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新聞を解説 『大機小機 デフレの処方せん』日経H21.12.19

新聞を解説 『大機小機 デフレの処方せん』日経H21.12.19

…現在のデフレは、輸出や設備投資の落ち込みによって需給ギャップが35兆円にまで拡大したのが主な要因だ。…即効性の高い公共事業の拡大が望まれる。財源を心配する声もあるが、長期金利は低位安定している。現時点で国債増発を恐れる必要はないはずだ。
…一方、日銀の金融緩和策も腰が引けている。…日本のインフレ率は、1998年以降、今日まで、ごく短い期間を除き、ほぼ一貫してゼロかマイナスである。名目の国内総生産(GDP)も、18年前の水準に逆戻りした。日銀の使命である「物価の安定」は確保されなかった訳であり、10年以上にわたるデフレについての責任は極めて重い。


日銀 物価上昇率0目標政策

<金融引き締め状態の日銀金利政策>

 現在、日銀の政策金利は0.1%です。しかし、名目上はともかく、実質金利は、すでに2%を超える「高金利」なのです。

 総務省が9月29日発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)(=11月21日時点で最新情報)は変動が大きい生鮮食品を除いたベースで100.1となり、前年同月に比べて2.4%低下しました。下落率は比較可能な1971年以降で過去最大となり、4カ月連続で記録を更新しました。
 CPIが前の年を下回るのは6カ月連続です。生鮮食品を除いた下落率が2%を超すのは2カ月連続です。食料とエネルギー価格の影響を除いた物価指数も前年同月比0.9%低下しています。

日経21.12.19物価 デフレ 日経21.12.19.jpg

 下落率=実質金利です。食糧・エネルギーを含めても1%、生鮮品を除くと2.5%の金利が付いている状態です。これが、デフレ=金融引き締め=不況加速の正体なのです。これを回避するには、非伝統的金融政策=量的緩和(グラフ参照)をするしか、ありません。

日経22.1.31日銀 当座預金残高 日経22.1.31.jpg

<資金が空回り>

『量的緩和でもマネー回らず』日経H22.1.31

 日銀は、昨年12月の臨時の金融政策決定会合で、国債などを担保に年0.1%の超低利で金融機関に3ヶ月間資金を貸し出す「新型オペ」を実施…。期間が1年以内の短期の金融取引では、金利が軒並み0.1%に収束しつつある。


これは「量的緩和政策」です。

現在
 1日 0.1% 政策金利 オーバーナイト物 
 1年 0.1% 今回の「量的緩和」 
 10年 1.3%台 国債10年物       

日本 政策金利 推移
各国 長期金利 推移

 日銀の政策金利(昔の公定歩合)は、0.1%、これは、銀行間で資金を融通するときの、期間1日の金利です。オーバーナイト物と言われます。これが、0.1%ですから、史上最低です。

 今回の量的緩和は、期間1年の金利を実質上0.1%にした、超破格の金融緩和です。はっきりいって、こんな低い調達コストで、おカネを借りれるのですから、おカネ借り放題といっても過言ではありません。にもかかわらず、そのおカネは、各銀行の口座にとどまり、民間企業に出回っていない(融資されていない)のです。

『量的緩和でもマネー回らず』H22.1.31
貯蓄超過 資金余剰

『量的緩和でもマネー回らず』日経H22.1.31
…実体経済への効果は見えず、大量のマネーは短期金融市場にとどまったままだ。昨年12月の全国銀行の貸出残高は4年ぶりに減少に転じた。…「肝心の設備投資意欲が鈍い」(日銀幹部)という

 不況ですから、企業は設備投資に積極的になれません。銀行は、貸し出すことのできないおカネを当座預金に積み上げ、結果、運用先がないので、「国債」を購入するという構図です。その結果、長期金利も史上最低の金利で安定しています。

 不況脱出しか、金利上昇の方法はありません。そのためには、「政府が思い切って、財政出動を」というのが、冒頭の新聞記事です。
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