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少子化を防ぐ為に、出生率目標?

<少子化を防ぐ為に、出生率目標?>

 これから、ナンセンスな議論を始めます。そもそも、論理的に「合計特殊出生率を上げろだの下げろ」だの、価値論・べき論・意見なので、最も扱いたくない分野です。自分の土俵ではないことを断った上で、あえて土俵(そちら側の論理)に乗ってみます。

読売H25.1.21
読売 H25.1.21.jpg

 国家が、女性の合計特殊出生率の目標を定めるべきだと言います。

 「国からのべき論、望ましさを押し付けるのはどうか?」という意見がでそうです。

しかし、もともと、子どもの数など、「べき論」による押し付けの歴史なのです(戦前は、「産めよ増やせよ」だったことは、周知の事実です)。

 そもそも、なぜ、結婚生活において、女性が2人の子どもを理想とするようになったのでしょうか。
 そこには、戦後すぐの「産児制限」の歴史があります。官民上げて、「子ども数」を減らすキャンペーンが行われたからです。
 当時の新聞には、「産児制限(コントロール)」の優性を訴える記事が、連日のように掲載されました。

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(1)出産と子育て 企業が広めた家族計画


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生殖をめぐる政治と家族変動
──産児制限・優生・家族計画運動を対象として──


 しかも、「優生保護法」という法律が施行され、堕胎が合法化されたのです。

ウイキペディア

母体保護法(ぼたいほごほう、昭和23年7月13日法律第156号)は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする法律である(同法1条)。

1949年(昭和24年)の法改正により、経済的な理由による中絶の道が開かれ、1952年(昭和27年)には中絶について地区優生保護審査会の認定を不要とした。刑法上の堕胎罪の規定は存置されたが、空文化が指摘されるようになった。



 この法律により、翌年から、出生数ががくんと落ちました。

出生数 厚労省.jpg

 如実ですよね。「自然に」こんな風になるわけがありません。

 で、1970年代には、すでに、「少子化」でしたので、2010年をピークに人口減少になることは、「必然」でした。

 今、日本は、出生数<死亡数で、当然「人口減社会」に入っています。だから、冒頭の「数値目標」云々と言う話になっているわけです。

出生数 死亡数 厚労省.jpg
 
 ですが、本当に、人口減少を止めたいのであれば、「優性保護に基づく堕胎」を禁止すれば、一発で解消します。毎年20万以上の堕胎数が報告されています。

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2012.asp?fname=T04-21.htm&title1=%87W%81D%8Fo%90%B6%81E%89%C6%91%B0%8Cv%89%E6&title2=%95%5C%82S%81%7C21+%90l%8DH%94D%90P%92%86%90%E2%90%94%82%A8%82%E6%82%D1%95s%94D%8E%E8%8Fp%90%94%81F1949%81%602010%94N

出生数 死亡数 中絶数 厚労省.jpg

 どうですか?一目瞭然ですよね。

しかも、堕胎は保険適用外なので、実数は、さらに多くなります。

「非婚化・晩婚化」にともなって、結婚自体が減り・・・日本の場合、婚姻が、子どもを持つことに直結しています・・・という、「人口減になっていく理由」が正論だとしたら、裏では、これだけの「堕胎が行われている」ことこそ、人口減の真の理由であることも分かります。

 堕胎は、合法的殺人であるという考え方もあります。

教育基本法について

(教育改革国民会議 -第1分科会- 2000年6月15日提出レポート )

曾野 綾子

 大東亜戦争の被害が人命の犠牲を強いたとすれば、戦後の教育の荒廃は、精神から人間性を奪ったとい う点で、それにも劣らぬ大きい被害を与えました。

 その原因は、長い年月、民主主義の名を借りた安易な「自由放任」の姿勢にありました。民主主義は、 51パーセントの賛成の前には、49パーセントが、自分の意志が通らないことに苦しむことを基本的な 形にしています。しかしいつのまにか社会は、この原則と痛みを忘れて、「一人でも反対があったら橋を 架けない」「一人の落伍者も出さない」という形の全体主義を採用しました。これは偽の民主主義とも言 うべきものでありましょう。

 言うまでもありませんが、反対者の心や落伍者の不安を放置しておけ、というのではありません。しか し平等というのは、誰にも不幸がないことではなく、誰もが同じ学力を持つことでもありません。誰もが 不幸に耐える力を持ち、誰もが、その子供の資質にあった教育の方途を与えられることです。

 しかし、親、教師、社会、その多くは、相手から嫌われるのを恐れるあまり、易々として子供の身勝手 な要求に迎合しました。それは、決して民主主義的な姿勢ではなく、ただ自分が若い世代から嫌われまい とする、卑屈な求愛の精神から出たものと私は考えています。

 子供だけではありません。社会は多くの嘘を、決して正視しようとはしませんでした。その幾つかの例 をあげましょう。「1人の人間の命は地球よりも重い」と言う言葉は非常にもてはやされましたが、それは全く事実に反したものです。私たちは誰もが、1人の死者も出さないようにあらゆる部門で努力してい ます。しかし9人の命を救うために1人の命を犠牲にしなければならない状況がしばしば起こることはよくあるのです。ですから1人の命は9人より軽いと見るのが正確でしょう。だからと言って、人間の生死を数で割り切れるものではありません。私が生涯携わって来た文学もまさにその点を衝くことを使命とし てきました。

 一方そう言っておきながら、一部の女性たちは「生む生まないは女の自由よ」と言い、その言葉もかなりもてはやされました。それは避妊を認めよということだけではなく、中絶の自由をも認めよということ でありました。もし「1人の人間の命は地球より重い」なら胎児の命も同じでしょう。妊娠22週目位ま でならさまざまな理由をつけて中絶も合法的にできる、というのは、欲しくない子供の命を中絶するの は、時期さえ誤らなければ殺人にならないということです。その期間をほんの20週間ほど過ぎて出産し、殺して遺体をコインロッカーに放置すると、殺人に問われる。犯罪者になる。どうしてそうなのか、 ハイティーンにも、私にも理解できない問題です。たいていの胎児の生命は、6、7週まで育って中絶しなければ、90パーセントまではすくすくと育ち、確実に一つの人生を味わうことが可能なのですから。

 ここには論理の矛盾が、公然と放置されています。私をも含め何千万という人がこの論理を見聞きしましたが、おかしいとも非人道そのものだとも言わず、それを是正する運動を起こさなかったのは、恐ろしいことです。

 何であろうと筋を通さねば、教育などできるわけはありません。生命を絶てば、それは殺人だというこ とは明瞭です。しかし私は中絶しなければならなくなった人を非難しているのではありません。小説家で すから、むしろ子供をあきらめねばならなかった多くの人たちのそれぞれの理由を想像し、深く共感し、 共に悲しみ、結婚はできなくても一人の女性が子供を生んで育てることのできる制度と人間的な状況とを 作らねばならない、としみじみ思いました。しかしそれと「女の自由」を楯に、中絶するのは何でもないこと、むしろ進歩的な発想だというのは違います。理由は簡単です。性行為なしに子供は生まれないので すから。(マリアがイエスを処女懐胎した、という話以外には……)

 むしろ人間は、誰でもたやすく殺人を犯す可能性を持つのだ、ということを自覚することが人間になる ことでしょう。合法的な中絶という制度を作って、自分はあくまで平和的で進歩的な人間であり、決して人を殺す側には廻らないのだ、と簡単に思えることの虚偽性の方がはるかに恐ろしい結果を生むと思います。




 「子どもの数は2人が理想」などという、一見誰にも左右されていないと見える考え方も、実は押し付けられた幻想なのです。
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