新聞を解説(26) 『外食産業アジアへ』読売新聞 H21.8/6
<内需か外需かその1>
『外食産業アジアへ』読売新聞 H21.8/6
シンガポールに日本の外食産業が相次いで進出している。日本の外食市場は少子高齢化で先細りが懸念されるため、シンガポールを拠点に東南アジアやオセアニアへの展開に活路を求める狙いだ。
記事では、「和民、吉野家、つぼ八、築地銀だこ、一風堂、デニーズ、大戸屋」が紹介されています。
『優優統合が促す危機シフト』日経H21.8.10
…キリンホールディングスとサントリーホールディングス…単独でも存続可能だろうが、内需の減退を踏まえ…世界市場とりわけ成長著しいアジア市場の「キリトリ」を図る。
さて、日本は、昨年の「リーマン・ショック」以降、外需が落ち込み、大変な不況になりました。そのため、製造業を中心に在庫調整を進め、その過程で「派遣切り」などの雇用調整が行われました。
景気対策による公共投資の拡大や、中国を中心とする外需が持ち直したことにより、2009年4~6月期のGDPは、5四半期ぶりにプラス3.7%(年率換算)に回復したことが伝えられました(内閣府8月17日発表)。
では、今後日本の経済成長は、外需頼みになるのでしょうか、それとも、内需拡大に依存するのでしょうか。答えは、前者外需しかありません。それほど、「少子高齢化」は、日本に決定的なダメージをもたらすのです。内需は減り続けるのです。上記の外食産業、キリン・サントリー統合は、外需シフトへの布石なのです。
<GDPを産み出す>
GDPは次の3つの要素で構成されます。
① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)
GDPは,①労働力,②資本ストック,③技術力をかけあわせたものです。

現在,日本のGDPは,約500兆円ですが,今後,どのように推移していくと考えられるでしょうか。①労働量です。日本は,少子化・高齢化が進んでいます。現在のままでは,明らかに「減る」ことは,間違いありません。15才から,64才までを生産年齢人口と言いますが,今後その実数も,人口に占める割合も,大変な勢いで低下していきます。
帝国書院『アクセス現代社会2008』 2008年 p50

この図を見れば分かりますが,日本は1960年~1970年代の高度成長期には,15~64才の人口が増えていることが分かります。その実数・比率は,バブル経済が崩壊する1990年代初頭まで増加していました。さらに,全人口数も,大変な伸びを示していることがわかります。GDPは,だまっていても,自動的に増加できる時代だったのです。伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏は,この時代について次のように述べています。
『週間朝日』2008.5.23号 p122
「当時(1955~75年)の実質経済成長率は年平均で9%,名目経済成長率は16%でした。その原動力は人口増加で,毎年約110万人ずつ増えていた。これは当時の北九州市の人口に匹敵します。毎年北九州市が新たにできて,その分だけ,胃袋も衣服や住宅の需要も増えた。経済成長をしたのは当たり前ですよ」
ところが,2005年以降,日本は,人口減少時代に突入しました。子どもの出生数が減り,それとともに,高齢者の人口に占める割合が高くなります。高齢化です。
東京書籍 資料集『最新ダイナミックワイド 現代社会』 2007年 p77

20年後(2025年)には、850万人も、人口が減ります。そして、働き手である、「生産年齢人口」は16%も減少します。
一方、中国は、国内総生産で日本と並び(今年もしくは来年)、しかも13億人を超える人口を抱えています。インドを加えると、25億人市場です。東南アジアを含めると、この地域には、10億人の「新中流」層が控えています。
携帯電話の市場を見て見ましょう。グラフから、その市場の規模の差は、一目瞭然です。
日経H21.8.18(グラフも)

