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未来が現在を決める 現代経済学の本質 その1

<未来が現在を決める 現代経済学の本質 その1>


飯田泰之 経済学講義 ちくま新書 2017

要約・縮約引用
P152~
(1)
金利がゼロに限りなく近づいていくと、流動性の罠が生じます。流動性の罠の状況では金融政策は無効…。

流動性の罠のもとで金融政策を行うツールは「ゼロ金利政策の時間軸効果」です。銀行の貸出行動を左右するのは「いざ準備不足(菅原注:銀行は、金庫を空っぽにするのが仕事。銀行間の振込決済などで、ある程度のカネが必要。このカネが不足する場合、銀行間で、最低金利でカネを貸し借りする。このカネを日銀が貸し出す際の利率が、コールレート。コールレートは「困ったときにはこの金利で貸し出しますよ」という日銀の保証)が起きた時に、どのくらいのコールレートで穴埋めできるのか」です。

よく考えてみてください。準備不足が生じるのは現在ではなく、将来のこと。重要なのは、今現在のレートではなく、景気が良くなって活発化したときのコールレートなのです。

中銀としては、コールレートが「0」の状態が十分長い時間存在すると市場にアナウンスすることで、貸出を刺激することができます。今後5年間「0」金利であるならば、準備不足が生じても、金利負担ゼロで穴埋めができます。すると銀行は、5年以内は貸し出しリスクが低下したとして貸し出しを増やす・・・。

このように「将来にわたって長期にゼロ金利を続ける」というアナウンスが信頼されるなら、金融政策による経済刺激が可能になります。

アナウンスを民間に信用してもらうための仕組みが、量的緩和やインフレーション・ターゲットと呼ばれる、先進国の多くの活用する手法です。

量的緩和…必要準備以上の当座預金残高…これを「超過準備」と言います(菅原注:日銀が国債を購入して、当座預金を増やしている)。超過準備を大量に積ませることによって、金利を引き上げにくい状況をつくる。「ブタ積み」と呼ばれますが、必要以上であることが「長期にわたってゼロ金利を維持する」というアナウンスメント効果を強めるのです。

(2)
アナウンスを強める方法、もう一つはインフレーション・ターゲットです。中銀が「目標とするインフレ率」をアナウンスすることで、民間の金融政策の予想に働きかける政策です。銀行や民間企業はそのインフレ率になるまで、量的緩和の縮小やゼロ金利解除などの金融引き締めは行われないだろうとの予想が形成されるわけです。

p175~
(3)
不動産価格や株価は「将来得られるであろう賃貸収入・配当」で決まります。不動産は修礼の賃貸収入の予想、株価は将来の企業利益の予想によって現時点での価格が決まるのです。

(菅原注:インフレ・ターゲットにより)将来の物価が上昇していくという予想が高まると、2つの影響が生じます。

①将来物価が高い=将来の名目賃料や企業名目利益が上昇する。したがって現時点での資産価格が上昇する
②将来の物価が高いと予想されると、現在のうちに買っておこうという合理的選択になり、現時点での物価が上昇する。

このようにインフレ期待(予想)が強まると、資産価格の上昇と現時点でのインフレ率上昇が同時に発生するのです。

2000万円の不動産と1500万円のローンを抱えた家計の純資産は500万円。不動産価格が10%上昇したら、2200万円。ローンは変化しないので、純資産は200万円+500万円で700万円。40%も上昇するのです。10%の資産価格上昇→40%の純資産上昇

家計の場合は、経済的な余裕が生まれます。企業の場合、この純資産の影響は重大です。銀行からの融資の条件を左右するからです。純資産の増加による気持ちの余裕、融資条件の改善は消費・投資を刺激します。

このような純資産に注目した考え方を「フィナンシャルアクセレーター仮説」といいます。インフレ予想が現在のインフレ率と資産価格を上昇させる。資産価格の増加がその数倍の純資産の増加をもたらす。純資産の増加によって消費・投資が刺激され、その結果として失業率の低下になる-フィリップス曲線は、このような変化の「インフレ率の上昇」と「失業率の低下」を切り取ったものと解釈できるでしょう。

