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アベノミクスは、理論的に100点満点。 

<アベノミクスは、100点満点>

 経済学の理論を応用し、見事に効果をあげました。整理します。

(1)不況とは? 完全雇用を達成していない状態

リーマン後 失業率

リーマンショック後、失業率は跳ね上がりました。不況です

(2)不況の原因

 不況の原因は、投資Iの減少です。ケインズが見つけました。

不況=投資減

GDP 三面等価図 不況

(3)不況を解決するために

投資Iを回復させることです。

①民間投資Iに代わって、政府が公共投資増→財政政策
②民間投資Iを回復させるために、金利を引き下げる→金融政策


総需要管理


消費Cを回復させることなど目的としていませんし、そんな方法もありませんし、それが目標だとしても、二の次、三の次の話です。「アベノミクスで、消費が回復していないから失敗だ」など、単なる無知・バカです。

消費回復のために減税

①期間限定で消費税を3%にする
②ずっと消費税率を3%にする

①は短期効果で、税率を戻した途端にどうなるかは、想像できるでしょう。すでに駆け込み需要は実証済みです。
②です。さて、消費税率を3%にする・・・これを続けると、消費が増えつづけますか?なぜ? 消費が増え続ける・・・など、高校生でも否定します。日本人はバカではありません。


(4)財政政策の効果

固定相場制(~1970年代初頭まで)

 この時代は、財政政策は効果がありました。

①乗数効果(1/1-C)

 まだまだ、社会的に貧しかった時代です。公共投資→業者が買い付ける資材増→資材メーカー売り上げ増→業者の所得増→業者労働者の所得増→商品購買増→商品メーカーの売り上げ増→商品メーカーの労働者の所得増・・・・

 ただし、豊かになった現在は、所得(C+T+S)が増えても、社会保険+税金T増、貯蓄S増であり、消費C増にはなりません。豊かになると(国レベルでも、個人レベルでも)、消費Cを増やすのではなく、S貯蓄を増やすのです。

日本の公共投資の乗数効果(旧経済企画庁)
67年2.17
70年2.02
74年2.27
76年1.85

途上国でも同様です。しかし、経済が成熟してくると、増えた所得を消費Cに回すよりも、貯蓄Sに回す割合が増え、乗数効果は低下していきます。

(内閣府)
87年1.16
08年1.00
11年1.07

分析するシンクタンクによって幅はありますが、日本の場合、2010年代は、1.0台前後になっています。これらは、先進国に共通して見られる現象です(政府支出、保健医療費などの乗数効果については、別な研究があります)。


②固定相場制

A 固定相場制時代は、財政政策の効果は大でした。

財政政策(公共投資)拡大

企業や関連企業の業績が上昇

取引が活発化・資金需要増

金利上昇。金利上昇

円での資産運用が有利

円の需要増(貿易黒字→円での支払い増→円需要増と同じ)

円高

ただし、固定相場制なので、日銀は円売りドル買いで円を市場に供給します(結果的に金融緩和)。

財政政策は同時に金融緩和政策をともなう、いわばWの効果があるのです。

一方、変動相場制の場合、日銀の市場介入はなく、円高・ドル安傾向はそのままです。円
高になると輸出額が減り、株価が下がります。財政政策の効果は薄れるのです。

B 逆に金融緩和の効果は大きくなります。

金融緩和

円安

①輸出額増(輸出額=海外投資額の別名
②日本の場合、株高効果が期待できます。さらに、

①金融緩和→円安(インフレ)

②実質金利低下

③投資増

④実質賃金低下

雇用増が期待できます。

失業

また、資産効果も見逃せません。

インフレ→負債実質減、土地・建物価格・株価上昇

資産効果


東京書籍 H30 政治・経済
消費はまた、家計が保有する株や土地などの価格が上がると、増える傾向がある。これを資産効果といい、株や地価が急上昇したバブル経済期には資産効果が働いて消費が大幅に増え、バブル崩壊後には逆の効果(逆資産効果)が働いて消費が減退した。



