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消費増税を凍結しろという暴論2

<消費増税を凍結しろという暴論2>

 事実を箇条書きにしておきます。


(1)社会保障費は2025年に向って(団塊世代が後期高齢者)激増する。
①2015年の社会保障費119.8兆円、すでにGDPの1/5を超えている。
②2025年には、社会保障費は149兆円になる。GDPが毎年1.5%成長しても、24.8%=GDPの1/4になる。

(2)社会保障費は、われわれが払う毎年の「公的保険」と「税金投入(その1/3は公債)」で賄われている。
①社会保障費は、積み立て方式ではなく、毎年の「公的保険」徴収料でまかなう賦課方式である。
②「公的保険」は、被雇用者と雇用者(会社)が半分ずつ負担している。
③「公的保険」は、税金よりもはるかに多い、隠れた税である。
④「公的保険」は、結局「現役世代」が払っている。
⑤「税金」は、所得税+法人税=30.2兆円、消費税17.2兆円(2016年度)、結局「個人と会社」の現役世代が、圧倒的に負担をしている。
⑥所得税は、1000万円以上の給与所得者がその78%を負担している。
⑦法人税は7割の企業は赤字(倒産に至る赤字ではなく帳簿上の赤字)で払っていない。
⑧2025年には、社会保障費に対する税金投入割合が激増する。
⑨国家歳出の「社会保障費」は増大し続け、その分、他の予算が減っている。

(3)国債発行残高は、865兆円(29年度)
 ①日銀保有額は、前年比9.9%増の437兆円、保有比率は40.3%(29年6月)。
 ②民間金融機関の保有額は432兆円(39.9% 同)
 ③日銀は長期国債買い入れ額(保有残高の年間増加額)のめどを約80兆円とした。現在は、60兆円前後で推移。
④このままのペースで、8年後(2025年)には、日銀は現在の金融機関の持つ国債をすべて購入することになる。(ただし、新規発行国債は20兆円:29年度)。国債発行額1025兆円(8年後)の89.5%を日銀が保有することになる(単純計算)。
 ④国債残高/GDP比は、234%(2016年)。現状、暴落(インフレ・円)はない。
 ⑤ ④を拡散させないためには、「経済成長率>長期金利」が必要。しかし、バブル期以外の数年を除き、達成したことがない。
 ⑥ ④を拡散させないためには、プライマリーバランスの黒字化=財政の均衡化が必要。これは、現状も今後も「無理」⑤・⑥により、④は拡散し続ける。
⑦ ⑥により、国家歳出の「国債償還費」は増大し続け、その分、他の予算が減っている。



さて、これで

消費増税を凍結して、景気拡大をはかれ!
 消費税を上げなくても、成長すれば国の借金問題なんて解決する!

は、単なる「暴論」です。はっきり言うと「暴論」でも足りません。「バカ」です。


<社会保障費の全体像(マクロ)を見よう 財政の硬直化>


読売 2-17.10.8 社会保障費増大
読売2017.10.8

この119.8兆円、すでにGDPの1/5を超えています。これが「増える」といっても、全く理解できないようです。

社会保障 最新図説現社 浜島書店 2017年度

 「増える」のではなく「急増」なのが、理解できますか?

この内訳は、われわれが払う①「公的保険料」と②「税金投入(その1/3は公債)」で賄われています。②税金ですが、今でさえ、国家予算における「社会保障費」の伸びは、ムチャクチャなのです。

社会保障 予算増大

国家予算 歳出額


国家予算は、毎年「増え続け」ています。来年度も100兆円弱の予算が組まれそうです。理由は、①「社会保障費」が「伸び続け」ているからです。
伸びる第2の理由は、②「国債費元本返済+利払い費」の増大です。これも伸び続けています。
社会保障費や地方交付税交付金は、法律によって支払いが義務付けられています。減らせないのです。

社会保障 予算

問題は、国の予算は、「無限」ではないので、社会保障費が伸びる分、他の予算が「少なくなる」ということです。

国家予算 歳出額


公共事業費
教育関連費

が減っている理由が分かりますか?「アベノミクスを加速させるには、まだまだ公共投資が必要だ、国は減らし続けているんだ、財源は国債を増やせばいいんだ」など、バカそのものです。

国債は、「政府の借金=国民の財産」ですから、「借金が増えて、国民1人当たりの借金額が○○で」というのは、ナンセンスなことは説明しました。

また、ギリシャと違い、日本の国債は「円建て」ですので、原理的に国が「破産する」ことはないことも示しました。

国債に対する信用がなくなる=日本円に対する信用がなくなること(円札は国債などの資産を購入し、日銀が発行、要するに『国債=円札そのもの』)ですから、国債破綻は、円の破綻、通貨安・インフレのことです。円が暴落しても、国債の返済はその「安くなった円」で行われるので、原理的に破たんはしないのです。

