新聞を解説(42) 三角『大機小機:企業と政治の新しい関係築け』日経H21.9.25

新聞を解説 三角『大機小機:企業と政治の新しい関係築け』日経H21.9.25

…海外にモノを売って稼ぐ輸出立国の日本にとり、企業の国際競争力低下がいかに国益をそぎ、経済運営のダメージとなるかは鳩山、小沢両氏も十分に理解しているはずだ。


『社説:安定成長への道筋を示せ』読売新聞H21.9.22
…天然資源に乏しい日本が成長するには、外需で利益を稼ぎ、それを活用していかねばならない。


 確かに、輸出=稼ぎなのですが、輸出額を伸ばせば、輸入額も伸びるという、相関関係になります。輸出額は、日本のGDPです。一方、輸入額は、日本のGDPから差し引くことになります。

 輸出入差額を経常黒字(貿易黒字含む)といいますが、そのGDP割合は、2005年度で、1.43%です。多くても、3%台程度です。日本のGDP=GNI(国内総所得)=我々1人1人の所得の合計には、大きく影響しないのです。

 また、貿易黒字=海外資産の増加(株/社債/国債/外国紙幣/外国の土地・建物etc)のことなので、貿易黒字は、日本人の生活を直接豊かにするものではないのです。

<輸出増=輸入増>

 輸出の裏には,必ず輸入があり,輸入の裏には必ず輸出があるのです。ということは,「輸出を伸ばし,輸入を抑える」のは,理論上,不可能になります。

 輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。
輸出増=輸入増
 
 輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。

図50 浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309
浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309無題.jpg

 日本の貿易額は,年を追って拡大してきました。その際,「輸出の拡大と輸入の拡大」はセットになっていることがわかりますか?「輸出を拡大する=特化する」ということは,「比較劣位産業を縮小しなければばらない=輸入を拡大する」ことなのです。日本は,繊維製品(当初),鉄鋼,造船,家庭電化製品,自動車に特化する一方,繊維製品・石油・鉄鉱石・石炭・農業産品など,劣位産業を縮小し,輸入を拡大してきたのです。

図51 実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259
実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259無題.jpg

 世界の中で比較しても同様です。「一人あたり輸出額の大きい国は,輸入額も大きい,輸出額が小さければ,輸入額も小さい」という相関関係がみてとれると思います。
「輸出を伸ばし,輸入を抑える」という幼稚産業保護に基づく政策は,実現できないことが分かります。


 架空の話ではなく,70年代までのアジアや南米では,「幼稚産業保護」として,本当にとられていた政策です。「輸入代替化」政策とも言われていました。リストの保護貿易論も,これと同じです。輸入数量制限や高関税,外国為替管理といった輸入制限策を用いて国内市場を保護する政策です。しかしこの政策は行き詰まり,アジアNICsでは,外向きの成長政策が採用されることになりました。
福田邦夫 小林尚朗編『グローバリゼーションと国際貿易』大月書店 2006 p256-257

<経常黒字=海外への貸付額=海外資産>

三面等価 汎用.jpg
三面等価 数値入り.jpg

貿易黒字=外国への資金の貸し出し

 まず,貿易黒字は日本国内で消費されなかった生産財・サービスを外国が消費(購入)することです。と同時に,外国が,日本に外国債や株式・社債を購入してもらったり,直接投資(海外に工場を建てるなど)でも株式を購入してもらったりしています。日本からみると海外に貸していることです。
ということは,日本が「貿易黒字」を出せば出すほど,日本の海外での「財産」が増えることになります。そして,実際にその通りになっています。

 以上のような投資(海外へのお金の貸し出し)が,日本の対外資産です 。その残高は約610兆4920億円(07年末)で,世界一となっています。

 そのうち,直接投資(海外の工場建設など)は,約55兆円です。また,外貨準備1兆39億ドルのうち,証券(外国国債含む)は8588億ドル,約86%を占めています。

 また,これらの対外資産は,1年間に13.5兆円の黒字(所得収支)(06年末)を産み出しています。所得のうちわけは,外国債券の利子収入が7割,直接投資の収益が2割,外国株式の配当金が1割です。これが,純所得の大部分を占めます。
GDPとGNPの差

 この所得は,毎年増え続けています。それは,当り前です。なぜなら,日本の「貿易黒字」分が,確実に増え続けてきたからです。

単位:10億円 平成15年度2003年 平成16年度2004年  平成17年度2005年
純所得(黒字)    8,785.8          9,918.2        12,725.6


『読売新聞』2008.5.24
対外資産

 このグラフは,日本の政府・企業・個人が海外に持つ資産(対外資産)から,日本で外国政府・企業・個人が持つ資産(対外負債)を引いた「純資産」を示します。これは,日本が「貿易黒字」を積み上げて,できたものです。「貿易黒字はどこへいったのか」の答えは,「海外の資産になった」です。このことは,日本人の生活そのものが豊かになることを,必ずしも意味するものではないのです。

日経『海外投融資、再開の動き』H21.10.16

 国内の銀行による海外向け融資や、外国の国債・株式投資の残高(対外与信残高)は…3月末に比べ6.6%増の2兆1981億ドル(約211兆円)となり、5四半期ぶりに増えた。…市場の安定で海外投融資を再開する動きが出てきた…。
…外国の国債…8.6%増…うち欧州先進国が約6割…。「民間企業向け」も4.3%増…。

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