池田信夫 その2
前回に続いて、下記記事を検証します。
数字や、下線は筆者挿入です
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http://blogos.com/article/72861/
2013年11月03日01:56
「貨幣数量説は死んだ」
(1)菅原某という行政書士が「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門」と称するサイトで、前から私に粘着している。(2)無視していたら、いろんなところで受け売りする連中がいるので、おもしろいからちょっと答えておこう(バカを見たくない人は無視してください)。
(3)彼は私のマネタリーベースとマネーストックの図が気に入らないらしく、「マネーストックのスケールを右軸にしたら相関がある」と書いている。(4)では彼の期待していた「異次元緩和」でどうなったか、見てみよう。
マネタリーベース(緑・左軸)とマネーストック(赤・右軸)の前年比増加率(出所:日銀)
20131103012629
マネタリーベース(緑・左軸)とマネーストック(赤・右軸)の前年比増加率(出所:日銀)
(5)黒田総裁になってから、マネタリーベースは前年比50%近く増えているのに、マネーストック(M2)は4%ぐらいしか増えていない。(6)コアコアCPI上昇率も前年比0.5%しか上がっていない(今は0%)ので、これを2%に上げるには(線形の相関を仮定しても)、今後マネタリーベースを年率200%以上ずっと増やし続けなければならない。2年で2倍(年率50%増)で終わる異次元緩和では、コアコアCPIはたかだか0.5%にしかならない。
(7)全体をみればわかるように、普通の(金利がプラスの)場合には貨幣乗数が安定しているので、両者はほぼパラレルに動いている(図ではM2の変化率のほうが大きいようにみえるが、これはスケールの違い)。(8)しかし2000年代にはその相関が切れて貨幣乗数が激減し、マネタリーベースで物価が決まるという19世紀的な貨幣数量説は死んだのだ。これは岩田副総裁も今では認めている事実である。菅原某は、自分が高校に入り直したほうがいい。
http://blogos.com/article/72893/
2013年11月03日14:22
「異次元緩和は麻薬である」
ゆうべの記事の図を見て気づいたが、リフレ派の理論が正しいとすると、異次元緩和では足りない。インフレは持続的な物価上昇なので、マネタリーベースを「2年で2倍」にして2%のインフレになったとしても、そこで終わったら物価は下がる。インフレを続けるには、270兆円では足りないのだ。
アメリカのマネタリーベース残高
これは今、FRBで話題になっている出口戦略でもわかる。出口とはQE3を止めることであり、FOMCが示唆しているのは、しばらくはマネタリーベースを増やし続けることなのだ。(9)この結果、上の図のようにアメリカのマネタリーベースは金融危機前の4.5倍になったが、それでもコアCPI(日本のコアコア)上昇率は年率1.7%と下がった。
だから岩田副総裁の日銀当座預金残高の増加率と予想インフレ率に相関があるという理論が正しいとすると、残高が270兆円になってもマネタリーベースを増やし続けなければならない。フリードマンが言ったように、インフレ政策は麻薬であり、打つのをやめたとたんに禁断症状が出るからだ。
(6’)どれぐらい増やす必要があるだろうか。もともと2%前後のインフレだったアメリカでマネタリーベースを4.5倍(年率35%増)にしてもコアCPIは1.7%なのだから、今それが0%の日本で2%に引き上げるためには、少なくとも年率100%ぐらいは必要だろう。つまり日銀はマネタリーベースを倍々に増やし続けなければならない。異次元緩和に出口はないのだ。
今のペースで増やし続けると、マネタリーベースは今年中には200兆円を超えるから、来年は400兆円、再来年は800兆円…という莫大な量的緩和を続けないとインフレは維持できない。だから市場が異次元緩和に反応しないのは当然である。それを当てにして投資すると、1年半後にはハシゴを外されてしまうからだ。
理論的には、2%のインフレが定常状態だとすると、そこで経済が均衡するので日銀が手を離してもその状態は持続する可能性がある。黒田総裁は本気でそう信じているようだが、内閣府の統計にはGDPギャップがマイナスに出るバイアスがあり、今の0%インフレが定常状態である。(10)これ以上やってもインフレは起きないし、起きても持続しない。それはここ半年の実績が証明している。
(6)コアコアCPI上昇率も前年比0.5%しか上がっていない(今は0%)ので、これを2%に上げるには(線形の相関を仮定しても)、今後マネタリーベースを年率200%以上ずっと増やし続けなければならない。2年で2倍(年率50%増)で終わる異次元緩和では、コアコアCPIはたかだか0.5%にしかならない
(6’)どれぐらい増やす必要があるだろうか。もともと2%前後のインフレだったアメリカでマネタリーベースを4.5倍(年率35%増)にしてもコアCPIは1.7%なのだから、今それが0%の日本で2%に引き上げるためには、少なくとも年率100%ぐらいは必要だろう。つまり日銀はマネタリーベースを倍々に増やし続けなければならない。異次元緩和に出口はないのだ。
今のペースで増やし続けると、マネタリーベースは今年中には200兆円を超えるから、来年は400兆円、再来年は800兆円…という莫大な量的緩和を続けないとインフレは維持できない。
単なる相関関係を、因果関係にしています。論文では、一番してはいけないことです。
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相関関係と因果関係は違う
過去記事を再掲します。
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相関関係と因果関係。
相関があるからといって、そこから因果関係を引っ張り出してはダメです。また、因果が成立するからといって、結果と原因をひっくり返してはダメです。
きちんと整理しましょう。
藤本大成
「相関経済学の金利・インフレ率・経済成長率比例法則と金融不全時の金融財政拡大政策」
銀行貸出金利と、名目成長率です。