重要なのは、現在のインフレ率ではなく、将来のインフレ予想・期待インフレ率であることになります。現在の経済に影響を与えるためには、将来のインフレ率が重要という意味で、時間軸効果や、量的緩和、さらには各種のターゲット政策が必要とされる根拠と言ってもよいでしょう。



<未来を確定させる→現在の行動が変わる>

未来

 現代経済学は、このように、「今と未来」という時間軸を設定したうえでの「最適化行動」を考慮(マクロのミクロ的基礎付け)します。

動学的予算線

 古い経済学では、「財政政策」「金融政策」ともに、現在に働きかける政策でした。財政出動は今年度、金融政策(昔は公定歩合と言っていましたね、現在は政策金利=コールレート)も「今日」「明日」「今」に働きかける政策です。

 ですが、現代経済学による「金融政策」は、「未来」を確定させる政策です。

現代経済学 政策

貸出は増えます

マネーストック マネタリーベース 2

指標は改善します

アベノミクス 指標

http://blogos.com/article/251647/
アベノミクス 経済指標


フィリップス曲線が成立します

フィリップス曲線清水書院 現代社会資料集2014 p175
アベノミクス フィリップス曲線

投資は回復します

7 アベノミクス 投資



さて、ではなぜ、消費が投資のように伸びていないのでしょうか? その2に続く

<追記 現代経済学を理解しないと、どうなるか?>


http://blogos.com/outline/252472/

【言論NPO座談会】アベノミクス実績と、今回の衆院選で政治は何を説明すべきか

湯元健治(日本総研副理事長)
早川英男(富士通総研エグゼクティブ・フェロー)
加藤出(東短リサーチ社長、チーフエコノミスト)

まず、司会の言論NPO代表の工藤泰志が、「アベノミクスが始まってもう5年近く経っているが、これは成功しているのか」と、3氏に単刀直入に尋ねました。…これに対して3氏は厳しい見解を述べました。



<追記 過去記事から 資産価格の変化>

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-date-20100708.html

デフレ下の合理的行動

株や土地への投資を控え、現金・預金・国債(社債)をため込む

企業の場合

設備や技術への投資を抑え、現金をためる(あるいは資金を返済に回す)です。

 企業が上記の行動をとるのは当たり前です。

 カネを借りる金利<もうけなら、企業は投資します商品価格が低下(デフレ)すると、「もうけ」が少なくなります。投資に慎重になります。

 一方、カネの価値は上がります。現金をためる(あるいは資金を返済に回す)のは合理的行動です。

 デフレだと、実質金利が高くなり、企業の投資が抑えられます借金の額は目減りしません(名目)

さらに、バランスシート上、デフレになると、困ってしまいます。

 上場企業の資産と,負債を示した,貸借対照表(バランス・シート)です。
出典『日本経済新聞』H21.4.14 2008年9月末現在。金融機関を除く,1690社が対象。

上場企業 バランスシート.jpg


①が、社債や、銀行からの借り入れです。②が、資本金です。そのように調達したお金を,土地・工場・機械・店舗・車・広告などに投資し,財やサービスを産み出します。左側の資産です。

 ここで、デフレで土地や建物の額が下がるとします。単純に、土地建物代が358兆円として、10%デフレで値下がりすると、バランス・シートは次のようになります。

上場企業 バランスシート 変化.jpg

 一方、 ①借金の額は全く変化しません。資産における自己資本(②純資産)比率が悪化します。デフレは、企業のバランス・シートを悪化させるのです。

 ですからデフレ下では、資産として、「現金・預金・国債・社債」などを購入するのです。左の資産部分が「目減り」しないからです。

企業が、 「現金積立>設備投資額」にしているのは、このような理由からです。
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