変動相場制への移行後、財政政策と金融政策の効果は180度逆転し、「マクロ政策は金融」となったのです。実際、各国の成長と財政出動に、関係はありません。

GDP伸び 財政収支

※財政出動は需要です。需要を伸ばせば供給(GDP)が伸びることなど、ありません。

<ゼロ金利の下、どうやって金融政策を行うのか>

(1)伝統的政策

東京書籍 新しい社会公民 H28 P145

 各国は、リーマンショック後「ゼロ金利」政策を行っています。

× 各国0金利 東学 資料政・経2018 p381


 金利を下げ、投資を刺激するという金融政策はその手段を失います。では、もう金融政策はできないのでしょうか?違います。ゼロ金利下でも、金融政策の手段はあるのです。

デフレ

 デフレで、企業が投資を抑え、貯蓄を増やす(返済を優先する)のは、当たり前です。だから、インフレでなければならないのです。

もう一度確認しますが、金融政策の目的は、「投資I」の回復です。

(2)非伝統的政策

アベノミクス 非伝統的金融政策

①インフレ・ターゲット

フィッシャー方程式


名目金利は、ゼロ以上に下げられません。しかし、インフレにさえなれば、実質金利は下げることができるのです。


実質-2=名目0-インフレ率2%

だから、インフレ率は、たった0.1%でも全くかまわないのです。

実質-0.1=名目0-インフレ率0.1%

だから、「2%を達成していないから、アベノミクスは失敗だ」など、バカかという話なのです。

インフレ率は、たったの0.1%で構わないのです。アベノミクス後、名目GDPと実質GDPの差=GDPデフレーターは、明らかに変化しています。大成功なのです。

gdpデフレーター

物価を見る水準は3つです
a GDPデフレーター
b 消費者物価
c 卸売物価

インフレ度

bの消費者物価だけを見て、「2%達成しているだの、していない」だの、これもバカか?という話です。GDPは「国内」総生産ですから、輸出入物価は入りません。これが上がっているのです。

②コミットメント

インフレ ターゲット

 すでに、EUも、米国も導入済みです。

「○○年後の物価を、2%になるまで、金融緩和します」

これがコミットメント・約束です。中銀が約束するので、民間はそれを信じて、投資(借り入れ)するのです。

 ただし、口約束だけではだめで、強力な「保障」が必要です。それが量的緩和です。

②量的緩和

量的緩和


A 長期金利低下

日銀は、国債・株ほか、資産を大量に購入しますと宣言し、それを実行してきました。

 国債を日銀が買うので、国債価格上昇(長期金利低下)になります。

日銀 BS
長期金利低

 長期金利は低下します。企業は、「長く借りても金利は低い」ことを「保障」されます。

発効する社債も、民間の長期貸出金利も低下します。

住宅ローンと国債

 住宅建設は、「消費」ではなく「投資」です。金利の低下で投資を刺激するのです。

EU・米国も同じです。

各国 長期金利 東学 資料政・経2018 p289

B マネタリーベース拡大


 日銀は、マネタリーベースを拡大し続けます。その結果、現金+当座預金が増えます。

日銀 BS

 この結果(因果関係)マネーストック(民間の貸し出し金)は増加します。

アベノミクス mb ms

 圧倒的な相関係数です。これを「マネタリーベース拡大→マネーストック拡大」の乗数(伸び率が伸びていない)というのも、バカか?という話です。

a 結果的に100兆円以上も伸びている
b それは、日銀の「保障」に基づいているから、伸びている

マネタリーベース拡大の意図は、「保障」です。もう一度、金融緩和の方法を見ます。

東京書籍 新しい社会公民 H28 P145

 資金量が増える=マネタリーベース拡大のことです。

日銀 量的緩和

 この「ブタ積み」に意味があるのです。政策金利(短期金利)の調整は、当座預金量の増減によってなされますね。いまはゼロ金利=資金がジャブジャブなのです。

 企業にとって大切なのは、「今季(今)」の金利ではなく、「来期(未来)」の金利です。今は金利が低いのは十分承知しているのです。問題は、来年も再来年も、この「低い金利で借りられるのか?」ということなのです。

