ピムコ・ジャパン社長 高野真『ギリシャ問題と日本の財政リスク』日経5月24日(月)
ピムコ・ジャパン社長 高野真『ギリシャ問題と日本の財政リスク』日経5月24日(月)
数字は筆者記入
ギリシャ危機により、日本の財政リスクが再認識されている。しかし、日本とギリシャを単純に比較はできない。①円建ての借金は自国通貨によって賄え、日本国債にデフォルト(債務不履行)リスクはない。しかも、日本は対外純資産国すなわち国内民間部門による国債引き受けの余力がある。ギリシャの状況とは大きく異なる。
それにもかかわらず財政問題が今後、②日本の大きなリスクとなる可能性は否定できない。これまで大量の国債発行にもかかわらず、国内金利が低位安定していたのは、経常黒字が継続し、国内機関投資家による国債選好があったためである。
しかしながら、今後は高齢化により、③貯蓄率は大幅に低下し経常黒字の継続は期待できない。民間部門による国債消化余力も今後数年で消滅する。そうなれば、海外投資家の期待収益率に合うレベルまで債券価格の調整が必要である。その過程で大量の国債を保有している国内金融機関への影響は計り知れず、国債利払い費も飛躍的に増加する。
デフレ経済の間の中にある今、その④リスクがすぐに顕在化するとは考えづらい。しかしいずれはやってくる可能性がある。ギリシャ問題で学ぶべきことは、市場の動きはすばやく容赦ないということだ。政府はばらまき政策を即刻止め限られた財源をより波及効果の高い政策に集中させ、財政リスクを最小化する政策をとるべきだ。与えられた時間は限られている。
<そのとおりです>
この、ピムコ・ジャパンという会社の認識は、間違いありません。以前、日経に寄せた記事も同様です。
正直知哉 ピムコジャパン マネージングディレクター 『政権 改めて論点を問う』日経H22.2.1
…国が借金を返せなくなる「ソブリンリスク」が日本に及ぶことも?
「財政リスクが市場で非常に心配されているのは事実。だが、日本は対外純資産国で財政赤字を国内貯蓄で賄えている。デフレで日本の実質金利は潜在成長率より高く、いい投資機会がない限り企業の貯蓄はふえる。数年はこの構図が続き、デフォルト(債務不履行)を心配する状況ではない」
<日本国債を購入しているのは日本人>
①円建ての借金は自国通貨によって賄え、日本国債にデフォルト(債務不履行)リスクはない。しかも、日本は対外純資産国すなわち国内民間部門による国債引き受けの余力がある。
「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。約846兆円のうち、94%=約795兆円は、我々日本人が持っているのです(単純計算です。国債を海外が購入している、6%という数値を使用しました)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。
日経H22.5.11


こんなに借金がある?のに、日本の新発10年もの国債の利回りは1.3%台と、世界一の低さです。要するに市場は、「世界一安全な国債」と評価していることを示します。なぜか。
国債は政府の借金=国民の財産だからです。
日本やアメリカは、「自国通貨建ての国債を発行」しているので、原理的にデフォルト(債務不履行)は起きません。その国債を購入しているのが、日本人であれ、外国人であれ、極端な話、宇宙人でもです。
デフォルト(債務不履行)できるのは、①外貨建て債務の場合と、②外資に対してのみです。
過去のアルゼンチン、ロシアがデフォルト(債務不履行)にしたのは、①外貨建て債務②外国資本(外資)に対してと、①外貨建て債務です。

<貯蓄率が低下すると・・・>
②日本の大きなリスクとなる可能性は否定できない。これまで大量の国債発行にもかかわらず、国内金利が低位安定していたのは、経常黒字が継続し、国内機関投資家による国債選好があったため
③貯蓄率は大幅に低下し経常黒字の継続は期待できない。民間部門による国債消化余力も今後数年で消滅する。そうなれば、海外投資家の期待収益率に合うレベルまで債券価格の調整が必要
以下の通りです。
『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
政府が家計の貯蓄に頼って借金を重ねる構図に限界がみえ始めた。政府の負債残高が膨張し…家計資産に対する比率は66%まで上昇した。…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに

