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『大機小機 国債増加と借金大国は別物』 日経H22.8.28

『大機小機 国債増加と借金大国は別物』H22.8.28

 国債累積高が900兆円に達し、国民1人当たりいくらの借金だとか、このままでは日本は借金大国になるとかという懸念が広がっている。しかし、これは誤解である。
 国民1人当たりの借金は、国民1人当たりの資産でもある。国債の発行とは国債を渡してその分のお金を国民から受け取り、財政支出で国民に返すことである。そのため、国民の持つ国債以外の資産は変わらず、総資産は国債分(=将来の税負担分)だけ増える。

 つまり、国債を発行していなければ、その分、国民の資産も少なかったのである。国債は政府の借金であり、日本の資産とは民間の資産から政府の借金を差し引いたものである。前述のように国債増加はそのまま民間資産の増加になるから、日本の資産も変わるはずがない。つまり、国債発行では日本は借金大国にはならない。


<資産=負債>

国家 バランスシート.jpg

 政府にとっては借金,国民にとっては財産です。もちろん現実には,国債を買っている個人はまだまだ少ないのですが,預金された側の銀行,生命保険会社,郵便貯金会社が,国債を購入しているのです。我々の預貯金(1,410兆円)が,政府の国債の購入にあてられて(過去の国債購入費がストックとして計上されて)います。

 確かに、家計の資産が、政府や企業等に回ろうが、金融資産が変わるわけではありません。「借金(負債)大国?」なるものがあるとすれば、「資産大国」も同時に成立します。


家計金融資産
   ↓
家計金融資産構成比.jpg
   ↓
国債保有者.jpg

 国債はこのように、家計→金融機関→国債と支出されています。われわれの預貯金(各種保険含む)が国債購入費です。逆に言えば、国債→各種保険・預貯金→われわれの金利収入・生命保険・医療保険・損害保険となって、還元されています。

 借金大国の可能性は国債発行とは無関係で、国民の消費意欲が高く、国内生産では足りない場合に出てくる。そのとき政府が需要を増やせば、経常収支が悪化して借金が膨らむ。しかし、現実は消費意欲が低く、生産力が余って経常収支は黒字である。こうしたときに政府が需要を増やしても、余った生産力が使われるだけで、日本の借金は増えない

 三面等価の図を見ましょう。

三面等価 2008

(S-I) =       (G-T)    +     (EX-IM)
(貯蓄-投資) =    (公債)     +     (貿易黒字)
(貯蓄超過)  = (政府への貸し出し)+   (外国への貸し出し)

(S+I)=(G-T)+(EX-IM)という関係がわかります。

 左辺(S-I)が0(つまり、国民の貯蓄を、企業投資で使い切っている状態)なら、財政赤字(G-T)と、貿易黒字(EX-IM)の合計は0です。

 国民の貯蓄超過がなくならない限り、財政赤字(G-T)+貿易黒字(EX-IM)は必ずトータルプラスで発生します。
 GDP(財・サービス)が10円とします。イコール国民所得GDIも10円です。この10円が、すべて国内で生産された材・サービスの購入に向かえばよいのですが、国民は10円中6円しか消費せず、4円貯蓄(財・サービスの購入に充てられなかったすべて)します。
 その4円を借りて消費するのが、企業(I)、政府(G-T)、外国(EX-IM)です。


 それでも次のような懸念がある。今のところ国債は、大半が日本人に保有されているからよい。だが外国人が持つようになったら、日本全体が外国に対して借金を背負うから、借金大国になるというものである。しかし、これも杞憂(きゆう)である。
 外国人が日本国債を保有しているとすれば、それは外国人が、自分の資産と引き換えに日本国債を買ったからである。すなわち、外国人の日本国債保有高が増える分、日本人の外国資産保有高も増えている。外国に国債の利払いをすると同時に、外国から収益を受け取るから、結局は戻ってくる。外国人が日本国債を買ったら大変という見方は、交換で日本人が外国資産を受け取ることを忘れている。


