新聞を解説(21) 越渓『大機小機:補正予算の評価』日経H21.6.18
新聞を解説 越渓『大機小機:補正予算の評価』日経H21.6.18
( )の数字は筆者
2009年度補正予算14兆円が5月29日に成立した。…歓迎したい。
(1)…内閣府の試算では、1~3月期の需要不足は45兆円…この需要を埋めなくては経済は回復しない。…需要が不足すれば公共支出を増加し、不足分を政府が埋めるのが定石である。
(2)…予算反対論のうち一番大きいのは、国債が増えるという点だ。政府は10兆円の国債の増発を実行する計画だ。
国は現在でも膨大な債務を抱えている。これにさらに公債を加えれば、子孫に借金を負担させることになる、というのが反対論者の主張だ。
…国債の増加は、それを買う国民の金融資産の増加である。国債の増加を恐れず、予算の実行に努力してほしい。
適切に、しかも正しく解説されています。
需要と供給
三面等価の図を見てみましょう。総生産GDP=総所得GDI=総支出GDEです。総生産は、我々の所得の総額です。
総生産Y=C+I+G+EX(総需要)

C=家計が主体の消費(Consumption )、I=企業が主体の投資(Investment)、G=政府最終支出、EX=輸出を足します。
Y(つまりGDP)を伸ばす=C、I、G、EXのいずれかを増やすということです。
「内閣府の試算では、1~3月期の需要不足は45兆円(年率換算)」ということは、
Y=C+I+G+EX-45です。
Y=家計+企業+政府+輸出-45
なんと、総生産GDP(=総所得GDI)が45兆円も減る計算になります。
だから、右辺に+45を加えてやらなければなりません。45をプラスできるのは、家計でしょうか、企業でしょうか、政府でしょうか、輸出でしょうか?
家計は消費を節約しています。企業も在庫調整を進めています。輸出は前代未聞の落ち込みです。
残りは「政府」しかありません。政府が支出を45兆円(年率換算)増やせばよいのです「2009年度補正予算14兆円」を成立させたのは、こういうわけです。
財源は公債(国債)増発
「さらに公債を加えれば、子孫に借金を負担させることになる、というのが反対論者の主張」ですが、三面等価の原則より、「国債の増加は、それを買う国民の金融資産の増加」です。
「国の借金」日本経済新聞 H21年5月9日(グラフも)
財務省は8日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が2009年3月末時点で846兆4970億円になったと発表した。…一人当たりの借金は約663万円になる。
正解は、「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。約846兆円のうち、94%=約795兆円は、我々日本人が持っているのです(単純計算です。国債を海外が購入している、6%という数値を使用しました)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。
国民資産

貯蓄Sが、①企業の借金:I・②政府の借金:G-T・③外国の日本に対する借金:EX-IMの原資です。国民が、政府に貸しているのです。


国際的にしばしば使われている指標は「純債務:282.9兆円」で,財務省が主張する「粗(あら)債務:980兆円」ではありません。日本ほど,政府が多額の資産を持っている国はないのです。その資産を「粗債務」から引くと,債務超過額は282.9兆円になります。その額は,単純計算ですが,日本の国家予算82兆円の3.5倍程度になります。道路などの固定資産を除き、すぐ現金化できる資産で、510.3兆円あります。

実は,日本が財政危機でない事を一番よく知っているのが財務省なのです(以下の内容は 高橋洋一『さらば財務省!-官僚すべてを敵にした男の告白』『日本は財政危機ではない!』講談社 2008によります)
2002年,アメリカの格付け会社によって,日本国債の格付けが引き下げられました。それに反論した財務省の意見書です。
「日本は世界最大の貯蓄超過国(筆者注:S-Iが黒字)であり,国債はほとんど国内で消化されている。また世界最大の経常収支黒字国(筆者注:外国への資金貸し出しが最大の国)であり,外貨準備も世界最高である」
このように,「純債務でみると日本は財政危機ではない」という,常に「財政危機だ」と言っている日本国内向けの説明と,全く違う説明を海外にしたのです。
山崎元『なぜ必ず儲かる話は儲からないのか』プレジデント2009.5.18号
…日本人が日本人から借りて、日本国内で支出している。一家に喩えると、夫が妻から借金をしてこどもに小遣いを上げているような状況です。
さらに,「子孫に借金を負担させることになる」部分です。現在の国民が,借金をして,それを返済するのは,将来世代ということになるからです。
しかし,借金(元金)を返してもらう,あるいは,利息を受け取る世代も,やはり孫の世代,将来世代なのです。その利息は日本のGDP(国民所得)になります。
「国はいくら国債を発行しても倒産することはないと考えて良いのでしょうか。結論から言えばそのとおりです。現代の管理通貨制の下では自国通貨建ての国債をいくら発行してもそれが理由で国が倒産することはありえ 」ないのです。
岩村充 『貨幣の経済学』集英社 2008 p153
日本の消費Cは、約287兆円です。消費税を10%引き上げると、28兆7千億円増税です。税収不足分が補えることがわかります。国と地方が、現在発行しなければならない債務を、消費税を15%にすることで、「無借金経営」にすることが出来ます。
( )の数字は筆者
2009年度補正予算14兆円が5月29日に成立した。…歓迎したい。
(1)…内閣府の試算では、1~3月期の需要不足は45兆円…この需要を埋めなくては経済は回復しない。…需要が不足すれば公共支出を増加し、不足分を政府が埋めるのが定石である。
(2)…予算反対論のうち一番大きいのは、国債が増えるという点だ。政府は10兆円の国債の増発を実行する計画だ。
国は現在でも膨大な債務を抱えている。これにさらに公債を加えれば、子孫に借金を負担させることになる、というのが反対論者の主張だ。
…国債の増加は、それを買う国民の金融資産の増加である。国債の増加を恐れず、予算の実行に努力してほしい。
適切に、しかも正しく解説されています。
需要と供給
三面等価の図を見てみましょう。総生産GDP=総所得GDI=総支出GDEです。総生産は、我々の所得の総額です。
総生産Y=C+I+G+EX(総需要)

