文藝春秋2009年12月号 浜矩子『国債バブルがはじける時』
<お知らせ:12月14日より、3週間入院します。13日以降の、記事の更新は、来年になります>
文藝春秋2009年12月号 浜矩子『国債バブルがはじける時』
この人は、同志社大学経済学部の教授です。
彼女は、金融危機後に、各国の政府と中央銀行が、提供している低金利政策や財政支出の拡大について、「国債バブル」という表現を使っています。それらの財政出動や金利政策は、恐慌からの脱出にはふさわしくないと考えています。
過剰な生産と投資を調整し、膨らみすぎた世界経済を縮小させることが出発点になる
というふうに主張しています。国債については、
政府が市場に投下している、巨額の札束の元手は、恐慌下で税収が減っているため、結局のところ国債という未来からの借金である。それは国債バブルでもある。
としています。
その「財政バブル」についてこのようにも解説しています。
2009年の主要な先進国の財政赤字の対 GDP 比は英国12.8%米国10.2%。日本7.8%フランス6.7%となり、先進7か国の財政赤字は、合計約220兆円と、2007年の4倍に達するという。しかも「財政バブル」を支えているのは未来からの借金である国債である。
この資金調達によって、造られた体制バブルが崩壊します。そのことを、彼女はドルの暴落だと述べています。
米国は世界から資金を引き寄せることができました。米国は、ルービンが財務長官に就任した選挙95年以降、
ドル高が進んで、さらに安く外国のものを変えるようになった。だが、外国からの借金も増える。それに対しては、世界から集まるカネの運用収益で対応すればいい。それがルービン流の考え方だった
と書きます。その結果、
強いドル政策がとられる以降金融経済が実体経済の規模を凌駕し、実体経済を振り回していた。世界の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率は1990年は1.77だったのが1995年に2.17、2000年には2.85、2007年には3.45まで膨れ上がった。これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
さて、彼女はこのように、金融が巨大化した状態がおかしい。そしてこれは、いつかははじけるというふうに考えています。
では、彼女はこのような経済に対してどのような対応をしたら良いと考えているのでしょうか。凡そ10ページの論文に対して、彼女がその処方せんを与えているのが最後の1ページです。カネとモノのベクトルが一体化したので、実体経済に戻せと主張しています。
「膨張しすぎた金融の世界をまともなサイズに縮小しなければいけない」と、イギリスの金融サービス機構長官アデア・ターナーの言葉を引用します。
要するに、彼女の考え方は、実体経済に基づいた経済規模に戻せということです。
<暴論その1>
「政府が市場に投下している、巨額の札束の元手は、恐慌下で税収が減っているため、結局のところ国債という未来からの借金である。それは国債バブルでもある。」
「2009年の主要な先進国の財政赤字の対 GDP 比は英国12.8%米国10.2%。日本7.8%フランス6.7%となり、先進7か国の財政赤字は、合計約220兆円と、2007年の4倍に達するという。しかも「財政バブル」を支えているのは未来からの借金である国債である。」
国債は、未来からの借金ではありません。その年のフロー、GDI(国内総所得)から資金が出ています。三面等価の図を見てみましょう。


正解は、「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。約846兆円のうち、94%=約795兆円は、我々日本人が持っているのです(単純計算です。国債を海外が購入している、6%という数値を使用しました)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。

貯蓄Sが、①企業の借金:I・②政府の借金:G-T・③外国の日本に対する借金:EX-IMの原資です。国民が、政府に貸しているのです。

世界で見ても同じです。世界各国のGDPをすべて足すと、その年の世界全体のGDPが算出されます。そうすると、(S-I)=(G-T)+(EX-IM)の式は、世界全体で成立します。その年のアメリカの国債も、イギリスの国債も、アルゼンチンの国債も、日本の国債も、すべて、その年のフロー(世界全体のGDP)で賄われることになります。
未来からの借金ではなく、その年の収入がその年の国債購入に充てられているのです。
世界全体の貯蓄額を、世界全体の企業が借りて投資に使えば、国債も、輸出入も生じません。不況=企業による投資減少(S-Iが増加)ですから、(G-T)は増えます。
週刊文春12月10日『864兆円赤字大国ニッポン』
「これまで国債が順調に消化されてきたのは事実です。ただ、このままでは借金返済はほぼ不可能です。国の信用が失われて、借金ができなくなれば、円安が急激に進み、購買力が無くなって、物価が急上昇するでしょう。その結果、ハイパーインフレとなり生活はめちゃくちゃになる。その時がいつ来るが、実は誰にもわからないのです。」みずほインベスターズ証券の落合昴二
投資銀行ロバーツ・ミタニ創業者の三谷秀樹氏「国債発行は次世代の所得を先取りすることで、恥と考えるべきです」
日経H21.12.7「企業に北風より太陽」
…このままでは子や孫が国の借金を返すために働く国になる。
このように、経済学を知らない、一般エコノミストが暴論をしゃべるのはともかく、経済学部の教授が、「国債は未来からの借金」というのは、許されることではありません。(でも、日経も、ずいぶん適当ですね)
赤色で示したことは、「原理上ありえない」のです。「太陽を西から上らせるようなもの」です。
<暴論その2>
過剰な生産と投資を調整し、膨らみすぎた世界経済を縮小させることが出発点になる
日本も、世界も、供給能力>需要です。
三面等価の図を見てみましょう。

