1400兆円の家計金融資産
<金融資産1400兆円>
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-22001720110701
ロイターニュース
日本の個人金融資産は過大評価、正味金融資産は466兆円 /jp.reuters
船井財産コンサルタンツは1日、国内で初めて、資産家・富裕層、企業・法人のオーナーに特化した財産に関する調査リポート「財産白書」を発表した。
日本国民の保有する金融資産額は、日銀の資金循環勘定にある「家計資産総額」から不動産等を差し引いた1400兆円という数値がしばしば引用されるが、白書によると、これには個人事業主の事業性資金が含まれており、いわゆる個人の資産という概念から、差し引いて考えるべきとの見方を示している。
こうした見方をベースに、個人金融資産について2009年の全国消費実態調査結果を基に試算すると、個人金融資産総額は672兆円で、これは日銀の資金循環勘定から算出される家計金融資産の46%となった。このうち負債は206億円となり、これを差し引いた正味金融資産は466兆円、としている。

また個人事業主を含まない個人の資産内訳(09年)では、不動産が全体の66.4%(このうち54.1%が自宅)を占めており、現預金や生命保険、有価証券などの金融資産はわずか24.7%だった。一方、この個人の資産内訳を時系列でみると、1989年には不動産が77%を占めており、約20年で11%低下した。
個人が豊かなセカンドライフを送るには、金融資産をいかに有効に運用・活用するかがテーマとなる中で、船井財産コンサルタンツの蓮見正純社長は、財産の半分以上を自宅が占めるという現実の中で、自宅をいかに財産としてとらえ、豊かな生活のために使っていくかが今後の大きなテーマだと指摘。不動産価値の低下についても、「黙って見過ごすわけにはいかない。毎年毎年、自らの財産が失われていっているという事実を認識し、財産の運用と保全について考えていく必要がある」とコメントした。


家計の個人金融資産が、466兆円だそうです。個人事業主(いわゆる、個人商店や、個人の会社など)の事業資金を除くと、このように推計されるそうです。
1400兆円の場合、一世体当たりの平均値が1439万円になりますが、466兆円とすると、1世帯当たり、単純計算で471万9千円になります。これらは、「現預金・株・証券・保険/年金準備金・その他」から成り立っていますので、単純に「預金額」だけではありません。
しかも、個人の資産の内訳では、自宅が36%を占め、上記金融資産は、24.7%だそうです。こちらの方が、より実感に近いのではないでしょうか。
<金融資産を巡るトンデモ論>
この金融資産は、ストックといいます。過去のGDP(国内総生産)のうち、貯蓄に回った分の累積です。


この金融資産は、毎年増えています。この金融資産について、「誤解・誤読」が蔓延しています。
<何を言っているのか、ちんぷんかんぷん>
H23.7.10 北海道新聞 勝木晃之郎『貿易赤字定着の恐れ』
「貿易赤字は日本が注目しなきゃいけない最大の問題」。輸出から輸入を差し引いた5月の貿易収支が2か月続けて大幅赤字となったことが分かった6月下旬、与謝野薫経済財政担当相は会見で深刻な表情を崩さなかった。
財務省によると、5月の貿易収支は過去2番目に悪い7727億円の赤字。
…日本は海外からの債権や証券などからの配当収入も多く、これらの所得収支をモノやサービスの収支と合わせた昨年の経常収支は前年比28%増の約17兆1千億円の黒字と堅調だ。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて赤字に転じれば、海外に資金が流出し、積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。政府の膨大な借金は、…国内金融機関による国債購入で支えられており、これが細れば、国債の新たな買い手を海外に求めなければいけなくなる。
個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない。SMBC日興証券の末沢豪謙金融市場調査部長は「資産を抱える高齢者は蓄えを崩して医療や介護に回している。今後は貿易収支に加え、所得収支も減る恐れが強い」と、国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。
「経常黒字が減れば貯蓄が減り、政府の資金調達コストは諸外国の国債と同程度まで上昇する」(米格付け会社ムーディーズ)との見方も強い。現在10年物国債で1%台前半の金利が米国並みの3%台に上がるだけでも、利払い費が財政に重くのしかかり、国の財政運営は厳しい状況に追い込まれる懸念がある。

