国が借金を返せなくなる「ソブリンリスク」が日本に及ぶことも?
「財政リスクが市場で非常に心配されているのは事実。だが、日本は対外純資産国で財政赤字を国内貯蓄で賄えている。デフレで日本の実質金利は潜在成長率より高く、いい投資機会がない限り企業の貯蓄はふえる。数年はこの構図が続き、デフォルト(債務不履行)を心配する状況ではない
…世界でもソブリンリスクが注目されています。
「需要追加策や資本注入で各国とも財政が悪化した。先進国では潜在成長率が低下し、税収増での財政再建がしにくくなった…」


間違い部分は、赤で示しました。

<自国通貨建て債務の場合、デフォルトはできない>

 日本やアメリカは、「自国通貨建ての国債を発行」しているので、原理的にデフォルト(債務不履行)は起きません。その国債を購入しているのが、日本人であれ、外国人であれ、極端な話、宇宙人でもです。

 デフォルト(債務不履行)できるのは、①外貨建て債務の場合と、②外資に対してのみです。
 過去のアルゼンチン、ロシアがデフォルト(債務不履行)にしたのは、①外貨建て債務②外国資本(外資)に対してと、①外貨建て債務です。
デフォルト.jpg

<日本は絶対にデフォルト(破綻)しない>

 日本の国債で、デフォルト・財政破綻は論理的にありません。それは、日本円発行の「日銀」が国債を購入しているからです。自国の通貨建て国債を、円の発行銀行が購入している場合、論理的に「破綻できない」のです。

 日銀や,「国債」を購入するとは,どういうことなのかを明らかにしましょう。
 まず,国債は,毎日市場で売買されています。新規国債(借換債含む)も連日のように売り出されています。日銀は,金融政策で,政策金利を低下させ,量的緩和を行う場合,「買いオペレーション」という手段を採用します。民間の金融機関が持っている国債などの債券を購入し,日銀券を当座預金に積み上げることです。

日銀 バランスシート
H19年度末 日銀HP

 日銀が金融政策で購入した国債は,日銀のバランス・シートではこのようになります。

 このように,日銀が国債を市場から購入(買いオペ)すれば,それは,日銀の「資産」になります。そしてその分,日銀券が発行されるわけです。国債購入を増やせば,市場に日銀券が出回ります(マネタリーベースを構成)。

 ということは,日銀が,資金量をコントロールしようと思えば,国債の残高(資産)を増減するしかないということです。逆にいえば,国債残高(資産)がなければ,銀行券は発行できないことになります。

 1947年に制定された「財政法第5条」によって,日銀が直接,新規発行国債を引き受けることは禁じられています(今から63年前です。当然,現代マクロ経済学による財政政策・金融政策など,なかった時代です)。ですが,いったん市場に出た国債を買い入れるのは問題がないとされ,現在では,世界の中央銀行共通の「貨幣供給の方法」になっています。

 このバランス・シートを見ると,私たちが使っているお札の信用は,国債によって支えられていることがわかります。

「金本位制」の時代は,その役割を果たしたのは「金(ゴールド)」でした。各国の通貨発行量が,各国の中央銀行の持つ「金(ゴールド)」によって規定されていたのが,1833年から1914年(イギリスの場合)まで続いた「金本位制」です。イギリスとともに世界中が採用し,第一次世界大戦までは,通貨発行のスタンダードな方法でした。

 各国は手持ちの金保有量に応じて貨幣を発行するので,勝手にたくさんの紙幣を刷って市中にばらまくということはできません。金の量=発行銀行券の量です。通貨の価値は安定することがわかります。

 1万円札の価値が安定しているから,コンビニや,スーパーでの買い物や,自動車・家・土地・絵画の購入まで安心してできます。その1万円札の価値を支えているのが,「国債」です。この役割を通貨価値の「アンカー(岩村充 早稲田大学教授 『貨幣の経済学』集英社 2008 p142~)」といいます。

 日銀の通貨発行が,国債を購入することによって行われている場合,財政を破綻させることは原理的にありえません。「通貨の発行をしません」ということと同じだからです。通貨発行権は国家最大の権利の一つです。それを放棄することは,ありえません。通貨の独占発行権こそが,国家を国家ならしめている最大の要素です。この通貨を発行する際の,いわば「担保」が,現代国家では国債なのです。

「国債を維持することができない(デフォルト)=通貨を発行できない」ことです。国債を直接引き受けなくても、市場を通し間接的に購入し(買いオペ)、日銀は、「金融政策」を行っているのです。「国債=円通貨そのもの」なのです。

アンカー
マネーストックM3.JPG(2009年10月現在)

 通貨のアンカー
                 体制            アンカー
第一次世界大戦まで    金本位制        ゴールド
第二次大戦後      ブレトン/ウッズ体制  1ドル=360円の固定レート
1973年~          管理通貨制        国債


 マネタリーベースは、流通現金+日銀当座預金。日銀は、この合計額を直接コントロールでき、マネーストックに影響を及ぼす。
 マネーストックM3は、一般法人、個人、公共団体(除く国/金融機関)が保有する通貨量。「信用創造(準備預金以外の貸し出し)」によって、マネタリーベースの何倍もの通貨量が創造される。
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