fc2ブログ

再掲『日本の減反見直し提言 OECD報告書』日本経済新聞 H21年5月20日

『日本の減反見直し提言 OECD報告書』日本経済新聞 H21年5月20日

 報告書は主食の稲作が最大の問題を抱えていると指摘。…減反を縮小し…コメ価格の維持による農家への保護を、所得保障に切り替えた場合、コメ価格は3.9%下がり、生産は2.5%増加。農家の所得保障が…約3百億円増えるが…消費者効用は約790億円増す。コメ農家は所得保障が価格低下の減収を補うほか、…効用は7百億円強増す


 さて、ここで言われている、生産者余剰(効用)、消費者余剰(効用とは何でしょうか。また、所得保障により、余剰が増える というのは、どういう状態でしょうか。解説します。

 グラフ引用は、横山将義 嶋村紘輝著『図解雑学マクロ経済学』ナツメ社2006によります。消費者・生産者余剰

  いわゆる、価格と量を決める「需要・供給曲線」です。ここでは、便宜的に直線で示しています。消費者余剰というのは、買い手がある商品に支払っても良いと思う額から、実際に支払った金額を差し引いた部分です。
Aさんが砂漠旅行中、のどが渇き、ジュースに200円払ってもよいと考えたときに、実際には100円というPE点の価格だった場合、「安く買えた」と思うはずです。その100円が便益です。Bさん、Dさん、Eさんと、「高めの値段」をつけた人は100円という値段にやはり、安さ=「便益」を感じます。その消費者の便益を全て加えた部分が、「消費者余剰」です。

 一方、生産者Fさんは、オレンジ1個を20円で売ろうと考えています。ジュース業者はそれを80円で購入してくれました。Fさんの便益は60円です。Gさん、Hさんも、思ったより高く購入してもらえました。その生産農家の便益の合計が「生産者余剰」です。
 これが、減反を縮小し、値段が下がった場合、どのように増加するのでしょうか。
消費者余剰の変化

  減反をやめると、コメの生産量は増え、値段は下がる ので、図で言う、国際価格になります(減反を縮小しても、本当はまだまだ国際価格には程遠いのですが、便宜上です)。
 P0からP1に価格が下がると、消費者余剰は、△D・P0・Eから、△D・P1・Fに増えます。「 …消費者効用は約790億円増す」のです。
一方、生産者余剰は、△P0・E・Sから、△P1・G・Sに減少します
ここに、所得保障を加えます。図では、補助金支出になります。
補助金後の余剰変化
政府が補助金を支出します。農家に保障を「約300億円増」やすのです。そうすると、生産者余剰は、△P1・G・Sから、△P1・J・S’に増えます。「…効用は7百億円強増す」のです。
 このように、産業を保護する場合、関税をかけたり、減反をするよりも補助金で対処したほうが、効用が増大(あるいは減少幅が少)します。ですから、EUもアメリカも、農家を保護する場合関税ではなく補助金を支出するのです

http://www.news.janjan.jp/world/0710/0710294763/1.phpJanJanニュース2007/10/30
2004~06年において、ニュージーランドでは農家収入のわずか1%が政府からの補助金だったのに対して、米国・メキシコでは14%、カナダで22%、EUで34%、日本で55%、アイスランド・ノルウェー・韓国・スイスで60%以上

穀物輸出国のアメリカ・カナダ・EU内フランスでさえ、補助金漬け なのです。
スポンサーサイト



comment

Secret

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

08月 | 2023年09月 | 10月
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


FC2カウンター
カテゴリ
記事を検索する
「国債」 「公債」 「食糧」 「貿易黒字」などで検索して下さい
プロフィール

菅原晃

Author:菅原晃
中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇 発売です!

中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇

中高の教科書でわかる経済学 ミクロ篇 発売です!

中高の教科書でわかる経済学 ミクロ篇


図解 使えるミクロ経済学 発売です!

図解 使えるミクロ経済学

図解 使えるマクロ経済学 発売です!

図解 使えるマクロ経済学


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学発売です!

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学


経済教育学会 
経済ネットワーク 会員
行政書士資格


注 コメントする方へ

このブログでは、個人的なご意見・ご感想(価値観 正しい・間違い、好き嫌い、善悪)は、千差万別で正誤判定できないことから、基本的に扱っておりません。
意見は書き込まないで下さい。こちらの見解(意見)を尋ねる質問も、ご遠慮願います。
経済学は学問ですので、事実を扱い、規範(価値観)は扱っていません。事実に基づく見解をお願いいたします。
カテゴリ『コメントに、意見は書かないで下さい』を参照願います。
なお、はじめてコメントする方はコメント欄ではなく「質問欄」からお願いいたします。

ご質問・ご意見(非公開でやりとりできます)
内容・アドレス表示されず、直接やりとりできます。

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