日経H22.5.11
米国 国債 保有状況

 確かに、われわれが日本円を持とうと、ドルを持とうと、その人の資産総額が変わるわけではありません。アメリカ国債を、アメリカ人が持とうが、日本人が持とうが、中国人が持とうが、アメリカ政府にとっては、関係ありません。
 ある企業の社債を、誰が持っても、その企業にとっては関係ないことと同じです。

 国債が問題なのは、日本の借金が増えるからではない。国債が重要な金融資産であり、発行しすぎて信用を失えば、金融危機が起こるからである。そうなれば、1990年代初頭のバブル崩壊や2008年の世界金融危機のように、人々が不安で倹約に走り、不況が悪化してしまう。(魔笛)

日経H22.5.11
公的債務残高 GDP比

 こんなに借金がある?のに、日本の新発10年もの国債の利回りは1.3%台と、世界一の低さです。要するに市場は、「世界一安全な国債」と評価していることを示します。なぜか。
 国債は政府の借金=国民の財産だからです。

 信用を失えば、国債が暴落します。
信用を失うということは、どういうことでしょう?企業でいえば、「株価下落」です。その企業が将来的に「危ない」と思えば、株は紙くずになります。最近でいえば、「JAL」がそうです。
 国債でいえば、ギリシャの危機がありました。
 「ギリシャ国債は不安だ」と考えると、ギリシャ国債価格下落=金利高騰になります。

ギリシャ 国債.jpg

<追記 コメントを頂きました>

国民資産を最大限増大させるためには 信用あるところが借金しなければならないわけですね。

日本の国債金利が低い原因の一つは 国際資本移動が他先進国と比較して乏しく、市場が地域化し、相対的に国債の信用が上昇している面があります

具体的に日本銀行の本邦対外資産負債残高統計の発表において
各国の対外資産(外国への投資)、対外負債(外国からの投資)を見比べると (単位兆円08年末もしくは09年末) 対外資産 対外負債 対外純資産の順
日本 544.8兆円 288.6兆円 256.2兆円
スイス 276.0兆円 212.9兆円 63.1兆円
香港 235.2兆円 166.7兆円 68.5兆円
中国 318.5兆円 150.8兆円 167.7兆円
フランス 548.2兆円 595.2兆円 -47.0兆円
ロシア 91.7兆円 68.6兆円 23.1兆円
ドイツ 676.9兆円 558.0兆円 118.9兆円
イタリア 266.1兆円 304.8兆円 -38.7兆円
英国 971.2兆円 998.5兆円 -27.3兆円
カナダ 124.9兆円 135.4兆円 -10.5兆円
米国 1804.9兆円 2119.7兆円 -314.8兆円

日本は自国のGDP規模と比較すると、他国と比べて、国際資本移動関係に乗り遅れている側面があり、それが国債金利が低い水準の原因の一つともなっています

地域化に伴って、世界的な目から見る金融価値と日本的な金融価値にも乖離が見られます。

すなわち、日本国債を海外機関投資家らが買わない。なぜか。
現状の低金利では日本国債は買うに値しないからです。

海外の目から見れば、日本国債は現状の金利では買うに値しない。
現状の金利は過大評価の結果であるとみなされているのです。

そして日本の金融価値観と海外の金融価値観が是正され、統一化されるときに、ダイナミズムにとむ資本移動とそれに伴う混乱を経験する恐れが高まっていっています


<回答>

 「日本の国債金利が低い原因の一つは 国際資本移動が他先進国と比較して乏しく、市場が地域化し、相対的に国債の信用が上昇している面があります」についてです。

 頂いたデータをグラフ化しました。これは、海外資産残高=過去の経常黒字の積み上げのことで、「国際資本移動が他先進国と比較して乏しく」とは、関係ありません。「モノ:サービス取引額の累積」の数字です。

 海外資産.jpg

 現在は、経常黒字額の、90倍以上の資本移動が行われています。
例えば、日本の場合、「貿易黒字は年12兆円…1日あたりの円とドルの取引は16兆円:日経子どもニュース H22.9.4」あります。

 「国際資本移動が他先進国と比較して乏し」いということはありません。
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