高橋洋一や田中秀臣には理解できない、DSGE(現代経済学)理論
今年、はじめての記事になります。ものすごく骨太な話で、説明が長くなります(ですが、これでも説明のほんの一部分であることをご了承願います。すべてを説明できない事情がありますので、忖度願います)。
http://blogos.com/outline/205039/
アベノミクスと雇用について
アベノミクスが期待外れな結果しか残せていないことについてはいまや多くの人々が同意する所となりつつあるが、その一方で今も「アベノミクスは成功したんだ!」と主張する人々が強調するのは雇用の改善である。しかしながらアベノミクス開始以降、雇用が改善しているのは事実であるが、失業率や求人倍率の推移をみるとアベノミクスの前後で明確なトレンドの違いは存在せず、リーマンショックからの自律回復が続いているだけとも取れる結果である。
これに対し、アベノミクス支持派の主張は、「失業率だけをみれば確かにアベノミクスの成果は見えないが、労働力人口や就業者数を見れば、アベノミクスが雇用を大きく改善したことは明らかであり、同じ失業率の改善でも民主党政権下とアベノミクス以降では中身が異なる」というものである。
次にもう一つの問題点について指摘しておくと、労働力人口や就業者数が増加に転じたのは本当にアベノミクス以降だったのか?という点についても疑問が残る。
例えば高橋洋一氏は以下のような図を示して、「金融政策の効果を見るには就業者数をみればいい」「このデータほど、安倍政権と民主党政権の金融政策の差を如実に示すものはない。はっきりいって、民主党の完敗である。」(参照)とやっている。
そこで、試しに2012年以降の就業者数、雇用者数をプロットすると以下の通りとなり、少なくとも高橋氏の示したような大きな変化がアベノミクスの開始と共に起こったようには見えない。
[追記]
田中秀臣氏は雇用の改善の他に自殺者数の減少もアベノミクスの成果(或いは金融緩和の成果)だと主張しているようであるが、氏も認めているように自殺者数と失業率の間には強い相関がある訳で、自殺者数の減少がアベノミクスの成果というのは失業率の減少がアベノミクスの成果であるという事を前提としており、後者が自律回復で説明できるのであれば、前者もその結果とみることができるため、結局は雇用の改善がアベノミクスの成果かどうかという問題に帰着するだろう。
つまり雇用にしても世界経済にしても安倍政権は強い追い風を受けてスタートしていたという事であり、当初はアベノミクスが大きな成功を収めそうだという期待が高まったことは確かである。それが虚像であったとしても繰り返し喧伝されていた「景気は気から」という考えが正しかったのなら、この好ダッシュはアベノミクスの成功を自己実現的に後押ししたはずであるが、その後の推移を見るに残念ながら「気」だけでどうにかなるわけでもなかったという事だろう。
要するに、「失業率や、就業者数の増加は、リーマンショック以後の『自律的回復』であり、アベノミクスの成果ではない」というものです。
これに対して、反論しているのが、高橋洋一・田中秀臣という、バカ教授です。この馬鹿が踏み外しているのは、今の経済学の本 質など、まったく理解していないというところにあります。

どうですか?この図を見て、「アベノミクスの成功で、失業率が低下した」と、言えますか?「自律的回復ではないか?」に、「高橋や田中など、反論になっていない」と突っ込まれて、それを否定できますか?
<現在の経済学とは?>
今の経済学は、動学的一般均衡です。動学的というのは、「時間を考慮した」一般均衡です。


