新聞を解説(25) 『JA北海道中央会インタビュー』読売北海道地方版H21.6.21
新聞を解説 『JA北海道中央会インタビュー』読売北海道地方版H21.6.21
数字は筆者挿入
①北海道の基幹産業である農業。…北海道農業協同組合中央会の飛田稔章会長に聞いた。
…WTO農業交渉について。昨夏の非公式閣僚会合が決裂して、みなさん安堵の声を上げられた。しかし、高い関税率で保護できる重要品目の数を、全体の4%分に抑えようとする向きは依然、根強い・・・。
飛田:⑦私たちの主張は一貫して10%です。…日本政府に断固とした姿勢を示すよう求めていきます。
…本州では耕作放棄が続き、農家戸数の減少は道内でも止まらない。
飛田:道内では…他府県と違って遊休農地が比較的少ないので、生産力は維持できています。②ただ、道内農家の担い手はまだ減るでしょう。新規就農を受け入れて、減少を食い止めたい。専業農家中心の道内で、 ③生産力を高めるモデルを描けなければ、日本の自給率は上がりません。
…法人経営による大規模化は新規就農の受け皿になるのではないですか…。
飛田:④…肥料を多く与えて作物を生産する人ばかりでよいのかどうか。採算が取れなければサッと撤収。残された農地は誰が見るのか。農協は今なお十分に存在意義を果たしている…。
…道内でも公共事業が減って、土木・建設業は大苦戦です。この労働力を農業で吸収すれば…。
飛田:⑤農業は機械化、省力化が進んでいて、大きく吸収するほどの余地が無い.
やるなら新規就農でしょう。…北海道はそんなに遊休農地がないんです。難しいですね、これは。
…農産物の輸出は、北海道活性化の有効打ですか。
飛田:⑥日本の自給率が低いのに、なぜ輸出だという議論もあるでしょう。…専業農家の多い北海道では、海外に目を向けた取り組みも必要です。付加価値を高めて。
<検証>
以下のデータ出典 日本経済新聞社編『北海道2030年の未来像』2006年
⑦(農業保護のために関税率は)私たちの主張は一貫して10%です。…日本政府に断固とした姿勢を示すよう求めていきます。
⑥日本の自給率が低いのに、なぜ輸出だという議論もあるでしょう。…専業農家の多い北海道では、海外に目を向けた取り組みも必要です。付加価値を高めて。
一方で、「輸入制限」を主張し、一方で「輸出拡大」を主張しています。これは、 「(自給率向上に)必要な物を生産せず、不必要なものを生産している」ことを示しています。生産物のミスマッチなのです。「米は、余っているのに、ブランドの北海道米を輸出したい」などというのはその典型です。
自給率向上につながらない「ミスマッチ」は、農業が「儲け」を意図した産業だからです。日本人が食べない米作りより、86%以上輸入(06年)の麦づくりをすれば、自給率はUpします。でも、麦は安すぎて採算が合わないのです。麦には、下記のような補助金が支給されています。
"http://blogs.yahoo.co.jp/shgmmr" 美しい地球環境を守るために、生き物・弱者に支援を
●農水省のホームページによれば、値上げ後の政府売渡価格は銘柄平均で69,120円/tである。この理由として、小麦の国際価格が「本年2月には10ドル/ブッシェルを超えて史上最高値を更新するなど、政府買付価格は大幅に上昇している」と書かれている。
●ブッシェルというのは約27kgだから、10ドル/ブッシェルというのはトンあたりに換算すると約37,000円。政府は国際相場の2倍近い価格(69,120円)で売っている。大儲けの掛け値です。
●政府は国際相場の2倍近い価格で売っていることになるのに、食料安定供給特別会計が逆鞘になったのは、この原価に25%の関税と、マークアップ(麦等輸入納付金)など約19,000円/tを乗せるためです。(農水省資料)
●これによって政府買入価格は65,250円/tになるから、3月までの政府売渡価格53,270円/tを上回る。これが値上げの理由とされているのです。
●この苦しさに全くそしらぬ顔で「原材料が上がった」嘯いているのです。実情を細かく見てみますと、国産小麦の落札価格は銘柄平均で約43,000円と、輸入小麦を下回った。
●これは割安に見えますが、実は約100%の補助金を受けているので、原価は国際相場の2.5倍と言う計算になります。
●この補助金の原資は、上の麦等輸入納付金だ。つまり国内農家の保護のため、輸入小麦から関税と上納金を取って国内農家に補填していることが、コストアップのそもそもの原因になっています。
補助金漬け
日経 H21.8.6
…経済協力開発機構(OECD)によると、日本の農業補助金は農家総収入の49%に上り、欧州連合(27%)、米国(10%)に比べて高い。…「補助金漬け」…
農業は、慈善事業ではありません。「もうけ」を追求してきた結果、「自給率」は下がったのです。もうからないので、「飼料用トウモロコシ」「大豆」など、誰も作ろうとしません。
「自給率アップする」ためには、「儲からなくて、赤字でもいい」のなら、すぐにでも実現できるのです。
⑥「付加価値を高めて」というのは、「もうけを出して」ということです。付加価値の合計額=GDPだからです。
「自給率を高める」には、「もうけ」を捨てる必要があります。矛盾以外の何物でもありません。
参考・引用資料:『週間ダイヤモンド 2008・07・26号』
数字は筆者挿入
①北海道の基幹産業である農業。…北海道農業協同組合中央会の飛田稔章会長に聞いた。
…WTO農業交渉について。昨夏の非公式閣僚会合が決裂して、みなさん安堵の声を上げられた。しかし、高い関税率で保護できる重要品目の数を、全体の4%分に抑えようとする向きは依然、根強い・・・。
飛田:⑦私たちの主張は一貫して10%です。…日本政府に断固とした姿勢を示すよう求めていきます。
…本州では耕作放棄が続き、農家戸数の減少は道内でも止まらない。
飛田:道内では…他府県と違って遊休農地が比較的少ないので、生産力は維持できています。②ただ、道内農家の担い手はまだ減るでしょう。新規就農を受け入れて、減少を食い止めたい。専業農家中心の道内で、 ③生産力を高めるモデルを描けなければ、日本の自給率は上がりません。
…法人経営による大規模化は新規就農の受け皿になるのではないですか…。
飛田:④…肥料を多く与えて作物を生産する人ばかりでよいのかどうか。採算が取れなければサッと撤収。残された農地は誰が見るのか。農協は今なお十分に存在意義を果たしている…。
…道内でも公共事業が減って、土木・建設業は大苦戦です。この労働力を農業で吸収すれば…。
飛田:⑤農業は機械化、省力化が進んでいて、大きく吸収するほどの余地が無い.
