左翼が言わない憲法9条論 ちょっと違った角度から
百地章(ももち・あきら)
実は「憲法」にもさまざまな意味があります。まず「固有の意味の憲法」。これは古今東西を問わず、国家であれば必ず持っている統治のルールのことです。
次に、近代国家が誕生すると「立憲的意味の憲法」が登場します。これは憲法とは国家権力を制約し、国民の権利を保障するものという考えで、絶対王制でみられた権力者の横暴を抑制するために生まれました。「憲法が国家権力を縛る」というのはこのことです。
憲法の性質や特色に着目すると、憲法には国家権力を制約する「制限規範」の側面があることは確かです。国家権力がむやみに国民の権利を制限したり奪うことは許されません。
しかし、同時に憲法は国家権力の行使について根拠を定めています。例えば国会が法律を制定することができるのは、憲法が国会に立法権を授けているからです。内閣が国会に代わって勝手に法律を制定したりできないのです。
税金も同じです。憲法では課税徴収権が政府(権力 )に授けられています。それによって国民から強制的に税金を徴収することが許されているのです。こうした憲法の役割を「授権規範」といいます。これも「制限規範」同様、憲法の大切な一面です。
そこで「憲法とは国家権力を縛るもの」という言い方ですが、これは一面を強調しただけで決して正しくないことがわかります。憲法は国家権力を縛ることもあれば、国民にさまざまな義務を課したり、時に権利を制限する場面もあるのです。
特に17~18世紀の自由主義国家のころと違い、現代は社会国家の時代ですから、国民の福祉の実現のため、国(国家権力)が国民生活に積極的に関与するようになりました。また快適な環境を維持するため、さまざまな規制を加えるのも国の役割です。
◆「国柄」明記の潮流
とすれば「憲法とは国家権力を縛るものだ」と決めつけるのは、古い考え方であり、一方的に国家=悪、国民=善だと思い込んでいないか。注意深く考えてみる必要があります。
国民の憲法の議論の過程では以上のことを前提に「国家論を踏まえた憲法」を考えました。憲法は英語の「コンスティテューション」の訳語ですが、この言葉は本来「構成し組織する」ことをいい、「国柄」という意味も持っています。
最近の世界の憲法を見ると、単に「国家の基本法」にとどまらず、「コンスティテューション」の原義どおり、国家を構成する「国の姿・形」や「成り立ち、歩み、ありよう」を積極的に盛り込んでいます。歴史や伝統を踏まえた「国柄」を盛り込むのが最近の憲法潮流でもあるのです。
さて、憲法論の専門家の先生の、解説です。まとめると、
憲法=
①憲法とは国家権力を縛るもの
②国家権力の行使について根拠
③国家を構成する「国の姿・形」や「成り立ち、歩み、ありよう」を積極的に盛り込むもの
ということです。
その中の一つ、確実にいえるのは、「憲法は権力を縛るもの」ではあるということです。構成要素の一角であるのは間違いありませんね。
さて、本題は、ここからです。以下の論点については、憲法を語る人、特に左翼と呼ばれる、憲法改正反対派は、ほとんど述べていません。不思議です。
左翼の人達は、憲法を変えるのには絶対反対ですよね。特に9条について。
<自衛隊は国家権力の最強装置>
さて、現存の自衛隊は、「存在するが憲法に記載されていない」組織です。
民主党の仙石官房長官(当時)は、左翼の定番表現「暴力装置」と発言しました。
この暴力装置?なるものは、憲法で縛る必要=「憲法は権力を縛るもの」はないんですか?左翼の皆さん。
警察?消防?海上保安庁???そんなものをはるかに上回る、最強暴力装置!でしょう、自衛隊は。
予算5兆円/日本の国家予算90兆円ほど・・の日本国内最強暴力装置ですよ。これを、憲法に書かない=「憲法によって権力を縛らない」ままで、いいのですか???
現実にこの暴力装置は、存在していますが、それに目をつむれば(憲法で縛らない)、平和になるのですか???
<自衛隊クーデターが100%、万に一つもないとどうして言えるのか?>
あの、自衛隊は憲法に記載されていないのは、もちろん、自衛隊法を見ても、「クーデター」を避ける条項はありません。
そりゃ、陸・海・空がそろって立ち上がる(クーデター)は可能性は低いかもしれません。三島が「立ち上がれ!」と叫びましたが、ダメでしたよね。
ですが、ごく一部組織が、クーデターを絶対にしないと、どうして「確証」できるのですか?
