服部茂幸 『偽りの経済政策-格差と停滞のアベノミクス』 のでたらめ その5

服部茂幸 『偽りの経済政策-格差と停滞のアベノミクス』 のでたらめ その5

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<住宅ローンが消費減の原因だと?>


p46~
住宅投資は負の遺産
日本は7軒に1軒は空き家と言う空き家大国である。…新築物件は借り手がすぐに見つかるであろう。しかし、その分、中古物件の空き家が増加する。…空き家が増加すると、地域の環境が悪くなり、治安も悪化し、住宅価格も下がる。これ以上空家を増やしてどうするのだろう。…今のマイナス金利も、しばらくすると空き家と街の破壊という形で負の遺産を作るのではないだろうか。



住宅投資は、C(消費)+I(投資)+G(政府)+NX(純輸出) において、I投資に入ります。

で、「住宅投資は負の遺産だから、これ以上増やしてどうする!」ですか!民間市場の動きを「価値観」で批判ですか。

 そりゃ、バブルも、リーマンショックも、すべて「民間」が「もうけ」をねらって引き起こすものです。結果的には、破裂して大混乱をもたらしました。事後で見ると「良くなかった」ことは間違いありません。

だからと言って、住宅投資Iを「増やすな!」と、民間の投資行動を「やめろ!」と言うのですか?


P49
異次元緩和は長期金利と住宅金利を押し下げた。しかし空き家大国の日本では住宅建設はさほど増加しなかった。



11 住宅投資


>しかし空き家大国の日本では住宅建設はさほど増加しなかった。

 2兆円を「さほど・・」。どうして、この人は経済分析に「価値判断」を入れるのでしょうね。論文として、こんなものを学生が書いたら、×ペケでしょうに。

 論文(小論文)に、いいとか悪いとか、価値判断を入れれば、それだけで「ダメ論文」です。主観は、入れてはダメなのです。

 ただし、「私はこう考える、なぜなら●●だからだ」は、OKです。大学入試の小論文などこの形式です。
 
「18歳(現在は投票権あり)のタバコ・酒についてどう考えるか」について、「賛成だ、なぜなら・・・」「反対だ、なぜなら・・・」と自分の意見を書きます。

 この場合、どっちが正しいかなど、どうでもいいのです。どっちが良い悪いという問題ではありません。試験で判定しようとしているのは、「なぜなら・・・・」の論理性です。

 閑話休題


P49
異次元緩和は長期金利と住宅金利を押し下げた。…家計の住宅ローンの急増が消費を抑圧した

P176
最近の若者世帯を中心とした消費削減は、住宅ローンの負担が原因である…。



 消費が「家計の住宅ローン」に抑圧された。「若者の消費が伸びないのは住宅ローンが原因」だ。

ウーン、アベノミクスを否定するために、ここまで言う・・・。論理としてめちゃくちゃですね。風が吹けば桶屋が儲かる並み・・・。

<輸入増でGDP減だと?>


P17
安倍政権の誕生前には、1ドル80円だった為替レートが、一時期には120円程度まで円安にシフトした。急速な円安は輸出価格を引き上げることを通じて、名目GDPを増加させる。輸入価格はGDPのマイナス項目なので、輸入価格の上昇は名目GDPを減少させる



13 輸出 輸入

>輸入価格はGDPのマイナス項目なので、輸入価格の上昇は名目GDPを減少させる。

Y=C家計消費+I企業投資+G政府+(EX輸出-IM輸入)

Y=C+I+G+(EX-IM)

>安倍政権の誕生前には、1ドル80円だった為替レートが、一時期には120円程度まで円安にシフトした。急速な円安は輸出価格を引き上げることを通じて、名目GDPを増加させる。

確かに、「輸出」は、需要GDP(=GDE支出)の構成項目です。ですから、輸出業者の80万円だった利益が、円安で120円になったら、見かけ上「GDP」は増えます。

14 輸出数量

  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
輸出額 (10億円) 67400 65546 63748 69774 73093
輸出数量(2010年=100) 100 96.2 91.6 90.2 90.7
為替(1ドル 年平均) 87.7799 79.807 79.7905 97.5957 105.9448


このグラフは、2010年の輸出額・輸出数量・為替を100として、その後の変化を示したものです。2013年、アベノミクスの金融緩和によって円安になりました。それにともなって、輸出額が伸びています。しかし輸出量は2012年→13年は減り、13年→14年は微増に過ぎません。

これは、円安によって、見かけ上、「額が伸びる」ということを示します。

ただし・・・

>輸入価格はGDPのマイナス項目なので、輸入価格の上昇は名目GDPを減少させる。
Y=C+I+G+(EX-IM)

輸入は、「控除項目」です。しかし、輸入(額面額)が増えると、GDPが減るわけではありません。この教授は、基礎基本を踏み外しています。

13 輸出 輸入


「総需要から、輸入を控除」するのは、GDPを算出するためであって、「輸出から輸入を引く」のではありません。

Y=C+I+G+(EX-IM)
9= 4+3+1+(2-1)


は、もともとは、

IM+Y=C+I+G+EX
 1+9=4+3+1+2


です。

では、輸入(額面)が増える(例えば1から2になる)と、Y(GDP)を減少させる???

IM+Y=C+I+G+EX
 1+9=4+3+1+2
    
   ↓
 2+9=(4+3+1+2)
         ↑

こちらの需要も、どこかの項目が+1にならなければならない。

輸入(額)が増えると、GDPが減ることは、ないのです。
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