新聞を解説(27) 『自社が筆頭株主 最多197社』日経新聞 H21.7.4
『自社が筆頭株主 最多197社』日経新聞 H21.7.4
保有する自社株(金庫株)が増え、自らが“筆頭株主”になっている上場企業が2008年度末に197社(新興3市場除く)と過去最多になった。…自社株買いは市場に流通する株が減ることで1株あたりの価値を押し上げる効果があり、配当と並ぶ利益配分の有力な手段。野村證券の調べでは、08年度に自社株買いをした企業は1185社と過去最多だった。
現在,M&Aは増えている。’00年には1,635件だったものが,’04年には2,211件,’05年には約2,700件となっている。2007年の5月からは,現金ではなく,株式を対価とするM&A,いわゆる「三角合併」も解禁された。
企業側はM&Aに対しどのような防衛手段を採用してきたのか,事例を検証してみよう。
(1)株価・配当を上げる
効果的な買収防衛策は,企業価値を高め,株価・配当を上げていくことだと分かる。近年の企業の動向を見てみよう。
「東証一部上場企業の’07年3月期の配当金総額は,約5兆95百億円と,過去最高になる見込みである。増配や配当を再開する『復配』を予定する企業は6月17日時点で,継続的に調査できる対象(約1300社)の約47%に相当する652社となり,配当総額はこれまでの最高だった2006年3月期に比べ14・9%増の5兆9266億円に上った(新光総合研究所 『配当金総額の推移(東証一部)』2007年11月6日)」
(2)自社株買い
自社株を買って消却すれば,発行済み株式数を減らし,株価の上昇を促し,増配と同時に株主への利益還元となる。
活発なM&Aの動きを受け,高配当で株主をつなぎとめ,安定株主を確保する必要が出てきた。増配の表明で株価が上昇すれば,時価総額が膨らみ,買収されにくくなる効果も期待できる。
「企業の自社株買いが急増している。野村証券金融経済研究所によると,2007年4~8月の自社株買いは約2兆12百億円。07年度では4兆円を超え,過去最高になる可能性もあるという(ロイター 2007年9月3日http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-27698520070903
(3)株式持合いの復活
「野村証券金融経済研究所によると,2006年度の上場企業の株式持ち合い比率は,前年度比0.9ポイント増の12.0%となり,調査開始の1990年度以来初めて前年度を上回った。国内企業が敵対的な買収などに備え,安定株主を確保する持ち合い関係を強化していることが数字の上で裏付けられた格好だ。最近は敵対的なM&A(企業の合併・買収)が増え,業務提携を含めた株式の持ち合いが目立ってきた。
物流大手の日本通運,ヤマトホールディングス,セイノーホールディングスは昨秋以降,3社間で株式持ち合いを始めた。松下電器産業も,トヨタ自動車や新日本製鉄など取引先との持ち合いに乗り出している『読売新聞』要約 2007年8月15日」
これらの防衛策「(1)株価・配当を上げる,(2)自社株買い,(3)株式持合いの復活」に共通しているのは,M&Aのうち,「敵対的買収」に備える防衛策だということだ。M&Aでも,経営者が自ら進んで行うケースについては,その対象外である。しかも,ライブドア,楽天,村上ファンドなどの事例に見られるように,「敵対的買収者は,それが日本企業であっても,外国企業であってもダメ」という構図が背景にある。
<経営者支配>
日本経団連の敵対的買収に対するアレルギーについて,野口悠紀雄は「日本経団連は,三角合併に対して強い反対を表明した。その理由としては,『安全保障上の考慮』などが挙げられたのだが,要するに『外資に支配されたくない』ということだ。外資だけではない。国内資本であっても身内以外のものに買収されることは排除したい(野口悠紀雄 「戦時体制いまだ終わらず」『週刊新潮』 ’07.6.28号)」のだと断じている。
日本では,株主をもステイク・ホルダーに含めるが,株主は,会社の所有者なので,本来は,利害関係者ではない。「この表現に違和感を持たないのは,株主は資金の提供者としかとらえられておらず,経営に口を出すことなど,慎んでほしいと考えられているから(野口 同) 」
