新聞の間違い 日経22年3月6日
<新聞の間違い 日経22年3月6日 >
①『外貨準備高2ヵ月ぶり減』
財務省が5日発表した2月末の外貨準備高は、前月末に比べて19億9100万ドル減り、1兆519億7900万ドルとなった。減少は2か月ぶり。…ユーロ建て資産のドル換算額が減ったことが響いた。
②『対外直接投資が半減』
日本からの対外直接投資が大きく減少している。日銀の国際収支統計によると、2009年の対外直接投資は7兆300億円で、過去最高だった前年(13兆2300億円)に比べ47%減少した。…09年は世界的な景気減速を受け、主力の北米向けが前年比78%減…欧州連合向けが32%減…。現地子会社の業績不振により、内部留保を経由した直接投資の増加が減ったことも追い打ちをかけた。
<赤字が減少したのだから、喜ばしい?はず>
上記の「外貨準備減」「直接投資減」は、国際収支表では、右側の大きな「資本収支」に入ります。「直接投資」は「資本収支」の項目、「外貨準備」は、「外貨準備増減」に入ります。日本は、2007年→2009年、この右側の大きな「△資本収支赤字」が減少しました。「赤字が減少したのだから、「喜ばしい」と書かなければなりません。


この新聞は、過去に、「貿易赤字は悪いこと」「貿易黒字縮小はまずいこと」と書いているのですから・・・
日経H22.2.2『韓国1年ぶり貿易赤字に』
…1月の輸出入動向によると、貿易収支が4億7000万ドルの赤字となった。赤字は昨年1月以来1年ぶり。半導体の製造設備や自動車部品などの輸入が大幅に増えたのが響いた。
日経H22.2.6『中国経常黒字昨年は35%減』
…経常黒字は前年を35%下回る2841億ドルだった。世界的な金融危機を受けた貿易黒字の縮小が響いた。
『経常黒字54.5%減 4月国際収支』日本経済新聞 H21年6月9日
財務省が8日発表した4月の国際収支速報…一部に持ち直しの動きはあるものの、経常黒字額は依然として前年の半分以下の水準にとどまっている。貿易・サービス収支は2873億円の赤字で、前年同月の黒字から赤字に転落した。
渾沌『大機小機』日本経済新聞 H21年5月22日
企業の損益計算書は…前・後半で環境が激変し赤字転落した08年度の日本の貿易収支と表裏をなす。
ですが、何回も指摘してきたように、 「黒字が縮小はまずい」も、今回記事の、「外貨準備減(赤字縮小)」「直接投資減(資本収支赤字縮小)」も、良いことでも、悪いことでも、その対象ではありません。
もういちど、上記の国際収支表を見てみましょう。


経常収支黒字≡資本収支赤字
日本が経常収支黒字を抱えるということは、同額分外国資産(外国の国債・社債・株式・資産・貸付)が増えるということです。
資本収支黒字≡経常収支赤字
アメリカが資本収支黒字を抱えるということは、アメリカ国内に、外国資本(外国の国債・社債・株式・資産・貸付)が増えるということです。
投資を受け入れるということはどういうことでしょうか。
参考・引用文献 石川城太『政府、過度な肩入れ避けよ』日本経済新聞H21.4.15
…グローバル化が進展し、国境を越えたヒト・モノ・カネ・サービスの移動の活発に伴い…自国企業に見えながら、所有構造を見ると…株式の多くを外国人が所有しているケースが…ある。…日産自動車の外国人持ち株比率は6割を超え、ホンダとトヨタも3割前後である。ソニー、任天堂、キヤノン、日立製作所など、日本を代表する企業…も4割を超えている。…日産はルノーの株式の15%を所有し、逆にルノーは日産の44.3%の株式を所有している。…ルノー出身のカルロス・ゴーン氏が両社の社長兼最高責任者(CEO)を兼務し、日産が保有するルノー株式には議決権がないため、日産はもはやフランスの企業といってもよい。
このように、今では,外国人株主の持ち株比率が30%を超える企業も少なくありません。東証一部上場企業では,’05年には100社を超えました。有力上場企業で,外国人持ち株比率が,50%を超える企業は,46社を数え,以下のような例があります。
出典 『会社四季報CD-ROMランキングでみる上場企業』2007年2週春号 東洋経済オンライン http://www.toyokeizai.net/online/topics2/?kiji_no=8
日産自動車69.3% 西友60.3% 昭和シェル石油61.3%
ヤマダ電機55.2% HOYA50.5%
富士フィルムホールディングス50.4%
これが、グローバル化の実態です。資本は国境を超え移動しているのです。「日産はフランス企業」です。
さらに、アメリカ貿易赤字額=資本収支黒字額なので、アメリカが貿易赤字を出せば出すほど、外国資本(外貨準備、外国債、外国証券ほか)の投入が増えるのです。「日産はフランス企業」と同様、アメリカの「○○社は日本企業・タイ企業・中国企業」という事例が膨大になっているということです。
でも、「日産はフランス企業」で、何か困ったことはあるのでしょうか?「ヤマダ電機は外国企業」ですが、それが何か?
「貿易赤字は損」「貿易赤字は悪いこと」ではなく、 「貿易赤(黒)字」は「お金の貸し借り」のことなのです。ですから、貿易赤字があろうと無かろうと、経済成長(GDP増=GDI増=国民所得増)します。アメリカも、イギリスも、オーストラリアもです。
アメリカGDP推移


