労働に関する一考察(笑い)
伊藤元重 読売 9.3
アベノミクスの今 名目GDP大きく改善
アベノミクスによって日本の名目GDPは13年度以降増え続け、16年度には約538兆円と、1997年度のピークを超えるに至った。
プライマリーバランスの赤字幅を10年度比で半減するという目標は達成された。
労働分配率は過去30年で最も低い。
有効求人倍率はバブル期を上回って、過去30年で最も高い水準。
賃金は本当に上がっていかないのだろうか。大企業の労働者は年功賃金と終身雇用制に守られて、大幅な賃上げは難しい。
労働者の半分以上はパートや派遣などの非正規雇用、中小企業の従業員、自営業である。これらの人の賃金は労働市場の状況に敏感に動く。現に外食、小売り、物流などの深刻な人手不足で、人件費も大幅な上昇が続く。最低賃金も大幅に引き上げられた。
非正規雇用から賃金上昇の波。
賃金が上昇すれば、企業は生き残りのために労働生産性を高めなければならない。労働生産性の低い企業から高い企業へと労働力移動が加速していく。
宅配ヤマトHDは、1万人近い採用を行うが、応募者がどんな企業から来るのか想像してみよ。ヤマトの賃金に対抗できない企業は、運送業以外にも多い。生産性が低く賃金を挙げられない企業は生き残りが難しくなる。これが賃金上昇による供給側の調整である。
1)賃金は上昇中
実質賃金は、2016年度に上昇済みです。
実質賃金6年ぶりプラス 16年度、名目も増加
2017/5/23 9:04 日経新聞
厚生労働省が23日に発表した2016年度の毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上)によると、名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は前年度比0.4%増加した。増加は6年ぶり。
実質賃金は、6年ぶりにプラス値になりました。
実質賃金が高止まり→不況→実質賃金低下→失業率低下→完全雇用状態⇒実質賃金上昇(労働需要曲線右シフト)・・・となります。
日経新聞

賃金は、終身雇用・年功序列の公務員・大企業より、非正規雇用・中小企業という、労働需給市場に密接な現場から、上がり始めます。

春闘よりも、直ちに反応するのは「時給」です。
http://www.garbagenews.net/archives/2228492.html
アルバイトの時給動向をグラフ化してみる(最新)

2)労働分配率とは?
雇用者報酬/国民所得のことです(内閣府 国民経済計算)。
みなさん勘違いしていますが、「労働分配率が低い=好況」ということです。

労働賃金(分子)は一定ですが、企業収益(分母)は「好況・不況」で上下します。不況(リーマン・ショック)の際には、企業収益(分母)が減るので、労働賃金(分子)の比率が見かけ上、上昇します。
失業率が低下する状態=好況=労働分配率低下
ですから、「労働分配率を上げろ!」「労働分配率はまだまだ低い!」というのは、とてもナンセンスなことを言っていることになります。
好況だから、労働分配率は低くなるのです。
ただし、長期では、先進国の労働分配率は、低くなっています。
日経 経済教室 2017.9.14

理由は、産業構造の変化(例:IT企業や、知的アイディア産業の勃興)によるものだそうです。