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『不動産融資抑制 中国が指導強化表明-バブル懸念当局の姿勢鮮明に-』日経H22.1.28

『不動産融資抑制 中国が指導強化表明-バブル懸念当局の姿勢鮮明に-』日経H22.1.28

 中国銀行業監督管理委員会の劉明康主席は26日の会議で、不動産市場でバブル懸念が高まっていることを念頭に「不動産向け融資業務の監督と窓口指導を強化する」と表明した。不良債権が拡大するのを防ぐため、リスクの高い不動産向け融資を抑えるよう銀行への指導を徹底する考えを強調したものだ。
・・・過剰融資を抑えようとする当局の姿勢が鮮明になった。中国では金融緩和であふれたマネーが不動産市場に流れ込み、住宅価格の高騰を招いている。・・・やみくもな不動産融資の拡大が続けば不良債権問題が再燃しかねないとの懸念を表明した。


 一昨年のリーマンショック以降の不況に対し、中国は、財政出動と、金融緩和を行ってきました。加えて、元-ドルの為替を固定する政策をとっているため、中央銀行のドル買い・元売りは、過去最高値になり、ドル債権・外貨準備高は、世界最高額になっていることは、ご存知のとおりです。

 バブルは、不動産や、株など、資産価格が、物価のインフレ率を上回って伸びることです。
中国の中央銀行の場合、政策金利を動かすことではなく、「窓口規制」や、「準備預金」を操作する金融政策を採用しています(資本規制をしているため-元は中国国内でのみ、流通可能)。
 その「窓口規制」を発動したというニュースです。
 
以下は、H22.1.17に載せた内容です。

新聞を解説 

日経『中国輸出、回復緩やか 貿易黒字6年ぶり縮小確実に』『10月、減少率は改善』H21.11.12
 1から10月の貿易黒字は前年同期比27.2%の1592億3000万ドルとなった。輸出の落ち込みで、09年の貿易黒字が6年ぶりに縮小するのは確実な情勢。

『通貨供給量10月末29.4%増』H21.11.12

…中国人民銀行…は11日、10月末の通貨供給量(マネーサプライ)が前年同期比29.4%増だったと発表…。元相場を実勢より低めに維持するための元売り・ドル買い介入などの影響で、マネーサプライの膨張が続いている。

日経 21年10月17日
中国外貨準備21年10月17日

『人民元上昇 容認に含み』H21.11.12

元相場を低めに維持するための元売り・ドル買い介入は、国内の過剰流動性を膨らませ、将来のインフレや資産バブルを招きかねない。


 この状態は、「いつか来た道」です。ブレトン・ウッズ、スミソニアン体制下(1ドル=360円、1ドル=308円の固定相場制)、日本や西ドイツは、大変なインフレ状態になってしまいました。日本の場合、1973年には「狂乱物価」とも呼ばれました。 「固定相場制」を維持しようとすると、「貿易黒字」国は、インフレ状態になってしまうのです。

 貿易黒字の持続的な拡大
     ↓
マルクや円はマルク高・円高に
(日本・西独には、円とマルクでの支払になるため、ドルを売って、円・マルクを求める動きが活発化)
     ↓
 円高・マルク高に

 ところが、ブレトン・ウッズ、スミソニアン体制下、日本と西独は、固定相場を維持しなければなりません。日本の場合、1ドル=360(308)円の上下1%以内に固定するというものです。

 円が、360円の1%(356.3円)を上回って円高になったとします。これを防止するために、中央銀行(日銀)は、円売り・ドル買いを実施します(西独の場合マルク売り・ドル買い)。

 その結果、両国のマネーサプライ(貨幣量)が増大します。高度成長期(完全雇用状態に近い)にマネーサプライ(貨幣量)が増加すると、モノ・サービスの生産量<貨幣量となり、インフレになってしまうのです。マネーサプライ(貨幣量)増大は、上記新聞記事では、「国内の過剰流動性」という言葉で示されています。

参考文献 岩田規久男『国際金融入門』岩波新書2009 p208~

 日本は、1973年の2月14日から、変動相場制に移行するのですが、2月1日~9日の間に、日銀は、11~12億ドルのドル買い介入をしました。これは、当時の東京市場での9割を占める額です。

 ヨーロッパでも1973年3月2日には、固定相場制をやめるのですが、西独の中央銀行は3月1日午前中だけで、20億ドル、1日で25~27億ドルのドル買い介入をしました。未だかつてない、そして将来もないと言われた介入額です。

 これらの為替介入の結果、両国は「自国の貨幣供給量が管理不可能なほど増大する(同書p208)」結果になってしまったのです。「狂乱物価」ですね。

『通貨供給量10月末29.4%増』H21.11.12

…中国人民銀行…は11日。10月末の通貨供給量(マネーサプライ)が前年同期比29.4%増だったと発表…。元相場を実勢より低めに維持するための元売り・ドル買い介入などの影響で、マネーサプライの膨張が続いている。


 この状態は、固定相場制下の、日本・西ドイツと同じです。

 ブレトン・ウッズ(スミソニアン)体制=固定為替相場制のもとでは、アメリカ一国だけが、金融政策が自由です。一方、自国通貨をドルに固定する各国は、自由な金融政策がとれません。これを非対称性問題(N-1問題)といいます。Nは通貨数、-1の1はアメリカ、1だけが自由で、N-1国は不自由なのです。

<非対称性問題(N-1問題)>

①唯一アメリカのみが固定相場制維持の義務を持たない⇔介入するのは各国中央銀行のみ
   ↓
「国際収支天井」がない=マクロ経済運営に対外的制約がない

②(N-1)国
 好況期:輸出増→輸入増(原材料輸入増)
    ↓
  ドル需要増
    ↓
   ドル高
    ↓
 固定相場維持のため、円買い・ドル売り
    ↓
 マネー・サプライ減少=金融引き締め
    ↓
 経済成長率DOWN
    ↓
    不況


 アメリカは、完全雇用達成のために金融政策を継続できます。しかし、それ以外の国では、

 金融緩和→輸入拡大→貿易赤字拡大→自国通貨安➯固定相場維持義務(金融引き締め)
となるのです。

 また、アメリカが拡張的なケインズ政策採用するとします。金融緩和です。マネーサプライ増(ドル増)です。
 ドル供給が増えると、ドルが安くなります。固定相場制なので、各国中央銀行はドル買いをします。日本はドル買い・円売りです。
 円のマネーサプライ(供給量)は増えます。結果、モノ・サービスの生産量<貨幣量となり、インフレになってしまうのです。

 ということは、(N-1)国は、 「アメリカと同じインフレ率を維持しなければならない」ということになります。実際に、アメリカ国内のインフレは、世界的に波及したのです。

 ただし、アメリカのケインズ政策採用=アメリカのみならず、世界経済全体の拡張政策となりました。

 ところが、オイルショックにより、世界は「国民総生産減」になります。不況です。不況下でも、インフレ(物価高)です。不況下のインフレ=スタグフレーションを迎えたのです。

『中国 預金準備率上げ』日経H22.1.13

中国人民銀行が12日…預金準備率の引き上げに踏み切った…。…銀行の過剰融資が生み出したカネ余りを放置すれば、不動産などの資産バブルやインフレの懸念が一段と高まりかねないと判断…。


 預金準備率とは、金融機関が中央銀行にあずけることを義務付けられた準備金の、預金量に対する比率です。

「いつか来た道」ですね。
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