国債増発の問題は、そこにはないのです。問題は、国債償還費(割合)が増え、国の予算が他の分野に回せなくなることなのです。


浜島書店 最新図説政経 2017 p219

日本とギリシャ国債の違い

財政破綻の危機に陥っているギリシャより、債務残高の対GDP比で高い日本で同様の問題が起こらないのはなぜか。…ギリシャは粉飾決済の発覚・景気悪化による税収不足により…外国資本が引き上げられ、資金不足となり海外に対して借金を払えなくなった(注:借金はユーロ建て債、ギリシャが発行できる紙幣ではない)。

日本の国債は、円で返済するので債務不履行には陥らない。しかしながら、①財政の硬直化②世代間の不公平③金利の上昇(注:国債価格の低下)といった問題が起こる。財政の健全化の取り組みが必要である。



この「社会保障費」「国債償還費」の伸びは、「ムダな予算を削る」「議員の数を減らす」「所得税・法人税収を増やす」レベルでは「焼け石に水」なのが理解できますか?

急増する社会保障費、国債償還費。減る一方のその他予算。これで「消費増税反対!」ですって?代案をどうぞ(笑)。

<社会保障費負担をマクロで見よう>

 社会保障費は、「公的保険+税金(国債)」でまかなわれています。

社会保障 最新図説現社 浜島書店 2017年度

社会保障費.jpg
社会保障費100兆円

社会保障費 (2)

 「公的保険」は増え続けています。
アベノミクスで、給与所得は上がっているのです。しかし、この「公的保険料」7がどんどん増えているので、「手取り」が増えていないのです。

読売 h28.4.22
健保組合 平均保険料率9年連続で増
平均保険料率は、9.103%(前年度比0.081%増)で9年連続の増。1人あたりの年間保険料は平均47万9354円(労使折半)。2007年度比較、1人当たり年間保険料は、約9万6000円増えた。




安倍政権後3年間に、2人以上世帯の、税(公的保険含む)の支出は、1月あたり、5000円弱増、可処分所得は2000円強の増です(総務省 日経2016.3.28)。



毎年1%程度、所得が伸びても、税金(公的保険)が伸びているのですから、可処分所得など増えません。

2015年、年金・医療・介護等の公的保険料は、66.9兆円です。所得税・法人税・消費税の56.3兆円を上回っているのです。消費税収など、16~17兆円程度しかありません(消費税率を1%上げたところで、2.5兆円程度の増税しかできません)。

この①公的保険料は「A本人負担+B企業負担」です。つまり、ほとんど「現役世代」が払っています。

 この「保険料」について、見ていきましょう。

 2015年、年金・医療・介護等の公的保険料は、①従業員負担35.3兆円+②事業主負担31.5兆円、合計66.9兆円です。所得税・法人税・消費税の56.3兆円を上回っているのです。

 この公的保険料は、「目に見えない税金」と同じなのです。

この「公的保険料」を、モデルで考えてみます。

月収40万円、給与年480万円+ボーナス120万円、年収600万円のサラリーマンで考えてみます。

この場合、手取り額は466.3万円(月31万円 ボーナス93万円)、公的保険90万円、税金43.8万円になります。

あなたの払っている税金は43.8万円、目に見えない税金(公的保険)は、その2倍以上、90万円も払っている!のです。

公的保険 税 支出 1

この公的保険金は、あなたが将来受け取るカネを積み立てているのではなく、賦課方式、つまり、今の「高齢者」に年金・医療・介護代として右から左に回っているのです。あなたが払った90万円など、あなたの老後には1円も残っていません。

よく、GPIF、政府の年金機構が積み立てた「年金」財源が話題になります。運用資産額149兆円(17年8月)、株式投資が寄与しただの、株価下落したら減るだのなんだの・・・。

こんな149兆円など、2016年度「年金予算額」56.7兆円ですから、3年も持たないカネにしかすぎません。年金に対する税金投入分を除いて、純粋に毎年の「給与所得者+雇用主」が払っている保険料支払い分35兆円で計算しても、4年ちょっと分にしかなりません。しかも、この積立金は、このまま順調に「なくなる」!予定です


http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n130222_696.html
総合研究所
積立金は2038年でなくなります。賃金が上がらないと、2032年に積立金はゼロになり、2050年には年金会計は、厚労省によると、最大800兆円の債務超過になります。



閑話休題

しかも、この90万円は、被雇用者が払っている分だけです。
2015年、年金・医療・介護等の公的保険料は、①従業員負担35.3兆円+②事業主負担31.5兆円、合計66.9兆円です。簡単に言えば、あなたの保険料と同じ程度、「会社」も払っているのです。公的保険は、企業も1/2負担しています。サラリーマンが90万円を負担しているとすれば、企業は88.75万円を負担しています。

社会保障 税と保険料

だから、年収600万のサラリーマンの場合、会社が払っている本当の給与は、688.8万円!
になるのです。「公的保険」の半分は、「会社」が負担しているのです!