櫨浩一2006年 p106

現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺ゼロ=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
(2)左辺マイナス=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
このように,左辺と右辺は必ず等しくなるので,日本は,必ず「貿易赤字」になります。
貿易赤字=資本収支黒字なので、外国から日本への投資が、増えることを示します。
「櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る」というのは、海外からの投資黒字=貿易赤字国になるということです。日本は、必ずそうなります。今のイギリスや、アメリカのようにです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(3)左辺ゼロ=貿易黒字ゼロ
(4)左辺マイナス=貿易黒字マイナス(貿易赤字)
その際、「金利」を引き上げなければなりません。日本の国債金利<外国(自国)の国債金利であれば、日本の国債は売れません。「債券価格の調整が必要=金利引き上げ」ということです。
<対策は>
④リスクがすぐに顕在化するとは考えづらい。しかしいずれはやってくる可能性
日本の2008年の財政赤字(G-T)は6兆1310億円です。

日本の消費Cは、約291兆円です。消費税を2%引き上げると、財政赤字(G-T)の6兆1310億円が補えることがわかります。国と地方が、現在発行しなければならない債務を、消費税を7%にすることで、「無借金経営」にすることが出来ます。これは、不可能な数字ではありません。財政赤字は、消費税にしたら、2%~多くても5%程度の額です。
大竹文雄(大阪大学教授)『ニッポン復活の10年』日本経済新聞H22.1.9
日本の財政赤字が突出して大きいのは政府の規模が大きいからではなく,税収があまりにも少ないため。国債相場が暴落しないのは,消費税率などを国際標準に合わせてゆけば十分に税収があがるという合意が市場関係者にあるからだ。

「国債相場が暴落しないのは,消費税率などを国際標準に合わせてゆけば十分に税収があがるという合意が市場関係者にあるからだ」というのは,上記のグラフを見れば明らかです。
これを見れば,8~13%,10~15%程度でしたら,現実的な選択肢として十分にあり得ることがわかります。財政赤字(G-T)を無くすなら,10%程度で十分です。日本国として,決して実現不可能な数値ではありません。
「国債暴落,日本政府破綻」なんか、絶対に起こりません。消費税を2%~多くても5%程度増やせばいいのです。税率7%~10%で財政赤字は0なのです。
数字は筆者記入
ギリシャ危機により、日本の財政リスクが再認識されている。しかし、日本とギリシャを単純に比較はできない。①円建ての借金は自国通貨によって賄え、日本国債にデフォルト(債務不履行)リスクはない。しかも、日本は対外純資産国すなわち国内民間部門による国債引き受けの余力がある。ギリシャの状況とは大きく異なる。
それにもかかわらず財政問題が今後、②日本の大きなリスクとなる可能性は否定できない。これまで大量の国債発行にもかかわらず、国内金利が低位安定していたのは、経常黒字が継続し、国内機関投資家による国債選好があったためである。
しかしながら、今後は高齢化により、③貯蓄率は大幅に低下し経常黒字の継続は期待できない。民間部門による国債消化余力も今後数年で消滅する。そうなれば、海外投資家の期待収益率に合うレベルまで債券価格の調整が必要である。その過程で大量の国債を保有している国内金融機関への影響は計り知れず、国債利払い費も飛躍的に増加する。
デフレ経済の間の中にある今、その④リスクがすぐに顕在化するとは考えづらい。しかしいずれはやってくる可能性がある。ギリシャ問題で学ぶべきことは、市場の動きはすばやく容赦ないということだ。政府はばらまき政策を即刻止め限られた財源をより波及効果の高い政策に集中させ、財政リスクを最小化する政策をとるべきだ。与えられた時間は限られている。
<そのとおりです>
この、ピムコ・ジャパンという会社の認識は、間違いありません。以前、日経に寄せた記事も同様です。
正直知哉 ピムコジャパン マネージングディレクター 『政権 改めて論点を問う』日経H22.2.1
…国が借金を返せなくなる「ソブリンリスク」が日本に及ぶことも?
「財政リスクが市場で非常に心配されているのは事実。だが、日本は対外純資産国で財政赤字を国内貯蓄で賄えている。デフレで日本の実質金利は潜在成長率より高く、いい投資機会がない限り企業の貯蓄はふえる。数年はこの構図が続き、デフォルト(債務不履行)を心配する状況ではない」
<日本国債を購入しているのは日本人>
①円建ての借金は自国通貨によって賄え、日本国債にデフォルト(債務不履行)リスクはない。しかも、日本は対外純資産国すなわち国内民間部門による国債引き受けの余力がある。
「国債は政府の借金=国民の財産」です。これらの借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。約846兆円のうち、94%=約795兆円は、我々日本人が持っているのです(単純計算です。国債を海外が購入している、6%という数値を使用しました)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約53.%は国の借入金なのです。
日経H22.5.11


