GDP <内需か外需かその2>

<内需か外需かその2>

『外食産業アジアへ』読売新聞 H21.8/6
シンガポールに日本の外食産業が相次いで進出している。日本の外食市場は少子高齢化で先細りが懸念されるため、シンガポールを拠点に東南アジアやオセアニアへの展開に活路を求める狙いだ。


記事では、「和民、吉野家、つぼ八、築地銀だこ、一風堂、デニーズ、大戸屋」が紹介されています。
 
『優優統合が促す危機シフト』日経h21.8.10
…キリンホールディングスとサントリーホールディングス…単独でも存続可能だろうが、内需の減退を踏まえ…世界市場とりわけ成長著しいアジア市場の「キリトリ」を図る。


 さて、前回、われわれが作る総生産(GDP)=「モノ・サービス」のうち、モノ作り産業は外需、つまり輸出が柱になることを説明しました。また、サービス業でも、海外に進出できる企業は、今後積極的に外需を取り込む戦略を持つことがわかりました。
 
 以上の状況から、次のことがわかります。モノは簡単に輸出入できます。一方、サービスは、①輸出入できるサービスと、②輸出入できないサービスがあるのです。
 ②輸出入できないサービスには、国内の卸・小売サービス(スーパー、商店など)や、国内の運送サービス(宅配便など)があります。ほかにも、散髪や医療サービス、電気・ガス・鉄道などもそうです。
 これらは、「輸入」することができません。これらを、「非貿易財」といいます。(参考文献 岩田規久男『国際金融入門 新版』岩波書店2009 p108~)
 
 さて、これらの産業は、「人口減」時代にどのように立ち向かう必要があるのでしょうか。

<GDPを産み出す>

GDPは次の3つの要素で構成されます。
GDP

① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)

 このうち、①労働量は少子高齢化により、減ることがわかりました。ですから、「モノ・サービス」のうち、モノ作り産業と、サービス輸出産業(運送・金融など)は外需、つまり輸出を柱にする方法で生き延びてゆくこと=付加価値=もうけを生み出すことを選択しなければなりません。

 一方、国内の卸・小売サービス(スーパー、商店など)や、国内の運送サービス(宅配便など)、散髪や医療サービス、電気・ガス・鉄道といった「非貿易財」は、縮小する国内人口のなかで、付加価値=もうけを生み出すしか方法はありません。それは可能でしょうか?それには、③技術力(生産性)のアップしか、方法はないのです。

 日本の高度経済成長時代は,この技術力を,欧米,特にアメリカから導入していました。「欧米に追いつけ追い越せ」という時代だったのです。

東学 資料集『資料政・経2008』 2008年 p313
技術力 東学 資料集『資料政・経2008』 2008年 p313
 この時代は,欧米から,技術を導入すれば,自動的に生産性は上がっていたのです。1960年から1970年までの,GDP成長の要因のうち,45%を占めるのが,技術進歩だったのです。(岩田規久男『マクロ経済学を学ぶ』ちくま新書 1996 p232)

 もちろん,これが成長の一番の要因です。また,日本人自身が,技術を吸収し,それを社会的成長に結びつけてゆく,優れた能力を持っていたことも欠かせませんでした。

 このように日本は欧米技術の導入によって,GDPを増加させたのですが,現在はどうでしょうか。
 実は,日本の技術力は,すでに世界最高水準なのです。エネルギーの効率的使用も,GDPあたりのエネルギー消費量(少ない方がよい)も,世界一の水準と言って差し支えありません。

とうほう 資料集『フォーラム現代社会2008』 2008年 p35
エネルギー消費 とうほう 資料集『フォーラム現代社会2008』 2008年 p35
    
とうほう 資料集『フォーラム現代社会2008』 2008年 p35
1人当たりエネルギー消費 とうほう 資料集『フォーラム現代社会2008』 2008年 p35
  
 「欧米に追いつけ追い越せ」の時代はとっくに過ぎました。「欧米の技術を導入すれば,経済成長できた」時代ではありません。すでに,世界一の水準にある日本は,今後,独自に,新たな技術や,ビジネスのやり方を開発していかなければなりません
 
 資本主義発展の原動力は「イノベーション=革新」です。日本では,第3次産業(サービス業)では,アメリカに比べて,まだまだ生産性が低いのです。
 今,地方の駅前中心商店街が,シャッター通りとなっています。そして,郊外型の大型スーパーが盛況です。人通りの少ない通りで,お客さんを待つのと,次から次へとお客さんが来るのとでは,どちらの生産性が高いかは明白です。①労働量と,②資本ストックを最大限に活用するのが,③技術力(生産性)なのです。

<まだまだ低いサービス業の労働生産性>

 日本の第3次産業は、アメリカに比べ、生産性が低いことが指摘されています。ということは、これらの業界では、「効率」を追求すれば、もっともっと生産性を上げる余地があるということです。
日経H21.8.10(グラフ)
日経21.8.10 労働生産性比較
 また、武田薬品工業社長 長谷川閑史氏は、次のように述べています。
日経H21.8.10
非製造業の生産性向上は遅々として進んでいない。味や品質に問題はないのに、曲ったキュウリは捨ててしまう生産農家に象徴されるように、消費者は「過剰」を求めてきた。その転換がカギを握る。


 サービス業の生産性を上げるために,ITチップをすべての商品に貼り付けることにより,スーパーで,買い物かごをレジに置いただけで,自動的に計算をするシステムが開発されています。他にも,人間型ロボットの導入により,人口減を補うことも可能です。
 
 さらに,技術だけではなく,規制撤廃や,教育の自由化など,「イノベーション」を起こすことが必要なのです。他人と同じではなく,「他者と違う」モノ・サービス・制度作りが,今後の日本のGDPを担うのです。「他との違い」が商品を産み出すのです。大量生産,大量消費の時代ではありません。  
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