何を言っているのか、訳が分かりません。あっちからこっちから、色々な資料(証言)を引っ張り出して書いたものの、レポートとしては、完全に不合格です。この記者が、全体像(初歩の経済)を全く理解していないことが、如実に分かります。
学生にレポート(論文)を書かせたら、どの程度理解しているのか、先生はすぐに分かります。コピー&ペーストを利用しても、論旨が一貫していないと、結局不合格です。
<全くバラバラ>

①経常収支と、②個人金融資産と、③国と地方の長期債務を1つのグラフにしていますが、この3つは、全く無関係です。なぜ1つのグラフにしているのか、全然理解できません。
たとえるなら、プロ野球の首位チームとのゲーム差と、相撲の白星黒星、サッカーの得失点差を同じグラフにしたようなものです。さっぱり分かりませんし、全然理解できません。
「貿易赤字は日本が注目しなきゃいけない最大の問題」。輸出から輸入を差し引いた5月の貿易収支が2か月続けて大幅赤字となったことが分かった6月下旬、与謝野薫経済財政担当相は会見で深刻な表情を崩さなかった。
財務省によると、5月の貿易収支は過去2番目に悪い7727億円の赤字。
与謝野さんは、完全な経済音痴です。
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-160.html
『大丈夫か?この人で 与謝野馨』参照
まあ、優秀な官僚(東大法学部以外の格落ちレベルに、東大経済学部出身者がいるはず)がいるから、なんとかもっているのでしょうけど。政治家は「おつむが軽いほうが良い」と、官僚は思っているのでしょうねえ。(ちなみに、竹中元財務大臣なんか、東大法学部官僚から見たら、完全に傍流です。興銀(現長期投資銀行)時代、官庁に出向されても、完全に干されていましたから・・・・東大法学部にあらずんば、人に非ずの世界です)。
正解は、
「貿易赤字は日本が注目しなきゃいけない最大の問題」
ではなく、
「貿易赤字は日本の経済の形を分析する、一要素」。
です。
続いて
…日本は海外からの債権や証券などからの配当収入も多く、これらの所得収支をモノやサービスの収支と合わせた昨年の経常収支は前年比28%増の約17兆1千億円の黒字と堅調だ。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて①赤字に転じれば、海外に資金が流出し、②積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。③政府の膨大な借金は、…国内金融機関による国債購入で支えられており、これが細れば、国債の新たな買い手を海外に求めなければいけなくなる。
です(数字は筆者挿入)。まず①についてです。

国際収支表では上記のようになっています。この所得収支は、海外の債権収入・株の配当・国外で働く日本人の給与などです。この経常黒字は同時に資本赤字のことで、要するに海外資産(株や債券・土地や建物・海外通貨)の積み上げのことです。日本国内に流通するカネではありません。

表数値の違いは、速報値・確定値だからです。
経常黒字=資本赤字、経常赤字=資本黒字なので、
①赤字に転じれば、海外に資金が流出し、
ではなく、
①赤字に転じれば、海外から資金が流入し、
となります。海外が日本国内の資産(株や債券・土地や建物・円通貨)を積み上げることになります。
まあそもそも、「流出」という言葉を使う時点で、間違いなのですが・・・・。経済学的には、資産を「外国資本」で持つか、「国内資本」で持つかの違いなので、別に円通貨がどこかに流れ出てるわけではありません。単なる交換のことです。東京在住の人が、北海道に土地を持つか、九州に土地を持つかの違いでしかありません。
次に②です。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて赤字に転じれば、海外に資金が流出し、②積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。
ストック(過去の金融資産)と、今期のGDP(GDI国内総所得)を混同した暴論です。経常赤字だからと言って、日本国内の過去の金融資産が減ることはありません。


