マクロ経済学のミクロ的基礎付け フェルマー 解析力学 ラグランジュアン

1.実はどんぶり勘定の、ミクロ経済学=新古典派理論

東京書籍 「倫理」2016 p123
…従来の学問であるであるスコラ哲学に変わる新たな学問の誕生である。この学問は、実験と理性を通じて自然そのものに内在する法則(自然法則)を見出すこと…。…科学革命ともよばれる。…このような自然探究も、キリスト教とまったく無縁の地盤から生じたわけではない。むしろ、それは、キリスト教信仰を支えとして…始まった。…地動説をとなえたコペルニクス、振り子の等時性、慣性の法則など力学上重要な諸法則を発見した。 




 古典派経済学・新古典派経済学に影響を与えたのは、物理学ではニュートン力学、数学では微積分です。ニュートン物理学と微積分は、「天体の運行」を、「将来にわたって解き明かす」ことを成し遂げました。「今」だけ、「○○月の時点だけ」の占星術(過去の経験)と違い、「未来時点で、どの位置に星があるか」を、「動学的理論(このように動く)」で、理論的に解き明かしたのです。

 経済学の「需要と均衡」理論は、価格の影響を受けながら、いつの間にか「均衡点」に向って動くというメカニズムです。均衡点からずれる=「供給>需要」であっても、自ずと均衡点に戻そうという力が働くとされています。これは、天体の動きの論理と同じです。太陽に近いほど、惑星の遠心力とスピードは強くなり、遠くなるほど弱まり、また太陽の方に引きよせられます(楕円軌道になります)。「一定の軌道を描くメカニズム→価格の均衡理論」です。

 さらに、太陽系には複数の惑星があり、それらの惑星がこのメカニズムにより、安定した秩序を作ります。これは、①財市場、②貨幣市場、③労働市場・・・社会全体がいつの間にか均衡するという、一般均衡論に応用されます。
 この世のすべてを細かく分け、空気の分子なども1個の天体(ミクロ)と考えれば、大気全体(マクロ)も説明できるという考え方は、「需給曲線が安定化し(ミクロ)、社会全体が安定する(マクロ)」という一般均衡論に取り入れられます。これら「1つの理論」で、すべてを説明するという技法は、「演繹法」と呼ばれています。

東京書籍 「倫理」2016 
P125~
ベーコンが知識獲得のために積極的方法として説いたのが帰納法であった。すなわち、観察や実験によって得られた様々な事実を土台として、それらに共通する一般的法則を見いだしていく方法である。
 …感覚や経験…デカルトは、そうしたものはしばしばわれわれを誤らせるから信頼できない、確実な知識は理性によってのみ与えられる…。…だれにとっても疑うことのできない真理から出発し、理性的な推理をかさね…つぎつぎと新しい知識を見いだしていくという演繹法によるべきだとした。



東京書籍 「倫理」2016 
 P160~
 …デカルトの考え…。…自然界の一切の変化は機械の運動と同じく、物質の因果法則にしたがった必然的運動…とみることである。…自然の変化を機械の運動と同じにみなす自然観を機械論的自然観という。この機械論的自然観は、ニュートンが万有引力の法則によって、地上から天空までの一切の自然現象を実際に機械論的に説明するにおよび、ゆるぎないものとなった。そしてこれが、それ以降さまざまな形で発達する自然諸科学のものの見方を根本から決定することになった。…ニュートンの機械論のパラダイムは、今日なお科学全般の中核的なモデルであるといえるのである。




このニュートン物理学の枠組みを、新古典派のワルラス、ジェボンズらは、自分たちの経済理論を説明するロジック(論理)として使いました。例えばワルラスは、貿易取引の決済を、次のように表現します。ジェボンズは物理学と経済学の関係を明快に位置づけます。

ワルラス『純粋経済学要論』岩波書店 1983年
P390
 …為替手形の世界市場は広大な手形交換所のようなものであって、そこでは全世界の取引が差額の支払いだけで決済される。そして、この結果は自由に放任せられた自由競争のメカニズムの効果だけによって得られるのである。そこには商品のすべての交換を秩序づける供給と需要の法則があり、それは天体の運動すべてを支配する万有引力の法則があるのと同様である。ここに経済社会の体系がその宏大さと複雑さの究極の状態において現れており、それは天体の世界の体系と同様に美しく、いい換えれば同様に宏大であり単純である。

 

ジェヴォンズ『経済学の理論』 日本経済評論社 昭和56年
Xii
 本書において、私は経済学を快楽及び苦痛の微積分学として取り扱わんと試み…。…いかに明らかに数学的分析と表現を許すかを発見してしばしば驚いた。…この…経済学の理論は静態力学と酷似し、そして交換理論は仮想速度の原理によって決定される「てこ」の均衡法則と類似することが判明した。富および価値の性質は、あたかも静態力学がエネルギーの無限小量の均衡の上に成り立つと同様、快楽および苦痛の無限小量の考察によって説明されるのである。