C=家計が主体の消費(Consumption )、I=企業が主体の投資(Investment)、G=政府最終支出、EX=輸出を足します。
Y(つまりGDP)を伸ばす=C、I、G、EXのいずれかを増やすということです。
「内閣府の試算では、1~3月期の需要不足は45兆円(年率換算)」ということは、
Y=C+I+G+EX-45です。
Y=家計+企業+政府+輸出-45
なんと、総生産GDP(=総所得GDI)が45兆円も減る計算になります。
だから、右辺に+45を加えてやらなければなりません。45をプラスできるのは、家計でしょうか、企業でしょうか、政府でしょうか、輸出でしょうか?
家計は消費を節約しています。企業も在庫調整を進めています。輸出は前代未聞の落ち込みです。
残りは「政府」しかありません。政府が支出を45兆円(年率換算)増やせばよいのです「2009年度補正予算14兆円」を成立させたのは、こういうわけです。
財源は公債(国債)増発
「さらに公債を加えれば、子孫に借金を負担させることになる、というのが反対論者の主張」ですが、三面等価の原則より、「国債の増加は、それを買う国民の金融資産の増加」です。
「国の借金」日本経済新聞 H21年5月9日(グラフも)
財務省は8日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が2009年3月末時点で846兆4970億円になったと発表した。…一人当たりの借金は約663万円になる。

正解は、「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。約846兆円のうち、94%=約795兆円は、我々日本人が持っているのです(単純計算です。国債を海外が購入している、6%という数値を使用しました)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。
国民資産

貯蓄Sが、①企業の借金:I・②政府の借金:G-T・③外国の日本に対する借金:EX-IMの原資です。国民が、政府に貸しているのです。


国際的にしばしば使われている指標は「純債務:282.9兆円」で,財務省が主張する「粗(あら)債務:980兆円」ではありません。日本ほど,政府が多額の資産を持っている国はないのです。その資産を「粗債務」から引くと,債務超過額は282.9兆円になります。その額は,単純計算ですが,日本の国家予算82兆円の3.5倍程度になります。道路などの固定資産を除き、すぐ現金化できる資産で、510.3兆円あります。

実は,日本が財政危機でない事を一番よく知っているのが財務省なのです(以下の内容は 高橋洋一『さらば財務省!-官僚すべてを敵にした男の告白』『日本は財政危機ではない!』講談社 2008によります)
2002年,アメリカの格付け会社によって,日本国債の格付けが引き下げられました。それに反論した財務省の意見書です。
「日本は世界最大の貯蓄超過国(筆者注:S-Iが黒字)であり,国債はほとんど国内で消化されている。また世界最大の経常収支黒字国(筆者注:外国への資金貸し出しが最大の国)であり,外貨準備も世界最高である」
このように,「純債務でみると日本は財政危機ではない」という,常に「財政危機だ」と言っている日本国内向けの説明と,全く違う説明を海外にしたのです。
山崎元『なぜ必ず儲かる話は儲からないのか』プレジデント2009.5.18号
…日本人が日本人から借りて、日本国内で支出している。一家に喩えると、夫が妻から借金をしてこどもに小遣いを上げているような状況です。
さらに,「子孫に借金を負担させることになる」部分です。現在の国民が,借金をして,それを返済するのは,将来世代ということになるからです。
しかし,借金(元金)を返してもらう,あるいは,利息を受け取る世代も,やはり孫の世代,将来世代なのです。その利息は日本のGDP(国民所得)になります。
「国はいくら国債を発行しても倒産することはないと考えて良いのでしょうか。結論から言えばそのとおりです。現代の管理通貨制の下では自国通貨建ての国債をいくら発行してもそれが理由で国が倒産することはありえ 」ないのです。
岩村充 『貨幣の経済学』集英社 2008 p153
日本の消費Cは、約287兆円です。消費税を10%引き上げると、28兆7千億円増税です。税収不足分が補えることがわかります。国と地方が、現在発行しなければならない債務を、消費税を15%にすることで、「無借金経営」にすることが出来ます。
スポンサーサイト