21年末で、日本が持つ外国資産は、544兆8千億円、外国が持つ日本資産は288.6兆円、その差額が266兆2000億円、対外純資産です。
経常収支赤字=資本収支黒字の場合、上記の外国が持つ日本資産:288.6兆円が増えることです。
20××年の場合、12兆540億円、増えるのですから、301兆1千億円になることです。別に日本が持つ外国資産544兆8千億円が減るわけではありません。
②積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。
ではなく、
外国が(日本)国内に持つ金融資産が増加するのは必至だ。
となるのです。

上図の「純資産・対外資産」が減少するのです。国内の金融資産が減るわけではありませんし、日本が持つ外国資産、544兆8千億円(21年現在)が減ることもありません。
続いて③です。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて赤字に転じれば、海外に資金が流出し、積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。③政府の膨大な借金は、…国内金融機関による国債購入で支えられており、これが細れば、国債の新たな買い手を海外に求めなければいけなくなる。
③個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない。SMBC日興証券の末沢豪謙金融市場調査部長は「資産を抱える高齢者は蓄えを崩して医療や介護に回している。今後は貿易収支に加え、所得収支も減る恐れが強い」と、③国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。

このグラフの個人金融資産と国と地方の長期債務残高の差 「約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない」と、この差がなくなった時が限界だ!「約600兆円」しか余裕がない、とするトンでも論です。
過去に、同じ内容の、こんな記事がありました。
日経2009年12月20日 論説委員長平田育夫『日本国債いつ火を噴くか』
…日本は、外貨建ての国債を出していないし、国債の93%も国内の金融機関や、個人が持つ。だから、両国の(筆者注:外国資本が、逃げ出し長期金利の上昇した、ギリシャ・スペイン)のようにはならない、というのが、常識的な見方だ。
…個人の金融資産は、個人負債を除き、1065兆円。一方、国と地方の長期債務残高は、825兆円で今後も増える。2010年代中には、個人資産を、全部充てても、公債費を、買い切れなくなる。
日本のストック(金融資産)は2008年末現在、5515兆円です。そのなかで家計の資産は、1,433.5兆円。これが、「日本の家計の資産は約1400兆円」と言われるものです。
一方、家計の負債は、同375.4兆円です。新聞記事の「個人の金融資産は、個人負債を除き、1065兆円」というのは、「資産-負債」のことです。これを国債購入に「全部充てても…買い切れなくなる」というのですが・・・。
国債は、毎年のGDP(フロー:その年に稼ぎ出したお金)で購入されています。ですから、記事の言う1065兆円の中に、825兆円分(海外を除くと775.5兆円)の国債費は、すでに入っています。「個人資産を全部充てても買い切れない」ではなく、「個人資産の中に国債は含まれている」のです。新聞記事は不可能なことを述べています。
我々の預貯金→銀行・生保・公的年金・投資信託→国債購入825兆円分(海外を除くと775.5兆円)。「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。
帝国書院『アクセス現代社会2009』P134
日経21.6.27

この金融資産をストックといいます。毎年の稼ぎはGDPフローです。国債購入費は、毎年のGDPフローによって賄われています。その残高が、825兆円(海外を除くと775.5兆円)という「政府の負債」=「国民の財産」となって、ストックに計上されます。

毎年のフロー(GDP)の中から、40兆円ほど公債購入に充てられます。その40兆円分は国民の資産=ストックになります。国民のストックを、国債購入費に充てているわけではありません。ストックの中に、「過去の国債」が含まれているのです。
「③個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない」ということは、暗に200兆円の余裕=国債購入の限界などということを示していますが、単なるトンでも論です。
毎年のフローが国債購入費に充てられています。
続いて、④⑤です。
個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない。SMBC日興証券の末沢豪謙金融市場調査部長は「資産を抱える高齢者は蓄えを崩して医療や介護に回している。今後は貿易収支に加え、所得収支も減る恐れが強い」と、④国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。
「⑤経常黒字が減れば貯蓄が減り、④政府の資金調達コストは諸外国の国債と同程度まで上昇する」(米格付け会社ムーディーズ)との見方も強い。現在10年物国債で1%台前半の金利が米国並みの3%台に上がるだけでも、利払い費が財政に重くのしかかり、国の財政運営は厳しい状況に追い込まれる懸念がある。
⑤は何の関係もないことが分かりました。ですが、④は正しいです。
S(貯蓄)-I(投資)=(G-T財政赤字)+(EX-IM貿易黒字)です。
現在は、S-Iは貯蓄超過で黒字です。ですが、この貯蓄S(家計と企業と政府)のうち、家計の貯蓄率が低下しています。
新聞を解説 『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに

