新聞の間違い(19) 剣が峰『大機小機:ドルが米国を振り回す』日経 H21.6.25

新聞の間違い 剣が峰『大機小機:ドルが米国を振り回す』日経 H21.6.25
数字は筆者が記入

 米国は…外国から製品や資源などを購入してドルを支払えば、輸出国が喜んで受け取り、①ドルのまま持ち続けてくれた…米国向けに持続的な輸出拡大を狙う…アジア諸国・地域は②輸出代金を自国通貨に交換せずに、ドルのまま米国に資本輸出として還流してきた。対米黒字を増やしながらも、市場圧力に抗して、③自国通貨をドルに対し割安に維持しなければならないからだ。…アジアの輸出国・地域には④ドルを簡単に売却できない事情がある。…中国とロシアが輸出を増やして黒字国となり、 ⑤外貨準備として多額の米国債を保有する事態となってきた。

 何度も指摘してきましたが、この「剣が峰」さんは、経済学を全く理解していません。ある意味、確信犯的です。

 貿易黒字=資本収支赤字

 中国、日本など (下記④社債・株式・外国への貸付超過、外国の国債増、下記⑤外貨準備増)
資本収支黒字
貿易赤字:アメリカなど(外国からのモノ・サービス購入超過)

 このように、貿易取引は、裏表一体なのです。モノ・サービスカネ

経常収支は、大きく分けると、
①貿易黒字
②所得収支=海外投資(外国の国債・社債・株式・その他貸出)からの収益
③経常移転収支=海外への無償援助です。

そして、この経常収支額=資本収支額です。

資本収支額
④海外投資(外国の国債・社債・株式・その他貸出)
⑤外貨準備です(誤差脱漏を除く)。
国際収支表
 輸出して、中国企業がドルを稼ぎます。そのドルは、中国人の給料・配当・原材料費購入などのため、人民元に交換されます。中国の中央銀行・政府は人民元を放出し、ドルを購入します
 ①ドルのまま持ち続けてくれた②輸出代金を自国通貨に交換せずに、ドルのまま米国に資本輸出として還流
ということは、ありえません。

「外国為替システムは、元・ドル交換を自動的に行うシステムです」これが中国の⑤外貨準備増になります。
外貨増
 そのままドルを持っていても仕方ないので、それを、外国の国債・社債・株式等で運用し、利潤を得ます。その利潤(過去の投資の結果)が、②所得収支に含まれます。

 もちろん、過去の日本のように、意図的にドルを買い(円安)為替操作をすることもありますが、その場合は、
経常収支額
        =④海外投資⑤外貨準備ですから、

⑤が増えた分、民間の海外投資④が減ります
 
アメリカへの貿易黒字増
               =④海外投資⑤外貨準備が絶対に増えるのです。
 中国の保有額は、今年3月時点で約800億ドルに達しました。これは民間が主体であれ、中国国家が主体であれ、必然です。③自国通貨をドルに対し割安に維持しなければならない④ドルを簡単に売却できない事情は、中国は人民元相場の上昇を抑えるために市場介入を実施するということです。
 過去の日本のように、意図的にドルを買い(円安)為替操作をすると、
経常収支額
        =④海外投資⑤外貨準備ですから、
 
 ⑤が増えた分、民間の海外投資④が減ります(日本の場合、2003年:外貨準備増減プラス、海外投資マイナス)。
 ⑤国債購入は止められないからです(減る事はあります:たとえば、ユーロ債・オーストラリア債に投資すれば)。 
 別に⑤国債ではなくてもいいのですが、そのかわり、④アメリカ企業の社債・株・アメリカ個人への貸付を増やすことになります。投資としては⑤国債の低いけれど確実な利率を選ぶか、④リスクの大きい社債・株かということになります。
 皆さんが、中央銀行や政府で外貨を預かった係りの人なら、どちらを購入しますか?

 中国が、アメリカ国債を購入するのは、国内の貯蓄超過が原因です。次のグラフを見て下さい。中国は経済成長しています。その分、国民所得も増大していますが、みなさん、所得が増えたら、全部消費に回しますか?しませんよね。所得が増えた分、貯蓄に回すはずです。

櫻川昌哉『経済を動かす単純な論理』光文社2009p149
各国 貯蓄率 櫻川昌哉『経済を動かす単純な論理』光文社2009
 なんと、中国の貯蓄率は、50%近いではありませんか!!所得の半分をS貯蓄に回しているんですね。この貯蓄超過が、資本収支赤字(海外投資)=経常黒字になるのです。

 何度も言います。「貿易黒字はもうけ」「貿易赤字は損」「貿易赤字は悪いこと」ではなく、「貿易赤(黒)字」は「お金の貸し借り」のことなのです。
三面等価
貯蓄投資バランス
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