新聞の間違い(27) 『上期の貿易黒字 韓国、初めて日本上回る』日経H21.10.22
新聞の間違い『上期の貿易黒字 韓国、初めて日本上回る』日経H21.10.22
韓国の今年1~6月の貿易黒字が266億ドルとなり、上半期ベースで初めて日本を上回ったことがわかった。1~6月の韓国ウオン相場は…ウオン安基調が持続。円高傾向が続いた日本よりも輸出競争力が向上したのが原動力になった…。
…1~6月の韓国の貿易黒字額は…ドイツに次いで2番目に大きかった。日本は91億ドルで6位にとどまった。
<貿易黒(赤)字は経済成長とは無関係>
今まで何度も、「貿易黒字はもうけではない」こと、「貿易黒(赤)字と経済成長は関係がない」「貿易黒字は不況になると増える」ことを示してきました。「国と国は、企業と違い、競争の主体ではない」ことも述べました。
しかし、何度説明しても、一般の方には、通じないようです注)。ポール・クルーグマンも、そのような誤解を取り除くことが、経済教育の目的と言っていますね。
<リカード比較優位 比較生産費 16 貿易は国際競争??>参照。
貿易黒字額が伸びること=輸出競争力とします(便宜上)。その国の、世界に占める貿易黒字のシェアが、何パーセント伸びたかを見ます。世界の貿易黒字の中での、シェアが伸びれば伸びるほど、その国が「強い」「輸出競争力がある」となります。
そのような強さがあれば、当然、その国のGDP(国民総生産=国民総所得)も伸びているはずですが…
正解は、そんな「輸出競争力」など、定義すらできないし、実態もないのです。
注)倉西雅子 ブログ参照。「中国が一人勝ちする自由貿易主義という難題」
専門は、政治学だそうです。
http://blog.goo.ne.jp/kuranishimasako/e/7d500efdc954e1becb6f917880ad74f4
今回は、貿易黒字シェアの伸び率と、1人あたりGDPの関係を示したグラフをご紹介します。
参考・引用文献 原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』新潮選書2009グラフも
図は、1978年~2000年までの、「輸出競争力」なるものと、「1人あたりGDPの伸び率」を掛け合わせたものです。

いかかでしょうか。「輸出競争力」なるものがある(伸びる)なら、1人あたりGDPも、伸びるはずです。グラフは右上がりになるはずです。しかしそのような関係は全く見られません。
「アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダのような先進工業国においても、そのような関係は見られなかったp186」のです。
では、日本の高度成長期(発展途上国→先進国へ)の時代はどうだったのでしょうか。