①古典派経済学 スミスやリカード
↓
②新古典派経済学(ミクロ) ワルラス(静学的)一般均衡や、マーシャル需給曲線
↓
③ケインズ経済学(マクロ) 帰納法(厳密な理論ではなく、実証優先)
↓
④ケインジアン経済学 ケインズの予想(期待)を捨象し、静学(現在)のみ考慮
IS-LMも、フィリップスカーブも
↓
⑤ルーカス批判 「ケインジアンは、動学(時間軸)を考慮していない!」
フリードマン・マネタリズム 「フィリップスカーブ(実証)など無意味」
↓
⑥現代経済学
動学的一般均衡(未来の予想を加味)← ②ワルラスの静学的(今現在のみを考慮)とは違う、③④の静学とも違う。DSGE=動学的確率的一般均衡
これが、「マクロ経済学」の推移です。
世間一般では(ネット上でも)、⑤フリードマンに始まる「市場原理主義」や、「新自由主義」批判!!!(40年以上も前の経済学理解)で止まっています。
要するに、40年以上も前の経済学で止まっている話であり、本当は「批判」にすらなっていません。
なぜ、世間一般では、「最新経済学」が、理解されていないかというと、今の、「動学的確率的一般均衡=DSGE」は、微分積分を多用するので、「一般的経済学解説書」「新書」「経済学入門」では、扱いきれないからです。
だから、入門書の類、高校教科書も、飯田泰之先生など、若手の教授が執筆するもの以外、全部「40年以上前」の、「新自由主義」だの、「市場原理主義」だので、止まっています。
つまり、日本人の経済常識は、未だに前記④ケインジアンの「財政+金融=ポリシー・ミックス」や、⑤フリードマンの「市場重視」で、止まったままです。
もう、団塊世代以上が書く入門書(池上彰など)、すべて「止まったまま」でしょう?さらに、経済学など学んだことがない「エコノミスト(安達誠司とか)」も同じです。彼らの本に「微分積分方程式=動学」を使っているか所など皆無です。
今の大学院で必須の「動学的確率的一般均衡=DSGE」など、彼らには全く理解できていないのです。それは高橋洋一や、田中秀臣など、バカ教授も同じです。だから、「書けない」のです。新書や「経済入門」書に、「最新経済学」が一切ないのは、「①一般向けには、技術的・分量的にも説明できない」、「②バカエコノミストやバカ教授には理解できない」からです。
だから、日本は終わってしまったのです。最新理論を、大学で教えられなかった時代=70年代後半・80年代・90年代初頭→「(理論が)失われた20年」
これが、90年代後半から、「失われた20年(実証)」として、現実化してしまいました。40代・50代の現役世代(官僚の最前線)が、最新経済理論を共通項として理解していないので、「対処の仕様がなかった」のです。彼らの理論も、40年以上も前の、④ケインジアンの「財政+金融=ポリシー・ミックス」や、⑤フリードマンの「市場重視」で、止まったままなのです。
<最新理論=今の経済学常識の本質>
今の経済学の本質は、「動学的」です。つまり、「現在」だけではなく、「未来」を考慮した一般均衡です。
未来は、「予想(期待)=expectation」です。
だから、
実質利子率=名目利子率-期待(予想)インフレ率
です。
GDPで重視するのは、名目ではなく、実質です。
実質GDP=名目GDPからインフレ率を控除
経済は、「①現実(今現在)」と「②未来(予想)」で動くのです。「②未来(予想)」が大事、というか、絶対にはずせなくなっているのが、現在経済学の本質なのです。
だから、「(不安定な)未来をできるだけ確定させる」のが、現代経済学の「合意事項・必須事項」なのです。
①インフレ・ターゲット
②●年●月に「オリンピック」
③●年●月に、都市圏「新線」「新駅」「新道」完成
これらが、「未来を確定させる」政策だということが分かりますか?なぜ、90年代になって、①インフレ・ターゲットが導入されたか、分かりますか?これによって、中央銀行は、「政治介入」を避け、中央銀行の独立を達成したのです。
それまでは、③ケインジアン フィリップス曲線でした。

「インフレだと、失業率が低い、だからインフレが望ましい」=裁量政策これ、60年代に終わった話です。
70年代に襲ったのは、「スタグフレーション=インフレなのに、高失業率=不況」です。
だから、フリードマンは、「フィリップス曲線は垂直になる=あてにできないぞ」と「自然失業率」を唱えたのです。「インフレ目指す裁量などしてもだめだ、ルールに基づいて、金融政策をしろ」と言ったのです。ケインジアン=裁量です。フリードマン=ルールです。
ところが、ルールに基づく「マネタリズム」を中銀が採用したものの、変動相場制になって、金融自由化が進んだ結果、フリードマンがとなえた「マネタリーベース増減(ルールに基づく)→マネーストックの増減」など、まったくあてにならなくなったのです。金融商品が増大しすぎて、マネーストックの範囲が拡大し過ぎ、もはやコントロール不能になったのです。だから、中銀は、「ルールの基づく政策=狭義のマネタリズム」を捨てたのです。
その後、インフレ目標(ルール)を定め、その政策目標を実現するために「裁量」を使用する(マネタリーベースの増減、短期利率のコントロール・・・)を導入しているのです。今は、ルール+裁量なのです。
フィリップス・カーブも、今は「昔」のモノではありません。「インフレだとよい」ではなく、大切なのは、「インフレ率=変化率」なのです。