櫨浩一2006年 p106

現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺ゼロ=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
(2)左辺マイナス=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
このように,左辺と右辺は必ず等しくなるので,日本は,必ず「貿易赤字」になります。
貿易赤字=資本収支黒字なので、外国から日本への投資が、増えることを示します。
「櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る」というのは、海外からの投資黒字=貿易赤字国になるということです。日本は、必ずそうなります。今のイギリスや、アメリカのようにです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(3)左辺ゼロ=貿易黒字ゼロ
(4)左辺マイナス=貿易黒字マイナス(貿易赤字)
その際、「金利」を引き上げなければなりません。日本の国債金利<外国(自国)の国債金利であれば、日本の国債は売れません。「債券価格の調整が必要=金利引き上げ」ということです。
④国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。
「⑤経常黒字が減れば貯蓄が減り、④政府の資金調達コストは諸外国の国債と同程度まで上昇する」(米格付け会社ムーディーズ)との見方も強い。
というのは、以上のことを示しています。
日経H23.7.12『潜む不安、膨らむリスク』
…SBC日興証券の末沢豪謙…「…経常赤字に陥れば、政府が国債を発行する際に海外資金に頼らざるを得なくなる。金利上昇につながる可能性が高い」と警告する。
この通りです。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-22001720110701
ロイターニュース
日本の個人金融資産は過大評価、正味金融資産は466兆円 /jp.reuters
船井財産コンサルタンツは1日、国内で初めて、資産家・富裕層、企業・法人のオーナーに特化した財産に関する調査リポート「財産白書」を発表した。
日本国民の保有する金融資産額は、日銀の資金循環勘定にある「家計資産総額」から不動産等を差し引いた1400兆円という数値がしばしば引用されるが、白書によると、これには個人事業主の事業性資金が含まれており、いわゆる個人の資産という概念から、差し引いて考えるべきとの見方を示している。
こうした見方をベースに、個人金融資産について2009年の全国消費実態調査結果を基に試算すると、個人金融資産総額は672兆円で、これは日銀の資金循環勘定から算出される家計金融資産の46%となった。このうち負債は206億円となり、これを差し引いた正味金融資産は466兆円、としている。

また個人事業主を含まない個人の資産内訳(09年)では、不動産が全体の66.4%(このうち54.1%が自宅)を占めており、現預金や生命保険、有価証券などの金融資産はわずか24.7%だった。一方、この個人の資産内訳を時系列でみると、1989年には不動産が77%を占めており、約20年で11%低下した。
個人が豊かなセカンドライフを送るには、金融資産をいかに有効に運用・活用するかがテーマとなる中で、船井財産コンサルタンツの蓮見正純社長は、財産の半分以上を自宅が占めるという現実の中で、自宅をいかに財産としてとらえ、豊かな生活のために使っていくかが今後の大きなテーマだと指摘。不動産価値の低下についても、「黙って見過ごすわけにはいかない。毎年毎年、自らの財産が失われていっているという事実を認識し、財産の運用と保全について考えていく必要がある」とコメントした。


家計の個人金融資産が、466兆円だそうです。個人事業主(いわゆる、個人商店や、個人の会社など)の事業資金を除くと、このように推計されるそうです。
1400兆円の場合、一世体当たりの平均値が1439万円になりますが、466兆円とすると、1世帯当たり、単純計算で471万9千円になります。これらは、「現預金・株・証券・保険/年金準備金・その他」から成り立っていますので、単純に「預金額」だけではありません。
しかも、個人の資産の内訳では、自宅が36%を占め、上記金融資産は、24.7%だそうです。こちらの方が、より実感に近いのではないでしょうか。
<金融資産を巡るトンデモ論>
この金融資産は、ストックといいます。過去のGDP(国内総生産)のうち、貯蓄に回った分の累積です。


