再掲 資料集の間違い(4) 第一学習社『最新現代社会資料集2007』p134
第一学習社『最新現代社会資料集2007』p134
鈴木先生:日本は1960年代半ば以降、貿易収支は)ずっと黒字が続いているんだ。
健太:日本はずいぶんもうかっているんですね。
鈴木先生:でもね、黒字国はその「もうけ」をためこんではいけないんだ。赤字国にまた環流させないと赤字国が困るからね。そこで日本はアメリカの株を買ったり、アメリカに工場を建てたりして、貿易でもうけた分をアメリカに投資しているんだ。それが投資収支だ。
「貿易黒字はもうけではない」と出版社に指摘すると、下記の表現に変わりました。
第一学習社『最新現代社会資料集2009』p134
健太:でも、最近の貿易・サービス収支はずっと黒字ですね。日本はずいぶんもうかっているんですね。
鈴木先生:もうかっているという表現は正しくない。輸出が増えても為替レートの変動でもうからない場合もあるからね。
貿易黒字は「もうかる」とか「もうからない」とか、経済学に基づかない表現を使っています。野球に例えたら、「球を打ったら、1塁か3塁に走る」とルールブックに書くようなものです。
通常の会社なら、黒字=もうけです。仕入れと売上げの差がもうけだからです(ものすごく単純化しています。以下に出てくることばも、ものすごく単純化しています)。
Our company is in [got into] the black.「我が社は黒字になった(yahoo辞書より)」黒字はBlackで、赤字はRedなんですね。
ところが、貿易黒字(赤字)は仕入れと売上げの差ではありません。貿易黒字分は、必ずどこかの国の貿易赤字分です。ここが、会社の黒字と決定的に違うところです。
「日本の会社の黒字(もうけ)額を全部まとめると、必ずどこかの会社の赤字(損)額と等しくなる」こんなことは、絶対にあり得ません。「もうけ(付加価値)」を全部足したものが日本のGDP(国内総生産)で、約500兆円です。黒字会社のもうけが、500兆円で、赤字会社の損が500兆円なら、日本の所得は0円になってしまいます。
貿易黒字は a trade surplus です。貿易赤字は、a trade deficit です。足すと「0円」になります。輸出>輸入なら黒字、輸出<輸入なら赤字と言います。
貿易(モノ・サービス)をすると、必ず同額のカネが動きます。ですから、貿易黒字=資本(カネ)収支赤字、貿易赤字=資本(カネ)収支黒字になります。貿易黒字国は同額分のカネが外国に出て行き、貿易赤字国は同額分のカネが外国から入ってきます。
アメリカも、オーストラリアも、イギリスも、基本的に貿易赤字国です。でもアメリカもオーストラリアもイギリスも、2008年夏までは、未曾有の好景気でした。「貿易黒字はもうけ赤字は損」なら、あり得ない話です。アメリカは96年から06年の10年間にGDPが約1.7倍になりました。日本の高度成長期さながらです。
イギリスGDP推移

スウェーデンGDP推移

アメリカGDP推移

「貿易黒字はもうけ赤字は損」ではなく、「貿易黒(赤)字)はカネの貸し借りのこと」なのです。もちろん、「貸せば得、借りれば損」ではありません。「もうけ」ということば自体が、出てくるわけがない のです。
世界のカネの貸し借り額(資本収支)=貿易額 週刊ダイヤモンド

鈴木先生:日本は1960年代半ば以降、貿易収支は)ずっと黒字が続いているんだ。
健太:日本はずいぶんもうかっているんですね。
鈴木先生:でもね、黒字国はその「もうけ」をためこんではいけないんだ。赤字国にまた環流させないと赤字国が困るからね。そこで日本はアメリカの株を買ったり、アメリカに工場を建てたりして、貿易でもうけた分をアメリカに投資しているんだ。それが投資収支だ。
「貿易黒字はもうけではない」と出版社に指摘すると、下記の表現に変わりました。
第一学習社『最新現代社会資料集2009』p134
健太:でも、最近の貿易・サービス収支はずっと黒字ですね。日本はずいぶんもうかっているんですね。
鈴木先生:もうかっているという表現は正しくない。輸出が増えても為替レートの変動でもうからない場合もあるからね。
貿易黒字は「もうかる」とか「もうからない」とか、経済学に基づかない表現を使っています。野球に例えたら、「球を打ったら、1塁か3塁に走る」とルールブックに書くようなものです。
通常の会社なら、黒字=もうけです。仕入れと売上げの差がもうけだからです(ものすごく単純化しています。以下に出てくることばも、ものすごく単純化しています)。
Our company is in [got into] the black.「我が社は黒字になった(yahoo辞書より)」黒字はBlackで、赤字はRedなんですね。
ところが、貿易黒字(赤字)は仕入れと売上げの差ではありません。貿易黒字分は、必ずどこかの国の貿易赤字分です。ここが、会社の黒字と決定的に違うところです。
「日本の会社の黒字(もうけ)額を全部まとめると、必ずどこかの会社の赤字(損)額と等しくなる」こんなことは、絶対にあり得ません。「もうけ(付加価値)」を全部足したものが日本のGDP(国内総生産)で、約500兆円です。黒字会社のもうけが、500兆円で、赤字会社の損が500兆円なら、日本の所得は0円になってしまいます。
貿易黒字は a trade surplus です。貿易赤字は、a trade deficit です。足すと「0円」になります。輸出>輸入なら黒字、輸出<輸入なら赤字と言います。
貿易(モノ・サービス)をすると、必ず同額のカネが動きます。ですから、貿易黒字=資本(カネ)収支赤字、貿易赤字=資本(カネ)収支黒字になります。貿易黒字国は同額分のカネが外国に出て行き、貿易赤字国は同額分のカネが外国から入ってきます。
アメリカも、オーストラリアも、イギリスも、基本的に貿易赤字国です。でもアメリカもオーストラリアもイギリスも、2008年夏までは、未曾有の好景気でした。「貿易黒字はもうけ赤字は損」なら、あり得ない話です。アメリカは96年から06年の10年間にGDPが約1.7倍になりました。日本の高度成長期さながらです。
イギリスGDP推移

スウェーデンGDP推移

アメリカGDP推移

「貿易黒字はもうけ赤字は損」ではなく、「貿易黒(赤)字)はカネの貸し借りのこと」なのです。もちろん、「貸せば得、借りれば損」ではありません。「もうけ」ということば自体が、出てくるわけがない のです。
世界のカネの貸し借り額(資本収支)=貿易額 週刊ダイヤモンド

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