公的保険 税 支出 2


企業にとっては、88.75万円を①本人に給与として払うか②国に保険料として払うかの違いだけであって、実質的には688.75万円をサラリーマン1人に「払っている」ことになるのです。

企業の負担する社会保険料は法人税の1.5倍!!!です。公的保険料という名の「目に見えない税」を、どれだけ払っているか、イメージできますか?

 「アベノミクスで賃金増がない!、恩恵などないんだあああ」など、「バカ」か?という話なのです。企業が賃上げすれば、企業は「公的保険増」という、隠れた税金を負担しているのです。しかも公的保険料は、毎年増加の一途です。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/h27_kaku_top.html
内閣府 国民経済計算 
フロー編
Ⅴ.付表
(10) 社会保障負担の明細表(Excel形式:51KB)

10.社会保障負担の明細表
(単位:10億円) 平成27年度(2015)

雇主の現実社会負担 29,527.8
家計の現実社会負担 34,949.4 
合計            64,477.2


読売 h28.4.22
健保組合 平均保険料率9年連続で増
平均保険料率は、9.103%(前年度比0.081%増)で9年連続の増。1人あたりの年間保険料は平均47万9354円(労使折半)。2007年度比較、1人当たり年間保険料は、約9万6000円増えた。




安倍政権後3年間に、2人以上世帯の、税(公的保険含む)の支出は、1月あたり、5000円弱増、可処分所得は2000円強の増です(総務省 日経2016.3.28)。



あなたの給与が1%上がっても、そのうち0.6%は公的保険料に、企業負担の保険料も実は0.6%増、企業は1.6%も「実質給与」を増やしているのです。

 企業の公的年金負担は、増え続けています。パート労働者なども、「厚生年金加入」が義務付けられたからです。これは赤字法人でも払わなければなりません。

企業にとっては個人負担も企業負担も「人件費」なので、パートを厚生年金に加入させると、時給をあげない限り、社会保険料の分だけパートさんがもらえる手取りの賃金は減るのです。

サラリーマンが負担している社会保険料35.6兆円を消費税に換算すれば税率14%相当、企業負担分も含めた66.3兆円で考えれば消費税は26.5%相当です。これが「公的保険」という名の「目に見えない税金」です。

理解できますか? 消費税率を2%上げる(5兆円税収増)のに賛成だの反対だの、「公的保険料66.3兆円=消費税率26.5%相当をサラリーマンと企業で負担済み」を考慮すれば、「そこを話して何が言いたいの?」レベルの、「枝葉末節」の話なのです。

 現行消費税を合わせれば、34.5%も「消費税(表に見える税金+目に見えない保険という税金)」が課されている計算になるわけです。

 年金で言えば、厚生年金(現在は共済年金との一本化)保険料率は2017年で引き揚げ停止になります。18.3%で「打ち止め」です。しかし、年金は今後も増え続けます。その差を埋めるのは、「税金(うち1/3は公債)」です。

 年金は増えるわ、それを支える保険料は据え置きだわ、税金投入はますます増えるわ・・・やっていることが、めちゃくちゃです。

 そして、この「公的保険」を負担しているのは、すべて「現役世代」だということです。会社も「現役稼働」の会社です。
 
65歳以上の人は、すでに27.3%です。4人に1人以上、基本的に無職、基本的に所得税など払っていません

サラリーマンが負担している社会保険料35.6兆円を消費税に換算すれば税率14%相当、企業負担分も含めた66.3兆円で考えれば消費税は26.5%相当、これをすべて「現役世代」が負担をして高齢者に回しているのです。

その「現役世代」が減り続けています。少子高齢化です。当然ですが、「働き手」の数も減り続けます。

社会保障 人口減

 その結果、社会保険を支払っている現役世代で、何人の高齢者を支えるかという割合も、どんどん負担が多きくなっていきます。

社会保障 人口支え

 2030年には1/2以下です。あと13年なんて、あっという間ですよ!

こんなに「現役世代」が減り続けているので、すでに、基礎年金(国民年金)など、「払う人<受け取る人」になっているのです!!!!!

もらう人 払う人 国民年金


 公的年金も、税金部分の「所得税」も「法人税」も、全部「現役世代」負担なのです。

 しかも、現役世代には「貯蓄」などありません。よく言われるように、家計金融資産の1800兆円の家計金融資産の半分は、60歳以上の高齢者が持っています。

社会保障 高齢者 貯蓄


増えつづける社会保障を、消費増税なしで乗り越えるというのは、すべて「現役世代の負担割合をどんどん増やせ!」「金持ちの高齢者を、貧乏な現役世代が負担するのだ!」という、「現役世代さんよ、お前たちはマゾヒストなのか?」という話なのです。

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