企業の儲けは、物価が安いときに仕入れ、物価が高くなるときに売るのが一番です。その「差」が、もうけになるからです。
人件費も同じです。人件費が安いときに仕入れ、人件費が上がった時(インフレ)にも以前の「安い人件費契約」で使えるときが一番です。
実質=名目-期待(予想)変化率
です。
0%=2%(名目成長)-2%(変化率)では、最大儲けにはなりません。インフレであればいいのではないのです。
他の主体が2%のインフレ率を予想している時に、自社だけが、3%の名目売り上げを達成する(安く仕入れて高く売る)・・・これが「もうけ」なのです。
1%=3%(名目価格)-2%(変化率)
つまり、大切なのは、「乖離=ギャップ」なのです。だから「インフレという事実」が大切なのではなく、「インフレ率という変化=動学」が大切なのです。
0%=5%(名目成長)-5%(変化率)
これでは、いくら「インフレ」でも、まったく「もうけ=付加価値=GDP」は増えないのです。
1%=10%(名目成長)-9%(変化率)
もうけは「インフレ率が高いから」ではなく、「ギャップ」にあるのです。だから、フィリップス曲線で大切なのは、「インフレ」ではなく「変化率」なのです。
「実質」が大切なのは、労働市場でも同じです。①実質賃金が高止まり=失業率高(デフレ)→②実質賃金低下→失業率低下(回復期)→③実質賃金上昇=完全雇用(限界費用増)になります。
参照
クリック
↓
池田信夫を銃殺せよ(クルーグマン風に言うと)その3
それで、マンキューが単なる「実証」だったフィリップス曲線を「限界費用増=変化率増=失業率低」という「理論」で、再構築したものが、ニューケインジアン・フィリップス曲線=NKFCです。大切なのは、「インフレ」ではなく「変化率」なのです。
その変化率は、「現在」と「未来」の間で「生じる」のです。
経済は、「未来に依存する」というのが、現代の経済学の必須事項なのです。だから、最新の「動学的確率的一般均衡=DSGE」では、2つの変数の1つ(XとY)は必ず「変化率」なのです。(無理やりです・・ここに欠陥があります。詳しくは説明できません。予定稿で扱います。忖度願います)。
経済は「未来に依存する・・・」
Y=C+Iです。消費Cは「現在」です。今日の食事、今日の幸せ(ローンでクルマを買うのも、高いソファを買うのもすべて「現在」)が目的です。
だから、消費など、好不況にかかわらず、「一定」なのです。不況だからといって、電気・ガス・水道・家賃・食費・病院代・・・など、削るわけにはいかないのです。
ところが、「投資」は、未来に依存します。来年以降どうなるか・・・工場を増やすか、人員を増やすか、店舗を拡大するか・・・これはすべて「未来予測」に基づくのです。
だから、「未来が不安」だと、「投資減=不況」になるのです。「好不況は投資に依存する」というのが、ケインズが見つけた「実証」です。だから、投資を拡大するには、「民間に変わってでもいいから、政府が投資する公共投資+民間投資を活発化させる金利下げという金融政策=ポリシーミックス」を提唱したのです。
今に依存するのが、消費。将来に依存するのが、貯蓄Sです。
企業から見るY=C+Iは、家計から見るとY=C+Sです。貯蓄は「未来のため」に行います。未来が不安だと所得Yが増えても、Cを増やすのではなく、Sを増やします。それが、今行われている「消費が増えない」現象の理由です。今現在、家計は消費を増やすのではなく、貯蓄Sを増やしているのです。若い世代ほど顕著です。Yが増えるのに、Sだけが増える・・・だから、S>Iになる。そこで「不況」になるので、Iを増やす=政府支出+金融緩和なのです。
このように、景気は「未来」に依存するのです。

そうすると、アベノミクスが成功しているかどうかは、「未来に働きかける」ことに成功しているかどうかが基準になります。

目先の「求人倍率」や、「失業率」は「今現在」の話です。企業は「今必要」だから動きます。
一方、大学生や高校生の求人は「半年後、1年後、5年後、10年後・・・」の未来予測に基づいて行われます。今ではなく「未来に依存」する「先行投資」なのです。
①投資が増えているかどうか・・・・

http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_seizougyo-setsubitoushi
日本政策投資銀行が4日発表した2016年度の設備投資計画調査によると、大企業・全産業の国内投資額は前年度実績比10.9%増の17兆5128億円で、5年連続のプラスとなった。将来の成長に向け、企業が製品開発などの前向きな投資を増加。東京五輪・パラリンピックをにらんだインフラ投資も続く。
未来に依存する民間投資は、アベノミクスで「確実に」変化しています。
②大学生・高校生の就職はどうなっているか・・・

http://fp-user.com/%E5%B0%B1%E8%81%B7/%E5%A4%A7%E5%8D%92%E6%B1%82%E4%BA%BA%E5%80%8D%E7%8E%87%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB%EF%BC%882017%E5%B9%B4%E5%8D%92%EF%BC%89/