この金融資産は、毎年増えています。この金融資産について、「誤解・誤読」が蔓延しています。
<何を言っているのか、ちんぷんかんぷん>
H23.7.10 北海道新聞 勝木晃之郎『貿易赤字定着の恐れ』
「貿易赤字は日本が注目しなきゃいけない最大の問題」。輸出から輸入を差し引いた5月の貿易収支が2か月続けて大幅赤字となったことが分かった6月下旬、与謝野薫経済財政担当相は会見で深刻な表情を崩さなかった。
財務省によると、5月の貿易収支は過去2番目に悪い7727億円の赤字。
…日本は海外からの債権や証券などからの配当収入も多く、これらの所得収支をモノやサービスの収支と合わせた昨年の経常収支は前年比28%増の約17兆1千億円の黒字と堅調だ。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて赤字に転じれば、海外に資金が流出し、積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。政府の膨大な借金は、…国内金融機関による国債購入で支えられており、これが細れば、国債の新たな買い手を海外に求めなければいけなくなる。
個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない。SMBC日興証券の末沢豪謙金融市場調査部長は「資産を抱える高齢者は蓄えを崩して医療や介護に回している。今後は貿易収支に加え、所得収支も減る恐れが強い」と、国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。
「経常黒字が減れば貯蓄が減り、政府の資金調達コストは諸外国の国債と同程度まで上昇する」(米格付け会社ムーディーズ)との見方も強い。現在10年物国債で1%台前半の金利が米国並みの3%台に上がるだけでも、利払い費が財政に重くのしかかり、国の財政運営は厳しい状況に追い込まれる懸念がある。

何を言っているのか、訳が分かりません。あっちからこっちから、色々な資料(証言)を引っ張り出して書いたものの、レポートとしては、完全に不合格です。この記者が、全体像(初歩の経済)を全く理解していないことが、如実に分かります。
学生にレポート(論文)を書かせたら、どの程度理解しているのか、先生はすぐに分かります。コピー&ペーストを利用しても、論旨が一貫していないと、結局不合格です。
<全くバラバラ>

①経常収支と、②個人金融資産と、③国と地方の長期債務を1つのグラフにしていますが、この3つは、全く無関係です。なぜ1つのグラフにしているのか、全然理解できません。
たとえるなら、プロ野球の首位チームとのゲーム差と、相撲の白星黒星、サッカーの得失点差を同じグラフにしたようなものです。さっぱり分かりませんし、全然理解できません。
「貿易赤字は日本が注目しなきゃいけない最大の問題」。輸出から輸入を差し引いた5月の貿易収支が2か月続けて大幅赤字となったことが分かった6月下旬、与謝野薫経済財政担当相は会見で深刻な表情を崩さなかった。
財務省によると、5月の貿易収支は過去2番目に悪い7727億円の赤字。
与謝野さんは、完全な経済音痴です。
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-160.html
『大丈夫か?この人で 与謝野馨』参照
まあ、優秀な官僚(東大法学部以外の格落ちレベルに、東大経済学部出身者がいるはず)がいるから、なんとかもっているのでしょうけど。政治家は「おつむが軽いほうが良い」と、官僚は思っているのでしょうねえ。(ちなみに、竹中元財務大臣なんか、東大法学部官僚から見たら、完全に傍流です。興銀(現長期投資銀行)時代、官庁に出向されても、完全に干されていましたから・・・・東大法学部にあらずんば、人に非ずの世界です)。
正解は、
「貿易赤字は日本が注目しなきゃいけない最大の問題」
ではなく、
「貿易赤字は日本の経済の形を分析する、一要素」。
です。
続いて
…日本は海外からの債権や証券などからの配当収入も多く、これらの所得収支をモノやサービスの収支と合わせた昨年の経常収支は前年比28%増の約17兆1千億円の黒字と堅調だ。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて①赤字に転じれば、海外に資金が流出し、②積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。③政府の膨大な借金は、…国内金融機関による国債購入で支えられており、これが細れば、国債の新たな買い手を海外に求めなければいけなくなる。
です(数字は筆者挿入)。まず①についてです。