総生産GDP=総所得GDI=総支出GDEです。総生産は、我々の所得の総額です。
総生産Y=C+I+G+EX(総需要)
C=家計が主体の消費(Consumption )、I=企業が主体の投資(Investment)、G=政府最終支出、EX=輸出を足します。
Y(つまりGDP)を伸ばす=C、I、G、EXのいずれかを増やすということです。
「内閣府の試算では、1~3月期の需要不足は45兆円(年率換算)」ということは、Y=C+I+G+EX-45です。
生産能力が、45兆円分、余っているということです。余っていますから、生産調整や、余剰人員の解雇ということになります。失業率が高くなるのは、完全雇用(生産設備が十分に使用されている状態)に程遠いからです。
アメリカは10%(11月現在)、日本は5.1%(10月)、ドイツ9・3%(8月)、フランス8・9%(7月)です。
浜さんが
「過剰な生産と投資を調整し、膨らみすぎた世界経済を縮小させることが出発点になる」
というのは、「供給能力>需要」を「供給能力(縮小)=需要」にしろと言っていることになります。上記の失業者は、職を得られません。日本が補正予算を組み、45兆円の需給ギャップを埋めようとするのは、「供給能力>需要」を「供給能力=需要(拡大)」にするということです。失業者は確実に減ります。
<暴論その3>
強いドル政策がとられる以降金融経済が実体経済の規模を凌駕し、実体経済を振り回していた。世界の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率の差は1990年は1.77だったのが1995年に2.17、2000年には2.85、2007年には3.45まで膨れ上がった。これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
世界の金融資産と、GDP伸び率を一緒にしています。世界の金融資産は「ストック」といいます。GDPはフローです。混同してはいけません。
日本の金融資産=ストックです。我々が1年間働いて稼いだカネの一部が、貯蓄・資産=ストックに回ります。ストックは、累積ですから、確実に増え続けます。GDP伸び率が1%で、ストック伸び率が5%だとしてもストックは結果であり、GDP伸び率と比較することに意味はありません。
強いドル政策がとられる以降金融経済が実体経済の規模を凌駕し、実体経済を振り回していた。世界の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率の差は1990年は1.77だったのが1995年に2.17、2000年には2.85、2007年には3.45まで膨れ上がった。これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
↓
実体経済を振り回していた。日本の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率の差は1990年は○○だったのが1995年に○○、2000年には○○、2007年には○○まで膨れ上がった。これは日本経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
上の文章がおかしいのがわかりますか?
2007年現在,外国為替市場の1日の平均取引額は3.2兆ドル(340兆円)にも上ります(BIS統計)。同年の世界貿易額は,1日当たり357億ドルですから,貿易額の約90倍にのぼる資本の取引があることになります。
例えば,東京証券取引所の売買代金は,1か月に40兆円~70兆円です 。日本の1年間の国家予算が約82兆円,GDP(国内総生産)は約510兆円です。これらの実体経済をはるかに上回る,資本の取引があるのです。

90年代初頭までは,実体経済が犬の頭,資本経済が犬の尻尾でした。しかしいまや,バーナンキFRB議長が「貿易は犬の尻尾」というほど資本取引が巨額になったのです。
これらの金融・資本取引の結果,世界の金融資産は,総額167兆ドル(1京7744兆円)に達します。実体経済(世界全体のGDP48兆ドル)の3.5倍です。しかも,その成長率は2006年までの11年間で年平均9.1%,世界の実体経済(GDP)成長率の5.7%を大きく上回っています。
図79 経済産業省 平成20年版『通商白書』概要 第1章図の5