 それを保証しているのが、日銀当座預金の「ブタ積み」なのです。仮に「出口政策=金融の縮小」を行ったところで、このブタ積みを、直ちに元に戻すことは「不可能」です。そうるすと、来年も再来年も「政策金利は(急には)上がらない」ことが保障されていることになるのです。

 つまり、非伝統的政策は、

a 長期金利の低下
b 低い政策金利の長期保証

このWの効果をねらって、実際に保証しているのです。


これで、企業は安心して投資ができます。

アベノミクス 投資増

もう一度確認します。不況の原因は、投資減です。だから、ケインズ以来、その回復がマクロ経済政策とされたのです。

不況=投資減


投資を回復させることによって、GDPを、潜在GDP水準に持っていく(完全雇用状態=失業者を減らす)のが、最大の目的でしたね。

総需要管理

アベノミクス後 変化


 皆さんご存知の通り、輸出は海外投資額の別名でしたね。

失業率は回復しました。

労働者数増 失業低

しかも、労働者数が増えた上での失業率低下です。

「非正規雇用が増えただけだ!」も屁理屈です。

正規雇用増

 正規雇用が増えているのです。

フィリップス曲線どおりです。

日 長期フィリップス

日 短期フィリップス

 フィリップス曲線どおりです。

しかも失業率は現在の指標、中高生の内定は「未来」の指標、アベノミクスは「未来」に働きかける政策でしたね。アベノミクスの成否判定は、未来を改善させているかどうかでした。

高校大学変化

アベノミクス 成否

 これが、現在の最新経済学

ニューケインジアン IS-MPモデルおよび、IS-MP-PC曲線(フィリップス曲線)+テイラールールに基づいた、金融政策です。

 アベノミクスは理論的には100点満点なのです。

おまけ

アベノミクス 成果 所得

賃金も増えています。ただし、税+社会保険、貯蓄に回っています。

賃金増1に対し、税+社会保険0.6の割合、0.4しか給与増には回っていません。しかも、企業も同様に社会保険を0.6増やしていることになります(社会保険は労使折半)。

賃金は、増えているのです。ただし、あなたの隠れ税「社会保険料」も、恐ろしい額になっています。源泉徴収票を確認しましょう。消費税に換算したら、何%になっていますか(笑い)?

アベノミクスの恩恵は、高齢者に回っています。
参照

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-1139.html
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-1140.html
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-1141.html

これでも理解できない人は、質問してください(笑い)。

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comment

Secret

No title

この記事に大事なことがすべて集約されてると思いました。わかりやすい。

経済学をきちんと理解してアベノミクスを評価してる人は少数だと思います。
みんななにもわかってないくせに批判してるんです。一方で若手の経済学者でアベノミクスを批判してる人を見たことがありません。
批判してる経済学者は老人ばかり。
国会議員も勉強してない人達ばかりで…。

また本を書いてくださいm(_ _)m

No title

 現代経済学は「経済学者」を名乗る人でも、60代以上は全部全滅です。全く使い物になりません。70代など、化石・恐竜・・・です。

 なぜ私が解説できるかというと、中高教科書を「バリバリ」の先生が執筆しだしたからです。もちろん社によって、「使い物にならないレベル」世代が書いているポンコツ(間違いではないですよ、フリードマン・レーガノミクスで止まっているということ)もあります。ついていくのに、精いっぱいです。

 最新の教科書を生徒に説明するには、最新経済学を学ばなければ解説できません。ですから、教材研究が命なのです。

 しかし、経済学出身でもポンコツはポンコツで、ましてや他学部出身で銀行や投資会社に勤めただけの、紫おばさんや、水野和夫、塚崎公義・・・など、本当に使い物になりません。ああ、藻谷というのもいましたね(笑)。

 宇沢とか、伊東とか、佐伯とか・・・これらも内容的には「死んでいます(笑)」知名度があるから、出版できるのでしょうけど・・・

 菅原ですか?菅原は前進し続けます(笑)。「進みつつある人のみ、人を教うる資格あり」小原國芳先生から教わった座右の銘です。ドイツの偉人の言葉だそうです。
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