日本経済新聞 21年4月7日

高橋哲史 『中国貯蓄率最高の28.8%』 日経21年4月7日

 中国の家庭で、消費よりも貯蓄を優先する傾向が続いている。2008年の家計貯蓄率は28.8%と過去最高を記録した。・・・企業の稼いだカネが家計に回りにくい構造が改善していないためだ。貯蓄率は家計の収入から、税金などを差し引いた可処分所得のうち、モノやサービスの消費に使わず貯蓄に回した割合。日本では高齢化を背景に低下しており、3%台で推移している。・・・世界同時不況で上海や香港の株価が低迷し、魅力的な投資先が見つからないことが貯蓄率上昇の一因最大の理由は、医療や年金など社会保障制度の未整備にある。 

記事の合っているところは青色間違いは赤色で示しました。
 貯蓄とは、経済学では、消費+税(社会保険など含む)に回らなかったおカネすべてを示します。タンス預金だろうが、貯蓄だろうが、株式・社債・国債の購入だろうが、とにかく、モノ・サービスの消費に回らなかったおカネすべての事です。

ですから、記事の世界同時不況で上海や香港の株価が低迷し、魅力的な投資先が見つからないことが貯蓄率上昇の一因明らかに間違いです。株や社債、民間保険はすべて貯蓄として扱います。カネの保持形態(資産)が変わっただけで、総額は変わらないからです。

 で、なぜ消費ではなく、貯蓄に回るかというと、それは、「最大の理由は、医療や年金など社会保障制度の未整備にある」からです。私たちが貯金(預金)するのは、将来の年金・介護・医療・子どもの学費・生活費などに備えるからです。将来に対する不安がなければ、貯蓄はしません。記事によると、「中国の医療保険は整備が始まったばかりで十分に機能していないとの見方も多い」そうです。中国は国民所得が伸びると、その比率以上に貯蓄しているのです。(日本の高度成長期も同じでした)実際に、所得が2倍になったら、全部使ってしまわず、貯蓄しますよね。

 さて、消費(税含む)せず貯蓄に回ると、国内総生産GDP=国民総所得の相当部分が、使われないことになります。その貯蓄相当部分を消費するのは、①政府(地方含む)の投資②企業の投資、そして③外国です。③の外国が消費するのを、「輸出」=貿易黒字と言います。貿易黒字が増えるのは、その国の国民が、所得をすべて国内で消費せず、貯蓄するからです。

 ですから、国民の貯蓄超過=貿易黒字なのです。下のグラフ『週刊ダイヤモンド2009.4.4 p38』を見て下さい。
中国(アジア)日本などの貯蓄超過=アメリカ・EUなどの貯蓄不足となります。アメリカは、貯蓄不足なので、世界から投資を受け入れ(=消費超過)、資本収支黒字=経常(貿易含む)収支赤字になっているのです。

貯蓄投資バランス
無題『週刊ダイヤモンド2009.4.4 p38』

アメリカの経常(貿易)赤字=世界の経常(貿易)黒字であり、同時にアメリカの経常(貿易)赤字=資本収支黒字=アメリカの貯蓄不足(貯蓄<投資)なのです。

記事では「『中国の過剰な貯蓄が金融危機の原因になった』との米国からの批判」とありますが、アメリカの貯蓄不足を中国などの新興国・産油国がファイナンスしているとも言え(米国民のカネの使いすぎ)、どっちもどっちでしょう。ただ、そのカネの流れが思い切り替わったのが、昨年来の金融危機=世界同時不況なのです。




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