確かに、「金利が高い状態では、経済成長率も高くなっている」という相関関係が見られます。
さて、これを、因果関係にしてみますか?
「経済成長率を高めるには(結果)、金利を高くしろ(原因)」
どうですか?こんな話、大真面目に語られているのを、見たことがありませんか?
続いて、インフレ率と成長率です。相関があります。

では因果にしてみましょう。
「成長率を上げるには(結果)、インフレにすればよい(原因)」
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以上 再掲終わり。
(6)コアコアCPI上昇率も前年比0.5%しか上がっていない(今は0%)ので、これを2%に上げるには(線形の相関を仮定しても)、今後マネタリーベースを年率200%以上ずっと増やし続けなければならない。2年で2倍(年率50%増)で終わる異次元緩和では、コアコアCPIはたかだか0.5%にしかならない。
(6’)どれぐらい増やす必要があるだろうか。もともと2%前後のインフレだったアメリカでマネタリーベースを4.5倍(年率35%増)にしてもコアCPIは1.7%なのだから、今それが0%の日本で2%に引き上げるためには、少なくとも年率100%ぐらいは必要だろう。つまり日銀はマネタリーベースを倍々に増やし続けなければならない。異次元緩和に出口はないのだ。
今のペースで増やし続けると、マネタリーベースは今年中には200兆円を超えるから、来年は400兆円、再来年は800兆円…という莫大な量的緩和を続けないとインフレは維持できない。
上記は、単なる相関を、因果(理論)にして(といってもエセ理論ですが)、さも説得力があるように見せかけているだけです。全然、理論にもなっていません。嫌になります。
「警官を10人増やしたら、犯罪が10%減った。警官を100人増やせば、犯罪は100%減ることになる」
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ナンセンスです。
(7)全体をみればわかるように、普通の(金利がプラスの)場合には貨幣乗数が安定しているので、両者はほぼパラレルに動いている(図ではM2の変化率のほうが大きいようにみえるが、これはスケールの違い)。
(8)しかし2000年代にはその相関が切れて貨幣乗数が激減し
マネタリーベースと、マネーストックの2000年代は、次のようになっています。
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池田信夫
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上記に書いた記事です。
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2. 一般論としては、マネタリーベースを増やせばマネーストックも増えることが多い。上の図でも、金利が高かった1980年代後半から90年代前半にかけては、マネタリーベースの動きとマネーストックの動きはかなりパラレルになっている。しかしデフレでゼロ金利になった2000年代には、両者の動きにはまったく相関がない。これは流動性の罠に入ったためだ。
2000年代の両者の相関は、逆に、大変顕著になっています。

マネタリベース%増→マネーストック%増の相関になっています。
これを、「まったく相関がない」とは・・・
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再掲 以上。
嶋中雄二の景気サイクル最前線 2013.4.24

