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もうやめては?食糧自給率

<もうやめては?食糧自給率>

読売 頑張ってますね。

読売新聞H27.4.6 社説『食料自給率 農業政策の目標として適切か』より

補助金農政を正当化するための数値目標なら必要ない。政府が今後の農政の指針となる「食料・農業・農村基本計画」を策定した。カロリーを基準にする食料自給率の目標について45%に下げた。自給率は4年連続で39%だ。日本農業は、カロリーは低くても価値の高い野菜や果物などが強みだ。(カロリー自給率は)実力を示す的確な目標とは言えまい。

 基本計画には自給率向上を名目にした非合理な政策が散見。典型が飼料米の生産量を10年後に今の10倍にする計画。国内で育てた牛や豚の食肉も、輸入飼料を使った分は、自給率に算入されない。国産飼料米を増やして、肉の自給率を高めるとしている。主食用から飼料米に転作したコメ農家には補助金を支給し、収入を保証、零細農家の温存策。

 生産額ベースの自給率、現在は65%。問題なのは、(耕作放棄地を含めた)国内農地をフル活用した生産、イモ類を中心に栽培すれば、必要なカロリーを賄えるという。食料輸入が途絶する事態は考えにくく、現実の食生活ともかけ離れている。




 いくら国内で牛・豚・鶏・牛乳を産出しても、農水省は「輸入飼料」を使っているので、「カロリー自給」とは、見なさないとしています。見かけ上の「自給率」を上げてしまい、「自給率が低い」と危機感をあおるには都合が悪いからです。

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こんな記事が、新聞紙面を飾るとは・・農業自給率


 ケンタッキーは、「国産100%」を唄いましたが、ケンタッキーを食べるとカロリー自給率は低下します!

自給率はいかようにでも変えられます。

参照 カテゴリ 『農業自給率UPは無意味』

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食料自給率という神話


自給率(農水省 2013年)                       %

カロリーベース                               39

実際のカロリー摂取量ベース(05年)                53

生産額ベース                               65

農家の自家消費、規格外未出荷・廃棄分(生産物の2~3割相当)
を自給に加えた場合の、実際のカロリー摂取量ベース(05年) 60%超


(1)「自給的農家」、生産物を出荷していない、つまり大規模家庭菜園農家が、90万戸/253万戸(35.5%)います。自分のうちの野菜や米を作ったり、親せきに配ったり、近所に配ったりという人たちです。これを含めた統計調査は、2010年までで終了しました。

農業 2010年 農家数

(2)次に「販売農家」です。これは農地30アール(10×10m=1アール)以上or年間販売額50万円以上の農家です。145.5万戸(2014年)です。

農業 2013年 農家数
農業 2013年 農家数 表

①副業的農家です。79.8万戸います。これが年金生活主体の、日本の主力?農家です。所得は410万円(うち年金が225万円、農外収入が145万円、農業収入はたったの39万円)です。

②準主業農家です。農業外収入が主、農業が副業の農家です。農協や役所、民間企業に務め、週末に農業をやる農家です。これが、31万戸です。所得は573万円(主業が525万円、農業所得は、たった47万円)です。

③主業農家(いわゆる専業農家)です。所得639万円(農業収入が505万円)です。私たちがイメージするいわゆる「農家」は、14.3%(2010年)しかいません。

 農業従事者の内訳です。上記の収入データを裏付けるように、日本の農業は、年金生活者が余暇を利用しておこなっています。

農家 年齢

食料安全保障とは 農水省Web

食料の多くを輸入に頼っている日本では、国内外の様々な要因によって食料供給の混乱が生じる可能性があり、食料の安定供給に対する国民の不安も高まっています。しかし、そういった予想できない事態が起こった際にも食料供給が影響を受けずに確保できるように準備しておかなくてはなりません。



耕作放棄地は 約40万ヘクタール(2010年)で、滋賀県とほぼ同じになります。また、世界的に見ると、1950→2005年間に、人口は約2.6倍、穀物(トウモロコシ・小麦・コメ) 約4.3倍で、完全に人口増加率<穀物生産増加率です。

例えばフランスでは、小麦の収量は、1950年代まで、1トン/haだったものが、21世紀には8トン/haとなり、50年間に6倍になりました。空気中の窒素を工業的に閉じ込めた「化学肥料」が普及したからです。

食料は、世界的に余っているのです。余っているから、どの国も押し付け合い、自分の国に入ってこられると困るのです(例:WTO会議)。

川島博之「(カロリー自給率を)政策目標として使うのは不適切。国が国民の関心を引こうとして考え出したものでしかない(読売新聞H26.8.8)」



 生命個体を維持するエネルギーは、1日2000キロカロリーほど(40歳代男性は1日2,300kcal、女性は1,750kcalが適当 厚生省)です。しかし、日本では自給できないエネルギーを含めると、22万8000キロカロリーを1日に消化している(2013エネルギー白書)ことになります。

エネルギー3

食料カロリーは、わずか0.88%です。いざという場合、食料の前にエネルギーがなくなります(電気・ガス・水道のインフラ、石油が全く使えなくなることを想像してください)。コメがあっても炊けません。ちなみに日本の場合、石油備蓄量は6か月分です。

万が一?に備えて、6か月分のコメさえあれば、十分なのでは?

カロリー自給率なる、おかしな数値を批判しているもので、農家保護(補助金)は、消費者余剰+生産者余剰の観点から肯定されます。また、EUもアメリカも農業は補助金漬け、EU農家は「農業公務員」といってもいいような状況です。

WTOは、「関税・関税障壁」撤廃をうたいますが、「補助金」については、ノータッチです。

関税や、数量制限より、補助金の方が優れているのは、経済学 余剰分析では常識です。
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