資料集の間違い(13) 帝国書院『アクセス現代社会2009』

<農業は聖域>

浅川芳裕(月刊「農業経営者」副編集長)『民主所得補償は日本農業を滅ぼす』週刊文春
2009.9.3
(注:番号は筆者が記入)

…国際社会に共通する食糧安全保障の考え方は3点ある。
① 国民が健康な生活を送るための最低限の栄養を備えているか。
②貧困層が買える価格で供給できているか。
③不慮の災害時でも食料を安全に供給できるか。

将来食料が足りなくなる、どうしよう」という漠然たる不安を前提として議論をしている先進国は日本だけだ。

 今やメジャーになった「自給率」という言葉もまやかしだ。…農水省が定義した「国内で供給される食料のうち国産でどの程度まかなえているか」を示す指標だ。一人一日当たりの国産供給カロリーを供給カロリーで割って算出するが、実は世界でこの指標を使っているのは日本だけ、という事実は知られていない

…このカロリーベース自給率を1%あげるため…農水省は巨額の予算をかけて「自給率キャンペーン」を繰り広げてきた

 筆者はこの問題を指摘し続け、農水省内の特命チームすら「自給率は指標として意味がない」と指摘するようになったが、「食料がなくなったら困るから自給率をあげてほしい」という国民の声は消えない。与野党問わず、農村票を文字通り「票田」として確保する政策のために、食料不安を煽ってきた成果といえる…。


 農水省キャンペーンを、資料集はそのまま掲載します。

帝国書院『アクセス現代社会2009』p105~106 p257~258
…世界の人口増加や発展途上国の所得上昇などにより、世界的な食糧不足が懸念されている中、日本が今後どうやって自国の食糧をまかなってゆくか、食糧安全保障の政策がいっそう重要になってくる。…不測の事態が発生して食料輸入がすべて途絶えた とすると…穀物自給率は…日本は先進国中かなり低い。…バイオ燃料向けの穀物需要の増大で、とうもろこしなどの価格が高騰している。…食糧安全保障の観点からも、自給率の向上や輸入先の確保など適切な政策が求められる。 


 私が、このブログで指摘したように、 「自給率UP」には、全く意味がないことがお分かりでしょうか。それでも、「自給率」にこだわるのであれば、「生産額自給率」は、65%(平成20年農水省データ)です。日本産の農・漁業産品に対して支払われた額です。十分に「高い」です・・・・。・・・・でも、どちらにも、本当は意味がありません

<EUの補償制度と、民主党案の補償制度>

浅川芳裕(同)
 EUでは、農地の面積あたりで計算して補償がなされ、1ヘクタール当たり日本円で5万円ほどだ。10ヘクタールの農地を持つ農家でも保証金は年間50万円…。
 …民主党案では、補償は生産コストに対してなされる。日本で小麦を生産する…コストは1ヘクタールで約60万だが、国際価格では約6万円の売り上げにしかならない。…この差額分、54万円の赤字を丸々補填するのである。


 日経 H21.8.6
…経済協力開発機構(OECD)によると、日本の農業補助金は農家総収入の49%に上り、欧州連合(27%)、米国(10%)に比べて高い。…「補助金漬け」…


 そうまでして生産した国産小麦の品質はどうなのでしょう?

浅川芳裕(同)
 国内産小麦の品質が外国産に比べて低いことは、農水省と農業団体も公式に認めている。…飲食業界関係者が本音を明かした。「小麦はパスタやうどんなど麺類に加工するが、たとえ外国産小麦の半値でも国内産は使いたくない讃岐うどんでさえ95%がオーストラリア産小麦です」
 
 長年にわたり、コメの代わりに小麦や大豆を作るように国が指導し、転作奨励金を累計七兆円も使った結果がこれである。補償制度というもの…。


 農水省の予算は、毎年1.5兆円程度です。それが、リーマン・ショック後の経済対策で、さらに1兆円の補正予算を得ました。どこに使うか、おわかりでしょう。「ばらまき」しか、道はないのです。

浅川芳裕(同) 
世界では、小麦や大豆、トウモロコシなどの主要農作物の生産量は飛躍的に増えている事実をご存じだろうか。…国内生産の6割は、日本の全農家のうちわずか約7%の「自立した農家」によるものだ


<農家は、利益をねらう> 
 その農家性善説に対し、衝撃的なレポートがあります。

神門義久『平成検地で農地行政刷新』日本経済新聞H21.8.27(グラフも)
 一般に、農地所有者というと、「米作を中心に生計をなす昔ながらの純朴な農家」をイメージしがちである。遊休農地も、担い手不足や農産物価格の低迷のために泣く泣く耕作放棄していると思いがちである。残念ながら、それらの印象は、現実とかけ離れている

 日本に稲作農家は200万戸以上あるが、稲作所得を主な収益源にしている農家は8万戸にすぎない。残りの圧倒的多数は…細々と耕作を続けるものの、真の狙いは農外転用などによる「濡(ぬ)れ手で粟(あわ)」の収入であり、いわば「偽装農家」といっても過言ではない。さらに、元農家の子息で、農地を相続したものの、都会暮らしですっかり耕作意欲を失った「土地持ち非農家」も120万戸ある。
…巨額の農業補助金で整形された農地は、住宅地や商業施設の建設の絶好の候補地である。また、産業廃棄物処理場が慢性的に不足しており、不正な投棄の対象としても農地が狙われている。
…参入規制や担い手不足が日本農業を停滞させているのではない。農家であれ、企業であれ、非営農目的での農地の所有や利用がまん延していることこそが真の問題である。

神門義久『平成検地で農地行政刷新』日本経済新聞H21.8.27

 農業は聖域であり、既得権益を守る業界体質や、官僚制の弊害など、あらゆる問題が山積しています。
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