ただし、日銀の金融政策「売りオペ・買いオペ」は、マネタリーベースを増減させるものです。短期金利低下を狙うものです。金利低下→貸し出し増を狙うのが、伝統的金融政策です。
(8)・・・マネタリーベースで物価が決まるという19世紀的な貨幣数量説は死んだのだ。これは岩田副総裁も今では認めている事実である。菅原某は、自分が高校に入り直したほうがいい。
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池田信夫のいう、害虫のような話
私が、上記で批判したのは、(7)と(8)の前半部分です。貨幣数量説など、一言も述べていません。なんで、「貨幣数量説は死んだのだ。(それを主張する)菅原某は、自分が高校に入り直したほうがいい。」など、勝手に人が言ってもいないことをでっち上げて非難するのでしょうか????
貨幣数量説など、そんなもの、誰も信じていません。リフレ論の根拠は、貨幣数量説に基づいたものではないのです。貨幣数量説については、過去記事で、次のように述べました。
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日銀理論
過去記事再掲
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マネタリー・ベースの拡大に対する、典型的な批判は、 「マネタリーベースを拡大しても、マネーストックは拡大しなかったので、効果がない」というものです。日銀をはじめ、色々なところで述べられています。
http://agora-web.jp/archives/1030418.html
日銀がお金を刷れば問題は解決するのか? - 藤沢数希 グラフも
一部の経済学者は、日銀が大量にお金を刷れば日本経済はよくなると唱えている。いわゆるリフレーション理論である。そして、彼らの矛先は常に日銀批判に向く。日本経済がデフレに苦しみ、過去20年間、世界の経済成長に取り残された主因は日銀が過度に金融を引き締めたためだというのだ。よって、日銀がもっと大量にお金を刷れば、デフレが解決し、日本経済は再び成長軌道に乗ることになる。本当だろうか?
まず、マネタリー・ベースと、マネーサプライの関係です。両者を1対1と考えることはできません。単純にマネタリー・ベースが増えれば、マネーサプライ(貨幣供給量)も増え、物価が上がるというのを、単純な貨幣数量説と言います。
ですが、このような説を、現在でも「単純」に信じている人はいませんし、実証的にも成立しません。
日経H22.9.9
『マネーストック2.1%増』
日銀が発表した8月の注)マネーストック…M3の平均残高は、前年同月比2.1%増の1079兆4000億円となった。…伸び率は…13か月連続で2%台を記録した。
注)
マネタリーベースは、流通現金+日銀当座預金。日銀は、この合計額を直接コントロールでき、マネーストックに影響を及ぼす。
マネーストックM3は、一般法人、個人、公共団体(除く国/金融機関)が保有する通貨量。「信用創造(準備預金以外の貸し出し)」によって、マネタリーベースの何倍もの通貨量が創造される。
2009年10月→2010年8月
マネタリーベース 2010年8月 98兆3,995億円
マネーストック 1,079.4兆円 前年同月比2.1%増

まあ、図のように、増えることは増えるのですが、単純に1対1で増えるとか、マネタリーベース増→マネーストック増という、因果関係が完全にあるわけではありません。もちろん、「増える(減ることはない)」のは事実なので、日銀はマネタリーベースをコントロールするのです。

ですが、「マネタリーベース増→マネーストック増→デフレ脱却になっていないじゃないか」と見ることもできます。「だから、金融政策で、マネタリーベースを増やしても、効果はない=金融政策無効論」です。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51669057.html
2011年01月22日 15:59 池田信夫 貨幣数量説について*

注)マネタリー・ベースを増やしても、銀行が貸し出しを増やさないかぎり、マネー・サプライは増えないという説もあります。日銀が供給しても、当座預金に「ブタ積み」になり、市中に出回らないとするものです。
ですが、貸し出しが増えなくても、銀行が、「社債」や「株」や、企業や個人の持つ「債券(国債など)」を購入しても、その分、普通預金・当座預金が増えることになり、「マネーサプライ」は増えるのです。
<なぜ、金融緩和なのか>
このように、単純な貨幣数量説(30年以上前に終わった話です)を支持して、リフレ派は金融緩和を訴えているわけではありません。
では、なぜ、マネタリー・ベースの拡大を、リフレ派は唱えるのでしょうか。それは、目標が、「将来にかけての貨幣供給の予想」にあるからです。つまり、「予想インフレ率」に影響を及ぼすと考えているからです。
マネタリー・ベースが増加し続ける(日銀が金融緩和をし続ける)と予測されれば、将来貨幣供給は増えると予想され、インフレを予測することになります。
フィッシャー方程式
実質金利=名目金利-(予想)インフレ率
0% =10%-10%
岩田規久男 『デフレと超円高』講談社現代新書 p139