逆に、日本は’98年「貿易黒字」を出しながら、戦後2回目の「GDPマイナス成長=国民所得減」でした。さらに、2008年、貿易黒字を27,103(単位10億円)も出しながら、戦後3回目の「GDPマイナス成長=国民所得減」でした。前年度GDPは560,816、2008年度556,710となり、0.73%のマイナス成長です。 (単位10億円 データ出展 内閣府速報値2009年2月13日)


おかしいじゃありませんか、貿易黒字で儲けているのに、マイナス成長なんて。そう、 「貿易黒字はもうけ」『貿易黒字は良いこと』が間違いなのです。貿易黒(赤)字と、経済成長は関係ありません。赤字だろうが、黒字だろうが、GDPは増減するのです。
櫻川昌哉『経済を動かす単純な論理』光文社2009
p178
貯蓄率が国家の間で異なっていれば、経常収支の不均衡が長期にわたって続くということはありえるのです。経常収支赤字国が持続的な経済成長をすれば、黒字国から赤字国へ資金は流れ、経常収支の赤字も持続できます。…実際にアメリカは、過去30年間、経常収支の赤字を継続してきましたが、大きな問題は生じていません。
①『外貨準備高2ヵ月ぶり減』
財務省が5日発表した2月末の外貨準備高は、前月末に比べて19億9100万ドル減り、1兆519億7900万ドルとなった。減少は2か月ぶり。…ユーロ建て資産のドル換算額が減ったことが響いた。
②『対外直接投資が半減』
日本からの対外直接投資が大きく減少している。日銀の国際収支統計によると、2009年の対外直接投資は7兆300億円で、過去最高だった前年(13兆2300億円)に比べ47%減少した。…09年は世界的な景気減速を受け、主力の北米向けが前年比78%減…欧州連合向けが32%減…。現地子会社の業績不振により、内部留保を経由した直接投資の増加が減ったことも追い打ちをかけた。
<赤字が減少したのだから、喜ばしい?はず>
上記の「外貨準備減」「直接投資減」は、国際収支表では、右側の大きな「資本収支」に入ります。「直接投資」は「資本収支」の項目、「外貨準備」は、「外貨準備増減」に入ります。日本は、2007年→2009年、この右側の大きな「△資本収支赤字」が減少しました。「赤字が減少したのだから、「喜ばしい」と書かなければなりません。


この新聞は、過去に、「貿易赤字は悪いこと」「貿易黒字縮小はまずいこと」と書いているのですから・・・
日経H22.2.2『韓国1年ぶり貿易赤字に』
…1月の輸出入動向によると、貿易収支が4億7000万ドルの赤字となった。赤字は昨年1月以来1年ぶり。半導体の製造設備や自動車部品などの輸入が大幅に増えたのが響いた。
日経H22.2.6『中国経常黒字昨年は35%減』
…経常黒字は前年を35%下回る2841億ドルだった。世界的な金融危機を受けた貿易黒字の縮小が響いた。
『経常黒字54.5%減 4月国際収支』日本経済新聞 H21年6月9日
財務省が8日発表した4月の国際収支速報…一部に持ち直しの動きはあるものの、経常黒字額は依然として前年の半分以下の水準にとどまっている。貿易・サービス収支は2873億円の赤字で、前年同月の黒字から赤字に転落した。
渾沌『大機小機』日本経済新聞 H21年5月22日
企業の損益計算書は…前・後半で環境が激変し赤字転落した08年度の日本の貿易収支と表裏をなす。
ですが、何回も指摘してきたように、 「黒字が縮小はまずい」も、今回記事の、「外貨準備減(赤字縮小)」「直接投資減(資本収支赤字縮小)」も、良いことでも、悪いことでも、その対象ではありません。
もういちど、上記の国際収支表を見てみましょう。