未来に依存する大学生・高校生の就職率はアベノミクスで「有意」に変化しています。
分かりますか?高橋洋一や、田中秀臣のように「失業率がとか、労働者数がとか、自殺率がとか・・」など「現在」の指標で、アベノミクスが成功しているだの失敗しているだの・・・。
こういう説明をして「シロウト」を納得させるとことなど「ムリ」なのです。理論的にも実証的にも無理なのです。だから、シロウトに突っ込まれて、反論になっていないのです。
彼らが「バカ」だというのは、こういう「現在経済学」の本質を理解していないからです。
<高橋洋一や田中秀臣には、説明できない話>

動学的一般均衡は、次のような過程を経て確立されました(ここは、ほんのさわりです)。
1)ワルラス一般均衡論(新古典派=ミクロ) = ニュートン物理学(どんぶり勘定)
ワルラス均衡理論は、財市場・貨幣市場・労働市場・・・と複数均衡を扱います。ところが、ニュートン物理学では、「2つの引力」を分析できるのみで、「3つ以上の引力=均衡」は、理論的に扱えないのです。しかし、太陽系の場合、太陽の引力があまりにも巨大で、太陽と金星、太陽と水星、太陽と地球・・・とそれぞれ「2個の引力=ニュートン物理学」を使って解析し、それを寄せ集めて、「太陽系」を説明したのです。
ですから、ワルラス均衡も、それぞれの市場を分析し、それを無理やり「すべての市場均衡=複数均衡」として扱っただけで、もともと、原理的(2個の均衡しか扱えないニュートン物理学に依存)に、「無理」があるのです。
「ミクロ的基礎付け=ある理論からすべてを説明する演繹法」を装ってはいますが、最初から「誤謬」が生じるような理論なのです。
2)ケインズマクロ=帰納法(理論ではなく、実証から作った帰納法)
一方、ケインズの理論=マクロ経済学は、帰納法です。つまり、実証から導き出した、「ミクロ的基礎付け=ある理論からすべてを説明する演繹法」ではありません。「投資の増減が不況につながる」のを発見し、では、投資を回復させるには・・・という帰納法です。理論などありません。世界大恐慌=不況を克服できれば、それでよいという、ざっくり論です。
ケインジアンは、とりあえず、ミクロ=ワルラス均衡と、ケインズマクロを結び付け「古典派総合」として活用しますが、これらは原理的に「水と油」でした。
だから、ルーカスらが、「マクロ経済学のミクロ的基礎付け=ある原理理論の演繹法によってマクロ理論にする」ことを、要請したのです。そこから、現代経済学が始まります。
3)動学的一般均衡
これが、現代の「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」、ルーカス以後の現代経済学理論です。「動学=今と未来」を考慮したモデルです。

この、理論には、
①フェルマーの定理
↓
②解析力学
↓
③ラグランジュアン

という、「ミクロ的基礎付け=演繹」が導入されています。
「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」、すべてを最小単位(ミクロ)に落とし込み、そこから、壮大なマクロを作り出す・・・。
この理論が実践されているのが、「コンピューター」です。最小単位「0と1」から出発→最大単位「マクロ」まで、一貫しています。
この理論を、高橋洋一や田中秀臣は、全く説明できません。「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」に、なぜ微分積分が必要なのかも、まったく説明できません。だから、彼らは「終わっている」のです。
もう、高橋や、田中のような「バカ」など、「使い物にならない」のです。
<ただし・・・>
「未来のことは分からない(ケインズ)」時代から少しは進歩して、「未来のことが予測できる」時代にはなりましたが、ですが、やはり「未来の事」は神のみぞ知るです。自然災害や、「ミス」は、やはり正確に予測できません(これらは必ずGDPを下げ、売り上げを下げます)。
経済学は「今」を説明するもので、未来を予測する「水晶玉」は持っていません。
DSGEも「変化率が○○ならば、結果は●●になる」といえるのみで、その「変化率」がどうなるかは「分かりません」
そもそも、経済を決める変数は、無数にあり、XとYだけで決まる「物理学」とは雲泥の差があります。
経済学は「進歩」していますが、「経済全体を描写」するのは、永遠にできません。