古典力学の意味する内容は、新古典派理論(経済学)では次のように表現されます。

古典力学

 ところが、ニュートン物理学には致命的な欠陥があります。これは、「①太陽と②地球」「①地球と②月」のような2個の天体だけを扱うだけの「統一理論=未来永劫に成り立つ理論」に過ぎないのです。「①太陽と②地球と③月」というように、天体の数が3個以上になると、解けなくなるのです。「太陽系」のように複数の惑星があるとお手上げです。物理学ではこれを「3体問題(多体問題)」といいます。

 ただし、太陽系においては、「太陽の引力」だけがけた外れに大きく、とりあえず、「2個の惑星間」に分けて回答した後に、それらを寄せ集めて「太陽系の運行」としても差し支えありません。誤差はほとんど気にならないのです。これがニュートン物理学です。ところが、「探査衛星の軌道」などに使う、複雑な引力を計算するには、誤差が大きすぎて「使えない」のです。
この誤差を軽く見積もったのが、ワルラスの「一般均衡論」です。太陽系の場合と同じように、いったんすべての問題をミクロでバラバラにし、その均衡を求め、最後にそれらをつなぎ合わせても、誤差はさほどでもなく、「太陽系の運行」のように、マクロの全体社会を描写できるとしました。本当は、①財市場、②貨幣市場、③労働市場・・・社会全体がいつの間にか均衡するという一般均衡論は、「3体問題(多体問題)」なので、厳密にはニュートン物理学の応用の範囲を超えていました。このように「一般均衡論」は、実はどんぶり勘定なのです。

という、古典力学から始まって、下記に続きます。ただし、下記説明は、図やグラフは、カットしています。

3 解析力学

 では、解析力学についてそのイメージを共有し、どのように、経済学理論として導入されていったかについて検証していきましょう。

(1)フェルマーの原理

「フェルマーの原理」は、解析力学の先代理論で、「光はその最少時間となる経路を進む」という定理です。お風呂で、お湯の中に入れた手や、水を入れたコップのストローが「曲がって見える:屈折」というのは、この「実証」になります。
この「フェルマーの原理」から、光の「入射角」と「反射角」は同じという結論が導かれます。

これは、ミクロ経済学の「エネルギーを最小にして最大効率を得るという法則に収れんする→最適な点は1つ→需給均衡点」につながります。「企業(P○○ 供給曲線追導出)や家計(p○○-予算線)の投資・消費行動は、無数にあるが、現実に実現化するのは、費用の最小化・利益の最大化という行動(光の通過方法)である」といえます。

つまり、「フェルマーの原理」という「たった1つの統一理論」で、ミクロ経済学の「最適化」論理を構成できるのです。原理を1つだけ要請すれば、そこから先は、光やものごとがたどる曲線が絵筆で描いたかのように簡単に導き出され、反射や屈折の法則は、ミクロ的原理から導けるということになるのです。

そこから、さらに解析力学は進化します。通過「時間T」に相当する部分が、のちの「解析力学」における「ラグランジアン=L=量 」になります。たとえばロケットの燃料消費「量」を最小にしたいとき…というように「量」を「最小化すべき量」として設定し、最適な「量」を数値化・グラフ化できます。つまり、ラグランジアンを応用することで、「神から与えられた法則=T」ではなく、人間が「量=L」を自由に決められることになります。企業がコストを最小限にしたいときは、それを人間が自由に設定することができます。このように、

「フェルマーの原理」が、解析力学へと発展したのです。

この「動学的予算線」を、フェルマーの原理で示すと、次のようになります。

入射角と反射角がイメージできます。このように、ランダムな線を引いても、結局は、ミクロ経済学の「エネルギーを最小にして最大効率を得るという法則に収れんする→最適な点は1つ→需給均衡点」、最適な点が導き出されます。これを応用し、さらに、「ラグランジュアン=L=量」で示します。

このグラフでは、人間は自由に量を決められます。たとえば、①図・③図では、①期(現在)ではわざと損することを承知の上で、②期=将来のトクを「予想(期待)」した方がいいと考えを示します。例えば、投資で、短期投資(株など)を捨てて、長期投資(不動産など)を選ぶ場合です。現実の数字を見た上で、不動産市況を「予想」し、長期投資します。「予想(期待)」が重要になります。この場合、異なる経路=現在と将来を比較してその均衡をとっています。「異なる時点での最適化行動」です。

ラグランジアンを、現代経済学が使用する理由がここにあります。「最少エネルギーで最大の効率を生む」という原理から出発し、運動方程式で経済の動向を表そうというのが、現代経済学の根本的な思想なのです。これが、「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」「動学均衡論」の基本骨格です。「動学的一般均衡論」は、この枠組みに沿って構成されています。


こんな感じでしたが・・・難しいですね(笑い)。
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