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ストックはフローには回らない


http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20170920/Jcast_kaisha_309004.html

家計金融資産、過去最高の1832兆円 6月末時点
2017年6月末時点での現金・預金や債券、株式を合わせた家計の金融資産の残高は1832兆円となり、過去最高を記録した。日本銀行が4~6月期の資金循環統計(速報)を9月20日に発表した。

家計の金融資産は前年比4.4%増、3月末と比べて1.3%増えた。



金融資産 家計


 このような報道があれば、必ず出てくるのが、この「家計金融資産(1700兆円~1800兆円)を取り崩して使え!」「1%でも使われれば、17兆円もの消費増だ!」というアホ論です。


大前研一の日本のからくり
アベノミクスで“景気が浮揚しない”本当の理由

史上最大の予算を組み続ける政府の愚行

毎年のように30兆~40兆円の赤字国債を垂れ流して、日本の公的債務は1300兆円に膨れ上がっている。それでもなお政府は史上最大の予算を組み続けているのだ。

世界最大の日本の国家債務を担保しているのが、日本国民が保有している1700兆円の個人金融資産である。いざとなれば、政府はこれに着目してパクろうとするだろう。

「老後の備え」の重複分だけでも人生を楽しむために使えば、人生も変わるし、世の中も変わる。たとえば個人金融資産1700兆円の1%が市場に出てくるとすれば17兆円。消費税に直せば6%アップぐらいのインパクトがあるのだ。

つまり安倍首相は個人金融資産の1%が市場に出てくる政策をひたすらやったほうがいい。
充実した老後の素晴らしさを提案し国のサポートを国民に約束して、それでもなお、1700兆円の個人金融資産がマーケットに出てこないようなら、強制的に資産課税を導入すべきだろう。資産税では資産を持っているほど課税されるから、要らないお金は使おうというインセンティブが働く。



<ストックはフローには回らない>

ストックは、フローに回りません。これは、原理原則で例外は1つもありません。

ストックは、「結果」です。ストックとは、金融資産の場合、「貸した金(投資)の総額=借りた金(借金)の総額」のことです。つまり、すでに「融資された額」のことです。

日本金融資産 負債 8150兆円 2
 
 家計の金融資産→企業や他の家計や、対外資産として、貸し出されています。

つまり、すでに「融資したカネ」なので、そのカネをもう一度貸すことは、「原理的にできません」

ですから、


たとえば個人金融資産1700兆円の1%が市場に出てくるとすれば17兆円。消費税に直せば6%アップぐらいのインパクトがあるのだ。



ということは、逆立ちしてもできません

 ストックは「過去」を記録したものです。今日融資をすれば、それが即「ストック=貸借対照表=BS」に記録されます。

 今日、フローで行われた「貸借」が、今日「ストック」に記録されるのです。

ストック=貯蓄ではありません。ここを誤解してはいけません。ストックは、会計の世界では日常用語ですが、一般には流布していません。だからストックを貯蓄と同一視してしまいます。

 しかし、ストックは「資産=融資総額」ですから、当然「株」もストックです。東京証券取引所は、「Tokyo Stock Exchange」と言います。自社株式を購入する制度を、「ストック オプション」と言います。

資産=負債→Stock
貯蓄→Saving


ストック=金融の世界では、金融資産:負債の記録のことです。
ストック=実物の世界では、実物資産:国富のことです。

2015 三面等価


貯蓄→Saving

は、フローの世界の話で、ストックではありません

この所得 C+Sが、次のように配分されます。

S貯蓄→I(民間+政府)投資

社会保障 ストック②

このI投資が、実物資産の国富です。

社会保障 国富


これらは、「使われた総額」であり、すでに世の中にある「土地・建物・道路・空港・港湾設備・・・」のことです。これらを使って「フロー生産」します。

しかし、過去の「ストック」を、フローに回すとか、過去のストック(家計予算の1700兆円)の1%でも使えば、GDPフローが17兆円増える・・・そんなことは、100%、いえ、50000%ありません。

<補足>

金融機関には、「信用創造」というシステムがあり、いくらでも貸し出しを増やせるのだ!だから、金融機関には「家計・企業・その他主体の預金」など無くても、貸出ができるんだ!

という人もいます。基本的に、信用創造ですから、無から有を作り出すことが金融機関にはできるので、間違ってはいません。


通貨供給量、3カ月連続最高=日銀
12/11(月) 11:00配信

時事通信
日銀が11日発表した11月のマネーストック(通貨供給量)速報によると、現金、預金などの合計を示す代表的な指標M3の平均残高は、前年同月比3.4%増の1314兆8000億円だった。残高は3カ月連続で過去最高を更新した。



 この、マネーストックは、まさに「帳簿上のカネ」のことです。1314兆円もの現金など、この世のどこにもありません。

 しかし、この貸出額は、金融機関が受け入れたカネ(原理的にこれを貸し出すことができる)を上回る額ではありません。預貸率といいます。預かったカネのうち、どれだけを貸し出しに回しているかを示すものです。これがずっと60%台です。

預貸率


 個々の金融機関によっては預貸率100%以上のところもあります(信用創造で可能です)。しかし、日本全体では、預かったカネをすべて貸し出してはいないのです。貸し出しに回らないカネは国債や株や外国債などの債券に回っています。

C+S
C+I
ゆえにS=I

S→I+(G-T)+(NX-IM)
貯蓄→企業投資+政府投資+海外投資


これを理解できないと、経済は理解できません。

社会保障 ストック
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