やろうと思えば、官邸占拠、皇居占拠、にせの戒厳令で、首都要所占拠など、簡単に出来ますよ。最強暴力装置ですから。
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終戦をめぐる、昭和20年8月14日、何があったかご存知ですか?
近衛兵の一団が、「ポツダム宣言受諾は絶対に認められない、陛下の御心は違うはず、自分たちが立ち上がれば(後続の部隊も続くので)、情勢は逆転する」と、クーデターを起こしました。
命令を出さない上官を2人殺します。上官の印を使い、偽の命令書を作り、皇居(宮内庁)を占拠します。
宮内庁にあるはずの、玉音放送(8月14日に、録音したレコード)の原版を探します。宮内庁職員は一箇所に集められ、拳銃を突きつけられます。命が危険にさらされます。(原版は、かろうじて発見されませんでした)
その後、放送局に乗り込みます。放送局職員を拳銃で脅し、玉音放送を、流さないように脅します。
横浜の陸軍部隊は、東京に乗り込みます。鈴木首相の私邸を襲い、探し出して殺そうとします。鈴木首相がいなかった(かろうじて逃れた)ので、私邸を焼き払います。その後、他の閣僚を襲おうと、別途行動します。
結局、偽の命令で、しかも、上官を殺したことが明らかになり、クーデターは失敗し、首謀者2人は皇居前広場で、自害します。
これが、8月14日~15日におこった、陸軍クーデターです。武器を持たない、庶民には、抗うすべがありません。実際に、一般人がこのクーデターで、殺され、負傷しています。
では、これが、今の自衛隊では、100%、いや、1万%、いや、絶対に起こらないと、言えるのですか?
今は、可能性がないように見えます。では、10年後、30年後、50年後も絶対にないと???
共産党が政権を取り、自衛隊がクーデター・・・可能性は1万%ないのですか?
5/15事件、2/26事件は、「絶対」に自衛隊では起こらないのですか?
憲法で、自衛隊を縛る必要は、無いのですか?一般の刑法と違う、軍法は必要ないのですか?左翼の皆さん。
なんで、左翼の皆さんが率先して、「自衛隊を縛ろう」とならないのですか????
<集団的自衛権>
続いて、今、内閣法制局により、集団的自衛権が論議されています。
今のままでは、アルジェリアの邦人救助で、自衛隊が武器を使用することすらできません。
日本の上空を越えるミサイルが、グアムを狙っていたら、打ち落とせません。
これが、憲法を変える事無く、解釈を変えることで、実行可能になります。
憲法変えなくても、自衛隊は武器を使用できるかもしれません。
憲法を変えずに、自衛隊=暴力装置温存させ、憲法を変えずに、武器使用拡大は不承不承で容認せざるを得ないのですか?
日本国憲法第9条
1
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
芦田修正により、「国際紛争を解決する手段としては」 武力による威嚇又は武力の行使を放棄しますが、それ以外の目的では、武力を行使できるようになっています。自衛権です。
ということは、「それ以外の目的」では、武力を行使できることになり、クーデターも合法です(憲法上はと言う意味です)。内乱をおこすため、(まあこれは、別の法律で、違法なのですが)、政権交代させるため、日本を外乱に持ち込むため・・・
理由はさまざまですが、一般法では違法で、憲法上は違反ではない・・・こんな状態が現出してしまいます。
それでも、自衛隊を、憲法に明記して、自衛隊を縛ってはいけないのですか?左翼の皆さん。
ちなみに、左翼代表?らしき、北海道の弁護士(法律の専門家)に質問しても、答えられないのか、回答をもらえません。
クリック
↓
弁護士 猪野亨のブログ
ちなみに、左翼の代表である共産党は、次のように考えています。
http://blogos.com/article/69109/forum/
佐々木憲昭消費税増税に対する政府部内の「抵抗勢力」
コメント欄記述
昭和50年前後の赤旗日曜版のQ&A欄で「共産党が政権とったら軍隊を持ちますか?」の問いに対し「国家にとって必要なことですから持ちます。
今の自衛隊はアメリカ帝国主義に従属する軍隊だから反対です」と答えていた。
理解できません。
theme : 政治・経済・時事問題
genre : 政治・経済