このように、日銀の量的緩和政策の維持(米国も同様)は、予想インフレ率を引き上げ、逆に解除は引き下げたのです。
岩田 p213・144
多くの人が誤解しているが、マネタリー・ベースの持続的な拡大によるデフレ脱却は、中央銀行がばら撒いた貨幣を民間がモノやサービスに使うことから始まるのではなく、自分が持っている貨幣を…使って株式を買ったり、外貨預金をしたり…することから始まるのである。
量的緩和は…「モノの購入に使われる結果、物価を引き上げる」のではなく、為替相場や株価に影響を与えることから、その効果を発揮し始めるのである。
金融緩和継続
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予想インフレ率に影響
↓ ↓
①為替相場 ②株式市場
↓ ↓
円安・輸出増 資産効果
まさに、アメリカのQE2は、この効果を狙ったものです。
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-104.html
デフレ脱却と言う結果 量的緩和の効果 アメリカ 2011-03-08 記事参照
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-109.html
量的緩和の効果 アメリカ2011-03-08記事参照
そのために、恐ろしいほどの金融緩和をしています。
読売『米6000億ドル緩和策功罪』H23.6.19
米連邦準備制度理事会(FRB)は2010年11月に導入した6000億ドル(約48兆円)の国債を買い入れる「量的緩和策の第2弾(QE2)」…。
「緩和策は予想以上の成功だった」。バーナンキFRB議長は…4月27日の記者会見でlこう自賛した。
政策は主に二つの効果を狙ったものだ。…長期金利は下がり…幅広い金利の低下が期待できる。
…さらに資金が株式や社債などに振り向けられることで株高が消費を活性化させる効果も見込んだ。
…NYSEユーロネクストに上場する株式の時価総額(4月末、米国分のみ)は…10年8月末から23.5%増えた。小売売上高は…10ヶ月連続でプラスで、個人消費の持ち直しが鮮明だ。…デフレ懸念は払拭された。
岩田P153


各国も同様です。その結果、各国通貨に対して「円だけが『超円高』」になっています。
各国 マネタリー・ベース 推移
出典: http://blogs.yahoo.co.jp/suzukieisaku1/17114313.html のグラフを改

岩田P162

岩田 P167
世界広しといえども、中央銀行の中で、金融政策でデフレを止められないと主張するのは、日銀だけである。
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以上 再掲終わり
「貨幣数量説は死んだのだ。(それを主張する)菅原某は、自分が高校に入り直したほうがいい。」。
(9)この結果、上の図のようにアメリカのマネタリーベースは金融危機前の4.5倍になったが、それでもコアCPI(日本のコアコア)上昇率は年率1.7%と下がった。
アメリカの消費者物価指数です。
実体経済は、上記のように推移しています。
(10)これ以上やってもインフレは起きないし、起きても持続しない。それはここ半年の実績が証明している。
過去の数値です。
現在です。
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_cpi 時事ドットコム

「インフレは起きない、過去の実績が証明している」←最低です。そんなことはありません。
ttp://booklog.jp/item/1/4309246281
『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』
さるぼぼキングさんのレビュー
わかりやすかった。
というか疑問点を差し挟めるような知識がそもそも無いのだが。
具体的な話はとても理解しやすく、タイトルの印象を裏切らない内容。
ま、おバカな自分としては式とグラフが出た途端に理解度が急降下していくわけだが。。
貿易黒字(赤字)の見方はもちろん、財政政策とは、金融政策とは、量的緩和とは、国債、その買い入れとは、などなどリーマン以降特にニュースにのぼる事の多い言葉について繋がりある説明がわかりやすくされていて良い。
人に説明できるくらいまで理解を深めたくなる。
theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育