リカード 比較優位 比較生産費説 その14
<リカード 比較優位 比較生産費説 その14>
<輸出増=輸入増>
清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152
間違い×「生産量が増え,交換すれば利益を得る」
正解 ○「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
もう一点,別な視点で,貿易を考えてみましょう。
特化する前の,両国の生産量・状態は次のようになります。


特化すると,次のようになります。変化をグラフにしてみます。


それぞれ,a点からA点へ,b点からB点へ,比較優位産業へと特化します。この,特化した時に,同時に成り立つのが,比較劣位の産業は,生産量が0になるということです。A点では,ウールは0,B点では,ワインが0です。
「リカード・モデル」は,両国が,比較劣位産業を縮小し,比較優位な産業に特化(部分特化もあります)しなければ,成り立ちませんでした。しかしその一方,ポルトガルの人は,ワインだけ消費するわけにはいかず,イギリスの人も,ウールだけ消費するわけにはいきません。お互いに特化した商品を交換(売買)しなければいけないのです。これが貿易でした。
つまり,輸出の裏には,必ず輸入があり,輸入の裏には必ず輸出があるのです。ということは,「輸出を伸ばし,輸入を抑える」のは,理論上,不可能になります。
輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。
図50 浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309

棒グラフの左側は輸出,右側は輸入
日本の貿易額は,年を追って拡大してきました。その際,「輸出の拡大と輸入の拡大」はセットになっていることがわかりますか?「輸出を拡大する=特化する」ということは,「比較劣位産業を縮小しなければばらない=輸入を拡大する」ことなのです。日本は,繊維製品(当初),鉄鋼,造船,家庭電化製品,自動車に特化する一方,繊維製品・石油・鉄鉱石・石炭・農業産品など,劣位産業を縮小し,輸入を拡大してきたのです。
実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259

世界の中で比較しても同様です。「一人あたり輸出額の大きい国は,輸入額も大きい,輸出額が小さければ,輸入額も小さい」という相関関係がみてとれると思います。
逆に,「輸出をしない」ということを選択すれば,「輸入をしない」ということと同じです。自給自足ですね。当然,経済規模は縮小します。いずれにしても,「輸出を伸ばし,輸入を抑える」という幼稚産業保護に基づく政策は,実現できないことが分かりました。
このように,貿易は,輸出と輸入を通した,「ゼロサム・ゲーム(勝つか負けるか)」の戦いではありません。ゼロサム・ゲームは,増えないモノとか資源とかを奪い合うことです。
16世紀~のヨーロッパ重商主義は,「一国の富は,貨幣としての金や銀であり,したがって富の増大とはそれらの蓄積である」という,「重金主義」を主張しました。一説によると,人類がこれまでに産出した「金」は50mプール3杯分だそうです。金の産出量は,今後も,劇的に増えることはありません。これを国と国で奪い合うのですから,ゼロサム・ゲームになります。

しかし,貿易は違います。資源(労働力),資本,技術力を有効活用し,量を増やすのです。

「勝つか負けるか」ではなく,両者ともに,「WIN-WIN」の関係になれる,それが貿易です。
<輸出増=輸入増>
清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152

間違い×「生産量が増え,交換すれば利益を得る」
正解 ○「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
もう一点,別な視点で,貿易を考えてみましょう。
特化する前の,両国の生産量・状態は次のようになります。


特化すると,次のようになります。変化をグラフにしてみます。


それぞれ,a点からA点へ,b点からB点へ,比較優位産業へと特化します。この,特化した時に,同時に成り立つのが,比較劣位の産業は,生産量が0になるということです。A点では,ウールは0,B点では,ワインが0です。
「リカード・モデル」は,両国が,比較劣位産業を縮小し,比較優位な産業に特化(部分特化もあります)しなければ,成り立ちませんでした。しかしその一方,ポルトガルの人は,ワインだけ消費するわけにはいかず,イギリスの人も,ウールだけ消費するわけにはいきません。お互いに特化した商品を交換(売買)しなければいけないのです。これが貿易でした。
つまり,輸出の裏には,必ず輸入があり,輸入の裏には必ず輸出があるのです。ということは,「輸出を伸ばし,輸入を抑える」のは,理論上,不可能になります。
輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。
図50 浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309

棒グラフの左側は輸出,右側は輸入
日本の貿易額は,年を追って拡大してきました。その際,「輸出の拡大と輸入の拡大」はセットになっていることがわかりますか?「輸出を拡大する=特化する」ということは,「比較劣位産業を縮小しなければばらない=輸入を拡大する」ことなのです。日本は,繊維製品(当初),鉄鋼,造船,家庭電化製品,自動車に特化する一方,繊維製品・石油・鉄鉱石・石炭・農業産品など,劣位産業を縮小し,輸入を拡大してきたのです。
実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259

世界の中で比較しても同様です。「一人あたり輸出額の大きい国は,輸入額も大きい,輸出額が小さければ,輸入額も小さい」という相関関係がみてとれると思います。
逆に,「輸出をしない」ということを選択すれば,「輸入をしない」ということと同じです。自給自足ですね。当然,経済規模は縮小します。いずれにしても,「輸出を伸ばし,輸入を抑える」という幼稚産業保護に基づく政策は,実現できないことが分かりました。
このように,貿易は,輸出と輸入を通した,「ゼロサム・ゲーム(勝つか負けるか)」の戦いではありません。ゼロサム・ゲームは,増えないモノとか資源とかを奪い合うことです。
16世紀~のヨーロッパ重商主義は,「一国の富は,貨幣としての金や銀であり,したがって富の増大とはそれらの蓄積である」という,「重金主義」を主張しました。一説によると,人類がこれまでに産出した「金」は50mプール3杯分だそうです。金の産出量は,今後も,劇的に増えることはありません。これを国と国で奪い合うのですから,ゼロサム・ゲームになります。

しかし,貿易は違います。資源(労働力),資本,技術力を有効活用し,量を増やすのです。

「勝つか負けるか」ではなく,両者ともに,「WIN-WIN」の関係になれる,それが貿易です。
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