…2008年に中国で売れた携帯電話端末は世界最多の1億5800万台。日本の4倍だ。…普及率は…全国平均は5割強。内陸部の新規需要と沿岸部の買換え需要が成長を支える。
日経H21.8.19『走る鉄道ビジネス』
…日本の鉄道車両市場は年2000億円規模。…新規路線の伸びは望めず、人口も減少傾向。将来市場は頭打ちだ。…世界の鉄道関連産業の市場規模は…2005~07年の平均で…16兆円。16年には…20兆円に達するとみられる。人口が急増する新興国での輸送能力拡大…
日経H21.8.13『大機小機』
…購買力平価でみた実質GDPで、今年初めて、日本とアジアの合計が米国とユーロ圏合計を上回る予想だ。日本とアジアが世界を動かす時代が始まろうとしている。
外食産業、飲料産業、パナソニックと三洋の統合が、なぜ行われたか明らかでしょう。
1億2800万の人口市場に、乗用車メーカーだけで、8社あります。総合家電メーカーも7社あります。その生産能力は、国内向け(内需)だけだとすると、明らかに「過剰」なのです。
『外食産業アジアへ』読売新聞 H21.8/6
シンガポールに日本の外食産業が相次いで進出している。日本の外食市場は少子高齢化で先細りが懸念されるため、シンガポールを拠点に東南アジアやオセアニアへの展開に活路を求める狙いだ。
記事では、「和民、吉野家、つぼ八、築地銀だこ、一風堂、デニーズ、大戸屋」が紹介されています。
『優優統合が促す危機シフト』日経H21.8.10
…キリンホールディングスとサントリーホールディングス…単独でも存続可能だろうが、内需の減退を踏まえ…世界市場とりわけ成長著しいアジア市場の「キリトリ」を図る。
さて、日本は、昨年の「リーマン・ショック」以降、外需が落ち込み、大変な不況になりました。そのため、製造業を中心に在庫調整を進め、その過程で「派遣切り」などの雇用調整が行われました。
景気対策による公共投資の拡大や、中国を中心とする外需が持ち直したことにより、2009年4~6月期のGDPは、5四半期ぶりにプラス3.7%(年率換算)に回復したことが伝えられました(内閣府8月17日発表)。
では、今後日本の経済成長は、外需頼みになるのでしょうか、それとも、内需拡大に依存するのでしょうか。答えは、前者外需しかありません。それほど、「少子高齢化」は、日本に決定的なダメージをもたらすのです。内需は減り続けるのです。上記の外食産業、キリン・サントリー統合は、外需シフトへの布石なのです。
<GDPを産み出す>
GDPは次の3つの要素で構成されます。
① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)
GDPは,①労働力,②資本ストック,③技術力をかけあわせたものです。

現在,日本のGDPは,約500兆円ですが,今後,どのように推移していくと考えられるでしょうか。①労働量です。日本は,少子化・高齢化が進んでいます。現在のままでは,明らかに「減る」ことは,間違いありません。15才から,64才までを生産年齢人口と言いますが,今後その実数も,人口に占める割合も,大変な勢いで低下していきます。
帝国書院『アクセス現代社会2008』 2008年 p50

この図を見れば分かりますが,日本は1960年~1970年代の高度成長期には,15~64才の人口が増えていることが分かります。その実数・比率は,バブル経済が崩壊する1990年代初頭まで増加していました。さらに,全人口数も,大変な伸びを示していることがわかります。GDPは,だまっていても,自動的に増加できる時代だったのです。伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏は,この時代について次のように述べています。
『週間朝日』2008.5.23号 p122
「当時(1955~75年)の実質経済成長率は年平均で9%,名目経済成長率は16%でした。その原動力は人口増加で,毎年約110万人ずつ増えていた。これは当時の北九州市の人口に匹敵します。毎年北九州市が新たにできて,その分だけ,胃袋も衣服や住宅の需要も増えた。経済成長をしたのは当たり前ですよ」
ところが,2005年以降,日本は,人口減少時代に突入しました。子どもの出生数が減り,それとともに,高齢者の人口に占める割合が高くなります。高齢化です。
東京書籍 資料集『最新ダイナミックワイド 現代社会』 2007年 p77

20年後(2025年)には、850万人も、人口が減ります。そして、働き手である、「生産年齢人口」は16%も減少します。
一方、中国は、国内総生産で日本と並び(今年もしくは来年)、しかも13億人を超える人口を抱えています。インドを加えると、25億人市場です。東南アジアを含めると、この地域には、10億人の「新中流」層が控えています。
携帯電話の市場を見て見ましょう。グラフから、その市場の規模の差は、一目瞭然です。
日経H21.8.18(グラフも)

…2008年に中国で売れた携帯電話端末は世界最多の1億5800万台。日本の4倍だ。…普及率は…全国平均は5割強。内陸部の新規需要と沿岸部の買換え需要が成長を支える。
日経H21.8.19『走る鉄道ビジネス』
…日本の鉄道車両市場は年2000億円規模。…新規路線の伸びは望めず、人口も減少傾向。将来市場は頭打ちだ。…世界の鉄道関連産業の市場規模は…2005~07年の平均で…16兆円。16年には…20兆円に達するとみられる。人口が急増する新興国での輸送能力拡大…
日経H21.8.13『大機小機』
…購買力平価でみた実質GDPで、今年初めて、日本とアジアの合計が米国とユーロ圏合計を上回る予想だ。日本とアジアが世界を動かす時代が始まろうとしている。
外食産業、飲料産業、パナソニックと三洋の統合が、なぜ行われたか明らかでしょう。
1億2800万の人口市場に、乗用車メーカーだけで、8社あります。総合家電メーカーも7社あります。その生産能力は、国内向け(内需)だけだとすると、明らかに「過剰」なのです。
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