なのだ。
保有する自社株(金庫株)が増え、自らが“筆頭株主”になっている上場企業が2008年度末に197社(新興3市場除く)と過去最多になった。…自社株買いは市場に流通する株が減ることで1株あたりの価値を押し上げる効果があり、配当と並ぶ利益配分の有力な手段。野村證券の調べでは、08年度に自社株買いをした企業は1185社と過去最多だった。
現在,M&Aは増えている。’00年には1,635件だったものが,’04年には2,211件,’05年には約2,700件となっている。2007年の5月からは,現金ではなく,株式を対価とするM&A,いわゆる「三角合併」も解禁された。
企業側はM&Aに対しどのような防衛手段を採用してきたのか,事例を検証してみよう。
(1)株価・配当を上げる
効果的な買収防衛策は,企業価値を高め,株価・配当を上げていくことだと分かる。近年の企業の動向を見てみよう。
「東証一部上場企業の’07年3月期の配当金総額は,約5兆95百億円と,過去最高になる見込みである。増配や配当を再開する『復配』を予定する企業は6月17日時点で,継続的に調査できる対象(約1300社)の約47%に相当する652社となり,配当総額はこれまでの最高だった2006年3月期に比べ14・9%増の5兆9266億円に上った(新光総合研究所 『配当金総額の推移(東証一部)』2007年11月6日)」
(2)自社株買い
自社株を買って消却すれば,発行済み株式数を減らし,株価の上昇を促し,増配と同時に株主への利益還元となる。
活発なM&Aの動きを受け,高配当で株主をつなぎとめ,安定株主を確保する必要が出てきた。増配の表明で株価が上昇すれば,時価総額が膨らみ,買収されにくくなる効果も期待できる。
「企業の自社株買いが急増している。野村証券金融経済研究所によると,2007年4~8月の自社株買いは約2兆12百億円。07年度では4兆円を超え,過去最高になる可能性もあるという(ロイター 2007年9月3日http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-27698520070903
(3)株式持合いの復活
「野村証券金融経済研究所によると,2006年度の上場企業の株式持ち合い比率は,前年度比0.9ポイント増の12.0%となり,調査開始の1990年度以来初めて前年度を上回った。国内企業が敵対的な買収などに備え,安定株主を確保する持ち合い関係を強化していることが数字の上で裏付けられた格好だ。最近は敵対的なM&A(企業の合併・買収)が増え,業務提携を含めた株式の持ち合いが目立ってきた。
物流大手の日本通運,ヤマトホールディングス,セイノーホールディングスは昨秋以降,3社間で株式持ち合いを始めた。松下電器産業も,トヨタ自動車や新日本製鉄など取引先との持ち合いに乗り出している『読売新聞』要約 2007年8月15日」
これらの防衛策「(1)株価・配当を上げる,(2)自社株買い,(3)株式持合いの復活」に共通しているのは,M&Aのうち,「敵対的買収」に備える防衛策だということだ。M&Aでも,経営者が自ら進んで行うケースについては,その対象外である。しかも,ライブドア,楽天,村上ファンドなどの事例に見られるように,「敵対的買収者は,それが日本企業であっても,外国企業であってもダメ」という構図が背景にある。
<経営者支配>
日本経団連の敵対的買収に対するアレルギーについて,野口悠紀雄は「日本経団連は,三角合併に対して強い反対を表明した。その理由としては,『安全保障上の考慮』などが挙げられたのだが,要するに『外資に支配されたくない』ということだ。外資だけではない。国内資本であっても身内以外のものに買収されることは排除したい(野口悠紀雄 「戦時体制いまだ終わらず」『週刊新潮』 ’07.6.28号)」のだと断じている。
日本では,株主をもステイク・ホルダーに含めるが,株主は,会社の所有者なので,本来は,利害関係者ではない。「この表現に違和感を持たないのは,株主は資金の提供者としかとらえられておらず,経営に口を出すことなど,慎んでほしいと考えられているから(野口 同) 」
なのだ。
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