ですから、
「これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。」は意味不明です。
さらに、
「膨張しすぎた金融の世界をまともなサイズに縮小しなければいけない」との論を引用していますが、前述のとおり、資本取引は実体経済(輸出入)の90倍です。これを、まともなサイズにするというのは、どの程度のことを想定しているのでしょう?45倍ですか?それなら金融・証券・投資業界のGDPも、半分になります。世界の株式市場は壊滅します。
ストックとフローをごちゃまぜにしたり、ストックを借金と言ったり、(銀行etcにとっては負債ですが、銀行に貸した世界中の人々にとっては資産です)、何を言おうとしているのか、不明です。
文藝春秋2009年12月号 浜矩子『国債バブルがはじける時』
この人は、同志社大学経済学部の教授です。
彼女は、金融危機後に、各国の政府と中央銀行が、提供している低金利政策や財政支出の拡大について、「国債バブル」という表現を使っています。それらの財政出動や金利政策は、恐慌からの脱出にはふさわしくないと考えています。
過剰な生産と投資を調整し、膨らみすぎた世界経済を縮小させることが出発点になる
というふうに主張しています。国債については、
政府が市場に投下している、巨額の札束の元手は、恐慌下で税収が減っているため、結局のところ国債という未来からの借金である。それは国債バブルでもある。
としています。
その「財政バブル」についてこのようにも解説しています。
2009年の主要な先進国の財政赤字の対 GDP 比は英国12.8%米国10.2%。日本7.8%フランス6.7%となり、先進7か国の財政赤字は、合計約220兆円と、2007年の4倍に達するという。しかも「財政バブル」を支えているのは未来からの借金である国債である。
この資金調達によって、造られた体制バブルが崩壊します。そのことを、彼女はドルの暴落だと述べています。
米国は世界から資金を引き寄せることができました。米国は、ルービンが財務長官に就任した選挙95年以降、
ドル高が進んで、さらに安く外国のものを変えるようになった。だが、外国からの借金も増える。それに対しては、世界から集まるカネの運用収益で対応すればいい。それがルービン流の考え方だった
と書きます。その結果、
強いドル政策がとられる以降金融経済が実体経済の規模を凌駕し、実体経済を振り回していた。世界の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率は1990年は1.77だったのが1995年に2.17、2000年には2.85、2007年には3.45まで膨れ上がった。これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
さて、彼女はこのように、金融が巨大化した状態がおかしい。そしてこれは、いつかははじけるというふうに考えています。
では、彼女はこのような経済に対してどのような対応をしたら良いと考えているのでしょうか。凡そ10ページの論文に対して、彼女がその処方せんを与えているのが最後の1ページです。カネとモノのベクトルが一体化したので、実体経済に戻せと主張しています。
「膨張しすぎた金融の世界をまともなサイズに縮小しなければいけない」と、イギリスの金融サービス機構長官アデア・ターナーの言葉を引用します。
要するに、彼女の考え方は、実体経済に基づいた経済規模に戻せということです。
<暴論その1>
「政府が市場に投下している、巨額の札束の元手は、恐慌下で税収が減っているため、結局のところ国債という未来からの借金である。それは国債バブルでもある。」
「2009年の主要な先進国の財政赤字の対 GDP 比は英国12.8%米国10.2%。日本7.8%フランス6.7%となり、先進7か国の財政赤字は、合計約220兆円と、2007年の4倍に達するという。しかも「財政バブル」を支えているのは未来からの借金である国債である。」
国債は、未来からの借金ではありません。その年のフロー、GDI(国内総所得)から資金が出ています。三面等価の図を見てみましょう。


正解は、「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。約846兆円のうち、94%=約795兆円は、我々日本人が持っているのです(単純計算です。国債を海外が購入している、6%という数値を使用しました)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。

貯蓄Sが、①企業の借金:I・②政府の借金:G-T・③外国の日本に対する借金:EX-IMの原資です。国民が、政府に貸しているのです。

世界で見ても同じです。世界各国のGDPをすべて足すと、その年の世界全体のGDPが算出されます。そうすると、(S-I)=(G-T)+(EX-IM)の式は、世界全体で成立します。その年のアメリカの国債も、イギリスの国債も、アルゼンチンの国債も、日本の国債も、すべて、その年のフロー(世界全体のGDP)で賄われることになります。

未来からの借金ではなく、その年の収入がその年の国債購入に充てられているのです。
世界全体の貯蓄額を、世界全体の企業が借りて投資に使えば、国債も、輸出入も生じません。不況=企業による投資減少(S-Iが増加)ですから、(G-T)は増えます。
週刊文春12月10日『864兆円赤字大国ニッポン』
「これまで国債が順調に消化されてきたのは事実です。ただ、このままでは借金返済はほぼ不可能です。国の信用が失われて、借金ができなくなれば、円安が急激に進み、購買力が無くなって、物価が急上昇するでしょう。その結果、ハイパーインフレとなり生活はめちゃくちゃになる。その時がいつ来るが、実は誰にもわからないのです。」みずほインベスターズ証券の落合昴二
投資銀行ロバーツ・ミタニ創業者の三谷秀樹氏「国債発行は次世代の所得を先取りすることで、恥と考えるべきです」
日経H21.12.7「企業に北風より太陽」
…このままでは子や孫が国の借金を返すために働く国になる。
このように、経済学を知らない、一般エコノミストが暴論をしゃべるのはともかく、経済学部の教授が、「国債は未来からの借金」というのは、許されることではありません。(でも、日経も、ずいぶん適当ですね)
赤色で示したことは、「原理上ありえない」のです。「太陽を西から上らせるようなもの」です。
<暴論その2>
過剰な生産と投資を調整し、膨らみすぎた世界経済を縮小させることが出発点になる
日本も、世界も、供給能力>需要です。
三面等価の図を見てみましょう。

