服部茂幸 『偽りの経済政策-格差と停滞のアベノミクス』 のでたらめ その2

<服部茂幸 『偽りの経済政策-格差と停滞のアベノミクス』岩波新書>

P8
「実質GDPの伸び悩みの原因は、支出が伸びていないことにある。現在、消費や輸出が伸び悩んでいることは、多くの人が抱く共通認識であろう」

「p9 金融緩和は、消費や輸出などの支出の拡大を通じて、経済を刺激する。消費、輸出…の停滞を認めながら、雇用の拡大が異次元緩和の成果だと主張するのは奇妙な話だろう」


 
 もう、最悪です。

(1) 総需要ADと、総供給ASの区別ができていない。

5 AS AD曲線

この、

実質GDPの伸び

つまり、「増える」というのは、供給曲線が、右側にシフトすることです。反対に「減る」場合には、供給曲線は左側にシフトします

6 AS AD シフト

 需要ADが「増え(伸び)る」のと、「実質GDPの伸び」る(増える)のは、別の話です。

4 総供給 総需要

「実質GDPの伸び悩みの原因は、支出が伸びていないことにある」
「消費や輸出などの支出」


が、支出「C(消費)+I+G+NX(純輸出)」=ADの話であることがわかります。

そうすると、

「支出ADが伸びないから、AS=実質GDPが伸びない」と言っていることになります。

6 AS AD シフト

AD曲線(支出)をマクロ経済政策で右にシフトさせれば、AS曲線=GDP(実質GDP)が、動く(伸びる)??????

 どこから、こんな話が出てくるのでしょうか?

経済学では、このように考えています。

横山昭雄 「真説 経済・金融のしくみ」 日本評論社 2015 P27~
 …とかく通説ではGDP動向を論ずるのに、…最終需要の側面だけを分析して能事了れり、とする趣が強い。曰く,GDPの6割を占める消費の勢いがないため、景気が悪い。…需要は、“創世され、分配されたGDP”の従属変数であって、独立変数ではない。“消費が弱いから景気が悪い”というのは、“雨が降る日は天気が悪い”というようなもの



需要(支出)を伸ばせば、実質GDP(生産)が伸びるということは「この世にない」のです。

(2)


p24

一般的に経済の停滞の原因は需要の停滞にある。そして、異次元緩和は需要創出に失敗したから機能しないのである。今では経済が停滞していることも、その原因が消費と輸出の停滞にある…」

p31
消費が遅滞し、それが経済の回復を妨げているということは、今やマスコミの常識となっているだろう。


「p9 金融緩和は、消費や輸出などの支出の拡大を通じて、経済を刺激する」



 経済を刺激するのは合っています。マクロ経済政策は、「総需要(支出)」を刺激するものだからです。

マクロ政策

 ただし、金融緩和や財政政策というマクロ政策が刺激する主目標は、投資Iです。

10 消費 投資

 不況は、C(消費)+I(投資)+G(政府)+NX(純輸出)のうち、Iが減ることで生じます。

一方、消費Cは、不況でも変化しないのです。食費・医療費・光熱費・家賃・交通費・・・など、不況だからと言って削るわけにはいかないからです。
 
「不況=投資Iの減少が原因」というのが、ケインズが見つけた実証です。

だから、民間投資Iの減少に対し、①財政政策(公共投資)・政府投資の拡大+②金融政策(低金利導入)・民間投資の刺激と、財政政策+金融政策=総需要管理政策なのです。

マクロ政策

7 アベノミクス 投資

8 アベノミクス 投資


  C(消費)+I(投資)+G(政府)+NX(純輸出) ←刺激する。


「p9 金融緩和は、消費や輸出などの支出の拡大を通じて、経済を刺激する」

p24
一般的に経済の停滞の原因は需要の停滞にある。そして、異次元緩和は需要創出に失敗したから機能しないのである。今では経済が停滞していることも、その原因が消費と輸出の停滞にある…」

p31
消費が遅滞し、それが経済の回復を妨げているということは、今やマスコミの常識となっているだろう。



 だから、消費や輸出を刺激するものではないのです。消費と輸出が停滞しているから経済が停滞しているわけではないのです。

 消費を刺激するとしたら、例えば財政政策としては「減税」です。たばこ税や酒税、所得税を減税したら、可処分所得が増えます。あるいは、消費税8%を思い切り下げれば、消費を回復させます。ただし、アベノミクスで、このような政策は採用されていません。

 
注)変動相場制においては、金融政策のカバーする範囲が広くなりました。①金融緩和→円安→輸出増ラインと、②金融緩和→円安→株高→所得効果→消費増ラインも加わります。アベノミクスは、そこも狙っています。
ただし、これは「民間投資I」が主目的であること、①②ラインは、付随したものであるという本質は変わっていません。効果の「程度」には質的・量的な差があります。



p31
消費が遅滞し、それが経済の回復を妨げているということは、今やマスコミの常識となっているだろう。



 そのマスコミの常識=経済学の非常識を訂正するのが、経済学者の役割なのに、マスコミの常識に乗っかって「アベノミクス批判」ですから、もはやエセ評論家で、経済学者ではありません。

< 中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇 書評>

よなごらいふ

僕は小学校で教えていたこともあってか、教科書が好きだ。「英知を集めて作られた本」それが教科書だと思っている。中学校、高校には公民あるいは政治・経済という授業がある。その教科書の使える部分だけ用いた本だ。「引用」→「解説」の授業方式になっているので、わかりやすい。

「教科書でわかる」だが、教科書以外の入門書、白書の引用もあり、中高レベルを超えた内容も扱っている。
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No title

よく見たらこの方の本、天下の岩波新書から出ていたんですね…。
悔しいです。「日本の思想」とか慣れ親しんでお世話になって来た岩波からまさか…。
ただ、正しい経済知識があると、文章から誤った記述を読み解くことができるということがわかって大変勉強になりました。

ルールをお守りください(笑)

>服部茂幸氏の当該書籍を紹介する岩波書店のホームページには、以下のように経済学部経済学科卒とあります。

情報を頂きました。服部氏は学士は経済学部だそうです。年代から察するに、ポンコツ経済学を学び、現代経済学はちんぷんかんぷんなのでしょう。


>また、院については学部という言い方はしません。「○○研究科○○課程」などと表記します。

拙著をお読みください。服部応援団は、どうも、一知半解のきらいがあります(笑)。
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