fc2ブログ

新聞の間違い(20) 一直『大機小機:ますます大事な財政再建目標』日経 H21.6.2

一直『大機小機:ますます大事な財政再建目標』日経 H21.6.2

 …日本の財政再建の歴史は不幸の連続だった。1970年に高度成長が終わったとたんに2度の石油ショックに遭遇し、財政赤字が定着した。…今世紀に入ってからは小泉構造改革と景気回復に支えられて再建の道を徐々にたどっていた。その途上でまたまたショックを受けたのだ。…すでに日本の政府の長期債務残高はGDPの1.5倍を超えて、先進国で最悪である

<公債発行と、貿易黒字は、貯蓄超過から生まれる>


 日本は「貯蓄超過」なのです。
 三面等価の図を見ましょう。
三面等価

 ここから、(S-I)=(G-T)+(EX-IM)という関係がわかります。
 左辺(S-I)が0(つまり、国民の貯蓄を、企業投資で使い切っている状態)なら、財政赤字(G-T)と、貿易黒字(EX-IM)の合計は0です。

 高度経済成長期は、企業投資が活発(S-I=0)で、国債発行(G-T)も、貿易黒字(EX-IM)も生じませんでした
国債残高
日本の輸出入


 国民の貯蓄超過がなくならない限り、財政赤字(G-T)+貿易黒字(EX-IM)は必ずトータルプラスで発生します。

 GDP(財・サービス)が10円とします。イコール国民所得GDIも10円です。この10円が、すべて国内で生産された材・サービスの購入に向かえばよいのですが、国民は10円中6円しか消費せず、4円貯蓄(財・サービスの購入に充てられなかったすべて)します。
 その4円を借りて消費するのが、企業(I)、政府(G-T)、外国(EX-IM)です。


 続いて、国債の取り上げ方です。

三面等価の図を見ましょう。
三面等価

 ここから、S-I=(G-T公債)+(EX-IM貿易黒字)という関係がわかります。
 国民の貯蓄(S)が(G-T)に充てられています。ですから、「国債は政府の借金=国民の財産」です。
 この借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。我々が預貯金をしたり、生命保険金を支払ったりしたお金が、国債の購入に当てられています。しかも、国債の金利は、銀行や郵貯、保険会社の利益(GDPに算入)です。
 約668兆円の国債のうち、95.4%=約637兆円は、我々日本人が持っているのです(海外の4.6%を除く 2006年3月末現在)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約42%は国債なのです。

P134 家計の金融資産残高の推移カラー0004
国債保有者 日経H21.6.27

 「国はいくら国債を発行しても倒産することはないと考えて良いのでしょうか。結論から言えばそのとおりです。現代の管理通貨制の下では自国通貨建ての国債をいくら発行してもそれが理由で国が倒産することはありえ (下線部筆者)」ないのです。
岩村充 『貨幣の経済学』集英社 2008 p153 
 
 同書では,「国債は政府の株式」に例えられています。また、国債は通貨制度のアンカー(昔の金本位制度における金)だと喝破しています。
スポンサーサイト



comment

Secret

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

05月 | 2023年06月 | 07月
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -


FC2カウンター
カテゴリ
記事を検索する
「国債」 「公債」 「食糧」 「貿易黒字」などで検索して下さい
プロフィール

菅原晃

Author:菅原晃
中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇 発売です!

中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇

中高の教科書でわかる経済学 ミクロ篇 発売です!

中高の教科書でわかる経済学 ミクロ篇


図解 使えるミクロ経済学 発売です!

図解 使えるミクロ経済学

図解 使えるマクロ経済学 発売です!

図解 使えるマクロ経済学


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学発売です!

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学


経済教育学会 
経済ネットワーク 会員
行政書士資格


注 コメントする方へ

このブログでは、個人的なご意見・ご感想(価値観 正しい・間違い、好き嫌い、善悪)は、千差万別で正誤判定できないことから、基本的に扱っておりません。
意見は書き込まないで下さい。こちらの見解(意見)を尋ねる質問も、ご遠慮願います。
経済学は学問ですので、事実を扱い、規範(価値観)は扱っていません。事実に基づく見解をお願いいたします。
カテゴリ『コメントに、意見は書かないで下さい』を参照願います。
なお、はじめてコメントする方はコメント欄ではなく「質問欄」からお願いいたします。

ご質問・ご意見(非公開でやりとりできます)
内容・アドレス表示されず、直接やりとりできます。

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