経常収支黒字≡資本収支赤字
日本が経常収支黒字を抱えるということは、同額分外国資産(外国の国債・社債・株式・資産・貸付)が増えるということです。
資本収支黒字≡経常収支赤字
アメリカが資本収支黒字を抱えるということは、アメリカ国内に、外国資本(外国の国債・社債・株式・資産・貸付)が増えるということです。
投資を受け入れるということはどういうことでしょうか。
参考・引用文献 石川城太『政府、過度な肩入れ避けよ』日本経済新聞H21.4.15
…グローバル化が進展し、国境を越えたヒト・モノ・カネ・サービスの移動の活発に伴い…自国企業に見えながら、所有構造を見ると…株式の多くを外国人が所有しているケースが…ある。…日産自動車の外国人持ち株比率は6割を超え、ホンダとトヨタも3割前後である。ソニー、任天堂、キヤノン、日立製作所など、日本を代表する企業…も4割を超えている。…日産はルノーの株式の15%を所有し、逆にルノーは日産の44.3%の株式を所有している。…ルノー出身のカルロス・ゴーン氏が両社の社長兼最高責任者(CEO)を兼務し、日産が保有するルノー株式には議決権がないため、日産はもはやフランスの企業といってもよい。
このように、今では,外国人株主の持ち株比率が30%を超える企業も少なくありません。東証一部上場企業では,’05年には100社を超えました。有力上場企業で,外国人持ち株比率が,50%を超える企業は,46社を数え,以下のような例があります。
出典 『会社四季報CD-ROMランキングでみる上場企業』2007年2週春号 東洋経済オンライン http://www.toyokeizai.net/online/topics2/?kiji_no=8
日産自動車69.3% 西友60.3% 昭和シェル石油61.3%
ヤマダ電機55.2% HOYA50.5%
富士フィルムホールディングス50.4%
これが、グローバル化の実態です。資本は国境を超え移動しているのです。「日産はフランス企業」です。
さらに、アメリカ貿易赤字額=資本収支黒字額なので、アメリカが貿易赤字を出せば出すほど、外国資本(外貨準備、外国債、外国証券ほか)の投入が増えるのです。「日産はフランス企業」と同様、アメリカの「○○社は日本企業・タイ企業・中国企業」という事例が膨大になっているということです。
でも、「日産はフランス企業」で、何か困ったことはあるのでしょうか?「ヤマダ電機は外国企業」ですが、それが何か?
「貿易赤字は損」「貿易赤字は悪いこと」ではなく、 「貿易赤(黒)字」は「お金の貸し借り」のことなのです。ですから、貿易赤字があろうと無かろうと、経済成長(GDP増=GDI増=国民所得増)します。アメリカも、イギリスも、オーストラリアもです。
アメリカGDP推移


逆に、日本は’98年「貿易黒字」を出しながら、戦後2回目の「GDPマイナス成長=国民所得減」でした。さらに、2008年、貿易黒字を27,103(単位10億円)も出しながら、戦後3回目の「GDPマイナス成長=国民所得減」でした。前年度GDPは560,816、2008年度556,710となり、0.73%のマイナス成長です。 (単位10億円 データ出展 内閣府速報値2009年2月13日)


おかしいじゃありませんか、貿易黒字で儲けているのに、マイナス成長なんて。そう、 「貿易黒字はもうけ」『貿易黒字は良いこと』が間違いなのです。貿易黒(赤)字と、経済成長は関係ありません。赤字だろうが、黒字だろうが、GDPは増減するのです。
櫻川昌哉『経済を動かす単純な論理』光文社2009
p178
貯蓄率が国家の間で異なっていれば、経常収支の不均衡が長期にわたって続くということはありえるのです。経常収支赤字国が持続的な経済成長をすれば、黒字国から赤字国へ資金は流れ、経常収支の赤字も持続できます。…実際にアメリカは、過去30年間、経常収支の赤字を継続してきましたが、大きな問題は生じていません。
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theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済