新聞を解説(38) チャールズ・ユウジ・ホリオカ『経済教室』その1 日経H21.9.30
新聞を解説 チャールズ・ユウジ・ホリオカ『経済教室』その1 日経H21.9.30
<貯蓄-投資差額論(ISバランス論)を学ぶ その1>
拙著『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』および、このブログで、「教科書の間違い」「新聞の間違い」を指摘してきました。「経済」という言葉に名を借りた「間違った経済知識」の氾濫を正したいからです。
間違った経済知識を持つと、「貿易黒字はもうけ、赤字は損」だから、「日本のアメリカへの貿易黒字はけしからん、日本をたたけ(ジャパン・バッシング)」となってしまいます。さらに、世界には、「貿易戦争」なるものがあると、信じて疑わなくなってしまいます。
それもこれも、 「貯蓄-投資差額論(ISバランス論)」を、国民が知らないからです。これだけわかれば、「経済については、マスターした」といっても過言ではありません。ですが、これがわからないと、「教科書」や「日経」のように、「トンデモ経済論」を載せ続けてしまいます。
世界全体でみたら、貯蓄と投資(注)は常に等しくならなければならない。なぜなら貯蓄(S)は投資(I)の財源として必要で、ある額の投資(I)(設備投資、住宅投資、公共投資など)を行うには、同額の貯蓄(S)が必要だからである。一方、ある国において投資(I)と貯蓄(S)が常に一致する必要はない。貯蓄(S)が投資(I)を上回れば、余った貯蓄(S)を海外に提供し、逆に投資が貯蓄(S)を上回れば、貯蓄(S)の不足分を海外から借り入れればよい。
(注)以下、貯蓄をSavingのS、投資をInvestmentのIで補足します。
経済学で「貯蓄」とは、「所得のうちで、財・サービスの購入に支出されなかったすべて」です。タンス預金でも、財布に入っていても、株や社債の購入にあてても、銀行預金しても、すべて「貯蓄」に含めます。
…ある経済またはある制度部門の貯蓄投資差額(貯蓄-投資)は「ISバランス」という。なお、経済全体のISバランスはネットで貯蓄がどのくらい海外に流れているかをとらえており、資本収支の赤字を意味する。
また、国際収支は全体として均衡しなければならないため、ISバランスが正(筆者注:プラス、貯蓄超過の状態)であり、資本収支が赤字であれば、貿易収支を含む経常収支はほぼ同額の黒字にならなければならず、逆にISバランスが負であり、資本収支が黒字であれば、経常収支はほぼ同額の赤字にならなければならない。
三面等価の図を見て下さい。


(S-I) = (G-T) + (EX-IM)
貯蓄超過 = 財政赤字 + 経常黒字
S = ①I + ②(G-T) + ③(EX-IM)
日本の貯蓄 企業の借金 政府の借金 外国の借金
(1)
国民が貯蓄したSが、①企業Iへの貸付であり、②公債(G-T)への貸付であり、③(EX-IM)海外への貸付に回っていることがわかります。企業も、政府も、外国も、日本人の貯蓄から、お金を借りているのです。
(2)
総生産Yを誰が購入したかです。総生産Yを、我々家計(一人一人の消費者)が購入します。これをC(コンサンプション=消費)といいます。我々が、所得を全部使わず、貯蓄すると、その総生産分Yを、だれかが購入していることになります。その主体が①企業②政府③外国なのです。
S分(総生産Yの残り)は、①企業投資Iであり、②政府消費・投資(G-T)であり、③(EX-IM)経常(貿易)黒字です。
S = ①I + ②(G-T) + ③(EX-IM)
Yの残り 企業投資 政府投資・消費 外国の投資・消費
公債 貿易黒字
結論
(1)と(2)から、次のようにいえます。
①企業投資I=国民の貸付、②公債(G-T)=国民の貸付、③貿易黒字(EX-IM)=国民の海外への貸付なのです。
そうすると、②公債=国民の財産、③貿易黒字=資本収支赤字(海外への資本移転)となります。「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」「国債は国の借金」が、根本的に成り立たないのがわかります。
マクロ経済学上、最も大切な「ISバランス」式です。
国民が、所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字+経常(貿易)黒字は必ず発生するのです。ここで大切なのは、資本収支が赤字であれば、貿易収支を含む経常収支はほぼ同額の黒字にならなければならず、逆にISバランスが負であり、資本収支が黒字であれば、経常収支はほぼ同額の赤字にならなければならないという部分です。
貿易黒字が、資本収支赤字(海外への資本投下)を生むのではなく、貯蓄超過が資本収支赤字(海外への資本投下)→貿易黒字になるということです。
原因 結果
海外への資本投資 貿易黒字
注)海外への資本投下とは、外国企業の株・社債購入、外国国債の購入、外貨預金(預金は、債権、銀行から見たら債務)、外貨準備増のことです。
日本の日産自動車は、フランス企業ルノーが筆頭株主(H21.10.6現在)です。ルノーが日本企業に出資(株購入)したのです。日産自動車は、今は外国企業です。
中国は、世界最大の世界最大のドル保有国であり、同時に米国債保有国(原因)です。それは、中国はアメリカに対する最大の貿易黒字国(結果)ということにつながります。
