リカード 比較優位 比較生産費説 その3

<リカード・比較生産費説 その3>

<日常生活は比較生産そのもの>

清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152.その2

 では、我々は、どんな仕事に特化するでしょうか。「塾の先生」は、「パン」も作ろうと思えば作れます。「パンや」さんも、時間はかかるけれど、自分のこども(中学生)に数学を教えることは可能です。ですが、「塾の先生」授業に特化し、8時間「20人分」の授業をこなした方が、下手で、まずい「1個の食パン作り」に2時間かかるよりも、生産性が高いです。
 パン屋さんも、8時間「100人分」のパンを作った方が、自分の子どもに2時間数学を教えるよりも、生産性が高いです。

 サミュエルソンという経済学者は、このことを「弁護士とタイピスト」の例で話します。

『経済学(第11版) 下巻』岩波書店 1981年の内容
 その町で一番有能なA弁護士が、一番タイプを打つのが上手だった場合です。秘書は、両方の仕事(弁護士・タイプの仕事)で、A弁護士よりも不得意で、遅いです。それでも、秘書が「弁護士の仕事をする」とはならないことがわかると思います。
 この場合、弁護士は、弁護士の仕事に特化し、タイプは秘書に任せるはずです。そのほうが、弁護士の仕事も、タイプの仕事も効率よく生産できます。

 もっと簡単にします。

 お母さんは、アイロンがけも、洗濯物たたみも、9歳の娘よりは早いです。9歳の娘はアイロンがけも、洗濯物たたみも、お母さんより、圧倒的に遅いのですが、どちらかというと、洗濯物たたみの方が早くできます。

          洗濯物をたたむ     アイロンがけ
   お母さん     ◎             ◎
     娘       ○             △

 生産性(早く終わらす)を考えたら、お母さんがアイロンがけに特化し、娘が洗濯物をたたんだ方が、一番早く終わります。さらに、アイロンがけをすべてした後、お母さんも洗濯物たたみに加わると、もっと早く終わります

 比較生産費説(比較優位論)というのは、このような「効率追求」のことで、我々が、いつもやっていること です。
 「1件1件の取引成立ごとに銀行へ行く」より、「その日の取引を全部まとめて、銀行に1回行く」ほうが、効率よいですよね。これが、比較生産費(コスト比較)説です。

<企業も比較生産>


日立製作所 川村隆 『総合電機を続けますか 得意分野に重点を置きます』読売新聞H21.8.25
 今までは総合電機メーカーとして…どれかが大きく伸びるのを待つ手法で…不得意分野でも頑張ってきたことが財務の健全性を損ね…過去最悪の赤字に陥り…危機に直面しています。
 今後は「社会イノベーション」事業に重点を置きます…ハイブリッド鉄道車両や原子力発電システムなどです。我が社の得意分野であり…伸びが期待できます。
 私や副社長3人が…本体に復帰したのは、こうした「全体最適」を実現するためです。…何としても黒字にします。


 これも、『比較優位』です。「得意分野に資源と資本を集中する」のがその要諦です。どこの企業でも当たり前に行われていることです。


 国際経済を語る場では、「比較優位」という言葉・概念は、「意識せずに呼吸すること(当たり前すぎて気付かない)」と同じように「自明のこと」です。
 竹森俊平が、藤本隆弘と対談している本から、「比較優位」という言葉が使われている部分を、一部抜粋してみましょう。

竹森俊平『経済危機は9つの顔を持つ』日経BP社 2009

P252
竹森 日本は最初、エレクトロニクスに強かったけれど、それは生産技術がモジュラー化(筆者注:部品を組み合わせて作る生産方式)していくので、比較優位を低コストの新興国に奪われる注)。それで結局、比較優位のあるところ、とくに自動車などに特化してきた(筆者注:インテグラル=高度なすり合わせ型)というお話です。

P253
藤本 日本のものづくり現場は、概してインテグラル・アーキテクチャーの製品において比較優位があるといってよいでしょう。

P262
藤本 今回グローバル投機経済はやっぱりだめだとなりましたが、長い目で見れば、実体経済のグローバル化の流れは変わらないと思います。そうなれば、リカード的な意味での比較優位が貫徹する。つまり生産性の対外的な相対比の高い現場が勝ちやすいということです。

P275
竹森 結局は比較優位の問題なんです。マーケットが広がっていく中で、ムダなものというか、ダメなものが落ちていく。すると日本の強みは擦り合わせにあるということですね


 注)自社ブランドを持たず、複数の企業から、パソコンやゲーム機などの組み立てを請け負う、EMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)市場が拡大の一途です。生産に加え、開発まで請け負う企業も増加中です。08年のEMS市場規模は、約27兆円、台湾の最大手は売上高が約5兆4000億円に達しています。参考文献 「きょうのことば」日経H21.9.27
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