こんなに借金がある?のに、日本の新発10年もの国債の利回りは1.3%台と、世界一の低さです。要するに市場は、「世界一安全な国債」と評価していることを示します。なぜか。
国債は政府の借金=国民の財産だからです。
日本やアメリカは、「自国通貨建ての国債を発行」しているので、原理的にデフォルト(債務不履行)は起きません。その国債を購入しているのが、日本人であれ、外国人であれ、極端な話、宇宙人でもです。
デフォルト(債務不履行)できるのは、①外貨建て債務の場合と、②外資に対してのみです。
過去のアルゼンチン、ロシアがデフォルト(債務不履行)にしたのは、①外貨建て債務②外国資本(外資)に対してと、①外貨建て債務です。

<貯蓄率が低下すると・・・>
②日本の大きなリスクとなる可能性は否定できない。これまで大量の国債発行にもかかわらず、国内金利が低位安定していたのは、経常黒字が継続し、国内機関投資家による国債選好があったため
③貯蓄率は大幅に低下し経常黒字の継続は期待できない。民間部門による国債消化余力も今後数年で消滅する。そうなれば、海外投資家の期待収益率に合うレベルまで債券価格の調整が必要
以下の通りです。
『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
政府が家計の貯蓄に頼って借金を重ねる構図に限界がみえ始めた。政府の負債残高が膨張し…家計資産に対する比率は66%まで上昇した。…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに

櫨浩一2006年 p106

現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺ゼロ=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
(2)左辺マイナス=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
このように,左辺と右辺は必ず等しくなるので,日本は,必ず「貿易赤字」になります。
貿易赤字=資本収支黒字なので、外国から日本への投資が、増えることを示します。
「櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る」というのは、海外からの投資黒字=貿易赤字国になるということです。日本は、必ずそうなります。今のイギリスや、アメリカのようにです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(3)左辺ゼロ=貿易黒字ゼロ
(4)左辺マイナス=貿易黒字マイナス(貿易赤字)
その際、「金利」を引き上げなければなりません。日本の国債金利<外国(自国)の国債金利であれば、日本の国債は売れません。「債券価格の調整が必要=金利引き上げ」ということです。
<対策は>
④リスクがすぐに顕在化するとは考えづらい。しかしいずれはやってくる可能性
日本の2008年の財政赤字(G-T)は6兆1310億円です。

日本の消費Cは、約291兆円です。消費税を2%引き上げると、財政赤字(G-T)の6兆1310億円が補えることがわかります。国と地方が、現在発行しなければならない債務を、消費税を7%にすることで、「無借金経営」にすることが出来ます。これは、不可能な数字ではありません。財政赤字は、消費税にしたら、2%~多くても5%程度の額です。
大竹文雄(大阪大学教授)『ニッポン復活の10年』日本経済新聞H22.1.9
日本の財政赤字が突出して大きいのは政府の規模が大きいからではなく,税収があまりにも少ないため。国債相場が暴落しないのは,消費税率などを国際標準に合わせてゆけば十分に税収があがるという合意が市場関係者にあるからだ。

「国債相場が暴落しないのは,消費税率などを国際標準に合わせてゆけば十分に税収があがるという合意が市場関係者にあるからだ」というのは,上記のグラフを見れば明らかです。
これを見れば,8~13%,10~15%程度でしたら,現実的な選択肢として十分にあり得ることがわかります。財政赤字(G-T)を無くすなら,10%程度で十分です。日本国として,決して実現不可能な数値ではありません。
「国債暴落,日本政府破綻」なんか、絶対に起こりません。消費税を2%~多くても5%程度増やせばいいのです。税率7%~10%で財政赤字は0なのです。
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