やるなら新規就農でしょう。…北海道はそんなに遊休農地がないんです。難しいですね、これは。
…農産物の輸出は、北海道活性化の有効打ですか。
飛田:⑥日本の自給率が低いのに、なぜ輸出だという議論もあるでしょう。…専業農家の多い北海道では、海外に目を向けた取り組みも必要です。付加価値を高めて。
<検証>
以下のデータ出典 日本経済新聞社編『北海道2030年の未来像』2006年
⑦(農業保護のために関税率は)私たちの主張は一貫して10%です。…日本政府に断固とした姿勢を示すよう求めていきます。
⑥日本の自給率が低いのに、なぜ輸出だという議論もあるでしょう。…専業農家の多い北海道では、海外に目を向けた取り組みも必要です。付加価値を高めて。
一方で、「輸入制限」を主張し、一方で「輸出拡大」を主張しています。これは、 「(自給率向上に)必要な物を生産せず、不必要なものを生産している」ことを示しています。生産物のミスマッチなのです。「米は、余っているのに、ブランドの北海道米を輸出したい」などというのはその典型です。
自給率向上につながらない「ミスマッチ」は、農業が「儲け」を意図した産業だからです。日本人が食べない米作りより、86%以上輸入(06年)の麦づくりをすれば、自給率はUpします。でも、麦は安すぎて採算が合わないのです。麦には、下記のような補助金が支給されています。
"http://blogs.yahoo.co.jp/shgmmr" 美しい地球環境を守るために、生き物・弱者に支援を
●農水省のホームページによれば、値上げ後の政府売渡価格は銘柄平均で69,120円/tである。この理由として、小麦の国際価格が「本年2月には10ドル/ブッシェルを超えて史上最高値を更新するなど、政府買付価格は大幅に上昇している」と書かれている。
●ブッシェルというのは約27kgだから、10ドル/ブッシェルというのはトンあたりに換算すると約37,000円。政府は国際相場の2倍近い価格(69,120円)で売っている。大儲けの掛け値です。
●政府は国際相場の2倍近い価格で売っていることになるのに、食料安定供給特別会計が逆鞘になったのは、この原価に25%の関税と、マークアップ(麦等輸入納付金)など約19,000円/tを乗せるためです。(農水省資料)
●これによって政府買入価格は65,250円/tになるから、3月までの政府売渡価格53,270円/tを上回る。これが値上げの理由とされているのです。
●この苦しさに全くそしらぬ顔で「原材料が上がった」嘯いているのです。実情を細かく見てみますと、国産小麦の落札価格は銘柄平均で約43,000円と、輸入小麦を下回った。
●これは割安に見えますが、実は約100%の補助金を受けているので、原価は国際相場の2.5倍と言う計算になります。
●この補助金の原資は、上の麦等輸入納付金だ。つまり国内農家の保護のため、輸入小麦から関税と上納金を取って国内農家に補填していることが、コストアップのそもそもの原因になっています。
補助金漬け
日経 H21.8.6
…経済協力開発機構(OECD)によると、日本の農業補助金は農家総収入の49%に上り、欧州連合(27%)、米国(10%)に比べて高い。…「補助金漬け」…
農業は、慈善事業ではありません。「もうけ」を追求してきた結果、「自給率」は下がったのです。もうからないので、「飼料用トウモロコシ」「大豆」など、誰も作ろうとしません。
「自給率アップする」ためには、「儲からなくて、赤字でもいい」のなら、すぐにでも実現できるのです。
⑥「付加価値を高めて」というのは、「もうけを出して」ということです。付加価値の合計額=GDPだからです。
「自給率を高める」には、「もうけ」を捨てる必要があります。矛盾以外の何物でもありません。
参考・引用資料:『週間ダイヤモンド 2008・07・26号』

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