新聞を解説(47) 『食料7割増産必要』日経H21.11.16
<自給率アップは無意味 その1/2>
『食料7割増産必要』日経H21.11.16
国連食糧農業機関(FAO)が16日からローマで開く「食料サミット」の共同宣言案…「2050年…には食料生産量を今より70%増やす必要がある」と…先進国には政府開発援助(ODA)拡大を求めた。…さらに…「農産物市場の自由化」を支持し、世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉の適時妥結を要請した。
「食糧は余っており、食糧危機はあり得ない」
これが、経済学的な事実です。しかし、政治的なバイアス(農業関係者、農水省、FAOetc)がかかると、「食糧は足りない」となります。
食糧をめぐる事実について、検証しましょう。
参考引用文献:日本貿易会『日本の食糧戦略と商社』東洋経済新報社 2009
(1)日本は農地がない
農地 草地 人口
日本 最大時で、600万ha 110万ha 1億2600万
イギリス (1961年) 730万ha 1200万ha 日本の半分
アルゼンチン 2890万ha 4000万
日本は農地に対し、人口がきわめて多いのです。
(2)先進国の穀物余剰
昔は、小麦は定期的に休耕(連作すると収穫量低下)しなければならず、多くの土地が必要でした。第二次大戦後「窒素肥料」が大量生産され、休耕は必要なくなり、米国・カナダ・欧州で穀物生産量が急増します。
WTOで農業がいつも問題になるのは、「余っているから」です。 「ある国で足らず、一方、ある国で余っているのであれば、その貿易が問題になることはない。それに対して,双方が余っている場合には押し付け合いになるp21」のです。
確かに、日本産の米も、牛乳も、肉も、リンゴもミカンも、「供給過剰(本当は、作ろうと思えばもっともっと作れる)」ですね。それを減反し、規制し(2008年バター不足)、関税をかけ(米=471%平成17年現在)、守っているんですね。
(3)食糧危機は起きない
①人口増の鈍化
20世紀当初16億人→現在67億人→2050年90億人(ピーク)
現在、世界の人口増加率は1%程度で、今後も低下の予測です。世界人口半分を占めるアジアで、増加率が急低下しているからです。その理由は経済成長にあります。アジアも少子高齢化を心配する時代になったのです。
さて、「経済成長すると、肉食が増え、飼料穀物需要が増えるのではないか?」についてです。
中国(世界人口の1/4)は、飼料穀物輸入増大を懸念されましたが、その兆候はありません。穀物の代わりに大豆を輸入しているからです。大豆輸入→8割を油加工→絞りかすを飼料、一石二鳥です。
インド(世界人口の1/5)は菜食主義の国です。カースト制度があり、高カーストほど、菜食主義になります。牛肉はもちろん食べません。
②日本は贅沢品を輸入
日本の食料輸入は、輸入総額の1割以下です。その4割を肉やエビやカニ、ウナギなどの輸入が占めます。明日生きるのに必要な小麦・飼料用トウモロコシなどの費用は、歴史的高値の2008年でも輸入総額の1.5%、1.2兆円でした。おカネがないために輸入できなくなることはありません。
(4)在庫率は横ばい、耕地面積は増大
「日本の食料戦略と商社」東洋経済新報社2009 P35
期末在庫率は、年間需要量における、年度末在庫量割合です。食料そのものがなくて、価格上昇したのではなく、食料価格や原油高騰で、買うことのできる量が少なくなったのです。「バイオ燃料や不作」により、食糧危機がおきることは、ありません。
「日本の食料戦略と商社」東洋経済新報社2009 P38

小麦・コーン・米などの穀物地+大豆などの油量種子を加えた「食料生産用耕地面積」は,38年間に22%増加しました。土地は、本当は、まだまだ増加できるのです。
『食料7割増産必要』日経H21.11.16
国連食糧農業機関(FAO)が16日からローマで開く「食料サミット」の共同宣言案…「2050年…には食料生産量を今より70%増やす必要がある」と…先進国には政府開発援助(ODA)拡大を求めた。…さらに…「農産物市場の自由化」を支持し、世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉の適時妥結を要請した。
「食糧は余っており、食糧危機はあり得ない」
これが、経済学的な事実です。しかし、政治的なバイアス(農業関係者、農水省、FAOetc)がかかると、「食糧は足りない」となります。
食糧をめぐる事実について、検証しましょう。
参考引用文献:日本貿易会『日本の食糧戦略と商社』東洋経済新報社 2009
(1)日本は農地がない
農地 草地 人口
日本 最大時で、600万ha 110万ha 1億2600万
イギリス (1961年) 730万ha 1200万ha 日本の半分
アルゼンチン 2890万ha 4000万
日本は農地に対し、人口がきわめて多いのです。
(2)先進国の穀物余剰
昔は、小麦は定期的に休耕(連作すると収穫量低下)しなければならず、多くの土地が必要でした。第二次大戦後「窒素肥料」が大量生産され、休耕は必要なくなり、米国・カナダ・欧州で穀物生産量が急増します。
WTOで農業がいつも問題になるのは、「余っているから」です。 「ある国で足らず、一方、ある国で余っているのであれば、その貿易が問題になることはない。それに対して,双方が余っている場合には押し付け合いになるp21」のです。
確かに、日本産の米も、牛乳も、肉も、リンゴもミカンも、「供給過剰(本当は、作ろうと思えばもっともっと作れる)」ですね。それを減反し、規制し(2008年バター不足)、関税をかけ(米=471%平成17年現在)、守っているんですね。
(3)食糧危機は起きない
①人口増の鈍化
20世紀当初16億人→現在67億人→2050年90億人(ピーク)
現在、世界の人口増加率は1%程度で、今後も低下の予測です。世界人口半分を占めるアジアで、増加率が急低下しているからです。その理由は経済成長にあります。アジアも少子高齢化を心配する時代になったのです。
さて、「経済成長すると、肉食が増え、飼料穀物需要が増えるのではないか?」についてです。
中国(世界人口の1/4)は、飼料穀物輸入増大を懸念されましたが、その兆候はありません。穀物の代わりに大豆を輸入しているからです。大豆輸入→8割を油加工→絞りかすを飼料、一石二鳥です。
インド(世界人口の1/5)は菜食主義の国です。カースト制度があり、高カーストほど、菜食主義になります。牛肉はもちろん食べません。
②日本は贅沢品を輸入
日本の食料輸入は、輸入総額の1割以下です。その4割を肉やエビやカニ、ウナギなどの輸入が占めます。明日生きるのに必要な小麦・飼料用トウモロコシなどの費用は、歴史的高値の2008年でも輸入総額の1.5%、1.2兆円でした。おカネがないために輸入できなくなることはありません。
(4)在庫率は横ばい、耕地面積は増大
「日本の食料戦略と商社」東洋経済新報社2009 P35

期末在庫率は、年間需要量における、年度末在庫量割合です。食料そのものがなくて、価格上昇したのではなく、食料価格や原油高騰で、買うことのできる量が少なくなったのです。「バイオ燃料や不作」により、食糧危機がおきることは、ありません。
「日本の食料戦略と商社」東洋経済新報社2009 P38

小麦・コーン・米などの穀物地+大豆などの油量種子を加えた「食料生産用耕地面積」は,38年間に22%増加しました。土地は、本当は、まだまだ増加できるのです。
スポンサーサイト
theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育