ISバランス論 『越渓:民主党の経済政策の実現性』日経H21.9.26

『越渓:民主党の経済政策の実現性』日経H21.9.26

…民主党は財源については…特別会計…埋蔵金、…公務員の天下りの禁止などによって賄えると主張している。…妥当性は疑わしい。
…こうしたことを考えれば、財源として長期の国債に依存すべきではないだろうか。…公債依存は負担を子孫に回すばかりで、その負担は年々積み重なり、国家の破産を招くという。だが仮に毎年20兆円の公債を発行すれば、それを買う国民の金融資産を年20兆円増やすわけで、借金の先送りではない。…P・サミュエルソンやJ・スティグリッツのような有力な学者は、現在の日本では国債の増発が唯一の解決策だと言っている。


<国債は借金ではない>

日本は「貯蓄超過」なのです。
三面等価の図を見ましょう。
三面等価 汎用.jpg
三面等価 数値入り.jpg
日本貯蓄超過

ここから、(S-I)=(G-T)+(EX-IM)という関係がわかります。左辺(S-I)が0(つまり、国民の貯蓄を、企業投資で使い切っている状態)なら、財政赤字(G-T)と、貿易黒字(EX-IM)の合計は0です。

 国民の貯蓄超過がなくならない限り、財政赤字(G-T)+貿易黒字(EX-IM)は必ずトータルプラスで発生します。

 三面等価の図を見ましょう。ここから、S-I=(G-T)+(EX-IM)という関係がわかります。国民の貯蓄(S)が(G-T)に充てられています。ですから、 「国債は政府の借金=国民の財産」です。

 この借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。我々が預貯金をしたり、生命保険金を支払ったりしたお金が、国債の購入に当てられています。しかも、国債の金利は、銀行や郵貯、保険会社の利益(GDPに算入)です。将来の世代が、その利子を受け取るのです。

 約668兆円の国債のうち、94%=約628兆円は、我々日本人が持っているのです(海外の6%を除く 下記グラフ参照)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約45%は国債なのです。

帝国書院『アクセス現代社会2009』P134帝国書院『アクセス現代社会2009』P134 家計の金融資産残高の推移.jpg

日経21.6.27
国債購入者 日経21.6.27

家計→金融機関→国債購入なのです。

<貯蓄超過のプラス・マイナス面>

竹森俊平『経済危機は9つの顔を持つ』日経BP社 2009

竹森俊平と、竹中平蔵の対談です。

P430
竹中
 ・・・昔、大蔵省の時代、財政金融研究所にいたとき、変なリサーチをやらされたことがあります。それは経済学の手法なんかは全然使わないもので、こんなリサーチに意味があるのかと最初は反発したのですが、やってみてすごく面白かった。
 それは、ナポレオン戦争後のフランス、あるいは、第一次世界大戦の後のイギリスは、どのようにして赤字問題を解決したのかというものです。よく赤字を減らすとか、借金を返すとか言いますが、借金を返した国なんかないんです。借金を返すことなんてできません

竹森 
 残高が相対的に小さくなっていったということですね。

竹中 
 そういうことです。残高を増やさないようにして、その間に経済成長するから、2%成長で30何年したらGDPが2倍になるから半分になると。この手法しかありません。やっぱり成長をすることは、ものすごく重要なことだと思うんです。


 昨年のリーマン・ショック以降の金融危機で、外国資本に依存していた国では、とんでもないことが起こっています。参考文献:竹森俊平『経済危機は9つの顔を持つ』日経BP社 2009

 アイルランドでは、国が預金の全額保証、銀行間取引の信用を保証、金融機関に対する資本注入を決めます。しかし、「アイルランド政府がそれに耐えられるかどうか」という財政不安から、アイルランド国債金利が上昇します。その不安を鎮めるため、アイルランド政府は増税を迫られています。「大不況下で、増税しなければならない」など、経済政策としては、もっともやってはいけないことをやらざるを得ないかもしれません。

 イギリスも同様です。銀行の保護策を発表後、国債金利が上昇します。景気刺激策の一方で、増税しているのです。イギリスは、国債のトリプルAからの格下げを心配する状態に陥っています。

P410
竹森 
 ・・・今回の危機において、危機前に海外から資本を大々的に借り入れていた国は、深刻な不況の最中に増税を迫られるような状況にたたされているわけです。資本借り入れ国にとっては、トリプルAから一段下げられることすら心配・・・トリプルAを外されれば、MMFのポート・フォリオに組み込むことさえできない
(筆者注:資産と見なされない)でしょうから。

 1997年のアジア金融危機も同様でした。タイを始め、外国は新興国から一斉に資本を引き上げました。タイや韓国は「国庫が破産」状態になり、IMFから緊急融資をしてもらい、なんとか危機をしのいだのです。韓国では「国民の貴金属を国に提供する」といったキャンペーンまで行われました。

 ところが、日本は、貯蓄超過(S-Iがプラス)です。外資を引き上げられた国は、上記のように、瞬く間に危機に陥りますが、日本の「失われた10年」の際には、危機的状況に、追い込まれませんでした。国内資本の貸し借り問題だったからです。

 その一方、解決に10年もかかってしまったのも、貯蓄超過があったからです。

P412~
竹中 
 なぜ「失われた10年」になったかというと、危機にならなかったからです。

竹森 
 それは貯蓄があったからですね

竹中 
 そうです。貯蓄があったからです。国内でファイナンスできる。・・・財政赤字というのは政府部門の負の貯蓄(筆者注:借り入れのこと)です。これを補うために、これは貯蓄投資バランスの鉄則(筆者注:GDPの三面等価・貯蓄投資バランス・ISバランスのこと)として、誰かがどこかで貯蓄していなければいけませんね。・・・日本は貯蓄投資のバランスから考えて、国内に非常に大きなプラスの貯蓄がある。それでファイナンスできたのです。・・・日本は通貨の価値は落ちませんでした。むしろ上がり、1995年が円高のピークです。

三面等価 数値入り.jpg

 また、「内需」か「外需」かについても、貯蓄が絡みます。

P414
竹森 
 今回の危機で、日本の輸出が大きく落ち込んだから、これからは日本経済を内需型にしようという議論があります。・・・内需型経済というのは、要するに国内の貯蓄が国内の投資にほとんど向かい、場合によっては海外の貯蓄まで引っ張ってくる経済(注)ということですから、それだけの資金を国内の投資先に引きつける金融市場がなければならない。

竹中 
 おっしゃるとおりです・・・金融がしっかりすることが求められているわけです。


注)S-Iがゼロの状態日本の高度成長期は、投資(I)が盛んで、国内貯蓄をほとんど使い切っていた。だから、財政赤字=公債(G-T)も、貿易黒字(EX-IM)も、高度成長期には、発生しなかった


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