国際収支表では上記のようになっています。この所得収支は、海外の債権収入・株の配当・国外で働く日本人の給与などです。この経常黒字は同時に資本赤字のことで、要するに海外資産(株や債券・土地や建物・海外通貨)の積み上げのことです。日本国内に流通するカネではありません。

表数値の違いは、速報値・確定値だからです。
経常黒字=資本赤字、経常赤字=資本黒字なので、
①赤字に転じれば、海外に資金が流出し、
ではなく、
①赤字に転じれば、海外から資金が流入し、
となります。海外が日本国内の資産(株や債券・土地や建物・円通貨)を積み上げることになります。
まあそもそも、「流出」という言葉を使う時点で、間違いなのですが・・・・。経済学的には、資産を「外国資本」で持つか、「国内資本」で持つかの違いなので、別に円通貨がどこかに流れ出てるわけではありません。単なる交換のことです。東京在住の人が、北海道に土地を持つか、九州に土地を持つかの違いでしかありません。
次に②です。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて赤字に転じれば、海外に資金が流出し、②積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。
ストック(過去の金融資産)と、今期のGDP(GDI国内総所得)を混同した暴論です。経常赤字だからと言って、日本国内の過去の金融資産が減ることはありません。


21年末で、日本が持つ外国資産は、544兆8千億円、外国が持つ日本資産は288.6兆円、その差額が266兆2000億円、対外純資産です。
経常収支赤字=資本収支黒字の場合、上記の外国が持つ日本資産:288.6兆円が増えることです。
20××年の場合、12兆540億円、増えるのですから、301兆1千億円になることです。別に日本が持つ外国資産544兆8千億円が減るわけではありません。
②積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。
ではなく、
外国が(日本)国内に持つ金融資産が増加するのは必至だ。
となるのです。

上図の「純資産・対外資産」が減少するのです。国内の金融資産が減るわけではありませんし、日本が持つ外国資産、544兆8千億円(21年現在)が減ることもありません。
続いて③です。
ただ、震災後の…経常黒字幅は3か月続けて前年より縮小。この傾向が続いて赤字に転じれば、海外に資金が流出し、積み上げてきた国内の金融資産が減少するのは必至だ。③政府の膨大な借金は、…国内金融機関による国債購入で支えられており、これが細れば、国債の新たな買い手を海外に求めなければいけなくなる。
③個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない。SMBC日興証券の末沢豪謙金融市場調査部長は「資産を抱える高齢者は蓄えを崩して医療や介護に回している。今後は貿易収支に加え、所得収支も減る恐れが強い」と、③国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。

このグラフの個人金融資産と国と地方の長期債務残高の差 「約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない」と、この差がなくなった時が限界だ!「約600兆円」しか余裕がない、とするトンでも論です。
過去に、同じ内容の、こんな記事がありました。
日経2009年12月20日 論説委員長平田育夫『日本国債いつ火を噴くか』
…日本は、外貨建ての国債を出していないし、国債の93%も国内の金融機関や、個人が持つ。だから、両国の(筆者注:外国資本が、逃げ出し長期金利の上昇した、ギリシャ・スペイン)のようにはならない、というのが、常識的な見方だ。
…個人の金融資産は、個人負債を除き、1065兆円。一方、国と地方の長期債務残高は、825兆円で今後も増える。2010年代中には、個人資産を、全部充てても、公債費を、買い切れなくなる。
日本のストック(金融資産)は2008年末現在、5515兆円です。そのなかで家計の資産は、1,433.5兆円。これが、「日本の家計の資産は約1400兆円」と言われるものです。
一方、家計の負債は、同375.4兆円です。新聞記事の「個人の金融資産は、個人負債を除き、1065兆円」というのは、「資産-負債」のことです。これを国債購入に「全部充てても…買い切れなくなる」というのですが・・・。
国債は、毎年のGDP(フロー:その年に稼ぎ出したお金)で購入されています。ですから、記事の言う1065兆円の中に、825兆円分(海外を除くと775.5兆円)の国債費は、すでに入っています。「個人資産を全部充てても買い切れない」ではなく、「個人資産の中に国債は含まれている」のです。新聞記事は不可能なことを述べています。
我々の預貯金→銀行・生保・公的年金・投資信託→国債購入825兆円分(海外を除くと775.5兆円)。「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。
帝国書院『アクセス現代社会2009』P134