<貯蓄-投資差額論(ISバランス論)を学ぶ その1>
拙著『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』および、このブログで、「教科書の間違い」「新聞の間違い」を指摘してきました。「経済」という言葉に名を借りた「間違った経済知識」の氾濫を正したいからです。
間違った経済知識を持つと、「貿易黒字はもうけ、赤字は損」だから、「日本のアメリカへの貿易黒字はけしからん、日本をたたけ(ジャパン・バッシング)」となってしまいます。さらに、世界には、「貿易戦争」なるものがあると、信じて疑わなくなってしまいます。
それもこれも、 「貯蓄-投資差額論(ISバランス論)」を、国民が知らないからです。これだけわかれば、「経済については、マスターした」といっても過言ではありません。ですが、これがわからないと、「教科書」や「日経」のように、「トンデモ経済論」を載せ続けてしまいます。
世界全体でみたら、貯蓄と投資(注)は常に等しくならなければならない。なぜなら貯蓄(S)は投資(I)の財源として必要で、ある額の投資(I)(設備投資、住宅投資、公共投資など)を行うには、同額の貯蓄(S)が必要だからである。一方、ある国において投資(I)と貯蓄(S)が常に一致する必要はない。貯蓄(S)が投資(I)を上回れば、余った貯蓄(S)を海外に提供し、逆に投資が貯蓄(S)を上回れば、貯蓄(S)の不足分を海外から借り入れればよい。
(注)以下、貯蓄をSavingのS、投資をInvestmentのIで補足します。
経済学で「貯蓄」とは、「所得のうちで、財・サービスの購入に支出されなかったすべて」です。タンス預金でも、財布に入っていても、株や社債の購入にあてても、銀行預金しても、すべて「貯蓄」に含めます。
…ある経済またはある制度部門の貯蓄投資差額(貯蓄-投資)は「ISバランス」という。なお、経済全体のISバランスはネットで貯蓄がどのくらい海外に流れているかをとらえており、資本収支の赤字を意味する。
また、国際収支は全体として均衡しなければならないため、ISバランスが正(筆者注:プラス、貯蓄超過の状態)であり、資本収支が赤字であれば、貿易収支を含む経常収支はほぼ同額の黒字にならなければならず、逆にISバランスが負であり、資本収支が黒字であれば、経常収支はほぼ同額の赤字にならなければならない。
三面等価の図を見て下さい。


(S-I) = (G-T) + (EX-IM)
貯蓄超過 = 財政赤字 + 経常黒字
S = ①I + ②(G-T) + ③(EX-IM)
日本の貯蓄 企業の借金 政府の借金 外国の借金
(1)
国民が貯蓄したSが、①企業Iへの貸付であり、②公債(G-T)への貸付であり、③(EX-IM)海外への貸付に回っていることがわかります。企業も、政府も、外国も、日本人の貯蓄から、お金を借りているのです。
(2)
総生産Yを誰が購入したかです。総生産Yを、我々家計(一人一人の消費者)が購入します。これをC(コンサンプション=消費)といいます。我々が、所得を全部使わず、貯蓄すると、その総生産分Yを、だれかが購入していることになります。その主体が①企業②政府③外国なのです。
S分(総生産Yの残り)は、①企業投資Iであり、②政府消費・投資(G-T)であり、③(EX-IM)経常(貿易)黒字です。
S = ①I + ②(G-T) + ③(EX-IM)
Yの残り 企業投資 政府投資・消費 外国の投資・消費
公債 貿易黒字
結論
(1)と(2)から、次のようにいえます。
①企業投資I=国民の貸付、②公債(G-T)=国民の貸付、③貿易黒字(EX-IM)=国民の海外への貸付なのです。
そうすると、②公債=国民の財産、③貿易黒字=資本収支赤字(海外への資本移転)となります。「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」「国債は国の借金」が、根本的に成り立たないのがわかります。
マクロ経済学上、最も大切な「ISバランス」式です。
国民が、所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字+経常(貿易)黒字は必ず発生するのです。ここで大切なのは、資本収支が赤字であれば、貿易収支を含む経常収支はほぼ同額の黒字にならなければならず、逆にISバランスが負であり、資本収支が黒字であれば、経常収支はほぼ同額の赤字にならなければならないという部分です。
貿易黒字が、資本収支赤字(海外への資本投下)を生むのではなく、貯蓄超過が資本収支赤字(海外への資本投下)→貿易黒字になるということです。
原因 結果
海外への資本投資 貿易黒字
注)海外への資本投下とは、外国企業の株・社債購入、外国国債の購入、外貨預金(預金は、債権、銀行から見たら債務)、外貨準備増のことです。
日本の日産自動車は、フランス企業ルノーが筆頭株主(H21.10.6現在)です。ルノーが日本企業に出資(株購入)したのです。日産自動車は、今は外国企業です。
中国は、世界最大の世界最大のドル保有国であり、同時に米国債保有国(原因)です。それは、中国はアメリカに対する最大の貿易黒字国(結果)ということにつながります。
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