週刊エコノミスト6/29日号 その2 『国債暴落のウソ これだけあるギリシャとの違い』

<国債暴落のウソ>
2010.6.29号
P28
国債選好は…金融不安や信用不安の中で、流動性の優れた安全資産に資金が流れやすい傾向になっていること。
…金利上昇(国債価格下落)…については…マイルドなペースでの金利上昇であれば、…投資サイドからすると、歓迎とでもいうべき事象となる。…問題は…一瞬にして大幅な金利上昇(国債暴落)が起きる…。しかしながら、現状ではリアリティーのある議論とは言えない。
…対外純資産が266兆円とダントツの世界1位で徴税基盤も盤石な日本財政…グローバルに議論されているソブリン問題とは本質的に違う。
<国債は高値安定>
出典:週刊エコノミスト6/29日号
生保資産の4割が国債です。P27グラフ

また、「国内3メガバンクグループにりそな、住友信託、中央三井信託の3グループを加えた国内大手行の国債保有残高は2010年3月末で95.5兆円と、国債発行高の約1割」を占めます。
さらに、生保全体の国債購入額は年々増加しています。「償還されることを前提にすれば、リスクフリーの日本国債を保有することが運用収益を確定させる上で一番効率的」だからです。
その結果、国債価格は高値安定(長期金利は6年10カ月ぶりの低利)ということになっています。
日本経済新聞「余剰マネー国債に流入」2010年.6月.25日
日本国債に投資マネーが流れ込んでいる。10年物国債利回りは前日比0.040%低下(債券価格は上昇)し、1.125%となった。2003年8月以来、6年10か月ぶりの低水準をつけた。
長期金利低下の理由の一つはカネ余りだ。個人や企業などが銀行預金などに資金を寝かせる一方、企業が設備投資を絞っていることから銀行の貸し出し需要は低迷。国内銀行の預金と貸出額の差額は4月末時点で前年同月比17.2%増の約159兆円となり、過去最大となった。
銀行はこの差額を国債に振り向けている。4月末時点で国内銀行が保有する日本国債の残高は約137兆円と27.6%増え、過去最高を更新した。

このグラフは,「都銀・地銀・第二地銀」の資金余りの状況を示しています。個人や企業から集めた預金額から,貸出額を差し引いたものです。130兆円のお金が,どこにも投資先がなく,放置されています。このお金は,銀行にとっては,ただ預かっているだけで,刻々と赤字になってしまう「お荷物のお金」です。預金者に金利をつけて返さなければいけないからです。銀行も,一刻も早くお金を借りてほしいのです。
日経H22.3.14

国債価格上昇=金利低下のことです。
<生保や銀行が国債を買い続ける理由>
金融などの資産には次の種類があります。
1 現金・預貯金、国債・社債
これらは、「利回りが確定」している資産です。
現金を持てば0%の利回りです。預貯金(普通預金)は0.04%くらいです。10年物国債は1.125%の利回りです。社債は国債+プレミアムの利回りです。
ただし、 「インフレ」には弱いです。モノの値段が3%上昇したら、現金の場合は-3%で、資産が目減りします。国債も-1.875%で目減りします。
実質利子率=名目利子率-インフレ率
-1.875%=1.125% -(3%)
逆に、「デフレ」には強いです。モノの値段が3%下落したら、現金の場合は+3%で、資産が増えます。国債も+4.875%で資産が増えます。
2 株
基本
現在株価10000円の銘柄は、1年後何%か、わからない。
株には2つの利益があります。
(1)配当金(企業がもうかったときに、株主に配る)…インカム・ゲイン
(2)株の値上がり(1万円の株が1万3百円になる)…キャピタル・ゲイン
インフレには強いです。
インフレ→企業利益(名目)増→配当金(名目)増
インフレ→景気アップ(名目)→株価(名目)増
デフレには弱いです。
デフレ→企業利益(名目)減→配当金(名目)減
デフレ→景気ダウン(名目)→株価(名目)減
3 土地
基本的に株と同じように考えることができます。
土地は、1(10)年後に、いくらになっているかは、わかりません。
土地には2つの利益があります。
(1)賃貸料(駐車場や、家・店舗に貸す)
(2)土地の値上がり(1000万円の土地が1万30万円になる)
デフレには弱いです。資産(モノ)価値下落=カネ価値上昇だからです。
賃貸収入率=賃貸価格÷地価です。1000万円の土地で、月々5万円で駐車場に貸すと、年に60万円ですから、60÷1000×100=6%の利回りです。その土地が1年後に1000万円で売れる(物価上昇率0%)と、1060万円です。
が、土地代がデフレで減少する(3%下落)と、60万円の賃貸料-30万円の土地の値下がり=30万円の利回り分=3.09%の利回りにしかなりません。
さて、土地で利益を得ようとする場合、どのようにするでしょうか。土地は高いので、一般的に現金では買えません。ローンを組みます。
ローン利率は、「長期金利+プレミアム」です。国債が最も安全資産なので、国債の長期金利が基準になります。住宅ローンや、土地購入ローンは、その「長期金利」よりも、高く設定されます。
賃貸収入率(賃貸価格÷地価)+土地の値上がり率=(長期金利+プレミアム)です。
上記の例で、インフレもデフレもない場合、6%+0%=6%です。
さて、ここで土地代が下がるとします。3%のデフレです。
60÷970×100=6.18%の賃貸料率に上がります。ですが、土地の値上がり率が-3%なので、左辺は6.18-3=3.18%になります。左辺=右辺なので、(長期金利+プレミアム)も3.18%になります。
デフレになると、金利が低くなることがわかります。
ここで、上記の式を変形します。
(賃貸価格÷地価)+土地の値上がり率=(長期金利+プレミアム)
(賃貸価格÷地価)=(長期金利+プレミアム)-土地の値上がり率
地価=賃貸価格/(長期金利+プレミアム-土地の値上がり率)
われわれの資産価格(土地価格)は、安全資産(預金や国債)などの金利の上げ下げによって変化するのです。
日本はデフレです。
日経22年6月26日記事

出典:世界経済ネタ帳
このようなデフレ下、個人も機関投資家も、デフレに強い資産「現金・預貯金・国債(社債)」などの安全資産を購入します。これが最も合理的な行動になります。
デフレ下、土地や、建物、モノなどの資産を購入すると、損します。
生保や銀行などの機関投資家が、国債購入を進めるわけです。
国債の項、続く。
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