日経21.6.27

この金融資産をストックといいます。毎年の稼ぎはGDPフローです。国債購入費は、毎年のGDPフローによって賄われています。その残高が、825兆円(海外を除くと775.5兆円)という「政府の負債」=「国民の財産」となって、ストックに計上されます。

毎年のフロー(GDP)の中から、40兆円ほど公債購入に充てられます。その40兆円分は国民の資産=ストックになります。国民のストックを、国債購入費に充てているわけではありません。ストックの中に、「過去の国債」が含まれているのです。
「③個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない」ということは、暗に200兆円の余裕=国債購入の限界などということを示していますが、単なるトンでも論です。
毎年のフローが国債購入費に充てられています。
続いて、④⑤です。
個人金融資産は、今年3月末で1476兆円。国と地方を合わせた892兆円の長期債務残高との開きは、約600兆円あるが、ローンを差し引けば約200兆円の余裕しかない。SMBC日興証券の末沢豪謙金融市場調査部長は「資産を抱える高齢者は蓄えを崩して医療や介護に回している。今後は貿易収支に加え、所得収支も減る恐れが強い」と、④国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。
「⑤経常黒字が減れば貯蓄が減り、④政府の資金調達コストは諸外国の国債と同程度まで上昇する」(米格付け会社ムーディーズ)との見方も強い。現在10年物国債で1%台前半の金利が米国並みの3%台に上がるだけでも、利払い費が財政に重くのしかかり、国の財政運営は厳しい状況に追い込まれる懸念がある。
⑤は何の関係もないことが分かりました。ですが、④は正しいです。
S(貯蓄)-I(投資)=(G-T財政赤字)+(EX-IM貿易黒字)です。
現在は、S-Iは貯蓄超過で黒字です。ですが、この貯蓄S(家計と企業と政府)のうち、家計の貯蓄率が低下しています。
新聞を解説 『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに

櫨浩一2006年 p106

現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺ゼロ=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
(2)左辺マイナス=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
このように,左辺と右辺は必ず等しくなるので,日本は,必ず「貿易赤字」になります。
貿易赤字=資本収支黒字なので、外国から日本への投資が、増えることを示します。
「櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る」というのは、海外からの投資黒字=貿易赤字国になるということです。日本は、必ずそうなります。今のイギリスや、アメリカのようにです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(3)左辺ゼロ=貿易黒字ゼロ
(4)左辺マイナス=貿易黒字マイナス(貿易赤字)
その際、「金利」を引き上げなければなりません。日本の国債金利<外国(自国)の国債金利であれば、日本の国債は売れません。「債券価格の調整が必要=金利引き上げ」ということです。
④国債購入に回る国内の余剰資金の減少を警戒する。
「⑤経常黒字が減れば貯蓄が減り、④政府の資金調達コストは諸外国の国債と同程度まで上昇する」(米格付け会社ムーディーズ)との見方も強い。
というのは、以上のことを示しています。
日経H23.7.12『潜む不安、膨らむリスク』
…SBC日興証券の末沢豪謙…「…経常赤字に陥れば、政府が国債を発行する際に海外資金に頼らざるを得なくなる。金利上昇につながる可能性が高い」と警告する。
この通りです。
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