総生産GDP=総所得GDI=総支出GDEです。総生産は、我々の所得の総額です。
総生産Y=C+I+G+EX(総需要)
C=家計が主体の消費(Consumption )、I=企業が主体の投資(Investment)、G=政府最終支出、EX=輸出を足します。
Y(つまりGDP)を伸ばす=C、I、G、EXのいずれかを増やすということです。
「内閣府の試算では、1~3月期の需要不足は45兆円(年率換算)」ということは、Y=C+I+G+EX-45です。
生産能力が、45兆円分、余っているということです。余っていますから、生産調整や、余剰人員の解雇ということになります。失業率が高くなるのは、完全雇用(生産設備が十分に使用されている状態)に程遠いからです。
アメリカは10%(11月現在)、日本は5.1%(10月)、ドイツ9・3%(8月)、フランス8・9%(7月)です。
浜さんが
「過剰な生産と投資を調整し、膨らみすぎた世界経済を縮小させることが出発点になる」
というのは、「供給能力>需要」を「供給能力(縮小)=需要」にしろと言っていることになります。上記の失業者は、職を得られません。日本が補正予算を組み、45兆円の需給ギャップを埋めようとするのは、「供給能力>需要」を「供給能力=需要(拡大)」にするということです。失業者は確実に減ります。
<暴論その3>
強いドル政策がとられる以降金融経済が実体経済の規模を凌駕し、実体経済を振り回していた。世界の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率の差は1990年は1.77だったのが1995年に2.17、2000年には2.85、2007年には3.45まで膨れ上がった。これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
世界の金融資産と、GDP伸び率を一緒にしています。世界の金融資産は「ストック」といいます。GDPはフローです。混同してはいけません。
日本の金融資産=ストックです。我々が1年間働いて稼いだカネの一部が、貯蓄・資産=ストックに回ります。ストックは、累積ですから、確実に増え続けます。GDP伸び率が1%で、ストック伸び率が5%だとしてもストックは結果であり、GDP伸び率と比較することに意味はありません。
強いドル政策がとられる以降金融経済が実体経済の規模を凌駕し、実体経済を振り回していた。世界の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率の差は1990年は1.77だったのが1995年に2.17、2000年には2.85、2007年には3.45まで膨れ上がった。これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
↓
実体経済を振り回していた。日本の金融資産と社会の名目 GDP 伸び率の差は1990年は○○だったのが1995年に○○、2000年には○○、2007年には○○まで膨れ上がった。これは日本経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。
上の文章がおかしいのがわかりますか?
2007年現在,外国為替市場の1日の平均取引額は3.2兆ドル(340兆円)にも上ります(BIS統計)。同年の世界貿易額は,1日当たり357億ドルですから,貿易額の約90倍にのぼる資本の取引があることになります。
例えば,東京証券取引所の売買代金は,1か月に40兆円~70兆円です 。日本の1年間の国家予算が約82兆円,GDP(国内総生産)は約510兆円です。これらの実体経済をはるかに上回る,資本の取引があるのです。

90年代初頭までは,実体経済が犬の頭,資本経済が犬の尻尾でした。しかしいまや,バーナンキFRB議長が「貿易は犬の尻尾」というほど資本取引が巨額になったのです。
これらの金融・資本取引の結果,世界の金融資産は,総額167兆ドル(1京7744兆円)に達します。実体経済(世界全体のGDP48兆ドル)の3.5倍です。しかも,その成長率は2006年までの11年間で年平均9.1%,世界の実体経済(GDP)成長率の5.7%を大きく上回っています。
図79 経済産業省 平成20年版『通商白書』概要 第1章図の5

ですから、
「これは世界経済が自分で稼いだ財布の中身の4倍近い借金を抱えて走り回っていたことを意味する。」は意味不明です。
さらに、
「膨張しすぎた金融の世界をまともなサイズに縮小しなければいけない」との論を引用していますが、前述のとおり、資本取引は実体経済(輸出入)の90倍です。これを、まともなサイズにするというのは、どの程度のことを想定しているのでしょう?45倍ですか?それなら金融・証券・投資業界のGDPも、半分になります。世界の株式市場は壊滅します。
ストックとフローをごちゃまぜにしたり、ストックを借金と言ったり、(銀行etcにとっては負債ですが、銀行に貸した世界中の人々にとっては資産です)、何を言おうとしているのか、不明です。
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