やはり、60年代も、70年代も、「輸出競争力」なるものと、「1人あたりGDP伸び率」は全く関係ない…というより、むしろ、「輸出シェアが伸びると、1人あたりGDP伸び率は下がる」関係になっていることがわかります。「輸出が成長しているのに、国民所得は同じように伸びない!!!」とんでもない(?)状態ですね。
「輸出が伸びたら、強い国」、「輸出(貿易黒字)はもうけ」は間違いなのです。それがわからないので、新聞記事では、「円高傾向が続いた日本よりも輸出競争力が向上した」とか、「日本は(筆者注:貿易黒字が)91億ドルで6位にとどまった」などという表現が出てきます。「貿易黒字はもうけ」だから、「とどまる」という否定的表現が出てきます。
経済新聞でさえ、こうなのだから、「貿易黒字はもうけ」という神話は永久に払拭されそうもありません。
「一国の経済水準は、輸出部門ではなく,国内部門の生産性によって左右されるp188」のです。
<提案>
貿易黒字は a trade surplus です。貿易赤字は、a trade deficit です。足すと「0円」になります。輸出>輸入なら黒字、輸出<輸入なら赤字と言います。
貿易(モノ・サービス)をすると、必ず同額のカネが動きます。ですから、貿易黒字=資本(カネ)収支赤字、貿易赤字=資本(カネ)収支黒字になります。
企業の黒字はblack、赤字はredといいます。こちらは「もうけ・損」のことです。
貿易黒字、赤字と書くから、企業の「黒字・赤字」とおなじように、「もうけ・損」と書いてしまいます。
貿易黒字は、貿易超過(資本流出)・輸出超過、貿易赤字は、輸入超過(資本流入)と書いてはどうでしょうか。これなら、「善し悪し」とか、「もうけ・損」というニュアンスは感じなくなります。
本当は、資本流出といっても、日本のカネが海外に出て行くわけではないのですが…「超過」をプラス・マイナス0にする響きがあるのではないでしょうか。
何か適切なネーミングはありませんか?
韓国の今年1~6月の貿易黒字が266億ドルとなり、上半期ベースで初めて日本を上回ったことがわかった。1~6月の韓国ウオン相場は…ウオン安基調が持続。円高傾向が続いた日本よりも輸出競争力が向上したのが原動力になった…。
…1~6月の韓国の貿易黒字額は…ドイツに次いで2番目に大きかった。日本は91億ドルで6位にとどまった。
<貿易黒(赤)字は経済成長とは無関係>
今まで何度も、「貿易黒字はもうけではない」こと、「貿易黒(赤)字と経済成長は関係がない」「貿易黒字は不況になると増える」ことを示してきました。「国と国は、企業と違い、競争の主体ではない」ことも述べました。
しかし、何度説明しても、一般の方には、通じないようです注)。ポール・クルーグマンも、そのような誤解を取り除くことが、経済教育の目的と言っていますね。
<リカード比較優位 比較生産費 16 貿易は国際競争??>参照。
貿易黒字額が伸びること=輸出競争力とします(便宜上)。その国の、世界に占める貿易黒字のシェアが、何パーセント伸びたかを見ます。世界の貿易黒字の中での、シェアが伸びれば伸びるほど、その国が「強い」「輸出競争力がある」となります。
そのような強さがあれば、当然、その国のGDP(国民総生産=国民総所得)も伸びているはずですが…
正解は、そんな「輸出競争力」など、定義すらできないし、実態もないのです。
注)倉西雅子 ブログ参照。「中国が一人勝ちする自由貿易主義という難題」
専門は、政治学だそうです。
http://blog.goo.ne.jp/kuranishimasako/e/7d500efdc954e1becb6f917880ad74f4
今回は、貿易黒字シェアの伸び率と、1人あたりGDPの関係を示したグラフをご紹介します。
参考・引用文献 原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』新潮選書2009グラフも
図は、1978年~2000年までの、「輸出競争力」なるものと、「1人あたりGDPの伸び率」を掛け合わせたものです。

いかかでしょうか。「輸出競争力」なるものがある(伸びる)なら、1人あたりGDPも、伸びるはずです。グラフは右上がりになるはずです。しかしそのような関係は全く見られません。
「アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダのような先進工業国においても、そのような関係は見られなかったp186」のです。
では、日本の高度成長期(発展途上国→先進国へ)の時代はどうだったのでしょうか。


やはり、60年代も、70年代も、「輸出競争力」なるものと、「1人あたりGDP伸び率」は全く関係ない…というより、むしろ、「輸出シェアが伸びると、1人あたりGDP伸び率は下がる」関係になっていることがわかります。「輸出が成長しているのに、国民所得は同じように伸びない!!!」とんでもない(?)状態ですね。
「輸出が伸びたら、強い国」、「輸出(貿易黒字)はもうけ」は間違いなのです。それがわからないので、新聞記事では、「円高傾向が続いた日本よりも輸出競争力が向上した」とか、「日本は(筆者注:貿易黒字が)91億ドルで6位にとどまった」などという表現が出てきます。「貿易黒字はもうけ」だから、「とどまる」という否定的表現が出てきます。
経済新聞でさえ、こうなのだから、「貿易黒字はもうけ」という神話は永久に払拭されそうもありません。
「一国の経済水準は、輸出部門ではなく,国内部門の生産性によって左右されるp188」のです。
<提案>
貿易黒字は a trade surplus です。貿易赤字は、a trade deficit です。足すと「0円」になります。輸出>輸入なら黒字、輸出<輸入なら赤字と言います。
貿易(モノ・サービス)をすると、必ず同額のカネが動きます。ですから、貿易黒字=資本(カネ)収支赤字、貿易赤字=資本(カネ)収支黒字になります。
企業の黒字はblack、赤字はredといいます。こちらは「もうけ・損」のことです。
貿易黒字、赤字と書くから、企業の「黒字・赤字」とおなじように、「もうけ・損」と書いてしまいます。
貿易黒字は、貿易超過(資本流出)・輸出超過、貿易赤字は、輸入超過(資本流入)と書いてはどうでしょうか。これなら、「善し悪し」とか、「もうけ・損」というニュアンスは感じなくなります。
本当は、資本流出といっても、日本のカネが海外に出て行くわけではないのですが…「超過」をプラス・マイナス0にする響きがあるのではないでしょうか。
何か適切なネーミングはありませんか?
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